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キトラの冒険
作:ごんぱち
その17『すずしいさがし』
ミーンミーンミーンミーン……。
こうえんに、セミのなきごえがひびきます
おひさまは、ジリジリとじめんをあぶります。
「あ、あついー!」
すなばでトンネルをつくっていたキトラは、あせびっしょりになっていました。
「……うん、あつい」
ラグヤもぼうしをとって、あたまをあおいでいます。
「きょうはたしかにあついな!」
ぺたりとすわりこんで、サリスもげんきがありません。
「そうだそうだ、あついぞ」
ノクタは、サリスのまわりをはねまわっていますが、まあそれなりにあつそうです。
「こんなにあついとニッシャビョウになっちゃう。すずしいとこにいこう」
「……うん」
「ニッシャビョウってなんだ」
「そうだそうだ、なんだ?」
「えーと、だから、あついときになるもので……」
キトラはことばにつまります。
「……あついときに、たいおんがあがって、みずがたりなくなるびょうき」
「そうそう、そんなのだよ」
「よくしってるな、ラグヤ!」
「そうだそうだ、よくしってるぞ、ラグヤ!」
「ぼくは……?」
「キトラはことばをしってただけじゃねえか」
「そうだそうだ」
「……ひかげにいこう」
キトラたちは、こうえんのすみっこにある、きのかげにはいりました。
かぜが、すぅっとふきぬけて、きのはっぱをさわさわとゆらしていきます。
「あーーーー、すずしい」
キトラたちは、きにもたれてすわりこみます。
「……うん、たまにふくかぜが、きもちいい」
「おひさまがあたらないのがいいぜ」
「そうだそうだ、いいぞ」
こかげからこうえんをみると、おひさまにてらされれて、まるでオーブンのなかみたい。
あんなところにいままでいたなんて、ちょっとしんじられないぐらいです。
「よっ!」
サリスが、きのえだにつかまって、ぶらさがります。そのままぐるりとさかあがり。
「へ、へん、なんだいそんなの」
キトラもおんなじように、べつのきのえだにぶらさがります。
でも、きのえだはキトラにはたかすぎました。
なんどもぶらさがったまま、ブラブラブラブラ。
「がはは、キトラ、ムリしなくてもいいんだぜ!」
「そうだそうだ、ムリしないほうがいいぞ」
「むりなもんか! よいしょっ、よいしょっ!」
やっぱりブラブラブラブラ。
「ガハハハ、キトラはちからがないからできないんだな!」
「むぅ……」
「……ちからじゃ、ない」
ラグヤがたちあがって、キトラがつかまっていたえだにつかまります。
ひょい!
ラグヤはサリスよりもずっときれいに、くるりとまわりました。
「……コツがつかめれば、だれでもできる」
「すごいや、ラグヤ!」
「ちぇっ」
サリスはすわりこみます。
「あー、なんだかあつくなってきたぞ!」
「そうだそうだ、やっぱりあついぞ!」
「またまた、まけたもんだから、ごまかして……」
「……べつにまけてない。ひきわけ」
「そうだ、ひきわけだ! それに、キトラはあつくないのかよ?」
「そりゃ、あついけど」
ひかげだというのに、うごいたせいでキトラたちはあせびっしょりです。
「こんなところにいたら、やっぱりニッシャビョウになるぜ!」
「そうだね――そうだ!」
キトラはポンとてをたたきました。
「もっと、すずしいとこにいこうよ!」
「……ボクは、ここにいる。じゅうぶんすずしいし」
キトラとサリスとノクタはこうえんのちかくの、しょうてんがいに、きました。
「あー、すずしい」
「たしかにすずしいな!」
「そうだそうだ、すずしいぞ!」
でんきやさんのまえに、ずらりとならんだせんぷうき。かぜがいっぱいふいてきます。
せんぷうきのかぜは、こかげのそよかぜのなんばいもつよく、とってもすずしくなります。
「きもちいいなぁ。やっぱり」
「そうだな! でも」
「でも、なに?」
「まだやっぱりあつい!」
「そうだそうだ、あついぞ!」
「そ、そんなこといわれたって」
「みてろキトラ、もっとすずしいところへ、あんないしてやるぜ!」
サリスがむねをはります。
「こんなとこ、めじゃないぜ!」
サリスにつれられて、キトラとノクタはコンビニにきました。
「すずしぃーーーー」
コンビニのなかは、クーラーがきいていてひんやりしています。
「すずしいだろ! このコンビニが、しょうてんがいでいちばんクーラーがきいてるんだ!」
じまんげにサリスがわらいます。
「そうだそうだ、すずしいぞ!」
3にんは、クーラーのふきだしぐちのしたにたちます。
つめたいかぜが、キトラたちをひやします。
でも。
おきゃくさんがではいりするたびに、ドアがあいて、そとのあついくうきがはいってきます。
「うー、まだやっぱりあついなぁ」
「たしかにあついな」
「そうだそうだ、あついぞ」
「でも、もうここよりすずしいとこは、ないかぁ……」
「そうだろ。こればっかりはしかたないぜ」
「ちがうちがう、まだあるぞ!」
ノクタがいいます。
「えっ?」
「ほんとうか!?」
キトラとサリスは、おもわずかおをみあわせました。
へいをこえて、たてもののかげ。
しょうてんがいでいちばんおおきな、スーパーマーケットのうらぐちです。
「こんなとこがすずしいの?」
キトラは、キョロキョロあたりをみます。
にもつをつんだりおろしたり、くらいけれどかぜはとおらないし、むわりとあついです。
「ノクタ、こんなとこはいってだいじょうぶなのか?」
しんぱいそうなかおで、サリスがたずねます。
「へいきへいき、だいじょうぶだぞ」
ノクタがこたえたときです。
「だれだ!」
てんちょうさんがちかづいてきました。せがおおきくて、かたはばががっしりしていて、おにみたいなかおをしています。
キトラたちがかってにはいったのをしって、しかりにきたにちがいありません。
「わ、わ」
「おい!」
ところが、ノクタはぜんぜんこわがっていませんでした。
「ノクタだぞ」
「おや、だれかとおもえば、センセイのとこの、わかダンナ」
てんちょうさんは、にっこりわらいました。
「そっちはおともだちだね? ゆっくりしていきな」
……わらっても、やっぱりこわいかおでしたが。
「あのてんちょうさんとしりあいだったのか」
サリスが、むねをなでおろします。
「うんうん、うちのはいしゃにくるんだぞ」
「いいなぁ、おうちでおみせをやってると、こういうしりあいができるんだなぁ」
「キトラ、はいしゃさんは、みせとはちがうんじゃねえか?」
「じゃあ、はいしゃさんって、なに?」
「ええと、はいしゃさんは、はいしゃさんだろう?」
「でも、おかねをもらって、はをなおすんだから、とこやさんとか、じてんしゃやさんとおんなじじゃない?」
「なにもうらないだろう?」
「だって、イレバとかうるじゃない」
「あ……そっか。そうなのか? ノクタ? おい、ノクタ?」
キトラとサリスをそのままに、ノクタはスーパーのおくへいきます。
それから、おおきくいとびらのまえにきました。
ノクタは、なれたてつきで、とびらをあけます。
「うわっ!」
「おおっ!」
ものすごくつめたいくうきが、キトラとサリスのかおをなでました。
「これはすごい」
「つ、つめたいな」
れいとうこでした。
なかには、れいとうしょくひんのダンボールばこがいっぱい。かべやてんじょうには、シモがついています。
キトラとサリスとノクタは、なかにはいります。
「うわあ、すーずしーぃ!!」
「すっげぇ!」
「うんうん、マイナス20どだぞ!」
いきが、まっしろです。
このへんのまふゆよりも、まださむいです。
「あー、てんごくだぁ」
「いまが、なつなんて、ウソみたいだぜ!」
れいとうこのなかでは、あつさなんてどこかへいってしまいます。
「きもちいい」
「そう、だな」
あつさはどこかへいって、つぎは。
「というよりも」
「これは、ちょっと」
すずしいをとおりこして。
「さむい、さむい、さむい!」
「こおっちまう! でるぞ!」
キトラたちは、れいとうこのそとへとびだしました。
キトラとサリスとノクタとラグヤは、こうえんのこかげにいます。
「うぇー、なんだか、さいしょより、ずっとあつくなってきたー」
キトラはだらりとねころんでいます。
「うー、あついーー」
サリスがくちをあけて、はぁはぁいきをします。
「そうだそうだ、あついーーぞ」
ノクタも、てであせをふいています。
「……じゅうぶん、すずしいけど?」
ラグヤは、のんびりときのえだにつかまり、また、くるりとさかあがりをしました。
ゆうがたのかぜが、すぅっと、とおりぬけていきました。
【おしまい】