
INDEX
■プロローグ
■7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [前編]
■7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [後編]
■7月17日:休息日 ポー [前編]
■7月17日:休息日 ポー [後編]
■7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [前編]
■7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [後編] ■7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [前編] ■7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [中編] NEW
■番外編1:クイックステップのチームバス&トラックがあら素敵〜の巻 ■番外編2:魅惑のサコッシュ美術館の巻

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 路上駐車のおかげで、大型車は完全に立ち往生。このすぐ先がもうツールのコースになっていて、通行止め中なのです
 偶然立ち寄ることになった、Assonの街。キャラバングッズを持った観客で、コース際は大賑わいです。コース際の建物からも、ツール歓迎の垂れ幕が……と思いきや、「BONJOUR NORTHERN IRELAND」の文字。んん?北アイルランド??
 2階のバルコニーで選手が来るのをまっている親子。フランスで見かけた民家のバルコニーは、どこも花がいっぱいでした
 やっとのことで人垣の最前列に紛れ込むことができました。みんな選手が来るほうを向いて、今か今かと待ち構えています。そう、警備のおまわりさんも。でももうちょっと右側によけて欲しいなあ
 1先頭の選手がやってきました!ネットに掲載されているライブレポートを調べると、このとき先頭は2人いるはずなのですが、1人しか写真に写ってませんでした。この人は、ドミナ・バカンツェのルドウィッグ選手(ドイツ)。2006シーズンは、母国ドイツのチーム、T-モバイルで走ります
 少し遅れて第二集団。前に追いつこうと必死です。前がコフィディスのヴァスール(フランス)、後ろが、前の日にサインをくれた、ファッサボルトロのフレチャ(スペイン)
 その後からやってきた、大集団。両側に建物が迫る狭い路地に、高速で吸い込まれていきます
 さらにその後をバイクで追いかける、テレビカメラのクルー。彼らもプロ中のプロです
 黄色いジャージのランス・アームストロングがやってきました!前方は、チームメイトがしっかりガードしています。みんなランスが見たくて柵から身を乗り出すので大変。写真も、前の人の頭越しになってしまいました
 沿道の観客の声援を受けながら走り抜けてゆく選手。写真撮影をギブアップして応援に専念する私がどこかに写っています……
 いやあ、終わった終わった〜。最後の選手とレース関係車両が通り過ぎると、速やかに柵は撤去され、観客もそれぞれ散っていきます。そのすばやいことといったら!
 ツールに出場している選手に向けた道路標識。「この先、幅員減少」のサインです。プラスチック製のダンボールのような軽くて丈夫な素材でできています
 その標識を持ち帰ろうとしているツアーの某さん。使用済みの看板は、こうして持ち帰ってもいいことになってます……ってホントに?でも、おまわりさんに一言断ってから取り外したそうです。他の街では標識をはずそうとしてたら地元の人が手伝ってくれたんだよ、というのは、やはりツアーに参加されてた別の方のお話
 みんながバスに戻ったのを確認して、ホテルまでの移動を再開です。先ほどのコースを横切るときに窓の外を見てみると、もう誰もいなくなっていました。ほんの十数分前までは、人ごみで大変だったのに。きっと、普段はこんな静かな街なんでしょうね
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7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [後編]
午後3時過ぎに、バスはBellie村を出発したのでした。
帰りは、観戦していた人たちの車が一斉に移動するので、行きに比べるとどうしても道が混みます。ので、来るときには1時間の道のりだったけれど、帰りはたぶんその倍かそれ以上。まあでも午後3時だし、わりと早めにホテルにつけるんじゃないのかねえ……とその日の夕食のことなど考えつつバスに乗っていたところ。どうしたことか、途中で車がどんどん混んできて、挙句の果てに全く動かなくなってしまいました。 それも、ただ渋滞しているのというのではなく。道の両脇に車がびっちりと路駐してあって、私達が乗ったツアーバスのような大型車両が通るのも難しいような情況になっているのであります。 のんきに座っている私などとはうらはらに、添乗員さんや運転手さんは、窓から顔を出して周りの人に何があったのか聞いて回ったり、バスを降りて外に様子を見に行ったり。状況の把握と渋滞地獄からの脱出に尽力されているのが、こちらにも痛いほど伝わります。
そしてついに、添乗員さんから最終通告がなされたのでした。
「この先がツールのコースになっているんですが、これから選手が来るので、いま通行止めになっていてこれ以上進めません。仕方が無いので……ここで観戦していきましょう!」
きゃーーーー!
なんという幸運でありましょうか。 予定では、選手が通過した後に通るはずだったこの町に、ツアーバスは選手よりも早く到着してしまったのです。しかも、バスが立ち往生した場所は、コースまで歩いて5分もかからないほどのものすごい至近距離です。昨日のホテルめぐりでマキュアンと遭遇した時の幸運は、依然ツアー一行に宿っているようです。
そのとき観戦することになったのは、Assonの街。ちょっとした市街地で、2〜3階建てほどの石造りの建物が、狭い道を挟んで並んでいます。人ごみも結構なもので、コースの両側には観客の壁がすでに4重5重にできています。もうキャラバンは通った後らしく、みんなキャラバンが撒いていったグッズを身につけたり手に持っているのでした。 既に観戦ポイントを吟味するほどの余裕はなかったものの、私がどうにかもぐりこめた場所はちょうどゆるいカーブのインコースで、選手がやってくるのも走り去るのも良く見える位置です。もちろん良く見えるとはいっても前に障害物があると見えないわけで、背の低い私は、人の壁の薄いところを選びつつ前のほうにジワジワ移動し、なんとか最前列までたどり着きました。ダンナはいつの間にかコースを渡って、コースの反対側で人垣にまぎれています。ぬかりなくカーブのアウトコース側を確保した模様です。
立ち位置が決まった時刻は午後4時ごろ。選手が来るまで少し間がありそうだったので、街や観客の様子をカメラに収めたりして過ごします。市街といっても、関東で言うところの常磐線北柏駅周辺を髣髴とさせる町並みで、いやつまり、郊外の各駅停車しか止まらない駅の雰囲気を表現したいのですが、まあそんな感じで観客もどことなくのんびりしています。少し後ろのほうからおじさん二人がイタリア語で話すのが聞こえてきて、その喧嘩してるような勢いが周りの空気とかみ合っていなくて、それがよけいのどかな雰囲気をかもし出しています。 それでも、10分もすると、なんとなく空気が張り詰めてくるのがわかるのでした。先頭の選手が近づいてくるあの空気です。補給ポイントでの失敗を繰り返さぬよう、頭の中でシミュレートしてみます。ここはさっきよりも道幅が狭いから、あまり近くまで引っ張ると選手がファインダーに納まりきらないとか。さっきみたいに連射モードにすると最初にピントが合わないとずっとボケたままになるから、ノーマルモードで撮ったほうがいいだろうとか。工事現場用のごつい愛機のモードを調整して構えると、やがて歓声と拍手が近づいてきました。この辺の間合いには慣れてきたのでもう焦りません。
よっしゃ。 来た!
――――――!!!
手を触れられるほどの至近距離を選手が通過していきます。ものすごいスピードです。 先行の2名、続いて数名の選手が通り。ここまでが第一集団で選手の流れは一度切れます。
こんなに近いのに、カメラを構えていると、選手のジャージすら確認することすらできません。デジカメの画像をみると、どうやら今の集団の中にファッサボルトロの選手が一名いて、状況的には昨日サインをくれたフレチャだと思うのですが、目の前を通ったのに応援どころか生で見ることすらできませんでした。
そしてやってくる第二集団。
先ほどよりもたくさんの選手達が、どんどん通り過ぎてゆきます。 歓声の中、私は必死でシャッターを押し続け。 ふとカメラの液晶画面から目を離すと。
黄色ジャージのランス・アームストロングと彼のチームメイトたちが、私の目の前を通り過ぎてゆくではありませんか。
私ときたら、カメラに必死になるあまり、一番目立つ黄色ジャージすらも見逃してしまっていたのです。 ダメじゃん。 こんな近くを選手が通るのに、生で見なくてどうするよ。 街の人たちと一緒に応援しなくてどうするよ。
私は決めました。 もう今日は写真とらなくていいや。
いきなり開き直った私は、集団がやってくる気配がしても、もうカメラの電源は入れませんでした。
選手は次々やってきます。
沿道の町の人たちと一緒に、拍手を送りつつ、選手の動きにあわせて首を左右に振りつつ、発音なんか全然なってないけれど「アレ!アレ!」と声援を送り。特別なジャージは着てなくても、誰だかわかった選手は名前を大声で呼んでみたり。
そうだよなあ応援するのってこういうことだよなあ。としみじみと思ったりしながら、最後尾の選手が通り過ぎるのを見送ったのでした。
うん、今日はこれでよかった。幸運にも天から授かった観戦ポイントだったし。そんなに躍起になって写真にだけこだわってもしょうがないし。そもそも、あんな至近距離で高速移動する物体をカメラに納めるなんて、私の腕と反射神経では無理な話だったのだし。 それより、地元の人みたいに応援するほうがずっと身になったに違いありません。走る選手に集中すれば私だって選手を見分けられることも確認できたし。というか、こんな風に損得勘定でいろいろ考えてしまうのがそもそも下らないのかな?
どんなに努力したって、ヒト一人にできることには限りがあります。初めてのフランスで、初めてのツールで、欲しいものをみんなゲッツしようというのはまた無理な話なわけで。それ以前に何を何処までできるのかすらも、今の私にはわからないでいるのです。
だったら、何ができるか、何をしたいか見つけて帰るだけで、今の私には十分ではありませんか。チャンスがあれば、再びツールに来ることはできるのです。
自分が一番したいことを見つけよう。でも、必死に探すことは無くて。全てが終ってから振り返ってもいいのだから、今は、いろんな人や物に出会って、それを忘れないでおこう。それで、後からゆっくり考えればいいや。
などと、夕暮れと呼ぶにはまだ早いAssonの街で、一気に肩の力が抜けた私なのであります。
<追記> しかし結局のところ、時を経た今、あのときを思い出すよすがとなるのは写真やグッズだったりするわけです。実は、私が写真撮影を放棄して応援していたとき、向い側でダンナが写真を撮りつづけていてくれたのでありまして。この写真が無ければ、もしかしたらこの観戦記は書けていなかったかもしれません。ありがとうMYダンナ。
そして前方は、車の列、列、列……。ツール期間中は、フランスの至るところでこういう渋滞が発生するのでしょう。ひたすら忍耐であります |
06/1/31
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rucktun●Edited and published by Q-nets & QSHOBOU Japan. No reproduction and republication is permitted. ●全ての無断掲載転写を禁じます
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