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キトラの冒険
作:ごんぱち
その40『宇宙海賊カピタン 前編』
写真、写真、写真、星の写真です。
「すごい、星がいっぱいだ」
キトラはアルバムをめくります。
「……これが木星」
ラグヤが、めだまみたいなもようのついた星の写真をゆびさします。
「へー、くっきり見えるんだね」
「……うん。カメラもよかった」
「いいなぁ、ふーん」
キトラはラグヤの望遠鏡を見ます。
キトラの顔ぐらいある大きなレンズがついた望遠鏡です。
「……入学のおいわいにもらったけど、これほどとは思わなかった」
「ふーん、へー……ねえ」
キトラはラグヤに手をあわせます。
「ちょっとかしてくれない?」
「ダメ」
「うわっ、ラグヤなのにへんじはやっ!」
「……だいじなものは、かしかりするべきじゃないから」
「なくしたりこわしたりなんて、ぜったいしないからさぁ」
「……ダメ。ぜったいなんてことはないし、もしもそうなったら」
ラグヤはそっと望遠鏡をなでます。
「……ぼくは、キトラをぜったい、ぜったい、ぜったいゆるさないと思うから」
「は、はい……ムチャ言ってすまんです」
「……それに、かしても、こんなにキレイな写真はとれないよ」
「え?」
「……これはお母さんのいなかでとったものだからね」
「イナカ?」
「……おじいちゃんとおばあちゃんがいるとこだよ」
家にかえったキトラは、ばんごはんのあと、じぶんのへやのまどから外をながめます。
「星かぁ……」
夜空には、一つ、二つ、星があります。
でも、ラグヤの写真ほど星はありません。
「まあ、夢の世界でなら、宇宙船ももってるけど」
ためいきをつきます。
「やっぱり見たいなぁ」
「にいちゃん」
いもうとのタウラがとなりにきます。
「そとになんか、おもしろいものでもあるのか?」
「星がないんだよ」
「あるぞ? にいちゃん、ウソはよくない」
タウラは首をかしげます。
「ラグヤの写真とくらべてだよ」
「ラグヤににいちゃんがまけるのは、いつものことじゃないか」
「まけてないよ、べつに!」
「にいちゃん、しょうぎでもトランプでもTVゲームでもカードゲームでもまけてた」
「うるさい、うるさい、こどもはさっさとねなさい」
「にいちゃんだってこどもだ」
「にいちゃんは小学生だ。電車のキップだっているし、からだも大きいし、ようちえんのタウラとはぜんぜんちがうでしょ」
「にいちゃんのいじわる!」
ぶっとふくれて、タウラはへやから出ていきました。
「まったく、タウラめ、ひとがきにしていることをグサグサと」
キトラはまた夜空を見ます。
とおくの町明かりにてらされた空には、やっぱり星はちょっぴりです。
「望遠鏡があれば、もうすこし見えるのかなぁ。でも、見えないものは見えないってラグヤは言ってたしなぁ」
キトラは部屋の明かりをけします。
でも、となりの家や、むこうのビル、がいとう、車のヘッドランプなどなど、明かりが空をてらしていて、やっぱり星はあんまり見えません。
「イナカかぁ」
つぎの日の朝。
「ねえ、お母さん」
朝ごはんのトーストをかじりながら、キトラはお母さんのアスタさんにこえをかけます。
「口にものを入れてる時にしゃべるのはギョウギわるいわよ、キトラ」
「ん、ごめんなさい」
もぐもぐもぐ、ごくん。
「ねえ、お母さん」
「なに?」
「おじいちゃんと、おばあちゃんの家、こんどいつ行くの?」
「おぼん休みにでも行こうと思ってるわよ。八月ね」
お母さんはスープをのみます。
「八月ぅ?」
「どうしたんだい、キトラ。そんなにおじいちゃんとおばあちゃんにあいたいのかい?」
お父さんのナラキさんが、コーヒーをいれたポットを台所からもってきます。
「それもないわけじゃないけど、イナカに行きたいんだ」
「イナカ? どうしてだい?」
「星が見られるかな、って」
「うーん」
お父さんはマグカップにコーヒーをつぎます。
「それはムリだね」
「どうして?」
「お父さんのいなかも、お母さんのいなかも、いなかじゃないからだよ」
「へ?」
「どちらも町だから、夜に星なんて見えないんだ」
「あ」
言われてみるとそうなのです。
キトラのおじいちゃんとおばあちゃんたちの家に行ったことはありますが、町なみはキトラがすんでいるツキト町とあんまりかわらないのです。
「じゃあ、ラグヤのおじいちゃんとおばあちゃんの家に――」
「めいわくがかかるからムリだよ」
「むぅ」
キトラはだまりこんでしまいました。
(なんか、うまいほうほうはないかなぁ)
学校の図書室で、キトラは星の本をひらきます。
「ええと……」
むずかしいことがいろいろ書いてありますが、どうにかよめそうです。
「星のさがしかたは――くもっていない、明かりのすくない、ゆげなんかもないところがむいている――って、やっぱり暗くないといけないんだよねぇ」
本にはラグヤが見せてくれた写真よりもずっとくっきりした星の写真がいくつものっています。
「暗いところっていうと、トンネルの中とか、おしいれの中、それに目かくしをする――って、それじゃあ星も見えないから」
まどに目をむけます。
図書室は三階にあるので、とおくまでよく見えます。
でも家やビルがいっぱいならんでいて、やっぱり夜になっても明るそうです。
「どっか、暗いとこ……」
とおくには、山が見えます。
「うーん、なんかないかなぁ」
空にはくもが見えます。
「うーーーむ」
海は見えないみたいです。
「うーーーーん」
山が見えます。
「んーーー」
山が見えます。
「んーーーーーーー」
山が見えます。
「え?」
山が見えるんですってば!
「あ」
キトラは立ち上がります。
「そうか、山は夜には見えない、つまりまっくらだ!」
「山のぼり?」
ばんごはんのひややっこをたべながら、お父さんがききかえします。
「うん……どう、かな?」
キトラはハシをもったまま、えんりょがちにききます。
「そうだね、おもしろいかもしれないなぁ」
お父さんは、なっとうをかきまぜます。
「うん、はやおきして、おべんとうもって、山の上から『ヤッホー』とか『ヤフー』とか」
「あらあらあら、ナラキさん、うんどうなんてほとんどしないのにだいじょうぶ?」
お母さんがわらいます。
「だいじょうぶだって。ぼくはまだわかいよ、ヤングマンだ」
「YMCA?」
「ナラキ、かんげき!」
「あははは、やだ、ナラキさんったら」
「あはははは!」
(……なんか、お父さんとお母さん、またミョウなとこへ行っちゃったぞ。昭和時代のギャグなんか、ちっともわかんないよ)
キトラは、だまってえだまめをたべます。
(でもまあ、山に行けることになったから、よかったよかった――ただ、一つ気になるのは)
キトラはいなりずしを手にとります。
(どうして今日はダイズ料理ばっかりなんだろう?)
よくはれた日曜日、キトラとお父さんは山に来ていました。
「さあ、もうひといきだ」
山道をキトラとお父さんはのぼります。
「はぁ、ふぅ、ひぃーー」
キトラはあせを手でぐいっとぬぐいます。
(夢の世界とちがって、空気がヌメッとしててあついーー)
「ふぅ、ふぅ」
「キトラ、休まなくてだいじょうぶかい?」
「あと、三十分ぐらいは、へいき、はぁ」
「よーし、それならてっぺんまで行けるぞー」
山はいろんな木や草がはえていて、道には葉っぱからかわりかけの土がつもっています。
「よいしょ、よいしょ……」
キトラはどんどん、どんどんあるきます。
そして――。
木のない、パッとひらけたばしょに来ました。
「わぁ」
キトラはおもわず声をあげます。
町が、ずっと下に見えます。まわりのどっちを見ても、ここよりも高いばしょはありません。
「やったぞ、キトラ。てっぺんだ!」
「やったーー」
「ばんざーい」
「ばんざーーい」
(やった、これで星が――え?」
「あれ?」
キトラは空を見上げます。
青空に白い雲。
お日さまが高いところにあって、もうお昼みたいです。
「さあ、おべんとうにしよう。ぼくがうでをふるった自信作だよ」
「……あの、お父さん?」
「なんだい?」
「その、星が出るまでここにいる?」
「ははは、まさか。おべんとうをたべたらおりるよ、あんしんして」
「むーーー、イミないじゃん、夜じゃなきゃ、イミないじゃん」
家にかえったキトラは、ふとんの上でのびます。
「ノリツッコミにしたって、ボケがながすぎるじゃん……」
体のふだんつかわないところをうごかしたせいか、キンニクがいたみます。
「あー、やっぱり星はここからじゃあんまし見られないのかぁ」
顔だけうごかして、まどの外の夜空を見ます。
ちょっぴりの星と月。
「おっきくなったら、もうすこし星が見えるところにすみたいなぁ」
よこになったままゴロゴロころがって、ゲンさんのぬいぐるみをつかみます。
「それまでは、夢の世界の星でガマンかな」
おおきなあくびを一つ。
「宇宙船、どれぐらいできたかなぁ……はやくのりたいなぁ」
夢の世界に来たキトラが、いつものように社長室でおきると――。
「社長、社長社長! たいへんであります、たいへんであります」
目のまえにカモメのジョースターのカオがありました。
「うわっ、な、なな!?」
「おそいであります、まっていたであります!」
「ジョースター、社長室にはかってに入らないでって言ってるでしょ」
「それどころではないのであります、さあ、さあ! たいへんであります、てぇへんだであります!」
「まってってば、パジャマからきがえないと」
キトラはパジャマから、シャツとズボンにきがえて、クツをはきます。
「どうしたのさ、そんなにあわてて?」
「どうしたもこうしたもないであります」
キトラはジョースターのあとについてはしります。
「『こうしたのさ』と、はきいてないよ、べつに」
「社長、おちついてきくであります」
「キミよりはおちついてるつもりだよ」
「改造中の宇宙船が、イダテンがぬすまれたであります!」
「もうそんなことであわてるなんて、ジョースターは、まったく――って、ええええええええ!!!????」
キトラはジョースターの100ばいも大きなこえをあげ、宇宙船『イダテン』のあるドックへはしっていきました。
【おしまい】