キトラの冒険
作:ごんぱち
その25『サバクのハナのおうさま』

 ビルといえのあいだにポッカリ、ちいさなこうえんがありました。
「わぁ……」
 キトラは、ちいさなこうえんをみて、こえをあげます。
「おっきい」
 ちいさなこうえんです。
「おっきい、とけい!」
 そう。
 ちいさなこうえんでしたが、そのまんなかには、おおきなハナどけいがありました。
 もじばんが、かだんになっていて、すうじがハナでできています。
 ゆめのせかいのハナです。ガラスみたいにすきとおったものがあるかとおもえば、ケイトみたいにポワポワなものがや、シャラシャラおとをたてるものがあったりします。ぎんいろの2つのながいハリとみじかいハリは、キラキラかがやいていて、まるでつくりたてのロケットみたいです。
「キレイだなぁ」
 おおきなおおきなとけい。
「あれっ?」
 ながいハリがうごいているのがみえます。
「おかしいなぁ、とけいのハリがうごくのなんて、みえるわけないけど……」
 でもたしかに、ゆっくりハリはうごいています。
「え、えと、おっきいから、そうみえるんですよ」
「ええっ、だってふつうのとけいはこんなにうごかないよ」
「ほら、こっちのとけいとくらべてみてください」
「ほんとに?」
 キトラはてわたされたかいちゅうどけいと、ハナどけいをみくらべます。
 かいちゅうどけいのびょうしんがうごきます。これが1まわりすると、ながいハリが1ぷんうごくはず。
 キトラは2つのとけいをみくらべます。
 カチカチカチカチカチカチカチカチ……。
 おおきなハリが1ぷんかけてうごいたのは――やっぱり、とけいのもじばんの1ぷんぶんだけでした。
「ああ……ホントだ。なんか、ヘンなかんじだなぁ」
「あたしもはじめてみたとき、ヘンなかんじしましたよ」
「……って」
 ふと、キトラはうしろをみました。
「だれ!?」
「ひゃあっ、ごめんなさいっ!」
 ビクッとおどろいて、とびあがったのは、ペンギンのおんなのこ。おどろいたひょうしに、かけていたおおきなメガネがおちました。
 キトラより、すこしとしうえでしょうか。
「あっ、わっわっ、メガネメガネ……」
 あわててペンギンは、じめんをさがしはじめます。
「あの……」
「あのメガネがないと、なんにもみえないんです、あわ、うわわわ……」
「アタマ」
「ええ、あたしのアタマよりだいじなぐらいなんです。タダのメガネじゃないんで」
「いや、だからアタマ」
「ハナのアタマにひっかけるタイプですよ。メガネのツルはひっかけるとこないですし……」
「アタマのうえを、さがしたら?」
「はひ?」
 ペンギンは、じぶんのあたまをさわります。
「あっ、あった!」
 メガネは、あたまのうえにのっていました。
「いやぁ、たすかりました、エヘヘ」
 ペンギンがアタマをさげると、かけたメガネがすこしズレました。
「あたしは、ケームともうします。どうもありがとうございました」
「ぼくはキトラ。ケームさんも、このとけいすきなの?」
「はい。すごいんですよ、このとけい」
「おおきいよね」
「それだけじゃないんです。とってもせいかくなんですよぉ」
 ケームのメガネがキラリとひかります。
「200フカシギのぶひんが、ぎっしりとくみあわさって、ウルウどしはおろか、ウルウびょうや、じきあらしまでカンペキにけいさんしているから、100おくねんたってもくるわないんですよ」
「ひゃ、100おく、そんなに?」
「はいっ」
 うれしそうに、ケームがうなずいたとき。
「あれ?」
「あ」
 ハリが、とまってしまいました。
「どうしたの? でんちぎれ?」
「いえ、リュウミャクからエネルギーをもらってるから、そんなことはありえません」
 ケームは、かだんにはいります。
「あっ、ちょっと、カッテにはいったらおこられるよ」
「だいじょうぶですよ、このとけいは――」
「ひょっとして、ケームさんがつくったの?」
「ま、まさか、そんなだいそれたこと。これは、1コウまえに、フツヌシさまがつくったんですよ」
「フツヌシ?」
「あたしのセンセイの、きかいぎしです。けんなんかもつくられるんですよ」
 ケームはせおっていたバッグから、おっきなレンチをとって、とけいをぶんかいします。
「センセイってことは、ケームさんもきかいぎしがしごとなの?」
「はい。きんぞくだったら、なんでもやります。はぐるまとか、けんとか、フライパンとか、エンジンとか……ああ、このまえはプールのせんをつくったんですよ。とってもおっきいんです――ありゃらら」
「どうしたの? ケームさん?」
「これは、こまりました」
 ケームは、ちいさなはぐるまをみせました。
 はぐるまは、すっかりすりへっていました。

「ありがとうございます、キトラさん。てつだってくださるなんて」
 キトラとケームは、さばくいきのバスにのっています。
「いやぁ、ははは。ちょうどヒマだったからさ」
 まどのそとは、だんだんくさやきがへってきて、イシやつちがみえてきます。
「サバクにあるはぐるまのざいりょうって、どんなものなの?」
「サバクのハナのおうさまとよばれているものなんです」
「ハナ? サバクにさくの?」
「いえ、ハナみたいなかたちになったイシです。とっっっってもかたいから、はぐるまもながもちするんです」
「あのはぐるまって、それでできてたんだ」
「いえ、アレはちがいます。おなじぐらいのかたさですけど、ゲンブさんのコウラからきりだしたんです」
「ええっ、ゲンブって、ゲンさんの!?」
 キトラはめをまるくします。
「いえ、ずっとまえのだいのゲンブさんです」
「まえ?」
「1000000ねんぐらいのはばで、うまれかわるらしいですよ」
「……ゲンさんってなにものなんだろう」
 ちょうどそのとき、バスがとまりました。
「おきゃくさん、つきましたよ」
「ありがと」
「ごじょうしゃありがとうございます」
 バスのうんてんしゅのカソは、ぼうしをとって、かるくおじぎをしました。

 さばくです。
 くさも、きも、ほとんどありません。
 イシがゴロゴロしていて、イワがゴツゴツつきだしています。みちもありませんから、くるまもとおれません。
「……サバクって、スナがあるんじゃなかったっけ?」
「みずがすくなければサバクですから、スナとはかぎらないですよ」
 キトラとケームは、リュックをせおってすいとうをさげて、しろいマントとフードをかぶっています。
「ええと、サバクのハナのおうさまがある、カラコはここからミナミへ、はんにちぐらいあるいたところです」
 ケームは、ちずをみながらあるきます。
「はんにちかぁ」
 キトラはそらをみます。
 たいようがギラギラギラギラてりつけて、マントにかくれていないカオがこげそうです。
(ヒモノ――ジャーキーになっちゃいそうだ)
「あの……あついの、にがてですか?」
「え? あー、いやいや、そんなことないよ」
 キトラはむりやりわらいます。
「それより、ケームのほうがたいへんじゃない? ペンギンなんだし」
「いえ、あたしはイワスミペンギンですから」
「イワスミ?」
「はい。ヨウガンのかたまりかけたイワにすんでるんです。たまに、スーさんもいらっしゃるんですよ」
(……なんだ、ホントウにだいじょうぶなのか。よかったけど、なんだかぼくがあつくなってきたなぁ)
 ケームはペタペタペタペタあるきます。のろいですけど、ぜんぜんペースがおちません。
「うー、ノドかわいた」
 キトラは、すいとうをあけます。
 それからグイッっと……。
「キトラさん、ストップ」
「ふほ?」
「いちどにいっぱいのんだら、ムダにでてしまいますから、すこしづつのんでください」
「ふぁい」
 ゴクリ。
(もっとのみたいんだけどなぁ……)
 でも、ひとくちのみずが、カラダぜんぶにゆっくりしみわたるみたいです。だいぶ、らくになりました。

 おひさまは、あいかわらずジリジリとキトラたちをあぶります。
(うー、フライパンのうえにいるみたいだ。ソテーになっちゃうよ……)
 うえからのひかりもあついですが、じめんからはんしゃしてくるひかりまであついのです。
 こんがりりょうめんやき、サカナやきグリルのなかみたいなものです。
 キトラは、なんどめかのみずをのみます。
「ねえ、ケームさんはどうして、きかいぎしになったの?」
「――うーん、そうですね。いろいろありますけど、あのとけいが、すきだったんです」
「ああ、キレイだもんね。ハナがいっぱいで」
「いえ、ハナはどうでもいいんです。あのとけいのしくみのセイミツさと、せいかくさ、1つ1つのぶひんも、まさにゲイジュツてきしあがりで……」
 ケームはあつくかたります。メガネがずれてました。
「……フツヌシさまのさくひんは、ほかにもいろいろあって、とくにけんのできはすばらしくて……」
(おわらないよ……)
 キトラがふととおくにめをむけると、イシのはしらがいっぱいたっていました。
「ケームさん、アレって……」
「え? あ、うわわわ! アレです! あそこがカラコのいりぐち、いしのもりです!」
 いうなり、ケームはペタペタはしりだしました。
 が。
 ガラガラガラガラッ!
 とつぜん、あしもとがくずれました。
 イシとスナが、アリジゴクみたいにケームといっしょにズルズルしずんでいきます。
「うあわわわわわわわ!」
 このままでは、ケームがうまってしまいます!
「ケームっ!」
 キトラは、ケームのてをつかんでいました。
 でも、ケームにひっぱられ、キトラもしずみそうです。
「なんのぉっ!」
 キトラはケームをつかんでいないほうのてと、りょうあしで、しずんでいくイシとスナをよじのぼっていきます。
「お、も、いーーー」
「うわわ、わわ、あぶないです、てをはなさなきゃ、あぶないです」
「そういうこと、す、る、と」
 むきをかえて、りょうてでケームのてをつかみます。
「めを、さましたとき」
 くずれるあしばをグイッとふみしめて、せなかとりょうてとあしにちからをこめて。
「あさごはんが、おいしく、なくなるのっ!!」
 イシとスナにうまりかけたケームを、いっきにひっこぬきました。
 スポーーーーーーーーーーーン!
 ケームはくずれていないばしょまで、なげとばされました。
 でも。
「あわ、うわわわ!」
 なげたはんどうで、キトラがズルズルおちていきます。
「ぬおおおっ!」
 キトラはのぼろうとしますが、スナとイシは、もがくほどほどくずれていきます。
「え、えと、えと、たすけるもの、たすけるもの……」
 そのときです。
 ヒュルルルッ!
 なにかが、キトラのてくびにまきつきました。
「ボウズ、つかまれ!」
「えっ!? はいっ」
 キトラはてくびにまきついたものを、つかみます。しっかりしてじょうぶなムチ。
「よっ!」
 ムチがぐいっとひっぱられます。
「うわああああああああああっ」
 スポーーーーーーーーーーーン!
「だいじょうぶですか?」
「うん、ありがとケーム。たすかったよ」
「いえ、あたしはなにもできなかったんです」
「え? だって、このムチを」
 キトラはムチをみせます。
「――ムチじゃないぜ、ボウズ」
 ムチがニョロリとうごきました。
「ヘビ?」
「ヘビさんですね」
「ああ」
 ムチにみえたのはヘビでした。ぼうしをビシッときめています。
「オレはサイドワインダーのサワイ。このイシのもりをしらべている、ちしつがくしゃだ」
 それからサワイは、ぼうしのうえにのっているまっしろなイモムシをシッポでさします。
「これがシルクワームのクワムラくんだ」
 クワムラは、ニョッとからだをたてて、あたまをさげます。
「それでキトラくん、キミはどうしてこんなサバクへきたんだ?」
「あれ? サワイさん、ぼくのなまえしってるの?」
「……あ、いや、さっき、そっちのペンギンのじょうちゃんがよんでただろう。なあ、クワムラくん、そうだろう、うんうん」
「そうでしたか? ああそうです、あたしはケームともうします」
 ケームはペコリとあたまをさげました。

 イシのはしらのあいだを、キトラとケームとサワイとクワムラはあるきます。
 ――もっとも、サワイはよこにウネウネじめんをすべってすすむし、クワムラはサワイのぼうしにのっているので、あるいているとはいえませんが。
「なるほど、サバクのハナのおうさまか」
 ウネウネよこすべりしながら、サワイはうなずきます。
「しってるの?」
 キトラはサワイのあとをあるきます。
「けんきゅうようのしゃしんをとりたくてね、さがしていたのさ」
「しゃしんでいいの?」
「ああ。オレはそういうものをとって、コレクターにうるトレジャーハンターではなくて、がくしゃだから、しゃしんだけでいいのさ」
「みちづれができて、こころづよいです――ストップ!」
 とつぜん、ケームがさけびました。
 キトラとサワイは、ビクッとしてとまります。
「そこのじめん、くずれます」
「えっ、ホントウに?」
 ほかとかわらないじめんです。
「どれどれ」
 ピシッ!
 サワイがシッポのさきで、じめんをたたきました。
 と。
 ガラガラガラガラ!
 じめんがくずれ、しずんでいきます。
「ケーム、どうしてわかったの?」
「さっきのこともありましたし、メガネのレーダーをつかったんです」
 ケームはメガネをずりあげます。
 レンズに、いろんなじょうほうがうつっています。
「……それ、タダのメガネじゃなかったの?」
「ちょっとカイゾウしたんです。ヘンですか?」
「いや、そんなことないけど」
「ありふれてますか?」
 ケームはガッカリしたかおをします。
「ヘンなほうがうれしいの?」
「ほかにないものをもってるって、うれしくないですか?」

「そこ、くずれやすくなってます」
「こっちだな。クワムラくん、しっかりつかまってろ!」
 サワイがむきをかえます。
「そこのイシのはしら、たおれそうです」
「よっっと」
 キトラがイシのはしらからとびのきます。いっしゅんのあと、イシのはしらがガラガラくずれます。
「それから、あたしのあしもとがくずれます」
 ケームのあしもとに、おおきなじわれが!
「ケーム!」
 キトラはケームにとびついて、じわれからはなします。
「ああ、にげるのわすれてました」
「それをいちばんにかんがえてよ……」
 キトラはおおきくためいきをつきます。
「ふー、あつい」
 またあつさがもどってきました。
 かおがヒリヒリします。
(まっくろになっちゃうなぁ)
 イシのはしらが、すこしづつふえてきます。
「このイシのはしらってなんなの?」
「これは、かぜやあめやじしんでじめんがえぐれて、イシがのこったものだ」
 サワイがこたえます。
「へえ、そういうものなんだ」
「アスラさんがあばれたときにできたヒビも、おおいですよ」
「アスラって?」
「バケモノのおうさまだ。くろいユウレイみたいなぐんたいのかしらで、ここをサバクにしたちょうほんにんさ。もういないけどな」
「そんなこわそうなのがいたのかぁ」
 キトラがぼんやりととおくをみると。
 そこに、まるっこいものがみえました。
 イシみたいですけど、なんかちがう。でこぼこキザキザしたような……。
「あっ!」
 キトラはそれにかけよります。
 うすいイシがはりあわさって、バラかキャベツみたいなかたちをしています。
「これって、サバクのハナ?」
「そうです」
 ケームはメガネのフレームについているボタンをそうさします。
「でも、おうさまじゃありませんね」
「ハズレかぁ」
「ちかづいているしょうこですよ」
 ケームがわらうと、またメガネがずれました。

 おひさまはかたむき、そらがアオとクロのあいだのいろになっていきます。
 キトラたちは、ばんごはんのよういをします。
「うっ、さ、さむく、なってきたね?」
 キトラは、コンロでスープをあたため、かきまぜます。
「サバクのよるは、ひえるんですよ」
 ケームがパンを、ノコギリみたいなナイフできります。
「ひるまはあんなにあついのに?」
「それがサバクのこわいところさ、なあクワムラくん?」
 クワムラは、おおきくうなずきます。
「もういいみたいですよ、キトラ」
「うん」
 キトラは、あついスープをカップについで、ケームとサワイにわたします。それから、じぶんもフゥフゥさましながらのみます。
 ベーコンとタマネギと、なんだかよくわからない、きいろいやさいのはいったスープ。
「ん……おいしい」
 あったかいスープは、おなかのなかからあたためてくれます。あせをかいてカラカラになったからだが、かんそうワカメみたいにスープをすいこんでいきます。
 それから、パンをひときれ、かじります。
 かじり。
 かじ。
(かたい)
 かじって、りょうてでつかんで、ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
(かたいい!)
 うぅぅうぅぅぅブチッ!
(やっときれた)
 キトラはパンを、もぐもぐかみます。
 ひらべったいパンは、ムギのかおりがとってもつよくて、いつもキトラがたべてるパンとはぜんぜんちがいます。
 もぐもぐやりながら、スープをひとくち。
 スープとパンが、とってもよくあいます。
 キトラは、ものもいわずにたべました。
(おいしいけど、アゴがつかれた……ものもいえないぐらいに)

 つぎのひ。
 キトラたちは、イシのもりをあるきます。
「ありゃら?」
 あるいていたケームが、くびをかしげます。
「どうしたの?」
「んー、なんだか、メガネのちょうしがおかしいです」
 ケームは、くびをふります。
 と、いきおいがつきすぎたせいか、メガネがはずれてとんでしまいました。
「あっ――れ?」
「おや、これは」
「メガネメガネ、メガネはどこですか?」
 ケームからはずれたメガネは、すぅっととんで、イシのはしらにくっつきました。
「えっ? どうして?」
 キトラは、イシのはしらにかけよって、メガネをとります。
「メガメメガネ……」
「はい、ケーム」
「ああっ、ありがとうございます、キトラ」
 ケームはメガネをかけて、またくびをかしげます。
「りゃ? りゃりゃ? うああ、データがきえちゃってます」
「イシのはしらにくっついたからだな」
 サワイは、むずかしいかおをします。
「ジシャクになっているらしい」
「じゃあ、データがきえるのもムリありません」
「こんなとこにジシャクがあるの?」
 ゴロ。
(ジシャクっていったら、Uじがたしてたり、ぼうだったり、まるかったりするもんだとおもってたけどなぁ)
 ゴロゴロ。
「このへんのイシには、テツがおおいからな」
 ゴロゴロゴロ。
「そうですね。はしらになるのも、そのせいかもしれませんね」
 ゴロゴロゴロゴロ。
「やっぱり、ジシャクっていうんだから、くっついたりはなれたりするの?」
 ゴロゴロゴロゴロゴロ。
「そりゃそうですよ、キトラ」
 ケームがわらいます。
 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。
「そうとも」
 サワイは、とおくのやまほどもあるおおきなイワのかたまりをゆびさします。
「ほら、むこうにみえるおおいわ、あれがジシャクだったりしたら、まわりのジシャクやテツがみんなよってくるだろうなぁ」
 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。
「ふーん、だとすると、さ。その」
「なんですか?」
「なんだ?」
 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。
「うしろにきてる、おおきなまるいイシは、とおりみちにあるぼくたちをペシャンコにするんじゃないかなーって」
「はへ?」
「い?」
 4にんがふりむくと……。
 キトラたちのうしろには。
 おおきなおおきなまるいイシが、ゴロゴロところがってきていました!
「うひゃああっ!」
「うあわわわわわ!」
「にげるぞ、クワムラくん!」
 キトラたちは、いちもくさんににげはじめました。

 ゆるんだじめんに、あしがめりこみます。
「よっ、とっ、はっ!」
 でも、キトラはひょいひょいとびこえていきます。
「クワムラくん、ふりおとされるなよっ!」
 サワイもきようにうごきます。
「あわわわわ、うわわわわ、あわわわわわ!」
「ケーム、もっとはしって!」
 キトラはケームのてをにぎってはしります。
 うまりそうになるのをひっぱり、ころがってくるイシをふりきります。
 キトラたちと、おおきなイシがころがるしんどうで、いままでじっとしていたイシまでころがりはじめました。
「うわっ、わわっうわわわわっ」
 キトラがうしろをみると、おおきなまるいイシが、ずらりとならんで、こっちへおしよせてきます。
「ひぃぃぃぃぃ、にげられない!」
「キトラ、まえにじわれ!」
「うわっ」
 じわれをとびこえようとしたキトラですが、とびきれず、おっこちます。
「イタタタ……」
「モタモタするな!」
 サワイが、キトラをぐいっとひきあげます。
「ありがと、サワイ、さ、ん」
 ただでさえあついサバクです。こんなにぜんりょくではしっていては、きがとおくなりそうです。
「ふぅ、はぁ、ふぅ、ふぅふぅ……」
 ケームはあつさはへいきでも、はしるのはなれてないみたいです。
(ダメだふりきれない)
 キトラはふりむきます。
 イシがおしよせてきます。
 てまえには、キトラがおちそうになったじわれ。
(イシ、あそこでとまらないかな……いや、ムリだ、はばがせますぎるし、あさい」
 まえをみます。
 やまほどもあるおおきなイワ。あのうえまでのぼれば、たすかりそうです。
(でも、イシのほうがはやい。まにあわないかっ、どうする?)
 みぎやひだりににげようにも、イシはずらりとよこ1れつにならんでいます。
(にげられない、どう……そうだっ!)
「ケーム、サワイさん、こっちだ!」
「えっ?」
「なんだって!?」
「ぼくをしんじて!」
 キトラは、いままでとぎゃくに、ころがってくるイシにむかって、ぜんりょくではしっていきました。

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。
 イシが、ころがっていきました。
 イシがとおりすぎたあとに、キトラたちのすがたは、ありませんでした。
 かわいそうにキトラたちは、イシにつぶされてペッタンコに……。
「うー、ペッペッ」
 なって、いませんでした。
「スナぼこりだらけだぁ」
 キトラは、じめんからでてきました。
「めがねがくもって、なにもみえませんー」
 ケームもでてきました。
「たすかったな。なんだいクワムラくん? そうかそうか、ぶじがいちばんだな、うん」
 サワイとクワムラも、はいだしてきました。
 キトラたちがかくれていたのは、じわれのなかでした。イシは、みんなうえをとおりすぎていったのです。
「たすかりました、キトラ。ありがとう」
「うむ、おしてダメならひいてみろだな。りっぱなものだ」
「えへへ」
 ズーーーーーン、ズーーーーーン、ズーーーーーーーーン!
 じひびきをたてながら、イシが、あのおおきなイワにぶつかっていきます。
 ズーーーーーン、ズーーーーーン、ズーーーーーーーーン、ズーーーーーン、ズーーーーーン!
 イシが、どんどんぶつかっていきます。
 どんどんどんどんどんどんどんどん。
 ズンズンズーーーーンズーーーンズーーーーーーーーン! ズガガガガガガアアアアアアアアアアアッ!!!
 あまりにもたくさんのイシがぶつかったので、イワがくずれてしまいました。
「うわぁ……あっちににげなくてよかった」
「あんなにおおきなイワがくずれるなんて」
「1まいイワではなかったんですね」
 イワがボロボロボロボロくずれ、そして……。
「あっ、あれって」
「ええっ、アレなんですか?」
「アレが、か?」
 くずれたいわのなかから、おおきなおおきなおおおおおきな、サバクのハナがでてきました。
 まちがいなく、サバクのハナのおうさまです。
「……あんなにおおきいなんて」
「あたしも、おおきさのことまでは。でも、ひとカケラもってかえればいいだけですから」
「これはよこどりできないね、クワムラくん?」
「よこどり?」
「いやいや、こっちのハナシ。オレはトレジャーハンターなんかじゃないから、たとえサバクのハナのおうさまがちいさかったとしても、よこどりしてカソにうるなんてことは、しなかったさ。ほら、クワムラくんもそういってる」

 まっくろにひやけしたキトラとケームは、はなどけいのまえでぼんやりしています。
 おおきなハリが、ゆっくり、でもめにみえるはやさでうごいています。
「なおってよかったね」
「キトラのおかげです。ほんとうに、ありがとうございます」
「は、ははは、どうってことないよ」
 ゆっくり、とけいはうごいています。
 ハリがおひさまのひかりをはんしゃして、キラキラとひかっていました。

【おしまい】