INDEX
プロローグ
7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [前編]
7月16日:第15ステージ レザ・スュル・レズ〜サン・ラリ・スーラン 205.5km [後編]
7月17日:休息日 ポー [前編]
7月17日:休息日 ポー [後編]
7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [前編]
7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [後編] 
7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [前編] 
7月20日:第17ステージ ポー〜レべル 239.5km [中編] NEW
番外編1:クイックステップのチームバス&トラックがあら素敵〜の巻
番外編2:魅惑のサコッシュ美術館の巻



観戦ポイントに向かうバスの中から。なだらかな丘陵地にぽつんと立つ石造りの家が、なんとも牧歌的です。村と村の間には、こんなのどかな風景がひろがっています


Bellie村の補給コース。まだ午前10時過ぎなのであまり人はいませんが、右手前にすでにランス・アームストロングのファンがスタンバイしています。アメリカ国旗と一緒に翻っているのは、ランスの故郷、テキサスの旗です


日陰のデッキチェアに座って、のんびり選手を待つおじさん。マイヨ・ジョーヌをきたワンちゃんも一緒です。左側にちょっぴり写ってるのはおじさんが乗ってきたキャンピング・カー。こんな風に、キャンピング・カーに寝泊りしつつ、ツールを追いかけてる人もたくさんいます


アイスクリームの移動販売車。乾燥してて過ごし易いとは言ってもやっぱり暑いので、アイスクリームはどこでも大人気です。この日じゃないけど、私もこの販売車のアイス、食べました。「ショコラ」味のアイスは、日本のジャイアントコーンみたいに、サクサクワッフルコーン入りバニラアイスにチョコがかかっててナッツがトッピングしてあって。でもって、味もそのまんま。馴染みのある美味しさでした


12時50分頃の補給コース沿道。だいぶ人が集まってきましたが、それでもこの程度です。ゴール地点の喧騒に比べると、本当にのんびりムードであります


キャラバンに手を振る地元の子供達。MYダンナが隣のおじさんにキャラバングッズを譲ったら、おじさんはこの子供達にそれをあげていました。この子達のお父さんだったみたいです。後ろの建物は、郵便局。郵便局にしておくにはもったいないほどの可愛らしさです


ゲロルシュタイナーのスタッフ。左手に千なり瓢箪のようにたくさん下げてる袋が、サコッシュです。ドリンクの入ったボトルや食べ物が、パンパンに詰まってます。左のおじさんが「おおっ」という表情でサコッシュを見下ろしています


サコッシュを持って選手を待つ、ドミナ・バカンツェ*(左の赤い帽子の人)とクイック・ステップ(真中の青い袋を持った人)のスタッフ。一人のスタッフが参加選手全員分のサコッシュを渡すのではなく、何人かで手分けして渡します。袋の中身は全部おんなじ。選手の個体識別をしながら渡している余裕は無いので、選手別にサコッシュを作り分けたりしない……そうなのですが、ランス・アームストロングぐらいの選手だったら、もしかしらたその人専用のスペシャル・サコッシュがあるかもしれません


走りながらサコッシュの中身を取り出そうとする、クレディ・アグリコル*の選手。あの長い取っ手部分を、肩から斜めがけしています。でもって、選手のスピードにピントが合わずにボケボケ写真になってます。袋の中をごそごそしながらも、かなりのスピードで走っているのだから驚きです


サコッシュを斜めがけにして走る選手達。後ろでは、さっきのゲロルシュタイナーのおじさんが、選手が取りやすいようにサコッシュを手から下げています


たまにはツールらしい写真を、ということで、ランス・アームストロングとウルリッヒのライバル対決の図。勝負とは直接関係無いようなこんなコースの途中でも、ウルリッヒはランスをバッチリマークしています。例によってピンボケなんですが、縮小するとあまりピントが合ってないのが気になりませんね。と思っているのは私だけだったり


マキュアン様(後)とチームメイト(前)。マキュアン様はサコッシュを持っていますが、前の選手は持ってません。サコッシュの受け取りに失敗して落車でもすると、すぐ後ろのエースを巻き込んでしまうため、前の選手はサコッシュを受け取らなかったようです


選手が通過すると、観客はすぐに移動開始。沿道からはあっという間に人がいなくなってしまいました

※Bellie村
なんて読むのかどなたか教えてください。ベリエ村?でいいのかしらん。

※ドミナ・バカンツェ(Domina Vacanze)
イタリアのチーム。スポンサーはリゾート企画会社。夕焼けを思わせる赤とオレンジの背景色にヤシの木のシルエットが浮かび上がる……という大変ロマンティックな意匠のジャージである。が、ジャージほど目立った活躍を、今年のチームはしていない。来期から、ドイツの乳飲料の会社が新たにスポンサーとして参入し「ミルラム」チームとして生まれ変わることになっている。このため、イタリア、ドイツを中心に新しい選手が大量参入、一方で現ドミナの選手の多くが放出されることになった。しかし、未だ移籍先が決まらない選手も多い。ジャージのイメージどおり、「黄昏」のチームである。
チーム公式サイト:http://www.dominavacanzeproteam.it

※写真もロクに撮れてないし
その割にたくさん写真を紹介できるのは、ひとえにMYダンナがちゃんとした写真を撮ってくれたからである。ありがとうMYダンナ。

※何一つ手にしていない自分
昨日、いろんな選手にサインをもらったりマキュアン様と写真をとったこととかは、このときはすっかり頭から抜け落ちているのだった。それほど悩みは深かったのである。

※クレディ・アグリコル(Credit Agricole)
フランスのチーム。スポンサーは、フランスの農協に当たる金融機関。今年のツールでは、このチームに所属するトール・ハスホフト(Thor Hushovt)というノルウェー選手が、スプリント賞候補となっている。「スプリント賞」とは、平地コースの途中や平地ゴールの際の着順などに設定された「スプリントポイント」と呼ばれる得点を、ツール期間中に最も多く稼いだ人に与えられる栄誉ある賞である。そのステージの開始時点で最高ポイントを稼いでいる人は、レースの最中は特別仕様の緑のジャージを着ることになっている。昨年はマキュアン様がこの賞を獲得している。で、なんでここでスプリント賞の説明を延々しているかというと、チームに対する思い入れがほとんど無いためなのであった。チームジャージの色は、スポンサーが農協なだけあって、グリーン。スプリント賞ジャージもグリーンなので、この辺だけちょっと関係が無くも無い。
チーム公式サイト:http://www.credit-agricole.fr/partenariats/cyclisme/






7月18日:第16ステージ ムレンクス〜ポー 180.5km [前編]

 昨日、生選手と第一種接近遭遇を果たしたため、まだ観戦二日目とはいえ、だいぶレースの雰囲気に慣れてまいりました。今日はもっとじっくりとレースを堪能できそうな感じです。ホテル出発時刻も午前9時過ぎと、人道的なスケジュールであります。天気は快晴。いかにも今日はいいことがありそうな滑り出しです。
 バスは、まるで書割のような佇まいの、いかにも「南フランスの田舎」といったかわいらしい村を、幾つも通り過ぎていきます。そのたびに添乗員さんが村の名や歴史的背景を教えてくれるのですが、あまりにそんなスポットが多すぎて覚えられないどころかメモも間に合わない始末です。フランスに某N局歴史大河ドラマ的な番組があっても、これならネタに尽きることは無いでしょうね。フランスの歴史、侮りがたし。そんなドライブが1時間ほど続いた後に、バスはBellie村*に到着しました。駐車場もわりとすんなり見つかり、帰りの集合時刻が伝えられると、みんな三々五々と村の各所に散ってゆくのでした。

 今日の観戦ポイントであるこのBellie村。何の変哲も無い、というより何もないこの村は、本日のステージの補給ポイントになっています。
 だいたいロードレースは午前中にスタートして夕方ゴールというスケジュールが多く、しかも選手は自転車こぎっぱなしなわけですから、昼食時じゃなくても途中で腹が減ります。ので、レースの中間地点くらいにこういった補給ポイントが設けられており、スタッフは、補給ポイントとして定められた区間で、選手に補給食を手渡すことができるようになっています。
 補給ポイント区間となる道は、安全に補給食を手渡せるようにだいたい広くてまっすぐで見晴らしがよく、しかも補給食を受け取るために選手が減速するので、レースウォッチに適しているというわけです。

 しかし、補給ポイント観戦の真のお楽しみは別にあります。

 選手のための補給食は、A4サイズ横くらいの大きさの布袋に長い紐がついた簡素な肩掛けカバンに、ぎっちりと詰められて渡されます。この肩掛けカバンは「サコッシュ」と呼ばれていて、各チームのロゴマークやチームカラーが印刷されており、簡素ながらもなかなか愛らしい代物です。選手達はサコッシュを受け取ると、中に詰めてある食料の中から自分の好きなものだけを選んでサイクルジャージの背中のポケットに収納。用の済んだサコッシュ(残りの食料入り)は、ぽーん!と道端に投げてしまうのです。
 そんなサコッシュを拾って貴重なレースグッズとしてコレクションするとともに、村の美化と環境保全に貢献することが、補給ポイントで観戦する観客の務めであるのです。(←それはちょっと違う)

 そういうわけで、ツアー参加者の大半の人々は、お目当てのチームのサコッシュゲッツの野望を胸に、サコッシュが投げ捨てられるであろう補給ポイント区間が終るあたりに移動して行ったのでした。

 かく言う私の今回のテーマは、サコッシュ本体ではなく、それを選手に手渡すスタッフの様子を観察し写真に撮る、です。普通ならテレビに映らないような裏方さんたちの活躍ぶりを、この機会にぜひ知ろうじゃないか、というわけです。そこで、サコッシュ手渡し係のスタッフが来るようなポイント、つまり、道幅が広くてかつ近くに車をとめる場所があるような場所がいいに違いない!と勝手に推理し、村の中心にある郵便局の向い側に腰を据えたのであります。

 さて、観戦ポイントが決まったのが正午ジャスト。選手通過予定時刻は午後2時半。本日の待ち時間は3時間足らずで済みそうです。もちろん待ってる間に、キャラバン隊がやってきてひとしきりグッズをまいて行くし、お土産グッズや新聞+帽子の抱合せ販売、アイスクリーム引き売りなどのいろんな移動販売車も次々やってくるので退屈しません。おまけにフランスの夏というのはとても乾燥していて、こんな真夏に戸外でじっとしていても、全く汗をかかないのです。汗をかかないと何故か疲れを感じないもので、なるべく直射日光を浴びないようにしていれば、消耗しないですみます。

 そして、前回のゴール地点近くの観戦とは違って、人が少なくてのんびりしているのもいい感じです。ゴール間際では、自分が観戦するためのスペースを確保するために、必死で柵にかじりついていなければならなかったのですが、ここではそれほど人は集まってなくて、その場を離れてちょっとくらいウロウロするくらい楽にできます。前回の教訓から、観戦ポイントは一秒でも早く押さえておくべし!!と躍起になっていた私ですが、そんな気合を入れていたのがむしろ馬鹿みたいというか。移動販売車を追いかけていってグッズを購入したり、キャラバンカーがばらまくグッズを、隣で観戦していた地元のおじさんと譲り合ったりする余裕もあったのであります。

・ ・ ・ ・ ・

 お買い物も、キャラバングッズのまったりとした争奪戦もひとしきり終えて、時刻は午後2時過ぎ。予定では、30分くらいあとに選手の先頭がここを通過するというときになって、チームのサポートカーがちらほらと通るようになりました。いよいよ、補給担当のスタッフ達が沿道にスタンバイするようです。私が「ここ!」と見込んだこの観戦ポイントの周辺にも、選手達とおそろいのジャージを着たスタッフが到着。食料満載のサコッシュをいくつも持って歩いてゆきます。
 が。思ったほどたくさんのチームがやってきません。考えてみれば、参加チームは21もあるのだし、これがみんな1箇所に集結してサコッシュを渡した日には大混乱になること必至です。補給ポイントとなっている区間は大体2〜3kmあるので、防波堤に止まるカモメのように、互いに距離を置きながら均等にばらけてスタンバるというのがお約束なのでしょう。
 それでも、私のいる位置から少し手前には、ゲロルシュタイナー、クイックステップ、ドミナバカンツェ*、などのスタッフがうろうろしており、私の目論見どおりの展開になりつつあるのでした。

 ヘリコプターのヘリ音で選手が来るまでの間合いを予測しつつ、先頭を待ちます。緩いカーブのアウトコースに陣取っているし観客も少ないしで、十分見晴らしがきくはず。選手が近づいてきたらカメラをかまえてファインダーに捕らえたところを連写しまくれば!数枚は上手く撮れているかもしれない!とまあ、知識と経験がない分を推理力と物量で補うべく、脳内でぐるぐると作戦をシミュレーションしていると、いよいよヘリ音がバラバラと響いてきました。同時に、選手が近づいて来る気配が道の向こうから押し寄せてきます。

 抜かりなくデジカメの電源を入れ、シャッターに指をかけて、ファインダーになってる液晶画面と選手がやってくる方角の両方を視界の中にいれつつ、身構えること十数秒。

 来た。

 連写連写連写連写連写連!
 連写連写連写連写連写連!


 うおおおおーーー!!!

 速い!!!
 速すぎっすよ先生!!!

 補給地点でスピードが落ちるって誰が言ったんですか全然速いじゃないですか!

 いえ、確かにスピードは落ちてはいるんですが、それでも私の反射神経とカメラのシャッタースピードの適応範囲内を超えてしまってます。あああっっっと思う間に選手は過ぎてしまってるし、ファインダー越しに選手が誰だか確認することなんてほぼ無理だし。しかも、オートフォーカスなものだから、ピントが選手ではなく道の向こうの観客にあってしまってますよ。

 トホホ……。

 しかし、がっかりしたり反省してる余裕ありません。今通り過ぎて行ったのは、先頭集団を形成するホンの数名だけ。優勝候補の大物は、この後からやってくる大集団のなかにいるのです。カメラの電源を再度チェックしたら今度は身構える間も無く。

 来た!


 連写連写連写連写連写連!
 連写連写連写連写連写連!


 あああーーーー
 またピンボケだようーーー
 うおっまた来たっっっ


 連写連写連写連写連写連!
 連写連写連写連写連写連!

 (以下しばらく繰り返し)


 約10分後。最後の選手が通り過ぎて気がついてみると。
 結局私は、選手の写真を撮り続けていただけで、サコッシュを渡すスタッフの写真は撮れず(だって、選手が来ると脊髄反射で選手にカメラが向いてしまうんですよ)。それ以前にサコッシュ受け渡しの場の観察すらしておらず。

 しかも撮ったはずの選手の写真はほとんどピンボケで使い物にならず。

 昨日サインをもらったマキュアン様(←様付け)やフレチャが前を通ったはずなのにちっとも応援できなかった。というかいつ通り過ぎたのに全然気づかないというていたらくで。

 なんか、レースの現場に来てるのに、写真ばっかり撮って全然レースを楽しんで無いし、でもって写真もロクに撮れてないし*。

 何一つ手にしていない自分*にしばし呆然とするありさまなのでありましたさ……。

 集合時刻の午後3時も近いので敗北感一杯でバスに戻ると、サコッシュゲッツ組のみなさんが数々の戦利品を手にしているのでした。しかも、おとといステージ優勝したヒンカピーの投げた(と思われる)サコッシュをゲッツした方までいらっしゃるではありませんか。あまりのうらやましさに、落ち込みにさらに拍車がかかるのでした。

 私、ここまでいったい何しにきたんだろう――。
 あれー。そういえば何しにきたんだっけ――。

 ツール三日目にして、突然アイデンティティ喪失の危機を迎えた私なのであります。

ヒンカピーが投げた?サコッシュを選手のように斜めがけにして記念撮影中のYさんご夫妻。放り投げられたサコッシュを、だんな様がダイビングキャッチしたのだそうです。すごい!



05/11/9


  


rucktun●Edited and published by Q-nets & QSHOBOU Japan.
No reproduction and republication is permitted.
●全ての無断掲載転写を禁じます