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森羅万象
書く人のための文芸事情

 「アフター、ヒロシマ。」―――佐藤yuupopic(寄稿)

 '45年8月6日午前8時15分、ヒロシマ。

 あれから60回目の夏が訪れ、今朝はその翌日です。昨日はわたしの親愛なる祖母の94回目の誕生日でもありました。わたしのこの何十年間かの8月6日の朝は、祖母の誕生日を祝う思いと、たくさんの方々への追悼の思いと、夏休みの最中に鳴り響く鐘の音と共に二つの感情が入り交じる、静謐で大切な日なのでありました。

 そんな、ヒロシマの翌日に、どうか一冊の本を紹介させてクダサイ。

 『夕凪の街 桜の国』こうの史代(双葉社)

 昨日の古本カフェイベント内UPJ3プレイベント"昼下がりの言葉たちへVol.1@渋谷区上原中学校ランチルーム〜オープンマイクイベント「スペースランチルーム」 "(なんて長い説明! 文末にてイベント詳細掲載)の一部で、本にまつわる話+自作詩のリーディング(「くたくたに」と云う”にほんこくけんぽうだいきゅうじょう”をモチーフに描いた詩を詠みました)と云うことでUPJ3スタッフとして出演させて頂いた際に、紹介させて頂いたマンガです。
 第八回文化庁メディア芸術祭のコミック部門の大賞受賞作品にて何処の書店に往っても必ずあるので、目にしたことのある方も多いと思いますが、実際に手にしたことがなかったら、是非、この夏に、あなたの手元において、そしてこれから先ずっと、共に歩いて頂けたらな、て願う一冊です(その前年は『BECK』がノミネートされながら受賞を逃したので何なんだ選考委員の目は節穴か!と気色ばんだ(?)が、第八回は素晴らしい選考だったと思い、文化庁好い仕事したと見直した笑)。
 作者のこうの史代氏の名前を知っている方はかなり多ジャンルに渡るマンガ読みか、わたしと同様に四コマ誌フリーク(笑)かのどちらではないかと思われる。わたしは彼女のほんのりとした画で独特のタイム感の流れる動物をモチーフに描かれた地味だけど不思議な魅力のある連載ものを何誌かの四コマ誌で目にし、興味深く思ってはいたけど、単行本を購入するまでには至っていなかった。
 そんな作家(ちょっと乱暴な作家説明でスミマセン!)だったので、渋谷の書店で偶然ふと目にした際に、特設コーナーに平積みにされていた時一瞬目を疑った。申し訳ないけれど、決して新刊が平積みになるような売れっ子作家と云うイメージが全くなかったから驚いた訳だ。ポップの「第八回文化庁メディア芸術祭大賞受賞作品」と云う文言を見てもう一度ビックリした。失礼な話だが、熱心なマンガ読みの方なら容易にご理解頂けると思うのだけど、四コマ誌メインに執筆している作家の作品が、この賞にノミネートされると云うこと自体が希有な出来事な上に大賞を受賞したと云う事実にビックリ驚かされたのだ。
 作品のテーマは、『アフター、ヒロシマ。』
 なるほど、そうか。納得。
 物語については、もう、わたしなんかが語る必要がないから、一切触れる必要がない。手にとって、読んで頂ければ、もう、そこに全てがあるから。アフター、ヒロシマ。を生きる方々の血に刻まれた、もの、が、都市で暮らす彼らの日々の中に、淡々と、切々と、描かれ、そこにある。
 後がきによると、こうの史代氏は、広島市に生まれ育ったけれど、被爆者でも被爆二世でもなく、体験を語ってくれる親類もいないと云う。自らでこのテーマをモチーフに作品を描こうと思ったことなど微塵もないし、むしろ避けてきたような処があったようなのだ。そんな彼女が本作を世の中に発するに至ったのは、全く関係ない連載の担当者の「広島の話を描いてみない」と云う一言だったと云う。わたしがこの作品に邂逅することが出来たのは、その一言のおかげだったのだと思うと担当氏の仕事に感謝してやまない。
 被爆者の方々の平均年齢が73歳となった今、子供達、その後の世代にこの日本、ヒロシマに起こった本当のこと、を伝えてゆくのに、残された時間がわずかであることを憂いていると昨日のニュースで聞いて、胸を痛めた。そんな0年代の初頭に本作品が描かれ、国が企画する大きな賞を受賞したことで広く流通され、国中のたくさんの人達の手に渡り、映画化も決まった。このことは、単なるマンガシーンのみならず、日本の歴史にとって、とても重要なことだと、わたしは思っている。
 上手に息が出来ないような程涙が止まらなくなってしまうから、そんなに頻繁に気軽に手に取ることが出来ないけれど、大切に大切にこの先のわたしの日々の中で、折に触れ、ページを繰り、わたしがこれから出会うやも知れない自分の子供に、その次の子供に伝わるように、して往きたいと願う。
 きっとこうの氏は、世の中で、この作品を成すために、今、の日本でマンガ家になられたのではないか、て思う。それくらい、わたしにとって宝物の一冊になった。心底、アリガトウ。

UPJ3プレイベント●第五弾in東京
”昼下がりの言葉たちへVol.1@渋谷区上原中学校ランチルーム
http://www.upj.jp/
日時:'05年日時:8月6日(土)(終了)
会場:渋谷区立上原中学校・ランチルーム
料金:無料
進行:馬野 幹×佐藤yuupopic
内容:※UPJ3当日出演者選考は行いません。
8月3日〜6日(土)まで中学校のランチルームを開放して催される古本カフェイベント最終日に、UPJ3協力のオープンマイクを実施。ゲストによる”本”にまつわるお話とリーディング、とワークショップスタイルを取り入れたオープンマイクの二部構成。※オープンマイクの他にも、期間中には様々な催しが行われます。
【一部・本にまつわる話+リーディング】
出演者(敬称略・五十音順 ※出演順とは不同)
近藤洋一(ゲスト・鉄腕ポエム主催)/佐藤yuupopic(UPJ3スタッフ)/ジュテーム北村(ゲスト・生涯1オープンマイカー)/馬野 幹(UPJ3スタッフ)/ゆとりのある(UPJ3スタッフ)
【二部・ワークショップ+オープンマイク】
三つのテーマの中から一〜三つ選び、実際にその場で詩を描き(制限時間:30分)それをリーディングするというワークショップ形式のオープンマイク。
 1.渋谷
 2.禁煙
 3.宇宙

05/8/8/YUUPOPIC
                                       

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