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森羅万象
読書虫のための文芸事情
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【越冬こあらさんの場合】別役実著『淋しいおさかな』別役実童話集

▲別役実著『淋しいおさかな』別役実童話集( 三一書房)

▲『雨が空から降れば』収録の小室等ファーストアルバム
(画像表示で大きな写真がご覧になれます)
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| 越冬こあらを名乗って以来「こあら的」な文章を書いている。「こあら的」である事には、飽き飽きすることもあるが、魅力を再発見する点もあり、模倣を試みることもある。そんな「こあら的」な文章への目覚めには、この一冊が大いに関与している。
別役実著『淋しいおさかな』別役実童話集
「淋しさ」を理解できない小さな女の子が「淋しいおさかな」を救う為の遠い旅の果てに、捜していた「おさかな」の不在を知り、本当の「淋しさ」を体感する……不思議な表題作他二十二編の童話集。
テレビの幼児番組で、それまで放送してきた既存の民話からの路線変更として依頼され、創作された現代童話。創作にあたって、作者には「田舎は神様がお創りになりました。都市は人間が創りました」というパターンだけがあったそうだ。
フォークソングに憧れたギター片手の学生時代、小室等さんの唄が好きになり、氏の代表作『雨が空から降れば』の作詞者として別役実さんを知った。その頃から、演劇にも興味を抱き、別役実さんの難解な戯曲に挑戦し、何度も敗北した後、図書館の片隅でこの童話集に出会った。
平易な言葉で淡々と語られる街の話は、表題作のようなメルヘンだけでなく、ある日突然、スパイにされてしまうという(突拍子もない)小さな事件が主人公の心を揺さぶる秘密主義へのアイロニー【みんなスパイ】、勤勉で働き者の親子が、街の汚染を顧みずに新製品の開発に打ち込む、環境汚染への警鐘【工場のある街】、穴を掘ることで見事な団結を見せる市民たちに、次の目標を与えなければならない指導者の苦悩【穴のある街】、世にも不思議なセツナイ商売の継承劇【ふな屋】、街から始まるSF【白いロケットがおりた街】……そして、人生の意味を探り、業と無常が易しく語られる【一軒の家・一本の木・一人の息子】等、ユニークで深みのある話ばかりだ。
今回、この原稿を書く為、図書館から借りてきて再読した。独得の面白さに再び感動するとともに、三無主義を気取って背伸びしていた当時の自分の外面とは裏腹に、内側に秘めていた創作への情熱を思い出した。つまり、私の創作は、ここいら辺りを原点とし、同時にここいら辺りを目指していると再確認した。そんなこんなで、またまた思いを新たにし、創作に向かいたいと真摯に思う冬の夕暮れなのだった。
05/2/26/ETTO KOARA
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