キトラの冒険
作:ごんぱち
その47『ブリンスとカリバーンのさや』

「ダメだね」
 刑務所(けいむしょ)の所長、ビャッコのヤッコさんがきっぱりと言いました。
「だって、リンガはもうすっかりはんせいしたじゃないか」
 キトラはいっしょうけんめいです。
「それはわかってるんだけどね」
「だったらどうして」
「リンガはね、やっぱりじぶんでじぶんの力を、うまくつかえてないんだよ」
 ヤッコさんはじぶんのヒゲをぴん、とはじきます。
「たまにねぼけて、時間とかおぼうさんのかみの毛とか、おからとか、切ってることがあるんだよ」
「……ほうちょうなのにねるんだ」
「いい刃ものってのは、切りたいものだけが切れるんだ。あれじゃあ、刑務所から出すわけにはね」
「でも、わざとじゃないんでしょ?」
「キトラ、わざとじゃなくても、いけないことってのはあるんだよ。わかるだろう?」
「でもそれじゃあ、いつになっても出られないよ」
「そうなんだけど、今のままじゃまわりがあぶないし……あ」
 ヤッコさんは首をかしげます。
「ひょっとすると、あれなら、どうにか」
「なんかあるの!?」
「うん。でんせつのさやってのがあってね」
「さや? 剣をおさめる?」
「うん。さや。カリバーンのさやってのはね、いろいろものすごい力があってね。どんな刃ものでもしっくりとおさまるっていうよ」
「……なんでさやだけなの? 剣はどうなったの?」
「そうだそうだ、あれなら、ねぼけたリンガぐらいはおさめておけるかもしれない」
「ねえ、剣は」
「まあ、どこにあるか分からないのが泣きどころだけど、キトラならなんとかしらべられるだろう?」
「剣のたちばって……」

 刑務所から、キトラはキトラ運送にもどってきました。
「……カリバーンのさやでありますか」
 カモメのジョースターはうなります。
「あれって、本当にあるんでヤスか?」
 ガースはうたぐりぶかそうなかおをしています。
「む。聞いたことはあるのぅ」
 おやかたがつぶやきます。
「さすがおやかた!」
「たしか、テンノウ山ふもとの市場で、いろんなものを売っているこっとうやがあったと思ったんじゃが」
「よし、それじゃあさっそく――」
「行くのでありますか?」
「ううん、電話で聞いてみる」
 キトラは電話帳をひらきます。
「……こういうさがしもののときは、自分の足で行って、たらい回しにされるのが冒険のおやくそくじゃありやせんか?」
「しらないよ、そんなファンタジーRPGみたいなおやくそくなんて――あーもしもし?」
『はい、サワイこっとうてんです』
「すみません、まちがえました」
『ああああああっ、ちょっとちょっと! ひさしぶりなんだから、もう少しからんでくれよ、キトラくん!』
「レギュラーおちしたいっぱつキャラがなに言ってんだか」
『いっぱつなんてひどい! ほら、クワムラくんもそう言ってる』
「……じゃあ聞くけど、カリバーンのさやって知ってる?」
『おおっ、カリバーンのさや! それはでんせつのカリバーンのさやのことかい? 知っているとも』
「それじゃ、げんきで」
『って、オイ! 知ってるって言ってるだろう』
「あのさ、ぼくはカソとつきあい長いの。ウソとホラとハッタリは、だいたいわかるの」
『でもほら、トレジャーハンターのオレがいれば、なにかとやくにたつかも知れないぜ』
「どうせ、カリバーンのさやが見つかったら、またよこどりする気なんでしょ?」
『ぎくっっっ! い、いやぁ、そんんあことなはアヒよ』
 キトラは電話をきりました。
「ちゃんと役にたつじょうほうはない? おやかた」
「さりげなくキツイのぅ、社長」
 おやかたはにがわらいをします。
「おとぎばなしのレベルじゃが、カリバーンのさやは、みずうみにしずめられたという話があるのぅ」
「え? じぶんが聞いた話では、火山になげこまれたと」
「あっしは、宇宙にすてられたって聞きやした」
「……まずはおやかたを信じてみるよ」

 次の日のばん。
「カリバーンのさや?」
 ゲンブのゲンさんは、ちょっとおどろいたような顔をします。
「がはははは、そうか、そうか、そいつぁ気づかなかった。しっぱいしっぱい」
「……きおくりょくが、せいじかみたいだねぇ」
「イヤなことを言うなよ。アレだな、リンガだな?」
「うん。それがあれば、リンガを刑務所から出してもいいって」
 べつにヤッコさんはそこまで言っていません。
「そんなカンタンなもんでもないだろうが」
 さすがにゲンさんはさっしがいいです。
「まあ、手にいれるのもわるくねえやな」
「手つだってくれるの?」
「おう。おおもとは、おいらにせきにんがあるしな」
「それで、どこにあるか知ってる?」
「ああ。海だよ」
「そうなの?」
 どうもジョースターたちの話は、ぜんぜんちがったみたいです。
「カリバーンのさやは、前のもちぬしのブリテンがいなくなってから、かえらずの森のみずうみにすてられたんだが、あらしで空にまきあげられて火山におちて、噴火のいきおいで宇宙にふっとんでな、しばらくえいせいきどうをまわってたんだが、そのうちにながれ星になって海におちたんだよ」
 いや……ぜんぶ、あたっていたのでした。
「……まるで、わかておわらいゲイニンみたいだ」
 同じようなことをじぶんもしていることを、キトラは気づかないフリをしてつぶやきました。

 キトラは海に来ました。
 とおくに水平線がひろがっています。
「おおおお、海だあああああ!」
 キトラはさけんで、なみうちぎわへはしっていきます。
「わあっ、つめたいっ!」
 つめたいけれど、やさしいなみです。
 くもはまっしろに光っていて、空はまっさお。なのに、しがいせんは少なくて、ハダがいたくなることもありません。
「んーー、きれいだなぁ」
 かいがんのは、クリーム色をした砂でいっぱい。お日さまの光をところどころはんしゃして、キラキラかがやき、ちょっとふむとキュウキュウ音がします。もちろんゴミなんか、ひとつもありません。
「よしっ、およごう!」
 キトラはうわぎをぱっとぬぎすてて、そのまま――。
 ざぶん!
 クロール、イヌかき、ひらおよぎ、せおよぎ、さかだち、こしきえいほう、ともかくムチャにおよぎます。
「あーーあ、つかれた」
 海から上がったキトラは、そのまま砂の上によこになります。
 砂はヘンに体にくっついたり、耳や目に入ったりすることもなく、やさしくキトラをうけとめます。
「ふぁあああ、あーー」
 大きなあくびを一つ。キトラはねむりはじめました。
 ――目をさますと、夕方でした。
「さーてつぎはなにをしてあそぶかな」
 キトラはムダにハイテンションです。
「そうだ、砂の山をつくろう。うん、それがいい、それが」
 日がとっぷりとくれはて、キトラの砂の山がちかくに生えているヤシの木と同じぐらいになったころ。
「おうキトラ、またせたな!」
 のそのそとゲンさんがやって来ました。
「……おそいよ。いくらなんでも、おそすぎるよ」

 キトラはゲンさんのせなかにのって、海にもぐっていきます。
「いやぁ、すまねえ。ぜんそくりょくだったんだが」
「……気にしないでいいよ。ゲンさんのスピードを忘れて先に行ったぼくがわるいんだし。どうせぼくがわるいんだし。そうさ、ぼくにもう少しの思いやりがあれば、ゲンさんの牛歩戦術(ぎゅうほせんじゅつ)みたいなあゆみにあわせてあるいて、なにひとつたいくつすることもなかったのに」
「うん、そうだな。思いやりはだいじだぞ」
「ヒニク言ってるんだよ!」
「そうは言ってもキトラ、おいらの足がのろいのは、今にはじまったことじゃあないんだぞ」
「わかるけどさ」
 ゲンさんはどんどん海の中をすすんでいきます。そのスピードは、地上をあるいていたときとは大ちがいです。
「どうだ、こんどは大したスピードだろう」
「……まわりが何にも見えないし、コウラの上は空気のバリヤで水もあたらないから、スピードはわかんないよ」
 昼でも、水の中はくらいものです。まして、夜となっては、まっくら。
「なんだ、夜に目が見えないのか?」
「そういうのうりょくは、ひつようなかったし」
「そっか。それならゲンさんにまかせな」
 ゲンさんは、くちぶえをならしました。
 すると。
 青白い光の点が、ぽつ、ぽつ、ぽつとあらわれはじめました。
「な、なに?」
「よく目をこらしてみな」
 光にすけて、黒い二つのてんと、うねうねうごくほそい足。
「ホタルイカのれんちゅうに、てらしてもらったんだ」
 小さなホタルイカたちでした。
「すごいんだね、ゲンさん」
「がはは、どうってこたぁねえよ。こいつらは、友だちなんでな」
 ゲンさんが大きな声でわらうと、ホタルイカのむれは、ちょっとゆれました。
「本当にすごいよ、どうやって水のなかでくちぶえをふいたの?」
「しゃべれてるんだから、くちぶえぐらいはふけらぁ」

 ホタルイカの光が、道のようにつづきます。
「む……」
 ゲンさんがつぶやきます。
「どうしたの?」
「水のながれが、つよくなってきた」
「え? ここ、海でしょ?」
「海だって、水がながれることはある」
 ゲンさんのことばどおり、ホタルイカの道がどんどんながされてくずれていきます。
「だ、だいじょうぶなの、ゲンさん」
「まかせな。おいらは、水のことにかけちゃ」
 その時です。
 大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きな大きなものが。
 どおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああん!!
 ゲンさんにぶつかりました。
「うをぅぅっ!」
 ゲンさんはふきとばされます。
「わああっ」
 キトラはふりおとされないようにしっかり首にしがみつきます。
 でもゲンさんは首をひっこめてしまうので――。
「うわっ、うわっ、ちょっと!」
 キトラはずっぽりゲンさんのこうらに体がめりこんでしまいました。
 ゲンさんはとばされたいきおいでクルクルまわりながら、海のそこへとおちていきます。
「ちょ、ちょっとゲンさん!」
「目がまわっ、止めてくで!」
 はげしく回るゲンさんにしがみつくキトラの手は、だんだんしびれてきます。
「うわっ、わっ、ちょっと、とまって、ねえ! シャレなんないよ!」
 キトラの手がはなれそうになった時です。
 なにかやわらかいものが、ゲンさんとキトラをうけとめました。
「うわっっわわっ」
 キトラはようやく止まったゲンさんのこうらに、しっかりとしがみつきなおします。
「んー? どーうーしーたーのーー?」
 のーーーんびりした声がきこえてきました。
「あれ、ヒート?」
「あーあー、ピートーラーさーんーー
 声は……いいえ、キトラとゲンさんがぶつかった大きなものは、オニヒトデのヒートでした。
「おーひーさーしーぶーりーー、ピートーラーさーん」
「あ、うん、ひさしぶり。その、たすかったよ、ありがとう」
「おう、たすかったぜ、ヒート」
「どーうーしーたーんーでーすーかー、ピートーラーさーんー」
「あの、長くてしかたないから、よびすてでいいよ」
「そーうー?」
「でも本当にたすかったよ。あのままだったら、どうなってたか」
「ごーめーんーなーさーいー」
 と、うしろから声が聞こえて来ました。
「あ」
 キトラとゲンさんがふりむくと、こっちもヒートです。
「ちょーーとーわーきーみーしーてーたーかーらー」
「なんだ、元々ヒートのせいだったのか。おれいを言うこともなかったなぁ」
「いや、キトラ、こいつを二つにしたの、そもそもおいらたちだったし」

「ブリの王子様?」
 キトラはききかえします。
「はーいー」
 ヒートがうなずくと、大きななみができました。
「さーやーはー、ブーリーのー……」
「そっか、ブリの王子ったら、ネルソンだな。わかった、行ってみるぜ」
「あー、ちょーーっと、あーのーねー、ブーリーの」
「ありがとよっ!」
 ゲンさんは、さっさとさって行きました。
「あー、あいつと話しているといつまでつづくか分かりゃしねえ」
「うん……ちょっとね、だいぶね」
 ホタルイカにみちびかれ、キトラをのせたゲンさんは海の中におりていきます。
「なんかこわいなぁ」
 キトラは上を見ます。
 ひかりが入って来ないので、なんだか水の中にとじこめられたみたいです。
 もしもゲンさんからはなれて、水の中に出てしまったら、どんなにかいても水の上に出ることはできそうにありません。
 キトラがぶるっとふるえた時。
「見えてきたぞ」
「え?」
 ゲンさんがさすほうには、小さい光が見えました。
 いえ、どんどん光は大きくなってきます。
 どんどん大きくなって、かたちもはっきりしてきました。
「わぁ、竜宮城……じゃあないね」
「ああ、ちがうな」
 海のそこには、おしろがたっていました。
 丸っこくて、カガミみたいで、ピカピカひかっています。ちょうどミラーボールみたいでした。
「……ゲンさん」
「なんだ」
「ブリの王子様って、シュミわるいの?」
「言ってなかったか?」
「なにひとつ聞いてなかったよ」

 おしろのしょうめんも、ピカピカしています。
「目がチカチカするなぁ」
「たのもう!」
 ゲンさんが大声でさけびます。
「なにを?」
 キトラがたずねます。
「たのもう!!」
「だからなにを」
 ギィィィィィ。
 おもい、おもい音を立てて、とびらがひらきました。
「これはゲンさんがおこし下さるとはこうえいです」
 中なら、丸いわっかみたいな形のヒラメが出て来ました。
「がはは、ひさしぶりだな、ドリー。なに、かたくならなくていい」
「うわっ、ボケをながされた!」
「そちらの方は?」
「おう、この子はキトラ。おいらの友だちだ」
「さようでございますか」
 ヒラメはふかぶかとおじぎをしました。
「はじめまして、わたくし、ブリの王子、ネルソン様のおつきのタイヤヒラメのドリーともうします」
「そうか、そういうネタで来たか」
「どうかされましたか?」
「いや、こっちの話」
「それで、どういうごようですか? ゲンさん」
「おう」
「あのさ、ドリーさん」
 キトラがたずねます。
「ネルソン様って、カリバーンのさやってのを、もってる?」
「ええ、おもちでございます」
「いや、おもちじゃなくて、カリバーンのさや」
「……キトラ」
 しんこくなかおで、ゲンさんがキトラを見つめます。
「な、なにさ?」
「そのボケはあんまりだと思うぞ」
「おきゃくさまにこんなことを言うのはしつれいですが、わたくしもどうかと」
「つまんないと思うならながしてよ!」
「いや、そうなんどもなんどもながしツッコミが、ネタとしてつうようすると思われてもな」
「ええ。もうすこしくふうをしてボケていただかないと」
「なんでドリーさんまで! いいでしょ、そんなのにからまないでよ! ただのカワイイ小ネタじゃないか! はいはい、わかりました、じゃあカリバーンのさやをゆずってくれませんか、これでいいんでしょ!」
「おお、キレげいか」
「それならば、ネルソン様もきっとしょうちしてくださるでしょう」
 ドリーはほほえみます。
 でも、キトラはだまって、じっとドリーを見つめます。
「……あの? 聞こえていらっしゃいますか」
「まさか、それだけじゃないでしょ。そんなにかんたんにもらえるワケないよね。そうだよね」
「よくごぞんじで」
「ダテに二〇〇〇回も冒険してないよ」
「どういうこった? ネルソンがなにかつごうでもわるいのか?」
「見ていただくのがいちばんなのですが……」

 ぐぉぉぉぉぉぉ。ごおおおおおお。ぐぉぉぉぉ。ごおおおおお……。
「ねてるね」
「ねてやがるな」
「はい、おやすみでございます」
 そう。
 ブリの王子のネルソンは、ベッドの中で大いびきをかいてねています。
「ちょうどお休み中ですので、二年ほどおまち下さい」
「そっか。そりゃあわるい時に来ちまったなぁ。また来るよ」
「もうしわけございません」
「いいって」
「よかぁないよ!」
「は?」
「どうしたキトラ?」
「二年だよ?」
「二年だろう?」
「二年ですが?」
 あたりまえのように、ゲンさんとドリーがうなずきます。
「……そっか、ゲンさんは一〇万さいとか、そういうむちゃくちゃなとしだった」
 たしかに一〇万年も生きていれば、二年なんてあっというまにちがいありません。
「だったら、おきたあとにせつめいするから、とにかく、かしてくれない?」
「ええと、それは……」
「おいおいキトラ、そんなしつれいなことできるわけないだろう」
「じゃあ、おこすよ! だいたい、そんなに長くねてばっかりいたらいいことなんてないよ!」
「まあ、はやおきは三文のとく、ねてるてぇとソンをするとは言うが、しかし、王子をムリヤリというのは」
「いえ、それはかまいませんが」
「よーし」
 キトラはネルソンのかおに口をちかづけて――。
「あさだよおおおおおおおお!」
 ぐおおおおお。ごがががががが……。
「おきてよーーーー!」
 ぐぅぅぅぅぅ。がぁぁぁぁぁ……。
「ねえってばああああああ!」
 ネルソンはちっともおきません。
「ねえええええええ!」
 こんどはゆさぶります。
 ゆっさゆっさゆっさゆっさ。
 がごごごごごごご。ぐがががががが……。
「おきてってば!」
 ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ。
 すぅぅぅぅぅ。くかああああああ……。
「それならっ」
 キトラはへやから出ていくと――もどってきました。
「ん? フライパンとおたま?」
「あーーーさーーーだーーーよーーーーーー!」
 キトラはガンガンガンガン、フライパンをたたきます。
 ゲンさんとドリーはたまらず耳をふさぎましたが。
 すぴーーーー。すぅーーーー。すぴーーーー。
 ネルソンはぜんぜんおきません。
「おきるもの、おきるもの……そうだ、ベイリのしる!」
「みょうなもんしってるな」
「まえにカソからもらってのんだことがあってね。どっかにないかな?」
「あの、ねむっているネルソン様に、あんまりヘンなことをされると困るのですが」
「あ、あう、そう、か。えーと、うーんと、うーんとうーーーーんんと、あああああ!」
「キトラ」
 ゲンさんがぽつりと言いました。
「あきらめねえか」
「いやだよ、だって、リンガがせっかく刑務所から出られるかもしれないのに」
「どうしても思いどおりに行かねえことってのは、あるもんだ」
「だからって、これじゃリンガがかわいそうだよ。ぜったい、ひっぱたいてでも王子様をおこして……」
「キトラ。どんなにりっぱなもくてきでもな、やりかたがよくなければ、わるいことなんだよ」
「それは」
「分からんキトラじゃないだろう」
「でも」
「かえろう、キトラ」
 キトラは、ゲンさんのせなかにのりました。

 ブリのおしろがとおくになっていきます。
「べつの手だってあるさ。ぜったいにな」
 ゲンさんがつぶやきました。
「そっか……そうだね」
 大きくキトラはうなずきました。
「そうにきまってるよね。うん、さがせばいいんだ」
 キトラは、すいめんを見上げました。
 よるが明けて、すいめんは、お日さまの光がキラキラとさしこんでいました。

【おしまい】