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あなたが目覚めた、この一冊!

葱さんの場合】三田誠広著『デイドリーム・ビリーバー』(トレヴィル)


『デイドリーム・ビリーバー』1988年 トレヴィル/リブロポート社
私にとっての最大の作品。代表作。UFOとの交信を求める若者たちが、巨大宗教 教団と闘うことになる、というSF仕立ての作品で、これを書くのに他の仕事を断って 集中したため、経済的なピンチに陥った。作品もまったく評判にならなかった。しか し、この作品を書くことによって、自分が偉大な作家であることを確認した。その意 味では貴重なステップになった作品。
(『天気の好い日は小説を書こう』三田誠広著 三田誠広自身による解説より抜粋)


▲三田誠広著『デイドリーム・ビリーバー』は「復刻ドットコム」で復刊リクエスト投票を受けつけています。


三田誠広著『空海』(作品社)
 

 正直に言って、漫画やアニメやゲームに多くの影響を受けてしまっている僕にとって、小説という文芸を初めて意識したのが、三田誠広著『デイドリーム・ビリーバー』という本でした。
 この本を読んだ当時、僕は浪人生で、九州の実家にいて、祖母と小父と三人暮らしという環境のなかにいました。父親は仕事の都合で、母親と共に東海地方に転勤していたので、本当は僕もついていかなければならなかったのですが、僕がかなりごねて、無理やり実家にとどまっていたのです。
 しかも、仕送りを貰っていて、もう、いつ遊んでもいいし、いつご飯食べてもいいし、いつ寝てもいいし、好きなもの買えるし、いつ勉強してもいいという、ある意味最高な、とってもダメな生活を送っていました。祖母や小父は優しく、全て僕の自主性に任されていました。
 そんな時期に読んだせいか、『デイドリーム・ビリーバー』を読み返すと、今でも自分が好んで使うような言葉がたくさん出てきて、驚きました。
 多分、僕の中で価値観の再構成が行なわれていた期間だと思うのです。
 例えば、「知識を得るだけなら、本を読めばいい」などと言った教育機関を否定するようなセリフや、「名前は記号にすぎない」といった醒めたセリフ、「言葉の意味や内容でなく、言葉の響きが重要なのだ」というような行き過ぎた感覚的なものまで、いかにも自分は超越的で不可思議な存在であると印象づけたい風な自尊心が剥き出しのまま出ていて、少しお腹のあたりがむずがゆくなります。
 僕が言うのもおこがましいですが、誰がいつ読んでも面白い、という本ではない気がします。説教くさい部分もあるし、芝居がかって漫画っぽい描写も多いので、読書家の方には不向きかなあと思います。
 ただ、文章は読みやすく、象徴的で、何故か色鉛筆で描かれた童話のような純粋さを僕は感じてしまいます。十代のうちに間に合ったというのもあって、特別な印象があります。
 とりわけ登場人物の一人である、新興宗教『エーテル教会』を主宰する白い服の男が、自分の生きる意味についてハッキリと名言している様に驚いたことを覚えています。今読むと、なんだか教祖らしいキャラをハッキリさせるための言葉にしか見えず、感動しませんでしたが、当時の僕は前述の通りですから、ヒマをもてあましていて、一人ごちゃごちゃと考えるのが好きでした。
 何より、答えの出ない問いに対して、真理を正確に論じる必要はなく、自分で勝手に手の届く範囲で決めつけちゃえばいいんだ、と思った瞬間でもありました。
 この本は僕にとっては、すごく消化率のいい食事だったのだと思っています。
 それが、よかったのか、悪かったのか、分かりませんけれど、大事な本です。

06/4/18/

お次は深詰さんです
                                   

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