マニエリストQのストゥディオーロ其の一静かな女マニエリストQ●感想などいただければ幸いです。


 こんな夢を見た。
 腕組みをして枕元に座っていると、仰向きに寝た女が、静かな声でもう死にますという。女は長い髪を枕に敷いて、輪郭の柔らかなうりざね顔をその中に横たえている。それで、目を瞑ったままの女の唇に、人さし指の先をあて、おまえそんなことをいうのはやめてくれ、と私はいう。小さな濡れた唇の感触が、しっとりと指につたわってくる。その指をぺろりと女の舌先がなめた。つづいて長い睫がくるんとめくれ、大きな瞳が私を凝視した。
 目が醒める。
 裸の女が私の傍らに横たわっていた。私は慌てて布団から抜け出た。女は天井をじっと見つめている。おい、きみは誰だ……返事がない。さらに問いかけようとして、寝ぼけながらもさすがに、私は死んでいる女と添い寝していたのだと気づいた。それも見知らぬ女とだ。一瞬立ち眩みを覚えたが、すかさず態勢を整え、寝るまでのことを思い出すことにした。
 昨夜は倶楽部の男ばかりのパーティだった。
 しかし、女は居た。コケティッシュなのや妖艶なのやそんなのだ。パーティの真盛りに現れた。誰もがすでにご機嫌で饒舌で、上等なワインにしたたか酔っていた頃だ。居ることは居たのだ。しかし、男だけのパーティだった。男たちは、女たちの品定めをしつつ、それぞれの批評をたれた。私の横にも長い髪の女が腰掛けていた。柔らかなうりざね顔が愛らしかった。それは私の好みだ。とくに、女の無口が好感をもたらした。私は女を肩に寄せ、ワインを幾杯もあおった。記憶はそこまでだった。
 おかしくなって笑った。女は死んでなどいるものか。はじめから生きてはいないのだ。それはPジュァリーという、特殊な素材でできた、等身大で精巧な人形なのだ。倶楽部はPジュアリー愛好家の集いだった。パーティがひけてそのまま、私はその人形を持ち帰っていたのだ。なされるがままのそれを愛おしく抱きながら昏睡したのだ。そういえば寝る前に、布団に仰向きに横たえた人形の枕元に座って、私は長い時間、人形を見つめていたような気がする。口答えしない女に話し掛けてもいた。睫をふせて横たわる女の真白な肌が、まるで死んでいるかのように思えて、もう死にます、と幻聴したのかもしれない。
 目が醒めた。
 女が隣に、目をひん剥いて死んでいた。
 私はゆっくりと布団から抜ける。うるさい女だったが、いまではまるで人形のようだ、静かな屍体に思う。首筋の醜い締め痕さえなければなのだが。


第6回仮面バトルでいただいた貴重な感想抜粋

■shinoさん
 おおっ、まずはHNにちょっとびっくりしてしまいました(笑)
 隣に居た女は、「人形」だったのか、「死体」だったのか……倒錯的な世界でした。主人公は、一体全体、うりざね顔の女に何を施したのか読者の空想に委ねている。そうですね、幻想で読ませる小説と言ったところでしょうか……ほのかなる秘密の世界に身体ごと浸らせた小説でした。

■デン助さん
 倶楽部はPジュアリー愛好家の……。なあ〜んでぇい、そんなことかい、と、読むのを止めて了っていた。
 感想くれってQが言っているので、もう一度読み直した。
 投票しねえで、悪かった、謝る。こいつあ、おもしれえよ、うめえよ、やられたぜ! 夢の話なんぞ、このくらい知恵を働かせねえとな。
 やられた〜っと一人で3分ぐらい笑ったよ。

■Hiさん
 転がされました〜。あー。とか。構造の括りだけでなく、細かい描写も、ドライブ感を損ねることなく楽しめました。「私」の性格に複雑な印象を受けたところ(夢の中ではコミカルでありどこか気弱っぽく、覚醒してなんかドライ。みたいなのです)も、お話に立体感を与えていると思います。

■灰戯さん
 最後の三文が飲み込めませんでしたが、その前までは楽しめました。短編か長編か、もっと長い枚数で読みたかったです。変態な人達の生き様が読んでみたい。

■薮野椋十さん
 肝をつぶしました。男性だけのパーティーに女性もいたのかいなんて、ぼんやり読んでいたらダ●●だったなんて。無口な訳だわ。こんな発想は常人では思いつきませんよね。

■MAOさん
 <それで、目を瞑ったままの女の唇に、人さし指の先をあて、おまえそんなことをいうのはやめてくれ、と私はいう。>
 というのが作者の味なんですなぁ。誰だか存じないけれども(笑)、ここに作者のジェントルが出る。出てる。で、その一方で女は「人形」である、という意識があるけど、これが夢というところがひとつの虚勢であるとも読める。
 面白いなぁ。作品に体当たりで向かっているものなぁ!

■古森はなさん
 二転三転する展開が、読者としてつかみきれないままに先にいかれてしまいました。
 もうちょっと字数を使って長くしたらよかったのかなぁ? と。

■うなぎさん
 エロいなぁ。w
 ただの酔っ払いかい!しかもダッ○(自主規制)っていう展開を、飽きさせずに読ませる文章はなかなか。しかもそれだけに留まらすさらなる展開をこの字数に収めてしまうとは脱帽。
 単純に楽しく読ました。細かい部分の笑いもセンスが光っている。