人間の風体なんて野菜を寄せ集めればできてしまう。それはすでに五世紀近くも生きているのだから本当なのだ。ものなんてそんなものなのだろうと僕はそのことを知った日から思うことがあってあるものを作ることにした。 ひと月が過ぎて形はできた。柔らかな曲線。溶けそうな触感。不定形。あらゆる素材の組み合わせ。そこから長く細い管が無数に突き出ている。所々金属が鈍く輝いていた。さてこれからだと満足な僕はそれをまるで可愛いペットを扱うように時々さすったり抓ったりした。舌で嘗めてもみた。檸檬のような味がして少し塩っぱくもあった。ありがたいことに無臭だった。 「大人は汚れている」僕はほくそ笑む。 さらに月日が過ぎてすべての装置が完成した。室はメインの形と作動機の周囲に僅かな隙間を残し天井まで届く無数の真空パックで埋まっていた。真空パックはメインの形と細い管で繋がってその中にはすべての必要なものが詰まっていた。 僕はテストを何度も繰り返した。空気の具合。水流の具合。物流の具合。廃棄の具合。作動機の操作具合。そして時計の具合。どれも支障がなく完璧だ。あとは決行するだけだった。 「大人は嫌いだ」呟いた。 僕は汚れた大人になりたくないと思っているところの大人だ。どうして大人はあんなにも汚れてしまうのだろう。人間は産まれると白から灰色になって真黒へと悔しくも退化してしまう。僕は黒くなりたくないと思う。真黒になる前に手を打っておきたいのだ。大人を完全に破壊したかった。 全裸になった。それからメインの形に潜り込んで寝そべった。広くも狭くもない。続いて呼吸器のマスクを顔に当てる。あとは作動機のスイッチを入れるだけだった。そうすればメインの形も密封されてすべてが作動する。 「これで僕は大人を破壊できる」 作動機が微かな音で動き始めた。少しずつ体温と同じ水が入り込んでくる。呼吸器も順調だ。時計のスイッチが入ったようだ。そして僕はふわりと水に浮いた。 すると外界の音が消えたように思えた。無音の闇にでもなったように感じた。がそれは今の僕にとってどうでもいいことだった。僕から大人の世界は消えたのだから。 「大人よさようなら」僕は目を瞑ると心のなかで呟いた。 それから逆廻転する時計の音を聞きながらゆっくりとゆっくりと眠りについた。
僕は僕の野菜の子宮のなかに浮いてどこまでもどこまでも流れた。 小さな小さな小さな虫になるまで。
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