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キトラの冒険
作:ごんぱち
その19『オナモミがっせん』
「あったよー!」
こうえんのとなりのくさむらにはいったボールを、キトラがとってきました。
「おそいぞキトラ」
「そうだそうだ、おそいぞ」
サリスとノクタがよってきます。
「だって、くさがいっぱいはえてたんだもん」
「……キトラ、ふく」
ラグヤがキトラのシャツをゆびさしました。
「え? うわっ、ドロボウぐさ!」
「うわっ、ひっつきムシでいっぱいだぞ、キトラ」
「そうだそうだ、くっつきムシでいっぱいだぞ」
「……せいかくにはオナモミ」
キトラのシャツやクツしたには、ちゃいろくてトゲトゲしたくさのみ、オナモミが、いっぱいくっついていました。
「うわっ、とってとって!」
キトラのふくにくっついたオナモミを、みんなでとります。
「よしとれたぞ」
「そうだそうだ、とれたぞ」
「……これでぜんぶ」
「あー、やれやれ」
キトラがホッとしていると。
「よくくっつくよなー、これ」
サリスは、オナモミを、じぶんのシャツにくっつけたりはずしたりしていましたが――。
「えいっ!」
ぴとっ。
サリスのなげたオナモミが、キトラのシャツにくっつきます。
「あっ、せっかくはずしたのに!」
「ほれっ、ほれっ!」
ふたつ。みっつ。
サリスがどんどんオナモミをなげます。
スピードのあるオナモミが、キトラにくっつきます。
「やったな!」
キトラもオナモミをとってサリスに――。
「あ」
「なんだなんだキトラ、ノクタにちょうせんか?」
ねらいがちょっとはずれて、オナモミはノクタにくっつきました。
「えいっ!」
ノクタのなげたオナモミは、まったくはずれて――ラグヤにくっつきました。
「……いい、どきょうだ」
ラグヤも、オナモミをなげはじめました。
もう、だれもかれもおかまいなしに、なげはじめました。
キトラたちはオナモミをなげながら、くさむらへはいっていきます。
くさむらには、オナモミがいくつもなっています。
「えいっ!」
キトラはサリスにむかってオナモミをなげます。
おしい!
もうすこしでとどきません。
「そこかっ、キトラ!」
「うわっ!」
キトラのシャツに、オナモミがくっつきます。
いちばんからだがおおきくて、ちからのあるサリスです。ものをなげたって、いちばんとおく、はやくとぶのです。
サリスのシャツにはほとんどオナモミがついていないのに、キトラたちはたちまちオナモミだらけになっていきます。
「うわっ、わわわっ」
キトラはからだをひくくして、くさむらにかくれました。
(サリスとまともにあたったら、かてないや)
キトラはどうにかこうにか、サリスからはなれます。
「がはははは、ほらほらほら!」
サリスはわらいながら、どんどんオナモミをなげます。
あしのおそいラグヤがねらわれて、オナモミだらけになっています。
(やれやれ。なんかうまいてはないかなぁ)
くさむらをコソコソあるきながら、キトラがかんがえていると。
ギュッ。
キトラは、なにかをふんづけました。
ふるくなったスコップでした。
スコップのあたまのほうをふむと、おしりのほうがもちあがって、おしりのほうにはオナモミがいっぱいはいったハコが、くっついています!
「うわあっ!」
はねあげられたハコから、オナモミがとびだします。
キトラはオナモミをかわしますが、はんぶんぐらいくっついてしまいました。すばしっこいキトラでなければ、ぜんぶくっついていたかもしれません。
「ノ、ノクタのわなだ!」
シャツにくっついたオナモミをはずしながら、キトラはあるこうとして――たちどまりました。
あしもとのくさが、むすびあわされていました。もしもこれにひっかかってころぶと、そのさきのじめんにばらまかれたオナモミがくっつくしかけです。
(ノクタって、こわい)
「がははは、キトラ! なんにもできないみたいだな!」
サリスは、どんどんオナモミをなげています。
「そうだそうだ、なんにもできないな」
べつのばしょで、ノクタもどんどんわなをしかけていきます。
こうえんのとけいが、5じちかくになってきました。
5じのチャイムがなりおわれば、かえるあいず。おしまいです。
「がはははは、オレがいちばんだ!」
サリスがオナモミを――。
「あれ?」
サリスのてがとまりました。
「ええと……」
あんまりいっぱいなげたので、ちかくのオナモミがすっかりなくなっていました。
「まあいいか。どうせオレがいちばんだ」
そのことばどおり、サリスのシャツには、ぜんぜんオナモミがついていませんでした。
そのときです。
「――それはどうかな?」
キトラがあらわれました。
てをうしろにまわしていて、シャツには、オナモミがいっぱいついています。
「がはは、そんなにいっぱいくっつけて、なにをいってるんだ、キトラ」
「ぼくがただ、オナモミをぶつけられてたとおもう?」
にまぁっとキトラはわらって、りょうてをまえにだしました。
そのてには、サリスのあたまぐらいありそうな、オナモミのかたまりが!
「な、な、な、ピ、キトラ、いつのまに!」
サリスはオナモミをとろうとしますが、まわりのオナモミはみんななくなっています。
「そうだそうだ、キトラはにげながら、まわりぜんぶのオナモミをあつめてたぞ……」
あらわれたノクタは、オナモミだらけ。
「えいっ!」
キトラはおもいきりサリスにオナモミをぶつけました。
サリスのシャツも、オナモミがいくつもくっついています。
「こりゃあキトラのかちか?」
「えへへ」
とけいは、そろそろ5じです。
もう、はずしているじかんもありません。
「じゃあ、ビリはラグヤだな。いっぱいぶつけたし」
「そうだそうだ、ラグヤだぞ。ノクタのわなにもひっかかってたぞ」
「うん。ぼくもぶつけたし、たぶんそうだね」
キトラはあたりをみまわします。
「でも、ラグヤはどこかなぁ?」
「……ここだよ」
くさむらから、ラグヤがでてきました。
なぜだか、シャツをぬいでいます。
「……それから、1ばんは、ボクだから」
「あ?」
「へ?」
「え?」
とつぜんラグヤは、シャツを――いままでみんなにぶつけられて、オナモミだらけになっていたシャツを――ものすごいいきおいでふりまわしました。
シャツからはなれたオナモミは、キトラたちにくっついていきます!
「ああっ!」
「わわわわ!」
「ち、ちょっと、ラグヤ!」
キーン・コーン・カーン・コーン……。
5じのチャイムが、なりおわったときには、ラグヤのシャツについていたオナモミはほとんどなくなり、キトラたちはオナモミだらけになっていました。
「……あ、えりについてる」
かえりみち、あるきながらラグヤがキトラのシャツから、オナモミをとります。
「ラグヤ、ずっとあれ、ねらってたの?」
「……かんがえるじかんがいっぱいあったから」
「きょうはまけたけど、こんどはまけねえぞ、ラグヤ」
ノクタのせなかのオナモミをとりながら、サリスがいいます。
「そうだそうだ、まけないぞ」
ノクタは、そでについたオナモミをとります。
「……ふふふ」
ラグヤは、うれしそうにわらいました。
「……ボクも、まけるのはきらいだよ」
ゆうやけのそらに、あかとんぼが、いっぱいとんでいました。
【おしまい】