ごんの株日記……その7
by ごんぱち
●三月某日『安く買え!』
あんな事になろうとは。
そう、前回の引きは、今世界を騒がせている、米国・イラク戦争開戦の事だったのです!
これにより株価は急落。一応反発して上がったものの、当初の予定に反して苦戦する米軍の影響でまた不安定に。
弩素人投資家としても、この価格変動に上手く乗れば、財を築く事すら可能かも知れません。
そう、歴史の教科書に出て来る有名な、
「暗クテオ靴ガ、見エナイワ」
「(十円札に火を点けながら)ドウダ、明ルク成ツタロウ」
という、立場になる事も可能なのです。
となると、高騰するであろう産業は、軍需、鉄鋼、そして戦後の再建のための土建屋等など。
確か三菱が戦闘機か攻撃機作ってたっけ、ええと株価は?
……全部嘘です、ごめんなさい(長すぎるボケは止めましょう)。
前回の段階で、戦争は始まってないです。
もっと別な理由の急展開です。
それはウツミ屋証券からの一通のメール。
内容は「三月末の決算期に備え、三月は株主優待狙いの買いで値上がりし易い。お奨め銘柄は云々」というもの。
――ああ、そういう考えの人、やっぱりいるんだ。
素人とはいえ、門外漢とはいえ、そういう流れは薄々感じていた。優待狙いの買いは、早い方が良い気がしていた。
だとすれば、だ。
優待狙いで今買って、上がったら三月中に売り払えば良い。売買益に比べれば、優待なんて吹けば飛ぶ様なもの。
下がったって優待貰ってウハウハ。元々資金は余分な金なのだから、上がるまで売らなければ良いだけの話。怖いのは倒産のみ。
そんな目算で、勢いに乗り買い付ける『松屋フーズ』。2320円(100株単位)で落札(取引成立の間違い)。手数料込みで233039円なり。
この前買おうとした時より、ちょっと高くなっていたが、長期展望で行けば問題ないし、上がれば極楽下がっても天界で、ほとんど困らない(そりゃ上がった方が良いに決まっているが)。
数日後、ビデオ屋のポスターに書いてあった株式コードから、興味のあった近所のビデオレンタル屋『ゲオ』の株価情報を発見。
この前見つからなかったのは、どうも「NNM(Nippon New Market)」とかいう市場だったせいらしい。
実はこのゲオという会社は、ちょっと怪しい。今年に入ってから、株価がやけに跳ね上がっている。で、今期末を境に、株式分割とやらを行うとか。それがどういう形になるのかよく分からないが。
だが、レンタル料半額という株主優待は、「物語を書くなら本を読め、暇がなければ映画を見ろ」と教わった自分には、結構な価値のある特典。
そこで、手持ち資金のほぼ全額に相当する、715000円(1株単位)で買付注文――しかし、高いな。
めでたく取引成立。
株単価が――714000円。
?
依頼した額より1000円安い。
そういう事もあるのか。
イメージとしては、
「タイムサービス、鯖切り身、百円!」
「(あれ? ママからは二百えんでうってるからっていわれたんだけど、やすいならいいや)ひとつください!」
という状態。
幸い、この坊やは正直者なので、
「ただいま、はい、おつり」
「あら、多いわね?」
「うん、やすくうってたんだ!」
という幸せな結末になるわけだ。
逆の場合を考えるが、
「二百えんでサバをいっぴきうってください」
「(あれ? 百円で売ってるんだけど、まあ高く買ってくれるなら儲けものだ)はいよ、坊や。お使いかい、偉いねぇ」
なんてやり取りはなさそう。
売り手が値段を提示する。そりゃそうか。
いわゆる引値ってのが、取引の最低単位額だそうだから、ある程度揃っており、売り手の出した額と、買い手の出す額がピッタリ一致する事もある、と。
ふむふむ。一つ利口になった。
結局、ゲオの株は714000円で取引成立。手数料込みで715029円。
混同するとえらい間違いになるので付け加えておくと、「株取引には消費税が付く」のだけど、それは手数料に付くだけ。取引額全体に掛かったら、暴利も良いところですからなぁ。
こうして買い付けたのが、アトラス(100株)、松屋フーズ(100株)、ゲオ(1株)。口座に残っている現金が1400円。全部足して201株にしかならないというのも、ちょっと笑える。最初は、株ってのはミニ株以外では、1000株1単位だとばかり思っていたのだが。
しっかし、コンピュータゲーム製作会社、ファーストフードチェーン、レンタルビデオ&TVゲーム販売会社(かな?)。
最近の浮薄な若者にバッチリターゲットを絞った産業ばかりですなぁ。ガハハハ。
いやいや、身近なものじゃないと、分からないし。鉄鋼や建設ばかりが偉いわけでもない。
地に足を付けた産業は強いと言われたところで、その「地」だって宇宙空間にプカプカ浮かんでいる、地球というマグマの雫に貼り付いたかさぶた程度の外皮に過ぎない。
自分が触れられる場所、依って立つ場所、落ち着く場所、そこが自分にゃ良いところ。
そんな訳で、私の株がこういう構成になったのは、まあ(手を叩く)、人類の根元的必然ってものでしょう。
――そして。
値上がりを期待しつつ迎えた三月。
あれも、これも、それも、全部下がる。
米国・イラク戦争に向けての緊張、開戦で。
やれやれ。
売り時のないまま、三月二十五日の年度締めを迎えた。
アトラス株は買値の495円を上回る550円辺りを推移中。「620円ぐらいで売って、一万円下ろして、酒でも呑もう」という目論見で売り付けてみたが、成立せず。もっとも概ね順調。手堅い。もっと一杯買っとけばよかった、なんて少し思うぐらい。
ゲオ株は、800000円前後を推移した後、分割が行われたらしく400000円超の値になっている。但し、四月に入るまで、こちらは分割されないらしく、1株のまま(もしも暴落してたんだったら……どうもしないけど)。
松屋フーズ株はズリズリと下がり、2100円台を推移中。明らかに買い時を誤った風だが、まあこれは長期戦か。
総計すると、資本をちょっぴり(無論、銀行の金利は遥かに)越えているわけだが、今は高い時期らしいし、四月に入ったらこれでどうなるかも分からないし、予断を許さないところである。
しっかし、初めての四月――なんていうと、初々しい新入生みたいだなぁ。
<コラム:ぼやき>
今回のタイトル、原型もなんもないなぁ……。
まあ今回に限らず、毎度毎度、こじつけもこじつけなんだけど。
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