ごんの株日記……その12

by ごんぱち



●八月某日『買い増シーン』

 第十二回です。
 一ダースです。
 一周年です。
 キリが良いので、ひとまずの最終回とします。
 株式投資にとって最後のイベントと言えば――。

 ――と、この辺は数日前までリアルに考えていた事。
 ところがどっこい、考えている通りには行かないのが人生。
 人生いろいろ。
 男もいろいろ。
 半分の人もいろいろ(女は?)。
 何が起こったかというと、ですな。

 話は前回からの続きである。
 ゲオ株の小さな変動を利用して、小銭を稼ぐごんぱちであった。
 高めに指して売り、一万円ぐらいの利益を見込んで買い直し、を続けようと思ったものの、まあ慎重過ぎた事もありなかなか売れず、20000強程度の儲けだった。
 でも、ホールドしているよりは金が手に入ったので、良かった良かった、などと思いつつ三度売り付け。
 終値500000円のところに、512000円という、やっぱり強引な指し値。
 ところが翌日。
 売れたんですな。
 終値519000円。
 実に19000円の値上がり。
 事態が把握出来ないまま、「こりゃああんまり利益を狙わない方が良いなぁ」と思い、前日安値の505000円で売り付けた。
 ところが翌日。
 ウツミ屋証券からの取引報告のメールが。
 内容は約定出来ず。
「ありゃりゃ、もっと慎重に買い付けないと駄目だったかなー」
 なんて思いつつ、YAHOO! で株価の確認をしてみたら。
 590000円。
 え?
 なに、それ。
 71000円高。
 ――なんじゃそりゃ!!

 凄い材料があったのである。
 考えてみれば、19000円値上げの段階で気づくべきだったのである。
 掲示板やら企業ニュースやらを確認した結果、ありました。好材料。
 九月三十日を権利確定日として、十一月に一株から二株への株式分割だって。
 うわー。
 前回のゲオの分割を思い出せば、分割後にどういう騰り方になるかは想像出来る。しかも、この分割は株式数を増やして、東証へ上場する条件を満たそうという意図があるらしい。
 こりゃあ……また騰るかも。
 まったくもって、まずい時に手放したものである。
 無論1株は残っているが、それだけというのも何だか。

 買い直そう。
 多少の損は仕方ない。
 必ずかどうかは分からないが、騰る可能性がとても高い。しかも、分割すれば一気に四株。気分的に面白い。
 だがしかし。
 現在の残金は転がして儲けた20000円ちょいと、ゲオ株を売った510000円のみ。
 全部引っかき集めても535000円。
 590000円の株を買える金ではない。
 値下げを待つ、という考え方もないではないが、分割が決まった、しかも拡大路線を進む企業の株が、一体どう下がるのか。
 過去のチャートを見ても、そうそう下がらない。何より、九月三十日までに買わなければ、分割の権利がない。
 だとすると、下がるのを待つよりも、騰る前にスピード勝負で買い付けるしかない。

 方法は二つ。
 金を作るか、足すか。
 即断が必要である。
 アトラス株と松屋フーズ株を売ると260000ぐらいだから、今の資金と合わせれば1株は確実に買える。
 しかし、松屋フーズは、売れば200000ぐらいになるとは言いながら、現在10000円以上の含み損のある株。この損を優待と配当でペイしようと思っている、長期保有型なのだ。
 アトラス株も、含み損が4000円ぐらいある上に、全部売っても50000円にもならない。ゲオが高騰した日には、こんな金では手が届かない。
 と、なりゃあ、足すしかない。
 現在の貯金はいつも使っている口座に700000円。こいつに、予備口座から300000足して1000000円きっかりを入れてやれば、どう騰ったって2株買える。2株足したらあんた、分割後には6株だよ(分かってるっての)。
 よし、決めた、足す!
 博打的で、人生ヤバイ感じになりつつある気もするがこっち! これぐらいやらんと面白くないでしょ(後付けの理屈)。

 ここから、いかに早くゲオ株を買うか、というスピード勝負。
 翌日、とりあえずなけなしの535000円で指しておいて、バイト先へ出社。
 あまり遅い時間に振り込んだら、口座に反映されないかも知れないので、出社前にCDのある市役所へ。
 予備口座から300000を引き出す――出す――出す――。
 あの、おねいさん?
 後ろで人が待ってるんですけど。
 機械の操作が分からない、とかですか?
 待っている。
 待っている。
 待っている。
 ……遅刻してまうわ!
 諦めて、いつもの銀行のCDへ。
 振込カードを作ってあったので、楽々振り込み。
 金額は700000円。
 高騰していなければ、どうにか2株買い増し出来る計算。まあいいか。
 で、バイト先に向かおうとすると、さっきのおねいさんが、ようやくCDから離れていた。待ってなくてよかった。

 帰宅後、買付注文のチェックチェック。
 約定出来ず。
 ふん、分かってたさ。
 535000円で買えるたぁ思ってないよーだ。
 で、終値は560000円。
 あ、30000円下がってる。
 ちょっと複雑な心境だけど、なに、騰る騰る。
 さて買付注文。
 一旦下がったとはいえ、騰り調子の株なのだから、出来るだけ早く、確実に買わなければならない。
 だとしたら値段は――。
 下手の考え休むに似たり。
 指し値は止めましょう。
 成り行きで買っちゃいましょう。
 シェフのお任せフルコースだ。何でも買っちゃえ! 金に糸目は付けんぞ、お大尽じゃ、お大尽じゃ!
 成り行き2株!
 当日限りにしか出来ません!
 ばばばんっと、注文。
 確か成り行きだと、始め値で買う事になるんだよなー。あんまり馬鹿みたいに高い額じゃないと良いんだけどなー。
 そーして翌日。
 約定出来ました。
 560000円*2株。
 手数料はやっぱり980円と消費税。安い。
 そーして現在、買値を下回る事もないが、大きく上回る事もなく推移中。
 明日はどっちだ?


 しっかし今回の取引で、細かく儲けた分があっという間に吹き飛んでしまった。
 無念。
 ホールドの方が得だった。
 これというのも、大きな材料が出るタイミングを知らなかったからではある。
 全くのランダムでもなかろうから、少しは把握せねばなぁ。
 そうすれば、一歩手前でホールド体勢に持ち込む事が出来たわけだし。そうすれば、20000円ちょいホールドより儲かった事になったわけだし。

 ところで、現在の口座の総資産は2000000円を越えている。注ぎ込んだのが1700000万だから、立派なもの。これがたった一つのゲオ株の儲けだってんだから、恐れ入る。
 ある程度まで騰ったら、優待目当てで色々なものに買い換えたいなぁ。まあ、差し当たり切符ぐらいしか思い浮かばないけど。

<学びと気付き>
 ――かつて、パチンコ好きな先輩が、「パチンコ屋では1000円札は紙屑だ」と言っていたけれど。
 株式投資にあっては、10000円も紙屑っぽい。
 もっとも、他の博打と違って資金がゼロになる事は少なくて、だからこんなに大金を注ぎ込めるわけだけど。
 いや、先日初めて懸賞金付投票券の類を買ったんですがね。
 300円分しか買わなかったんですな。
 3倍にはなったけど。
 九十パーセント当たるって言われても、10000円も注ぎ込む気にならんだろうな。

 ――株式の生殺しか、博打の即死、どっちが良いかは後の歴史家の評価を待たねばなるまい。


――続きは、次回。

――その11




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