キトラの冒険
作:ごんぱち
その31『虫とキトラ 後編』

「おおっ、ホントウにテンカイにもどって来た! こりゃしんじられん!」
 グレートビートルのイースは草原へかけだします。
「だいぶん、重かったな」
 キトラとイースをゆめのせかいにつれて来た、カメのゲンさんはちょっとつかれたカオをします。
「ありがとう、ゲンさん」
 キトラは、にがわらいをします。
「なんのなんの」
 ゲンさんはわらいながら、クビをにゅっとキトラのほうへのばします。
「そりゃいいんだがキトラ、このあとはどうする気だ?」
「まかせてよ、ぼくにかんがえがあるから」
 キトラはじぶんのむねを、ドンとたたきました。
「おお、すっかりたのもしくなったなぁ」
「まあ、ダテに300回もぼうけんしてないよ」
「300?」
 ――かたられていないぼうけんも、いっぱいあるのです。
「じゃあキトラにまかせるぜ。なにかあったらよんでくれ! いつでも超スピードでかけつけるからよ! あばよ」
 ゲンさんは、そう言うと、超スピードでかけて行きました。
 ……そのすがたが見えなくなるまで、3じかんもかかりましたが、ゲンさんとしては超スピードでした。

「……こんなところに、いったいなんのようなんじゃ?」
 イースはヘイをみあげます。
 そう、キトラはけいむしょに来ていたのです。
「中にともだちがいるんだよ」
「けいむしょにともだち……キトラ、おまえさん、そういう生き方を?」
「ち、ちがうよ! リンガはうっかりやっちゃっただけなんだって」
「いや、なにも言わんよ。ひとのムカシのことはせんさくせんことにしとるんじゃ」
「ちがうってのに!」
「「おお、キトラどの」」
 もんばんの、コマイヌのきょうだいがこえをかけます。
「なんのごようかな?」
 兄のほうのコマイヌがたずねます。
「リンガにあいに来たんだ。ちょっと、きんきゅうじたい、でね」
「もんばんとかおみしりになるほど、けいむしょに来てるなんて……」
「だからちがうってのに!」

 キトラとイースは、けいむしょの中に入ります。
 いろんな囚人が、シゴトをしています。
「まず、しょちょうのヤッコさんにあうよ」
「え? キトラ、ヤッコさんとしりあいなんか?」
「まあね。この星じゃ、ぼくはちょっとしたゆうめいじんだしー」
「ウチはしらんけど」
「それは、イースがよその星のひとだからでしょ」
 言いながら、キトラはちょっとふまんに思っていました。
(そっか、ほかの星にはしられてないんだなぁ)
「おや、キトラじゃありませんか」
 その時、囚人の一人がこえをかけてきました。
「……カソ」
 火ネズミのカソが、囚人ふくをきて、つくえをつくっています
「なに、こんどこそつかまったの?」
「ちがいますよ、見ればわかるでしょう」
「見た目は100パーセント囚人だよ」
「しつれいな。けいむしょのたいけんレポートを書くための、しゅざいですよ」
「……ムリない? そのシゴト、ちょっとムリない?」
「ムリなんて、これっぽっちもあるもんですか」
「まあいいや、ぶじにおつとめはたしてね」
「しゅっぱんされたら100冊買ってくださいね。お金あるんだから」
「やだよ、そんなにたくさん」
「ともだちでしょう?」
「100も、なにかを売りつけられたら、ともだちだったものも、ともだちじゃなくなるよ」

 キトラとイースは、しょちょうしつに来ます。
 トントン。
『だれだい』
「こんにちは、ヤッコさん。キトラです」
『おお、入りな』
 ドアをあけて中に入ると、ビャッコのヤッコさんが、パソコンにむかってシゴトをしていました。
「よっ、キトラ。ゲンキそうだね」
「うん。あのね、この人が――」
「おや、ゆくえふめいになっていた、グレイトビートルのイースさんじゃないかい?」
「はじめまして、ヤッコさん」
 イースはていねいにおじぎをします。
「えっ、ヤッコさん、イースをしってるの?」
「けいさつから聞いてたんだよ」
 ヤッコさんはポスターを見せます。
 『さがしています』のポスターに、たしかにイースの――というか、なんか虫の幼虫のかおじゃしんがありました。
「そんなのあったんだ。見かけたことがあるようなないような……」
「ありゃはずかしい、ずいぶんわかいころの写真じゃのう。これならキトラが気づかなくてもムリはない」
「……まあ、べつじんみたいだね」
「もう、お上手じゃのぅ、べつじんみたいにキレイじゃて?」
「あはは、イースさんは、グレートビートルの中でもかなりのべっぴんさんだからねぇ」
(……今さらだけど、イースって女のひとだったんだ。まあ、言われてみればツノはないけど)
「さ、て、と。ゆくえふめいしゃが見つかったんだから、れんらくしとくよ」
 ヤッコさんは、パソコンのキーをなにやらたたきます。
「はい、おしまい。それでかえりの足なんだけど、あんたの星すごくとおかったよねぇ」
「くじら星系7ばん惑星じゃ」
「そう、それなんだけど、ヤッコさん。リンガにきょりを切ってもらおうと思って来たんだけど」
「ダメ」
「だってとおいし」
「ダメ」
「イースだってすぐにかえりたいだろうし」
「ダメ」
「でも」
「ダメ」
「だって」
「ダメ」
「どうしてさ!」
「キトラ」
 ヤッコさんは、ぐいっとキトラにカオをちかづけます。
 キトラぜんぶとおなじぐらい、大きいカオで、キトラのうでぐらいのキバでした。
「イースがどうして2年もゆくえふめいになってたか、わかってるね?」
「それは、リンガが世界を切った時にうっかり――」
「そう。もしも、また切った時にうっかりだれかがベツの世界にまぎれこんだらどうする? 世界を切るっていうのは、ダイコンやブリを切るのとはワケがちがうんだよ」
「それは分かるけど……」
「まあ、どんなにとおいって言っても、1ヶ月もかからないよ。宇宙船をてはいしておいたから、それで行くといいよ」
「……それでいい? イース」
「モチロンじゃとも。なあに、2年もまったんじゃ、あと1ヶ月ぐらいどうってことない」
 イースはにっこりわらいました。
 まあ、虫のカオなので、キトラにはどんなカオをしていたのか分かりませんでしたが。
「じゃあ、ぼくがスペースポート『まで』あんないするよ」
「あー、いやキトラ。その宇宙船なんだけどねぇ」
「わーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「ちょっと人手が足りないそうで」
「わーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「てつだって」
「わーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「……なんだい、いきなり?」
「あのさあのさ、ヒトデが足りないんだったら、ヒートってのがふたりいるから」
「そのヒトデじゃないよ。まあてつだってやっておくれ。だれにでもできるカンタンなシゴトらしいから」
「そういうのが、いちばんあてにならないんだよ!」

「やあやあ、ごりようありがたいであります!」
 宇宙船『イダテン』の宇宙飛行士、カモメのジョースターが、けいれいをします。
「長旅だけど、よろしく――どうしたんじゃ、キトラ?」
 フシギそうなカオをするイースをすどおりして、キトラはジョースターにつめよります。
「ジョースター!」
「おひさしぶりであります、キトラさん」
「どーして、このオンボロがまだうごいてるのさ? ダメだよ、こんなのうごかしてちゃダメだよ、もうスクラップだよ、リコールだよ!」
「だいじょうぶであります」
「オオカミが来たぞー」
「こんどは、ヤッコさんからさいしんしきのワープ用オールを借りているであります」
 この前見たワープ用オールよりも5倍も大きなオールを見せます。
「オオカミが来たぞー」
「だから、たいへんなことなんてちっともないであります」
「オオカミが来たぞー」
「へえ、この宇宙船、超時空オールつかえるんじゃなぁ。見かけはI式みたいじゃけど?」
 キトラとはちがって、イースはかんしんしています。
「いえ、このイダテンは、もともとH式だったのでありますが、7から14ばんフレームをとりかえると、I式としてつかえるのであります。そして、H式は古いぶん、作りによゆうがあるので、ついかフレームを入れて、超時空オールにもたえられるようになっているのであります」
「ほほぅ、マニアの間でウワサじゃった、H式改とは、大したもんじゃのう」
「……なんだかしらないけど、ボロ船はボロ船じゃん」
 キトラは、ぼそっとつぶやきました。

 ギィコ、ギイコ、ギィコ……。
 星がどんどんながれていきます。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
 キトラとイースと、それにジョースターとガースが、大きなワープ用オールをこぎます。
『よーし、昼休みだ!』
 伝声管から、おやかたの声がして、4人はオールをこぐのをやめました。
「ふひー」
 キトラは、そのばであおむけになります。
「つかれたー」
「どうかんであります」
 ジョースターもイキを切らせています。
「こればっかりはタイヘンでヤス」
 ガースもあせだく。
「そうじゃろか?」
 イースだけすずしいカオをしていました。
「つかれないの?」
「そうでもないんじゃけど、これぐらいなら、な」
 ヤセガマンをしているわけでもなさそうです。
「すごいチカラだなぁ。ねえ、うでずもうしてみない?」
「ええけど?」
 キトラは、イースとむかいあって、テーブルにひじをついて、おたがいのおやゆびのねもとをつか――めないので、とりあえず手のひらを合わせて。
「はっきょーいであります、のこった!」
 ひょい。
 キトラのからだが、まよこをむいていました。そのままくるくるとんで、てんじょうまで。
「……無重力なの、わすれてた」
 無重力なので、ふんばりがきかないのです。
「テーブルかイスに足をひっかけておくと良いでヤスよ」
「そっか」
 しきりなおしです。
「はっきょーいであります、のこった!」
 くいっ。
 キトラの手は、テーブルについていました。
 なんか、キカイにねじまげられたみたいな、もうビクともしない負けかたでした。
「つ……つよい」
「つぎは自分であります」
「そのつぎはあっしが」
 ジョースターも、ガースも、あっさりまけてしまいました。
「サリスよりずっとつよい……」
「グレートビートルの中では、そんなに力のあるほうではないんじゃがのぅ」

 1週間目。
 ギィコ、ギィコ、ギィコ、ギィコ……。
 キトラも、だいぶなれてきて、リズムよくオールをうごかします。
「ジョースター」
「なんでありますか?」
 ジョースターも、オールをうごかしながらへんじをします。
「こんなエンジンもない宇宙船で、よくガマンしているね?」
「本当はあったほうがいいのでありますが、どうせ、うんどうしなければならないのはいっしょでありますし」
「そうなの?」
「無重力だと、どうしてもキンニクがおちるのであります」
「そうでヤス。りょこうなら重力のあるばしょで体をならすこともできヤスが、運送屋だとそんなヒマはないので」
「だから、エネルギーをつかわず、キンニクをたもてるオールすいしんは、宇宙船にはうってつけなのであります」
「リクツは分かったけど……」
 かべじゅうサビとキズとツギハギだらけ。キトラたちがつかっている秘密基地だって、もうすこしキレイです。
「このきたなくてボロいのはどうかなぁ」
「分からないこともないでありますが」
「さきだつものがないでヤスよ」
「お金……ねぇ」

 2週間目。
 ギィコッ、ギィコッ、ギィコッ!
 さいしょより、ずいぶんテンポがよくなっています。
 キトラのうでは、なんだかふとくなっていました。
 そりゃそうです。
 まいにち、10時間もオールをこいでいるのですから。
「なんか、ムキムキになってきた気がするんだけど……」
「おおっキトラ、ふっきんがわれているであります」
「へへへ、なんかすごいや」
 ちょっとポーズをとってみたりします。
「……でも、ジョースターたちはかわらないね?」
「トリは、もともとキンニクのかたまりでありますから、今がゲンカイであります」
「にしちゃあ力があんまりないよね」
「体が小さくてかるいんでヤスよ」
「ウチもとくにかわっておらんようじゃ」
「ふーん、いろいろあるんだね」
 どうやら、つよくなったのはキトラだけみたいです。
「ね、イース、もういっかいうでずもうしてみない?」
 ――もちろん、うでずもうは、キトラがまけました。

 3週間目。
 ギッ、コッ、ギッ、コッ!
「あー、たいくつだなぁ」
 キトラはオールをこぎながらぼやきます。
 まどの外は、ながれる星ばかりで、かわりばえがしません。
 それに、力もついてきて、オールをこぐのにもよゆうが出てきたのです。
「ねえ、ジョースター。なんか、シゲキはないの?」
「しげき、で、ありますか?」
「うん。なんか、ドキドキするようなこと」
「じゃあ、イキをとめるであります」
 キトラは言われるままに、いきをとめます。
「そのまま2分まつであります」
 10びょう……20びょう……30びょう……。
 もうくるしくてたまりません。
「ぶはっ、はぁはぁはぁ、それで?」
「ドキドキしているでありましょう?」
「ねえガース、なんかない? いつもはどうしてるの?」
「うわ、ほうちプレイでありますか!?」
「やるのうキトラ」
「……どう? ガース。たまには宇宙カイゾクとか出ないの?」
「ああ、それは出ヤス。でもおもしろくはないないと思いヤスが?」
「どこ、どこ? おそわれたこととかある? どんな宇宙カイゾク? どんな船にのってるの? 宝さがししたりとか、するの?」
「いっぺんにきかれても困りヤスが」
 こぐ手をやすめずに、ガースは話しはじめます。
「カイゾクの船は、小さなボートでヤス。それが、いくつもやって来るのでヤス」
「なんか、イメージちがうなぁ……それってどのあたりに出るの?」
「ちょうど、このへんでヤス」
「ホントウに!? うわっ、すごい、どうしよう、カイゾクとたたかうためには――」
「ただ、宇宙はひろいし、この世界にはそんなわるいことをするひとはほとんどいないでヤスからねー」

 4週間目。
 ギッ、ギッ、ギッ、ギッ、ギッ!
「宇宙カイゾク、出なかったね」
 つまらなそうに、キトラはオールをこぎます。
「出なくてよかったであります」
「まあそうだけどさぁ」
 キトラはあくびをします。
「これで、またタイクツだなぁ。そだ、ひまつぶしに、しりとりでもやらない?」
「いいでありますよ」
「そうでヤスね」
「ほぅ、しりとりはテンリョウでもあるんじゃな」
「それじゃ、しりとりの『り』から。『りす』」
「『すいか』であります」
「『カルシウム』でヤス」
「『ムシパン』じゃな」
「……イース、『ん』がついてる」
「はぁ? なんじゃそれは?」
 イースはくびをかしげます。
「え? だって、『ん』がついたよね?」
「そうでありますな」
「そうでヤス。イースのまけでヤス」
「まけってなんじゃ?」
「だって、あたまに『ん』がつくことばなんて、ないじゃない?」
「あるじゃろ、『ナス』『にく』『ねこ』とか」
「ええっ??」
 キトラがわからないのはムリもありませんが――。
 イースの星では、「な」は「んあ」、「に」は「んい」、「ね」は「んえ」というふうに書くので、「ん」からでもつづくのです。
「なんかルールがちがうみたいだね」
「そうじゃな」
「そうだ、ねえ、イースの星って、どんななの? やっぱり、しりとりみたいに、こっちとちがうのって、いっぱいあるんじゃない?」
 そうです、イースの星なんですから、どれだけフシギなことがあるかわかりません。
「そうさのう」
 その時です。
『みんな、ぎゃくふんしゃだ! いそげ!』
 おやかたの、どなりごえがしました。
「えっ、もう?」
「さあ1びょうで100万キロずれるであります、いそいでいそいで!」
 キトラたちは、いままでとはんたいがわに、オールをこぎはじめました。

 宇宙ステーションのスペースポートに、しずかに宇宙船『イダテン』がドッキングします。
 ちゃいろい星が、下に見えます。
 イースと、おみおくりのキトラは、スペースポートにおりたちました。
 スペースポートから、ロビーへむかうにつれて、重力がでてきます。
「あー、なんか体が重たい」
「そうじゃな」
 キトラとイースは、ロビーへ出ました。
 ひろびろとしたロビーには、いっぱい――。
「虫が、いっぱい……」
 イースとおんなじカタチの虫や、幼虫みたいなイモムシがいっぱいです。
「いやー、なつかしい」
(……ちょっと、きもちわるいな、これは。ゆめに出そうだ――って、これがゆめか)
 よく見ると、イモムシのほうがかずが多いみたいです。
「あのイモムシって、幼虫?」
「そうじゃよ」
「子どもが多いんだね」
「子ども? 幼虫は大人じゃよ」
「え?」
「グレートビートルは、幼虫のすがたで40年すごすんじゃよ」
「……セミがじめんの中で6年も生きるって聞いたことがあったっけ」
 キトラはキョロキョロキョロキョロ見まわします。
「あのさ、あっちで幼虫が幼虫にロープつけてサンポさせてるんだけど」
「なにを言っておるんじゃ、あれはペットのブラッドモスの幼虫じゃよ」
「イモムシをペットにするの?」
「カワイイじゃろ?」
「……いや、なんつーか」
 見なれないものばかりです。
 たてもののカタチにしても、ふにゃりとまがっていて、なにかふあんになります。
 そして、うえてある木も――。
「ねえ、イース?」
「なんじゃ?」
「どうして、みんな枯れてるの?」
「あれは枯れておるのではない、見てみぃ」
 よく見れば、葉っぱのねもとは緑色。
「幼虫の食べものにしやすいように、葉っぱはぜんぶすぐに枯れておちるように、星ぜんぶのしょくぶつをいでんしくみかえしたんじゃ」
「じ、じゃあ、この木のハダがベタベタしてるのは?」
「成虫の食べもののじゅえきが、いつも出ているようにしたんじゃ」
「シゼンがめちゃくちゃだ……」
「シゼン? グレートビートルが、ながく、しあわせにくらせるように、まわりを作りかえることの、なにがわるい?」
「えーと、どう、なのかなぁ」
 キトラには、うまくこたえられませんでした。じぶんがかんじたことが、まちがっているのか、あっているのかも、わかりませんでした。

 きどうエレベーターがとうちゃくし、ロビーにいた虫たちが、のりこみはじめました。
「もう少し話をして行きたいんじゃが、これをのがすと半日かかるんじゃ、すまんのぅ」
「ぼくがおりられたらいいんだけど、ごめんね」
 キトラはイースとあくしゅしました。
 かたくて、トゲが出てて、キトラの手とはぜんぜんちがいました。
「また来るよ、イース。この星のヘンなとこ、もっと見たいから」
「そうか。その時はあんないずるぞ」
 イースはわらいました。
 なぜだかキトラには、イースがわらったのが、分かった気がしました。
「せわになったのぅ!」
「さよなら!」
 きどうエレベーターの、大きな大きなドアがとじました。
 すっかり虫のいなくなったロビーは、がらんとしていて、やっぱりヘンなカタチをしていました。

「宇宙って、ヘンな星が、まだいっぱいあるのかなぁ」
 キトラはスペースポートにむかいます。
 スペースポートには、オンボロの宇宙船『イダテン』がとまっていました。
「それともぼくがヘンなのかなぁ。もっとイロイロ、ヘンな星を見たいなぁ」
 あっちがこわれて、こっちがやぶれて、ジョースターたちが、今もかなづちやノコギリをもってなおしています。
 スペースポートには、ほかの宇宙船もあります。
 ぎんいろの、ピカピカひかるロケットもあります。すごいコンピュータがついた、ハンマーなげのハンマーみたいなのもあります。えんばんみたいなのもあります。
 宇宙船『イダテン』は、いちばんオンボロでした。
 でも、どこの星に行くことをかんがえても、このオンボロにのっているすがたが、あたまにうかぶのです。
「……もう、しかたないなぁ!!」

 もどってきたキトラは、フツヌシのかじやにきていました。
「――H式宇宙船のレストアねぇ」
 フツヌシは、宇宙船『イダテン』のしゃしんを見ながら、クビをひねります。
「できねえことはねえ。というよりも」
 にんまりわらいます。
「おもしれえ」
「なおせるんでヤスか!?」
「おどろきであります!」
「さすがはフツヌシさまですな」
 フツヌシは、にもつをまとめはじめます。
「――言っとくが、このシゴトは高いぜ。それに、時間もかかる」
「言っとくけど、ぼくはお金もちだよ。それに、わかいんで時間はたっぷりあるよ」
 キトラとフツヌシは、ニヤリとわらいました。
「しばらくは宇宙に出られないけど、いい? みんな?」
「もちろんであります、オーナー」
「いくらでもまちヤス、しゃちょう」
「たすかりましたぞ、オーナーしゃちょう!」
 ――そう、キトラは宇宙船『イダテン』と、ジョースターたちのうんそうがいしゃを買ったのです。もちろん、このまえみつけた、あの宝をだいぶつかって。
「さあ、さっさと船のとこへあんないしてくれ」
 フツヌシは、ねじりハチマキにくわえキセルでどうぐばこをかついで、言いました。
「うん。おくれないでよ!」
 キトラはスペースポートへかけだしました。

 キトラたちが、あたらしくなった宇宙船『イダテン』で宇宙をまたにかけて大冒険をするのは、もうだいぶ、さきのお話です。

【おしまい】