
INDEX
■プロローグ
■7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [前編]
■7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [後編]
■7月17日:休息日 ポー [前編]
■7月17日:休息日 ポー [後編]
■7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [前編]
■7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [後編] ■7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [前編] ■7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [中編] NEW
■番外編1:クイックステップのチームバス&トラックがあら素敵〜の巻 ■番外編2:魅惑のサコッシュ美術館の巻

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 今日も、なだらかな丘陵地帯をバスは走ります。窓から見える景色は、見渡す限りのひまわり畑です。
 行けども行けども、ずっとひまわり畑。ひまわりはツールを象徴する花で、ちょうど盛りを迎えたひまわり畑を背景に選手達が走ってゆく美しい写真が、毎年何枚もWEBや新聞を飾ります。このひまわりは食用油をとるために栽培されているものだそうです。お土産に1つ買いたかったのですが、ドライブインや空港のおみやげ物屋さんでひまわり油を見かけることはありませんでした。何故だ
 バスがツールのコースに入ってから、休憩でストップしたときにバスから降りて撮った写真。これが選手の目線です。実際はカメラバイクや審判車等々が選手と一緒に走っているので、こんなに閑散としてはいないのでしょうけれども
 コースを走るようになると、沿道にツールのためにいろいろなディスプレイや観戦のための準備をしているのが見えてきます。これは、ランチの準備でしょうか。小さな椅子とテーブルが花で飾られていて、とても素敵
 沿道に停められたキャンピングカー。後ろには自転車が積んであります。キャンピングカーで旅をしながらツールのステージを追いかける、というのは、現地ではポピュラーなバカンスの過ごし方であるようです
 こちらでは、タープを張ってなにやら準備中。おそらくこの後、タープの下でランチか酒盛りが始まるのでしょう。ノリとしては、日本の花見に近いものがあるかもしれません
 通り道になっている街では、ツールを歓迎するためのオブジェがあちこちに飾られています。これは、コースに面したバルコニーに、花を添えた自転車のオブジェやフランス国旗が飾られているところ。なんともかわいらしいです
 これは……ツールには関係ないかも……。私にはグロテスクに見えるのですが、これがエスプリという奴なのでしょうか
 沿道に、子供達が描いたと思われる、ツール・ド・フランスの絵が飾られてありました。青い空の下、選手達が連なって山を越えてゆくところです。写っている部分だけでたたみ一畳ほどあり、全体では2×5mくらいの大作だったと思います(すでに記憶があやふやに……)。走るバスの中から撮ったので手ブレでボケているけど、あまりにかわいいので紹介です
 ゴール手前50mくらいの地点。この辺はいいポイントなので、私達がついたときには入り込む余地はありませんでした。この写真は13時30分ごろ撮ったもので、既に人垣が2重になっています
 表彰台のまん前は、ランス・アームストロング応援団のご一行様で既に占拠されていました。横断幕に椅子に日傘と、準備もばっちり。この方々は、始めのほうのステージでも表彰台の前に陣取っているのをテレビの中継で目撃しました。もしかして全ステージ制覇したのでしょうか
 最終的に私達が陣取ったあたりから、ゴール地点を見たところ。といっても、これはカメラのズームを効かせて撮ったのでゴールゲートがこんなに大きく写っているのです。肉眼だと遥か彼方にかすんでいてほとんど見えません(ちょっと嘘)
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7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [前編]
みなさんこんにちはカピバラです。 もうツールまで2ヶ月を切り、ツールのイタリア版ともいうべきジロ・デ・イタリアも終わってしまいましたがいかがお過ごしでしょうか。 この観戦記が2ヶ月以内に完成するかどうか非常に危うい情況となってまいりましたが、とにかくできるところまで続けようと思いますので、よろしくお付き合いくださいますようお願いいたします。
さて、今回の第17ステージ、観戦記に入る前に、一人のライダーについて書いておかなければなければなりません。 彼の名前は、エリック・ザベル*。この当時はT-モバイルチームに所属していたドイツ人スプリンターで、1996〜2001年にかけて6年連続でスプリント賞を獲得し、他にも、ミラノ〜サンレモ4勝、パリ〜ツール3勝と伝統あるワンデーレースでも輝かしい実績を残しています。2006年4月30日現在の通産勝利数192は、現在、現役で走っている選手の中では最多であります。 この選手は勝利数も多いのですが、2位の回数も多いことで有名です。2004年にスペイン版ツール、ヴェルタ・エスパーニャにザベルが出場した折り、彼が2位になるたびに、私はゴールの瞬間を捉えた写真をネットで探し出し、ガッツポーズで優勝をアピールする選手のすぐ後ろでがっかりするザベルをチェックしては、面白がったり悔しがったりしたものでありました。 これ以外にも、ぱっちりお目々の童顔で一見やさしく穏やかではあるけれど、一方で一歩間違うと嫌味になりかねないことを平気で言うという辛辣さも併せ持っており、そんなこんなでザベルは私のハートをガッツリ掴んで離さないのであります。 私の一番のお気に入り選手であるディスカバリーチャンネルの超ベテランライダー、ヴィアチェスラフ・エキモフは、2005年4月下旬に全治3ヶ月の怪我を負ったため、5月にはツールに出場しないことが決まっていました。ですので、この年に私が現地で会いたい選手No.1は、このザベルでありました。 しかし、しかしであります。今回のツールで、T-モバイルチームは、1997年のツール優勝者である自チームのエース、ヤン・ウルリッヒを勝たせることに集中するため、ツール直前にザベルの不参加を発表したのです。ザベルのようなスプリンターを勝たせるためには、それを手助けするためのアシスト選手が数人必要となる上、彼本人はエースのウルリッヒのために働くことはほとんどありません。2005年のT-モバイルはザベルを出場させないことで、チーム全員をヤンを勝たせるための選手に絞り込み、必勝体制でツールに臨むことにしたのでした。しかもそれだけではなく、チーム首脳陣がザベルに引退を促しているらしいと言う噂まで、同時に流れはじめるではありませんか。ザベルは引退かあるいは他チームに移籍か、とにかく来年はT-モバイルで走ることはまずないだろうと言う情況になっていたのであります。 このニュースが発表された7月初旬時点で、私の生ツール観戦への情熱は3割減になっていました。ツールに出場していない選手がチームメイトを応援するためにレースにひょっこり姿を現す、というのは、結構よくあることです。怪我で不出場となったエキモフは、リハビリが順調なら応援に駆けつけるかもしれません。しかしザベルの場合は、不出場の背景がアレな情況なので、チームの応援に駆けつけることは、まず無いだろうと思われたのでした。
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さて、今日はゴール地点での観戦です。第15ステージのゴール地点で観戦したときには、ゴール手前800m地点に陣取っていたため、選手のゴールシーンや表彰式の様子などは全く見ることができませんでした。そこで今回は、ゴールラインかあるいは表彰台付近に陣取り、ゴール直後の喧騒を体感しようと言う魂胆であります。
この日、選手がゴールするのは17時ごろの予定でしたが。この日はホテルから目的地が少々離れていたために、ホテルを朝の7時半に出発することに。もちろんそれ以外にも、交通渋滞や交通規制を避けるとか、少しでも早くゴール地点についてよい観戦ポイントを確保するためとかいう理由もあります。ツール期間中は、コースの付近では交通規制や渋滞が頻発するため、早めの行動が決め手となるのであります。 移動距離が長いので、途中ドライブインに寄ったりしつつ、のどかな丘陵地帯を行くことしばし。始めのうちは感動していたフランスの牧歌的な風景も、4日目となればいい加減見慣れてきたし、しかも延々代わり映えのしない景色でいささか飽きてきたかなあなどとダレてきた頃。途中でガイドさんから事態を一変させるような一言が発せられたのであります。
「ここから、バスは今日のコースになってるところを走ります」
なんと!ということは、これから見る風景は、数時間後に選手が目にするのと同じ風景なのですね!となれば、窓の外の景色がまた違う意味を持って目に映ります。もちろんバスと自転車では目の高さが違うのですから全く同じというわけにはいきませんが、あの小屋を、あの牛を、選手の人も見ることになるのねーーーー!!!と、さっきまでダレダレだったことなぞ忘れて景色に釘付けであります。 見ていると、まだ午前の10時ごろで、選手たちが通り過ぎるのはまだ何時間も先であるのに、ちらほらと観客が沿道にスタンバイしています。キャンピングカーを道端に停めている人もあれば、野原でガーデンパーティーの準備をしている人たちもいたり。小さな町を通り過ぎるときには、建物や植え込みに、ツールを歓迎するように旗や風船、オブジェなどが飾られていて、このかわいらしいことといったら、子供のお誕生日パーティーのようです。選手達が通るのはホンの一瞬なのに、それだけでこの歓迎振りです。地元の人々にツールがいかに愛されているのが、伺われます。
バスは12時頃、本日の目的地、第17ステージのゴール地点であるルヴェルの町に着きました。ここは古い町で、中世の物語に出てくるような、町の中心に広場があって回りを商店が取り囲んでいるという造りになっています。広場とはいっても1周200メートルほど、中心は、年季の入った柱が支える屋根に覆われており、ものすごく小ぢんまりとした感じです。ただ、その規模の小ささと、周囲の商店や広場を覆う屋根といった建造物がとても重厚で趣があり、本当に物語の中に迷い込んだかのような錯覚に陥ります。 がしかし、私達にはこのような情緒に浸っている暇はありません。ゴールで少しでもよい観戦ポイントを占拠するには、少しでも早くその場所にたどり着かなくてはならないのです。観光もそこそこに、速やかにゴール地点へ移動します。 ゴール地点とはいっても、どこを見るかによって占拠ポイントが違います。ゴールラインで勝負が付く瞬間を見極めるか、ゴール手前に設置されているオーロラビジョンの前に陣取ってテレビ観戦しながら選手が来るのを待つか、ゴールラインよりさらに奥側にある表彰台の前で表彰式の様子を見るか。私とダンナは、実は現場を見るまでどういう方針で観戦するか決めておらず、どの場所に陣取るかでかなりもめてしまい、結局表彰台の前にしようと決めたときには、ベストポイントはほぼ先客で埋まっていたのでした。 仕方なく私達は、表彰台の正面から少し左にそれたあたりに場所を決めます。ここなら、表彰台の上の選手を、斜めからとはいえいい感じで補足することができます。少し距離があるのが難ですが、カメラにズームも付いているし、何とかなるでしょう。 自分達の占有地であることを無言のうちに示すために、準備してあったビニールシートを、ちょっと遠慮して4つ折りくらいにして控えめに広げます。そして、シートの元々の使用目的に沿い、その上にどっかりと腰を落ち着けたのでした。 この時点で午後12時半。時間的には1日の半分が過ぎていましたが、私達の長い長い1日は、このときまだ始まったばかりだったのです。
私達が陣取ったあたりから、表彰台を見たところ。これも、ズームを効かせて撮ってます。まあ、私の3倍ズームのカメラでコレだけ写せるのだから、表彰式はなんとかきれいに写真に収めることができるに違いありません。と、このときは思っていました。このときは |
※エリック:ザベル(Erik Zabel) 1970.7.7生。昨年のツール時点ではT-モバイル所属。1992年のデビュー以来ずっとT-モバイルで走ってきたが、2005年ツールの終了直後に移籍を発表した。T-モバイルの選手として最後に走ったレース、パリ〜ツール(2005.10.9開催)では、劇的な勝利をおさめている。ザベルは1994年にも同レースで優勝しているが、これは彼がプロとして、つまりT-モバイルの選手として初めて手にしたビッグタイトルだった。ザベルは、長いT-モバイルでのキャリアを、始まりと同じレースの勝利で締めくくったのだ。現在は今年からできた新チーム「ミルラム」に移籍しており、今年こそツールへの出場が期待されている。
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次回へ続く
06/5/29
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rucktun●Edited and published by Q-nets & QSHOBOU Japan. No reproduction and republication is permitted. ●全ての無断掲載転写を禁じます
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