INDEX
プロローグ
7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [前編]
7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [後編]
7月17日:休息日 ポー [前編]
7月17日:休息日 ポー [後編]
7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [前編]
7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [後編] 
7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [前編] 
7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [中編] NEW
番外編1:クイックステップのチームバス&トラックがあら素敵〜の巻
番外編2:魅惑のサコッシュ美術館の巻

エウスカルテルは、郊外にあるコテージ風のホテルにご宿泊。なかなかいい雰囲気です。ダヴィタモン・ロットのホテルも、こんな感じのコテージ風ホテルでした


みんなにお酒をふるまうエウスカルテルのスタッフ。チームカラーはバスクの色と同じオレンジです。なので、チームのバスや車、自転車、チームジャージもみんなオレンジ色。スタッフが着ているTシャツまでがオレンジ色です


こちらは、ダヴィタモン・ロットの宿泊先。ホテルの入り口のドまん前に、機材バスが停まってます。奥のほうではメカニックが作業中です


私のノートにサインをするカデル・エヴァンス。眉間の皺が泣かせます。お疲れのところご署名いただき、あいすいません。Webの写真やテレビ中継で見知ってたエヴァンスは眉毛太くてごつい印象でしたが、実際は意外と華奢で小柄な人でした。実はこれ、記念すべき私の初サインゲットなのであります


選手の自転車をメンテナンスするメカニックの兄さんたち。こんな風にざばざば水かけて自転車を洗うんですね。ちょっとびっくりしました


チームのエース選手、ロビー・マキュアンが登場。テラスで始まった取材をみんなで撮影&見物です。もちろん、この後にあわよくばサインゲット!という思惑もありありです


取材後、とても気さくにファンサービスにいそしむマキュアン。両手に花で、ちょっと役得だったり。右後ろのご夫婦の「次は私たちよ!」といわんばかりの期待に満ち溢れた表情がほほえましいです


私もマキュアンと記念撮影。左肩にはなんとロビー様の手が!きゃー!そして見えませんが、私もちゃっかりとマキュアンの腰に手を回しているのです。でへへ〜






7月17日:休息日 ポー [前編]

 今日はレースはお休み。ツール・ド・フランスには、21ステージあるレースの間に、このような休息日が2回設けられています。この日は2回目の休息日です。もっとも、選手やチームとは違い、私たちツール追っかけ組はゆっくり休息している余裕などなく。むしろこの日は、オフのリラックスした選手達に遭遇できる大チャンスですから、アグレッシブに動き回らなくてはなりません。本日は「チーム宿泊ホテルめぐりツアー」に参加して、オフタイムの選手やスタッフの様子を余すところなくチェック、あわよくばサインをゲットするべく、やる気満々であります。
 ……と気合は入るものの、さすがに前日、ハードな行程をこなした後です。「ホテルめぐりツアー」は、出発時刻13時というゆっくりスケジュールで、たいへんありがたかったのでありました。

 <1:エウスカルテル>
 チームが宿泊しているホテルは、ポーという街の近郊に集まっています。ベテランの添乗員さん&運転手さんが、あちこちに電話をしつつ、道端の人に聞きつつ、臨機応変に行き先とルートを決めていく様は、つい見惚れてしまうほどの手際のよさです。
 最初に行くことになったのが、エウスカルテルチームのホテル。エウスカルテルはスペインのバスク地方のチームで、メインスポンサーは地元の電話会社です。選手も全員この地方の出身者という、筋金入りのご当地チームであります。私はこのチームを、密かに「ロードレース界の広島カープ」と呼んでいるのですが、さすがにカープもここまで徹底していないでしょう。
 まずはホテルのそばにバスを停めて、二人の添乗員さん――いずれも女性です――が、「団体で見学したいのだけどいい?」と、チームスタッフと交渉。そして、見事にOKをもらってきてくれました!……のはありがたいのですが、その際売り文句として、「日本から来た美女がたくさんいるわよーん」と言ったとのこと。うーん。私なんか混じってたら話が違うと怒り出すんではないだろうか。しかし、美女につられるスタッフもスタッフなわけだし、あまり気にしないでここは突撃あるのみであります。
 添乗員さんの後ろからこわごわついてゆくと、スタッフが6、7人ほど、ホテルの庭先で食事をしているところでした。選手は午前中の練習から帰ってきたばかりでみんなお部屋で休憩中、とのことで、誰もおらず。選手たちがさっきまで乗っていたと思われる自転車が、機材バスの前にきちんと並べてあります。おそらくこの後、スタッフがメンテナンスをするのでしょう。
 しかしです。スタッフの皆さん、シラフに見えません。出来上がっちゃってます。いえ、単に陽気な性質であるだけかもしれませんが、とにかく、いきなりの日本人集団の訪問に尋常でなく大盛り上がりです。みんなに紙コップを渡してテーブルの上のお酒をついでくれるわ、写真は気前よく撮らせてくれるは、宣伝用のスポンサー&チーム紹介パンフレットを大量にくれるわ(1人で10冊くらいもらった人もいる)、えらい気前のよさであります。
 私もお酒を振舞われましたが、これがなんだか不思議な味なのです。見かけは赤ワインなのに、何か甘くてスパイシーな風味。お酒をついでくれたスタッフの人に、「これはサングリアか?」と片言の英語で聞いてみました。「違う」と言われたところまではわかりましたが、その先がちんぷんかんぷんです。あまり英語らしく聞こえなかったので、スペイン語か、もしかするとバスクの言葉だったのかもしれません。ワケがわからないので困ったなーという顔をしていると、どうも向こうも困惑した表情であります。こういうときはアレです、ボディーランゲージです。紙コップの酒を飲み干して、にっこり笑って親指を立てて「グッ!」のサインです。どうやら通じたらしくて、向こうも同じサインを返してくれ――たかどうかは実は忘れてしまったのですが笑い返してくれたので、私がお酒を振舞われて喜んでいたことはわかってくれたのだと信じたいです。
 それにしても、あのシラフとは思えないナチュラルハイトリップなスタッフたちは、あの後ちゃんとメンテナンスをしたのでしょうか。エウスカルテルチームは今年はあまり目立った活躍がなくてぱっとしないのに、あんなんで大丈夫かいな。と心配になる私でした。まあでも、あの場のチームの雰囲気はとてもハッピーだったし、それが何よりかもしれません。これからのレースで大いに活躍することを祈ります。


 <2:ダヴィタモン・ロット>
 次のお邪魔先は、ダヴィタモン・ロット。製薬会社(ダヴィタモン)とくじ屋(ロット)がメインスポンサーの、ベルギーのチームです。でもってかなりの強豪どころであります。
 例によってみんなの後ろから恐々ついていった私ですが、ホテルの入口に到着する前にいきなり選手と遭遇。オージーライダー、カデル・エヴァンスです。が、隣の人に「あれってエヴァンスだよ」と言われるまで、誰だかわかりませんでした。それどころか、その人が選手であることもわからないという始末です。そもそも私は、普段から人の顔と名前を覚えるのがめっぽう苦手で、仕事でも、2週間前に会ったはずのクライアント様に「初めまして」と言って場の空気を凍りつかせたという前科もあるくらいで。テレビや写真で見ただけの西洋人をいきなり目の当たりにして誰だか見分ける、などという離れ技は、私には所詮無理なのでありました。このときは本当に、ツアーでよかった、周りに選手が誰だか教えてくれる人がいてくれてよかった、と、強く思った次第であります。
 さて、お疲れのせいか表情のさえないエヴァンス選手からむリやりサインをゲットした後は、いよいよホテル入口です。門の前に機材トラックが停まっており、2人のメカニックが黙々と自転車をメンテナンスしています。エウスカルテルとはえらい違いです。ベルギーというお国柄のせいかも、と思いましたが、エウスカルテルと違い、このチームは選手の出身を地元に限定してませんから、というかむしろそれが普通なのですが、スタッフもベルギー人とは限らないわけです。とにかく、居並ぶファンに愛想をまくでもなく、だからといって露骨に無視するわけでもなく、着々と作業を進めています。
 その仕事っぷりや、並べられた選手たちの自転車に見惚れていると、何やらホテル入口のテラスで選手がテレビカメラとキャスターを前に取材を受けている様子。どうやら、このチームのエース、オージースプリンターのロビー・マキュアンであるようです(このときもそばの人に教えてもらいましたが、彼は大きめのサングラスをかけていたので、わかるほうがすごいと思う)。
 このマキュアンという選手、誰もが認める世界最速の自転車選手の一人で現オーストラリアチャンピオン、この時点で今期既に18勝、今ツールでも3勝をあげているすごい人なのですが、それよりもラフプレイで有名でして。ゴール前で高速スプリントしている選手集団の中でコースを斜めに走行するなんてあたりまえ(他の選手の進路の妨げになり、落車の原因にもなるので大変危険です)。自分の進路を確保するために他選手を小突くのも日常茶飯事。特に今年のツール第3ステージでは、ゴールスプリントの際に隣にいた別チームの選手にガシガシ頭突きを食らわすというパフォーマンスで、レースウォッチャーを大いに沸かせてくれています(彼はこのために、3位でゴールしたのに186位に降格というペナルティをくらってしまいました)。
 そんな花形悪役レーサー、マキュアンがほんの数メートル先にいるのです。これを逃す手はありませんぜ。とばかりに、その場にいた人々の大半がテラス付近に集結し、遠巻きにしながらマキュアンの取材風景をカメラに収めていますと。なんと、取材を終えたマキュアンがこちらにやってくるではありませんか。さっきのエヴァンスはお疲れ気味だったし今の相手は名高い悪役レーサーだしで一瞬怯んだ私でしたが、見ていると彼はたいへん気前よくサイン攻勢に応じています。ここは私ももらうしか! と意を決して突撃し、もらいましたよマキュアンのサイン! いやあ、これは家宝なんかにしないで墓場まで一緒にもっていきます絶対に。
 などと一人で盛り上がりつつ、立ち去りがたい気持ちでその場をうろうろしていると、今度はなんと、マキュアンとファンの記念撮影大会が始まったじゃないですか! 私も当然、再アターック。ツーショットで写真も撮って、握手までしてしまいましたですよ! うわーーーーー、この先、一生右手を洗えません!(とか言いつつ、その日の夜にあっさり洗った)
 あの場には、私たちツアーの人々も含めて50人ばかしのファンがうろうろしており、ほぼ全員が彼にサインと記念撮影を求めたはずです。その誰に対しても、きちんとサインをし、にこやかに写真におさまるという、レースでの悪役ぶりからは全く考えられない、素晴らしくフレンドリーなお方でした。すごいですマキュアン。チームの本国ベルギーではかなりの人気者だそうで、それもうなづけます。実物に会えば、きっと誰でも好きになりますよ。
 そんなわけで、ツアーバスがホテルを後にするときには、かなりの人々がマキュアン様にハートをがっつりとわしづかみにされていたのでした。もちろん私も。




※カデル・エヴァンス(Cadel Evans)
1977.2.14生、オーストラリア出身。チーム・ダヴィタモン・ロットの選手。元々MTBの選手でワールドカップも2度制している。2001年にプロロードレーサーに転身。彼のように他の競技からロードレースに転向した選手は、実は少なくない。今期は好調で、ツールの最中も先頭集団でがんばっている展開が多く、かなり目立っていた。というのは帰国してから録画をみたのでわかったのだが。ツール後のレースでも活躍中で、8/21にドイツのステージレースで1勝をあげたところ。太い眉毛が特徴。

※※ロビー・マキュアン(Robbie McEwen)
1972.6.24生、オーストラリア出身。チーム・ダヴィタモン・ロットの選手。子供の頃はBMXをやっており、自国のジュニアチャンピオンにもなった。しかし、18歳でロードレースに転向。すぐにスプリンターとしての素質を見出される。1996年にプロになって以来、2004年までに71勝している。ツール・ド・フランスのスプリント賞を2回をはじめとする、輝かしい勝暦の持ち主である。今期は8/25の時点で23賞をマークしており、1シーズンあたりの勝ち数自己ベストを更新中。斜め走行やドつき合いなどの危険行為が多いことで有名。一方で、レース中に他のチームの選手と話しながら走っている様子もよく見かけられる。意外に気さくな人柄なのかもしれない。

■ 参考サイト
@エウスカルテル公式サイト
http://www.fundacioneuskadi.com/asp/Principal_C.asp

@ダヴィタモン・ロット公式サイト
http://www.davitamon-lotto.be/

@カデル・エヴァンス公式サイト
http://www.cadel.com.au

@ロビー・マキュアン公式サイト
http://www.mcewenrobbie.com/
奥様がベルギー人で一家全員ベルギー在住、とのことで、英語とフラマン語のバイリンガルです。当然掲示板の書き込みもバイリンガルで、ちょっと不思議な雰囲気です。

05/8/27
  


rucktun●Edited and published by Q-nets & QSHOBOU Japan.
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