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キトラの冒険
作:ごんぱち
その4『きょうりゅうのくに』
おとまりにきたラグヤのバッグにつまっていたのは、リュウのぬいぐるみでした。
「……セイリュウのリュウさんっていうんだ」
「へえ、リュウさん」
ながいからだ、がっしりしたあし、おそろしげながらたのもしそうなかお、そして、リビングのでんきをはんしゃしてかがやくウロコ。
「……しんだひいじいちゃんから、もらった」
「ふうん。ねえ、リュウさんって――」
「――キトラ、ちょっと!」
そのとき、おかあさんのアスタさんが、だいどころからこえをかけました。
「なに?」
「スーパーのふくろそこにあるでしょ、タマゴとおにく、もってきて!」
「ええーっ?」
たしかにスーパーのふくろはちかくにありましたが、あそんでいるところをじゃまされて、キトラはとてもいやなかおをしました。
「ぼくたちいま、いそがしい――」
「……タマゴはたのむ」
でもラグヤは、ふくろからにくのパックをとりだし、もっていきます。
「はいはい、もっていけばいいんでしょ!」
キトラがむくれたまま、タマゴのパックのはしっこをもって、だいどころにむかおうとしたときです。
「あっ!」
「……あ」
てをふったいきおいで、タマゴのパックがポーンととんでしまいました。
ぐしゃり。
タマゴのはいっていないハンバーグでばんごはんをすませたキトラとラグヤは、いつもよりいちじかんよふかしをしたあと、キトラのへやでねむりました。
(ちぇっ)
ふとんでよこになったあとも、キトラはなんだかねむれませんでした。
(おかあさんがいけないんだ。いいとこでジャマするから)
ねがえりをひとつ。
(あーあ、おてつだいなんかしたくないなぁ)
ねがえりをもうひとつ。
(おかあさんより、つよくなればいいのかなぁ。きっとそうだ。あーあ、つよくなれな……い……か……なぁ……)
キトラはめをあけました。
「ああ、よくねた――あ、あれ?」
とんがったみたことのないかたちのき、くさ、とおくにみえるやまのかたちもちがいます。ちかくにながれるかわは、あきカンひとつおちていなくて、ものすごくきれいでした。
キトラのへやではありません。ふとんもありません。
「……ゆめの、せかい?」
「ごめいとう」
どこかからこえがしました。
「えっ、だれ?」
「ははは、わかりませんか?」
ずずずずずずずずず。
かわが――めのまえのかわが、たちあがりました。
「な! な、なななな!?」
かわはそらまでのぼったかとおもうと、いっちょくせんにおりてきました。
「わあああああっ!」
つぎのしゅんかん、かわはキトラのめのまえで、いっかいてんしてとまりました。
「しっけい、すこしおどろかせてしまったようですね」
かわは、いつのまにかりゅうになっていました。かわのようにながいからだと、きらきらとひかるウロコをしています。
「……やっぱりリュウさんだったんだ」
と、もりのなかから、ラグヤがでてきました。
「やあラグヤくん。ごきげんうるわしゅう」
「……キトラ、びっくりした?」
「いや、なんていうか」
くちごもるキトラに、ラグヤがいいます。
「……これはね、ゆめだけどゆめじゃない。リュウさんのちからで、おみやげがひとつだけもってかえれるゆめなんだ」
「ああ、そのへんはゲンさんとおんなじなんだ……でも、ここってどこ?」
「はは、そのといはわたくしにとって、むいみ」
リュウさんはわらいます。
「セイリュウのほんしつはかわ。ゆくかわのながれはたえずして、しかれどももとのみずにあらず。じくうこえつねにたびをつづけるのが、わたくしのじんせい」
ずん……ずん……。
「えーと、よくわかんないんだけど……」
「……ふつうにこたえてよ、リュウさん」
ずん……ずん……ずん……。
「ははは、わかりました。ばしょでいうなら、ゴンドワナ」
ずん……ずん……ずん……ずん……ずん!
「じかんでいうなら、おおよそ150000000ねんまえ」
ずん!!!!!!
じなりとともに、もりのなかからおおきなおおきなおおきな、みあげるほどおおきな――。
「きょうりゅうの、じだい……?」
「ごめいとう」
くびながのきょうりゅうのせなかにのると、まわりのきがちいさくみえます。
ずん! ずん! ずん! ずん!
あるくたびに、まるでじしんみたいにじめんがゆれ、もりのいきものたちがにげていきます。
「……セイスモサウルス。じしんりゅう。ぜんちょう30メートルをこえる、ちじょうでいちばんおおきないきもの」
キトラとラグヤがのっていることなんかおかまいなしに、セイスモサウルスはながいくびをみぎひだりにうごかして、きのはっぱをたべながらすすんでいきます。
「リュウさん、よくこんなにおおきいきょうりゅうとおはなしできたね?」
「ははは、わたしはきょうりゅうとは、なかがよいのですよ」
リュウさんはわらいながら、ぷかぷかとうかんでいます。
「……ありがとう、リュウさん」
ラグヤはとてもうれしそうにわらいます。
(すっごいなぁ)
キトラはセイスモサウルスのせなかにさわってみます。ウロコにおおわれたはだは、あたたかでした。
(ほんものの、きょうりゅうだ)
セイスモサウルスは、ほんでみたよりもずっとずっとずっとずっとおおきく、いきをして、あしおとをたて、あたたかく、なんかウシみたいなにおいがします。
うしろをみると、おおきなあしあとができています。たぶん、じどうしゃだってぺしゃんこです。
(もしもこんなにおっきなきょうりゅうが、ぼくのものだったら、おかあさんもなんにもいわないかな)
「ねえ、リュウさん!」
「なんですか?」
「このきょうりゅう、おみやげにしてもってかえれないかな?」
「……もってかえる?」
ラグヤはびっくりしたかおをしています。
「もちろん、なんでもおみやげにできますよ」
「ほんとう!?」
「ただ、あなたがてにいれたものにかぎります」
「てにいれるっていうと……」
「きょうりゅうのせかいは、つよいものがぜったいですから、たたかってかつひつようがありますね」
「たたかうって、これと?」
キトラはおもわず、かたをすくめました。
セイスモサウルスのあしおとにおどろいて、もりのなかからトリのようなものがとんでいきます。
「……いまのが、よくりゅうのランフォリンクス」
トカゲみたいにちいさいきょうりゅうのむれが、はしってにげていきます。
「あれは!?」
「……コンプソグナトス。ちいさいけど、にくしょく」
「よくわかるね、ラグヤ」
「……きょうりゅうとか、すきだから」
うれしそうにラグヤはわらっています。
「あれは?」
「……ステゴサウルスのおやこ」
「そっちは?」
「……プロトケラトプスになりかけの、まだかせきがはっけんされてないしゅるい」
「あっ、あれは、しってるよ」
キトラは、うしろのほうからものすごいはやさではしってくるきょうりゅうたちを、ゆびさしました。
「ティラノサウルスだよね?」
「……このじだいにティラノサウルスはいない。あれはアロサウルス」
「さすがはラグヤくんですね」
アロサウルスたちは、どんどんきょりをつめてきます。
ずん!
「かっこいいなぁ、あれをおみやげに――」
「……キトラじゃ、かてないとおもう」
「むぅ」
ずん!
ずん!
セイスモサウルスは、スピードをあげています。
「ひょっとして、だけどさ」
「……うん」
「あのアロサウルスたち……」
どんどんきょりが、つまっていきます。
ガブリ!!
アロサウルスが、おおきなくちで、セイスモサウルスのしっぽにくいつきました。
「このセイスモサウルスを、きょうのばんごはんにするつもりらしいですね」
「ぼくにもわかったよ!!」
セイスモサウルスも、まけずにしっぽをふりますが、アロサウルスはしっかりくいついてはなれません。
にひき、さんびき、よんひき……。
おおきなアロサウルスが、もっとおおきなセイスモサウルスのしっぽに、どんどんくいついていきます。
「リュウさん、とめて!」
「……アロサウルスたちも、たべなきゃいきていけない」
「わたくしたちは、たちよっただけのたびびと。このしぜんのたたかいにてをだすことは、できません」
セイスモサウルスのながいしっぽに、いくつもキズができて、ちがながれます。
「でも!」
「みていてください、セイスモサウルスも、ただやられるわけではありませんよ」
リュウさんがいったときです。
ぶんっ!
セイスモサウルスは、ぐいとふみこんで、からだぜんたいでしっぽをふりました。ものすごいちからです。くいついているアロサウルスもろとも、しっぽがもちあがりました。
つぎのしゅんかん。
ばあああぁぁぁんっっ!!
まるでばくはつみたいなおとが、あたりにひびきわたりました。
セイスモサウルスは、しっぽにくいついたアロサウルスたちをハンマーがわりに、あとからとびかかろうとしたアロサウルスをなぎたおしたのです。
これにはアロサウルスたちもたまりません。すっかりたたかうきをなくし、ふらふらとにげていきました。
「ほら、こういう――おや?」
いつのまにか、キトラとラグヤは、セイスモサウルスのうえからいなくなっていました。
「あー、びっくりした」
キトラはおしりをさすります。
「……うん」
あたまについたはっぱを、ラグヤはぱたぱたとはたきおとします。
さいごのこうげきのときに、セイスモサウルスのせなかがおおきくゆれて、キトラとラグヤはもりのなかにおちていたのです。
「リュウさん、しんぱいしてるかなぁ?」
「……リュウさんはこういうとき、わざわざさがしにこない」
「そうなの?」
「……だいじょうぶ。めをさませばいいだけ」
「ああそっか」
「……それに、セイスモサウルスのうえからじゃみれなかったものがみられる」
キトラとラグヤはあるきます。
キトラたちのじだいのもりとは、ぜんぜんちがいます。そもそもトリがいませんし、ムシもかたちやおおきさがちがいますし、しょくぶつもちがいます。
(ん? あれはイチョウかな?)
――まあ、なかにはおなじようなものもありますが。
ふたりがしばらくあるくと、きがたおされているばしょにたどりつきました。
「……あ」
ラグヤがたたたっとはしって、たちどまりました。
「……ふーん」
「なに、それ?」
みたところ、ところどころにしろっぽいものがみえる、ただのつちのやまです。
「……ええと、まあいいか」
ラグヤがつちのやまをてでほると、なかからおとなのてのひらぐらいのおおきさのタマゴが、いくつもでてきました。カラはがんじょうそうで、はいいろをしています。
「きょうりゅうのタマゴ!?」
「……そう」
「あのアロサウルスのかな?」
「……どうだろう」
キトラはタマゴをじっとみつめます。
「こんなにいっぱいタマゴをうむんだね」
「……うん。でも、じっさいにかえるのはひとつかふたつ。のこりは、さきにうまれたきょうりゅうのごはんになる」
「へえ……」
キトラのあたまのなかで、かんがえがいっしゅんでまとまりました。
「だとしたら、さ」
キトラは、タマゴのなかで、いちばんおおきくてきれいなものをとります。
「いっこぐらい、ぼくがもってかえっちゃって、いいよ、ね?」
「……うーん、どうだろう?」
「だいじょうぶだいじょうぶ。もってかえるよ。おみやげは、きょうりゅうのタマゴだ!」
キトラのきょうりゅう。キトラがタマゴをかえして、そだてたきょうりゅう。
(ぼくのきょうりゅうだ!)
「……でも、それってたぶん、あんまり……」
ラグヤのこえがとおくになっていきます。
「……く……ぃ……」
(ぼくの……くの……ぼ……の…………)
「――ふぁあぁああ」
めをさましたキトラのてが、ふとんのなかで、なにかにあたりました。
「ん?」
ふとんをはがしてみると、まちがいなくあの、きょうりゅうのタマゴがありました。
「タマゴだ」
ずっしりおもいタマゴは、ニワトリのタマゴの4つか5つぶんありそうです。
「――ラグヤのいたずらかな?」
ところが、キトラはとなりでねむっているラグヤをみながら、くびをかしげています。
そうです。
ゆめからもってかえられるのは、ひとつだけ。タマゴをえらんだキトラは、それいがいはぜんぶ、そう、ぼうけんのきおくもふくめてぜんぶ、おいてきてしまったのです。
「ちょうどいいや」
キトラはタマゴをもって、だいどころにいきました。
「――おかあさん、おはよう」
「あら、キトラおはよう。ラグヤちゃんは?」
「まだねてるよ……あのさ、きのうは、タマゴわっちゃってごめんなさい」
「いいのよ。おてつだいしてくれたんだもの」
おかあさんのアスタさんはやさしくわらいました。
「それで、その――はい、これ」
「あらあらあらあら、おおきなタマゴねぇ!?」
アスタさんは、タマゴをでんとうにすかしてみます。
「うん、おいしそうよ」
「よかった。じゃあ、つかってよ」
「ありがとう、これでおいしいオムレツがつくれるわね」
こん。
かしゃっ!
じゅぅぅぅぅぅぅぅ……。
タマゴのやけるおいしそうなかおりが、だいどころいっぱいにひろがります。
きょうもいいひに、なりそうです。
【おしまい】