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エントリ01
2人のlove・story 〜TsukasaとAyaka〜
大野勇樹
2人は、昔からの幼馴染だった。同じ幼稚園、同じ小学校、そして同じ中学校を選んできた。
そんな2人も中学3年になって、そろそろ自分の進路について考え始めてきていた。
「ねぇ。司は高校どうする?もう決めたの?」
「ん〜。将来の夢もまだ見つかんねぇし、面倒くさくて決められんねぇよ」
誰になんと言われようと、2人はいつも近くにいた。それだけ仲がよかった。
「司、早く決めなよ。来週、志望校のアンケートとるって、北島先生言ってたじゃんか」
「あぁ…そういやそうだったけ…全然聞いてなかった」
「ねぇ。真剣に考えてるの?来週までには決めなきゃなんだから!」
「ったく、うるせぇな。綾華、お前さぁ人のことより自分のことはどうなんだよ。もう決めたのか?」
「私はね、私立の和泉女子高校に行こうかなぁ…制服かわいいし。楽しみだな……司?」
「えっ…綾華女子高いくの…?」
「何よ。私が女子高行くのがそんなにおかしいの?」
「い、いや…別に。今までずっと同じ学校にいたからなんか意外だなぁ…って。それにその高校、偏差値高いだろ?おまえ入れんのかよ」
「…司。…もしかして私に女子高に行ったらいけない理由でもあるの?」
「べ…別に行きたきゃ行けばいいじゃん。綾華の好きにすれば。おまえの事なんだしさ、オレはいいと思うよ」
それだけを司は言い残して綾華の前から去っていった。
「…つ、司!?ちょっと…」
司は屋上にいた。綾華に見られたくないたくさんの涙が、気持ちがこみ上げてきたからだった。
…綾華、いつの間に女子高行くって決めてたんだろう…?
司は湿ったロープが自分の体をしめつける感じのような切なく、淡い気持ちになっていた。
「綾華…。…なんでオレは今まで気づけなかったんだろう?こんなにも綾華を好きになってたことを…」
司は屋上のすみでうずくまって涙が枯れるまでずっと泣き続けていた…。
屋上に続く階段を急いで上がってくる音が聞こえた。
「…司。やっぱり泣いてるんでしょ?」
「泣いてなんかねぇよ。綾華、オレのことなんか気にしないで好きな高校行けよ。…あのさ。オレ、本当はお前と同じ高校行きたかったんだ…」
「私も最初はそう思ったよ。でも司は、司は…」
しばらく2人の間に沈黙がつづいた。
「…司。今から同じ高校行きたいと思わないよね…?」
「綾華が行きたいって言うんだったら別にオレはいいよ。じゃあ一緒に同じ高校行こうか?」
司は軽く笑った。
「…司、やっと笑ったね。私、泣いてる司は好きじゃないから。私の前ではずっと笑顔でいてね」
「綾香。オレ…綾華のことが、大好きだ」
司は綾華のことを思いっきり抱きしめた。
「司。ありがとう」
そして一週間後の志望校のアンケートには2人とも同じ志望校が書かれていた。
「東 綾華、西山 司。お前達どういうつもりだ?」
北島先生の質問に、2人は互いに笑いあっていた…。
エントリ02
無題
小笠原寿夫
むかし、ある山奥の村に、伍兵衛という若者が住んでおりました。伍兵衛は、たいそう働き者で、村中でも「百姓の鏡」と、もっぱらの評判でした。春は種をまき、夏は田植えをし、秋は収穫をしました。
その日はしんしんと雪の降る寒い夜のことでした。伍兵衛が、囲炉裏に薪をくべておりますと、戸口を叩く音が聞こえます。伍兵衛が戸を開けてやると、そこには、尺八を持った、ひとりの虚無僧が立っておりました。
「なんじゃ、こんな時分に。物乞いならよそへ行ってくださらんか。わしゃ一人身じゃで、こんな夜中に泊めてやることも出来んがや。」
虚無僧は、深々と頭を下げ、言いました。
「伍兵衛殿、貴方は、こんなところで田を耕すだけの人生にはござらん。何卒、拙僧に付いて来てはくださらんか。悪いようには致しません。」
伍兵衛は、何がなにやらわからないといった様子で、答えました。
「世捨て人に付いて行く道理がないで。今晩はもう遅いで、明日の朝、また来てくださらんか。」
「明日ではもう間に合わん。今、困っておる人間をゆくゆくお見過ごしになるおつもりか。」
「しかし、今晩はもう遅いで……」
伍兵衛と虚無僧の押し問答がひとしきりついた後、虚無僧は、正直に事の成り行きを伝えました。すると、伍兵衛は、なんとも物憂げな表情で、言いました。
「そういうことなら、手伝わせてくんろ。今すぐ、足袋を支度するで。」
山奥の村から、一目散に町へ駆け下りたかと思うと、伍兵衛と虚無僧は、一軒の長屋へ入っていきました。
「おっ母!」
伍兵衛が、叫んだかと思うと、老いた母親が床に伏せったまま、天井を見て、聞こえるか聞こえないかくらいの声で言いました。
「伍兵衛かい。そちらにおられるのはどちら様かねぇ。」
虚無僧は、尺八を吹きました。その音色は、よく伍兵衛とその弟が眠れないときに、母親が教えてくれた子守唄にそっくりでした。
「ま、まさか、お坊さん……」
先に伍兵衛が気づきました。
「その先は言うことなかれ。拙僧はただの世捨て人。人を斬ることと尺八を吹くぐらいしか能がない者でござる。」
「と、とにかく今、飯を炊くで。おっ母、待っててくんろ。」
たちまち元気になった母親に伍兵衛も満足でした。
それからというもの、伍兵衛は母親と、幸せに暮らしましたそうな。
エントリ03
仮面
ロヨラ
朝、仕事前にセックスフレンドの見舞いに行った。風邪らしい。
IDカードで女のアパートのドアを開け部屋に入る。女は俺を待つように寝台に身を横たえていた。ブランケットを円い顎先まで被り、顔だけをこちらに向け、両の瞳で俺を捉えている。寝台の向うには大きな窓があり、太陽光が白いシーツに反射していた。光は女の髪も頬も輝かせ、その輪郭をぼやけさせていた。俺は女が今にも死ぬのではないかと錯覚した。女はありがとういらっしゃいと言う。
「何日寝込んでる?」
「三日かな」
「すぐに連絡を寄越せよ」
「私がこんなぐったりじゃ、あなたはお目当てを楽しめないでしょう。だから呼ばなかった」
女は言葉の終わりに咳をした。風邪を演出するには最適の演技だと思う。俺は、でも結局君は俺に連絡を入れたねと言った。女は声を挙げずに薄く笑った。女は三四歳で、俺は八つも年下だった。
二三世紀は星間戦争の時代だった。地球人と異星人が戦った。そして兵力不足から傭兵が一般的な職業になった時代でもあった。俺はその傭兵で、女とは月におけるVD星人との戦闘で出会った。俺の生まれて初めての、実戦だった。
九人の傭兵で部隊を組み、地球連邦軍からの指令を遂行する作戦。敵前線の調査という簡単な内容のはずだったが、何時の間にか敵に仲間の頭が吹き飛ばされていた。模擬戦での訓練は役に立たなかった。まず、構えた熱線銃を撃つべき影が何処を探しても見つからない。
最初の攻撃を受けて俺達全員は伏せる。しかし敵は一人ずつ俺達の誰かを殺していった。伏せた俺達を狙撃するのにどのような武器を使用しているのか分からなかったが、ともかく俺達は為す術もなくただ乾いた月の大地に這い蹲ったまま確実に訪れる死を待った。敵も待っていた。彼方からの狙撃の一撃々々には長い間隔があった。俺達が恐怖に喘ぐのを楽しんでいるのだろう。月の空の暗闇に星が散らばっていた。
(俺達を玩具にしてやがる)
ヴェテランの傭兵から危機的状況に陥った時の話を聞いた事がある。自分の死を間近に感じる。するといつか恐怖に打ち克ち、己が万能の神になったような気がする。眉唾だ。残念ながら俺は一刻も早く煙のように此処から消えたかった。その発想は直ちに実行され、俺はゆっくり膝を付き、敵が狙い易いように立ち上がる。せめてこれで死の瞬間は自分で決められる。
その時、体に衝撃が走ったかと思うと俺は女に右腕を掴まれていた。
「私は三〇メートルしかジャンプさせられないの。走って」
俺は女に引っ張られ、脚を縺れさせながら駆けた。それから後はよく覚えていない。気付くと連邦軍の野営地に居た。
女は、赤十字の腕章を付けていた。脳にチップを埋め込んだ連邦軍の特殊強化兵士だった。女の超能力で俺は命拾いしたらしい。女は火事場に飛び込んで、事も無げに俺を跳躍させたのだ。
立ちすくみ、未だ恐怖の虜だった俺を女が見つめた。
「素敵な髪型ね」
女は瞳を輝かせた。多分、それが恐怖に打ち克ったことのある人間の瞳なのだ。
俺は空気を入れ換える為に女の部屋の窓を開けた。
「ここで窓を開けても意味がないわ」
「そんなことはない」
女は今、シティで兵士相手に娼婦をしている。退役とともにチップを除去された女は、自分の病気さえ治せなくなっていた。
女は、敵兵に陵辱されたのを機に兵士を辞めた。後背位で激しく腰を女の尻に打ちつけていると、女が泣き出したことがある。思い出したのだと言う。俺は一晩中女を抱きしめて慰め、女はそれをとても喜んだ。だからあくまで女とはフレンドで、金銭の授受はない。だが俺は収入のある度に女に物を貢いだ。
しかし、本当だろうか? あの瞳を持つ人間が本当に男の胸で泣くのだろうか? 恐らく俺は騙されていた。けれども一度始まった芝居は終わるまで止められない。俺はあの瞳に魅せられていたし、女は月の戦闘でVD星人がしたように俺を弄んでいた。
時や場所が移ろっても、相手が人間ならば何も変わらない。
俺は、汗にまみれた女の体をタオルで拭ってやりながら言った。
「結婚しないか」
「やさしくない人には心はあげられない」
「こうやって見舞いに来るのは、やさしさじゃないのか」
「だってあなたは兵士で私は女だもの」
「愛しているかもしれないんだ」
「後ろめたいのよ。愛してない女を抱くのが後ろめたいから、便利な言葉を使ってるだけ」
女は俺の前で常に仮面をつけていた。今では俺もつけて演じている。俺は性欲を吐き出したかった。俺は女の裸を前に自慰を始めた。
「本当のあなたは、こういう人じゃないのでしょう」
「本当の俺?」
女の醒めた言葉に、俺は欲情が萎えるのを感じた。俺はその冷静に抵抗するようにただ、手を動かした。やがて俺は女の顔に目掛けて射精した。
「非道い男」
何もかもが間違いなく嘘だった。そして時間がなかった。俺はゲームからログアウトして現実に戻り出勤した。
エントリ04
仮面の時
川島聖人
久しぶりの鍵盤の白さは、新鮮だった。
(やはり、私のやすらぎの場所は、ここしかない)と美樹は思ったが、ただ鍵盤と見つめるだけで触れる勇気が無かった。ピアノを弾きたいという本能と弾くことが恐いというためらいの中で時間だけが空しく過ぎていく。指が本能のままに鍵盤に触れると、激しい勢いでベートーベンの「運命」を弾き始めた。なぜこの曲を選んだのかわからなかったが、脳裏に譜面が鮮明に浮かび、指はそれを忠実に再現していく。悲しいことに彼女の耳には、ピアノの旋律がわずかに聞こえるだけであった。
(私は、もう音楽家になる資格がなくなったのだろうか。ただ今は、過去の遺産だけでこの曲を弾いている)
そんな悲しみが美樹の心にあふれてきた。
久しぶりのピアノとの触れ合いの時は、彼女の運命の悲しみを一層と深くさせたのである。そんなやるせない気持ちを振り切るかの様に、思い切り両手で鍵盤を殴るように叩き、ピアノの席を立った。空しい響きだけが、教室全体に残った。
美樹は、自分の過去を捨てることを決意した。
(結局、私にとって音楽は何だろうか。私は、この音楽を通じて何を求めているのだろう)
美樹は、生まれながらにして音楽を自然に学び、それを何も疑問もなく今日まで人生の糧として接してきたのである。多くの学生は、ピアニストの夢を追いそれに挫折し、新たな生きる道を探していく。この日本、いや世界でも将来、ピアニストとして生きていける人は、ほんの一握りなのである。
(一度、ピアノを捨ててみよう)それが美樹の決意だった。
休学の手続きを済ませると、自分を変身させるためにデパートの化粧品コーナで今まで買ったことのない派手なメーク用品とチャバツのカツラも購入した。両親からの遺産の全てが無くなった。
「美樹ですけど、今日からレギュラーで働かせてください。私、何でもやりますから御願いします。」
「本当に美樹ちゃん大丈夫なの。無理しなくていいよ」
「私、お金がいるのです。御願いします」
マネージャは、困惑気味であったがこれを了承し、条件として日給3万円でチップと指名料は50%のキャッシュバックで決定した。この条件では、月額100万円程度の収入になり、1年間で1000万円の貯金ができるのである。
(今自分の全てを捨てることができる。私は、私の道を自分自信の力で歩きたい)
時間は既に17時を過ぎていた。ランジェリーパブのレギュラーは、19時前に入店しなければならなかった。早速、入浴し仕事の準備を始めた。最初は、メークからである。今まで美樹は、薄化粧だけでほとんどメークをすることが無かった。ファンデーションを厚めに塗り、アイライン、アイシャドウを派手にすると鏡に写る自分が他人の様に感じた。最後にチャバツのカツラをつけると、美樹の変身が完了した。
(これでいいんだわ)美樹は、変身した自分に納得した。
ランジェリーパブ「LOVE」に着いたのは、開店の10分前である。もうホステスは、10人ばかり揃っていた。その中にジュリもいた。
「どうしたの、その化粧は。まったく別人ね。」とジュリは、驚きの目を向けて美樹へ言った。
「今日から、レギュラーで働きますので宜しく御願いします」美樹は、全員に挨拶する様に答えた。
「そうなの」ジュリの返事は、淡白であったがその目には、やさしさが感じられた。
「美樹ちゃん。今日からレギュラーだから源氏名さくらじゃどう?」
マネージャが言うと簡単に店のシステムやレギュラーの接客の方法を説明してくれた。ほとんどがアルバイト時代に知っていたが、いざ自分がすることにためらいを感じたが(過去を捨てるため)と言う気持ちが美樹の決意を強くした。やがて20時が過ぎると、客足が増え美樹に指名がかかった。指名されたテーブルに行くと、サラリーマン風の中年の男性がいた。
「さくらです。」
簡単に源氏名で挨拶すると、その中年男はいやらしい目つきで美樹の上下水着姿の全身をなめるように見つめていた。
「かわいいじゃないの、さあ、ここへおいで」
少しの時間を惜しむ様に、その男は自分の横に美樹を座らせるとすぐに腰に片手を滑り込ませた。
それから20分が過ぎやがてショータイムの時間を迎え様としていた。ショータイムは、ここの店では1時間に1度あり、追加料金をホステスに支払うと濃厚なサービスをしてくれる時間帯である。
「今からショータイムですが、どうされますか。サービス料は、2000円追加ですけど」
美樹は、ショータイムの追加料金の請求に戸惑いながら、その客に尋ねた。断られることを期待していたが、それとは反対に、財布から2000円を取り出し美樹に手渡した。
「ありがとうございます」
その瞬間に店の照明が暗くなり、激しいツービートの音楽と共にショータイムが始まった。
「さあ、さくらさん!GO GO GO」
美樹は、思い切りブラジャーを外した。美樹の仮面の時が始まったのである。
エントリ05
青葱
葱
猿渡くんの頭の青ネギが邪魔(二又に分かれてる部分)で、黒板が見づらい。こいつの後ろになってからというもの始終ツンとくる臭気が気になって授業なんか受ける気にならない。かといって、人のせいばかりじゃないことはわかってる。どうせ自分はシャーペンで机に穴をあけることぐらいしか、学校ですることなんかないし、でも、どうして学校側は猿渡くんに文句を言わないのだ。なぜ特別扱いだ。僕だってそういうのしてみたい。頭にネギでハチマキするのは遠慮するけど。
ところで、猿渡くんはモテる。顔がいいからだ。男の僕から見ても、美少年だということはわかる。
あ、もう一つ僕が学校でやるべきことを紹介しておこう。香月久美子を見ることだ。彼女はモテるわけじゃない。でも顔はかわいいと思う。かわいいというより美人か? ま、それはいいか。香月さんがモテないのは、暗いからだ。喋らないからだ。笑わないからだ。女の子は愛想が重要なのか。僕はそうは思わないが。でも僕が思わないからといっても、彼女はありがた迷惑だろう。彼女の家は新興宗教を営んでいるという噂がある。話したことないから確認できない。
僕が言いたいのは、二人の類似性だ。どことなく、二人は似ている。プロポーションを除いては。ああ、これも付け加えておかなきゃ。
猿渡くんは、四頭身だ。誇張ではない。本当なんだ。だから、モテると言ってもおたくみたいな女の子にばっかりだ。変な服とか着せられて、困っている猿渡くんを見かけたことがある。それでもかなり羨ましい。
一方、暗い表情で黒板を見つめる香月さんは、細くて青白い。まあ、セクシーとは言えないけれど。
彼女は斜め前の席から、時々後ろを盗み見ている。それに僕は、一ヶ月も前に気づいていた。あ、ほら、また僕を見た。……わかってるよ。僕じゃない。猿渡くんを見てるんだ。だから、僕は猿渡くんのことを心の中ではこいつって言うことにしている。
「おら、ネギ野郎、来いやボケ!」
反射的に身がすくむ。授業中でも乱入してくる我が校の不良達は古き良きものリスペクトだ。校則なんか通用しない。ビール腹の先生が、同じく若くしてビール腹の猿渡くんを、冷めた目で見ている。早く行け、授業の邪魔だと言わんばかりだ。
猿渡くんは毅然として席を立つ。その表情に迷いはない。教室の引き戸まで、淡々と歩いていき、不良の一人に肩を抱かれる。説明しよう。今、猿渡くんを呼び出したのは、木城賢治と言い、僕が知っている中でも三番目に最悪な人間だ。猿渡くんはこれから奴の餌食になり、金を取られ、泣き叫ぶまで殴られるはずだった。そして、そのあとに…気分が悪くなりそうだ。それはかつて、僕の役目だった。
猿渡くんのいなくなった教室の黒板は見やすい。さえぎるものが何もないからだ。授業も淡々と進む。だから、香月さんを見放題だ。だけど、彼女はもう後ろを振り返らない。
香月さんは、なぜ猿渡くんが好きなのだろう。二人が話しているところなど見たことはない。それどころか、猿渡くんや香月さんが友人と話しをしているところなど見たことがない。二人はどういう関係だろう。もしかして、転校前からの知り合いだったりするのだろうか。
それにしてもまた昼休みが来るのだろうか。
僕は猿渡くんに一つだけ、感謝していることがある。
彼は転校してきてすぐ、不良達に目をつけられた。ネギのおかげだろう。本来なら、学校にしてくるものではないはずだ。
僕はあいつといっしょに体育館の裏に連れ込まれ、僕はすぐにお金を差し出して土下座した。僕はあいつにそうするよう薦めすらした。別に僕の言う通りにやったからって殴られないわけではないけれど、そうするより僕のイマジネーションが前に進まなかったから、しかたない。だけど、あいつは拒否した。当然殴られた。あの木城賢治にだ。空手二段にだ。猿渡くんは、倒れなかった。今日みたいに、毅然として前を向いていた。そして、殴りかかった。だけど、殴り返されて、今度は倒れた。だけど、すぐ起きあがって、頭のネギを振り乱して、また殴りかかった。そして、蹴り返された。
驚くほど弱かった。後は、集団でボコボコに蹴られていた。僕は完全に無視されていた。一度逃げたけど、また舞い戻ってしまった。
恐怖の昼休みだ。不良達の呼び出しから解放されて初めてわかったが、自由というのは恐ろしい。自分に一緒に机を囲む友達がいないのにも、気づかざるを得ない。仕方がないので、購買部にパンを買いに行き、唯一の居場所である体育館裏に行ってみた。猿渡くんがいるはずだ。
やはりあの日と同じだった。
無表情に突っ立っていた。不良達はもういない(もちろん、倒れていたりはしない)。猿渡くんの制服は汚れたり、少し破れたりしていたのに、無傷で、血どころか、擦り傷すらない。
あいつは、おれは不死身なんだ、と言って頭のネギを指差した。
エントリ06
仮面日和
隠葉くぬぎ
はい、と手渡されたものに馴染みがなくて思わず私は母に聞き返した。なにこれ。
仮面でしょ、と母は返す。いやそうじゃなくて。私は続く言葉を見付けられないまま手の中のそれを呆然と見つめる。あんたは恥ずかしがりのくせに目立ちたがりだからちょうどいいわよ、と母は言い、昼食の準備に台所へ消えて行った。さすがは母親、娘の事をよく分かっているなあとは思ったものの、それを声に出さずに残された仮面を見る。
それは正しく「仮面」だった。どこかの民族が儀式に使うような、木か何かで出来ているしっかりしたものだ。軽く弾いてみると案外軽い音がしたので、何かの実を削ったものかもしれない。表面はつるりとしており、漆のようなものを塗って仕上げてあるようだった。裏もきれいにしてあるものの、表のようなすべらかさはなく、ところどころささくれている。機能的な意味で言うならこちらをもっと滑らかにしてほしい。
肝心の絵柄は鳥、だろうか。本来、鼻と口があるべき場所にゆがんだ嘴のようなものが描かれており、それ以外の目つきの悪い緑の双眸は、ものを判別する手がかりとならない。全体は黄色味がかった土色で、なんともいえず顔色が悪そうだった。ひとめ見て日本のものでない事がはっきりと分かる。
仮面をためすすがめつしていると、母から昼食が出来たと声がかかった。季節にそぐわない熱いそばを食べながら、あの仮面どこで買ってきたの、と尋ねるとどこでもいいでしょ、と少し虚勢を張るような返事が返ってきた。その答えで私は駅前の量販店だなと当たりをつける。その店は、衣料品が主だが、比較的なんでも叩き売り同然の値段で売っているのだった。母はそこで買い物をする事を恥ずかしい事だと思っているらしく、以前私にヌーブラを買って来た時にも同じ反応をした。後でチェックしてみたら勿論正規品ではなかったが、なんと300円だった。きっと仮面も安かったのであろう。
私はあいまいにうなずくと、それ以上仮面を話題にする事なくそばをすすった。午後、あんたどっか出かけるの、と母は聞き、私は彼氏との約束があったので素直にそれを告げた。母はそばを食べ終わると、あんまり遅くならないようにねと言い、私はまだそばをすすりながらこくりとやった。
昼食を食べ終わり、出かける準備をしようと部屋に戻ると、机に置いておいた仮面が目に付いた。明るい黄色のワンピースに合わせてみると、その濃淡がなかなかいいように思えた。ワンピースのひらりとしたところも、なんだか羽根を思わせる。私はうれしくなってそれを着けてみる。硬い質感は思ったより気にならず、懸念していたささくれを肌に感じる事はなかった。手に持った以上に着けてみると重さを感じない。マスクでないのでぴったりフィットするという感じではないが、今まで着けてきた仮面の中で一番しっくりくると思えた。(特異に被り物が好きな体質でないので、今まで着けた数などタカが知れているが。)
私は部屋にある姿見を見ながら、身だしなみを整えた。髪は仮面の邪魔にならないように後ろで一つにまとめ、よけいなアクセサリは排した。仮面には小さなのぞき穴しか開いていなかったため、視界は狭かったが特にどうとは思わなかった。約束の時間まで少し余裕を持って、私はわくわくした気分で家を出る。
隣の家のおばさんが私を見て、家の前を掃く手を止めた。ちょっと困ったように眉をひそめ、悠ちゃん、とためらいがちに私の名を呼んだ。私はにっこりうなづき、仮面買ったんですよ、と言葉を続けた。口の辺りの仮面が少し揺れた。声は少しこもっていたかもしれない。おばさんは困った顔を崩さずまあ、とだけ言ってまたほうきを動かした。微妙な顔をされたのが多少気になったものの、おばさんは駅前の店を見たのかもしれないと思い至る。確かにヌーブラは見えないものの、仮面のように見えるものは自分がその値段を知っていたら返事をしにくいかもしれない。そんなに安かったのだろうか。私は後でこの仮面の値段を見ておこうと思いながら、待ち合わせの喫茶店に向かう。
喫茶店に着くと珍しく彼氏はもう来ていた。彼氏の向かいの席に着こうとすると、彼は一瞬私を制した。が、すぐに気が付いたようでゆ、う、と一字ずつ区切るように発音した。私は薄く笑いながら席に着き、ウエイトレスにカフェオレを注文すると、頬杖をついて微笑んだまま彼氏を見つめる。
なにそれ、と彼氏は聞いた。私は笑って、かわいいでしょと答えた。彼氏は首を振った。おかしいよ、ここまでそれ着けてきたの、よく恥ずかしくなかったね、外しなよとほぼ一息で言い切られた。私はしばし呆然とした後、正常な思考回路がはじき出してきた答えをゆっくりと拾い上げる。ウエイトレスがカフェオレを持ってくる。私は外し損ねた仮面にカップをぶつけ、そうだそういう弊害もあったなあなんて他人事のように思ってみたりする。
エントリ07
褐色
きなり
空気を裂く高音と平坦な低音が瞬時交錯する。機械音と電子音が拮抗する響き。
その響きで私は青一色の空に焼きこまれた黒いシミになる。
*
早朝練習から帰り玄関を開けると、白いミュールに足を差し入れバックルを止めるヒロ姉がいた。いまから披露宴の衣装合わせなんだけど、付き合わない、と誘われ、一緒に行くことにした。
二階に上がりジャージからTシャツジーパンに着替え階段を中ほどまで下りた時、玄関のドアが開いた。背広姿の章さんは、右手でドアを押さえながら階段で足を止める私を見上げ、キミちゃんひさしぶり、と屈託のない笑顔を作った。
章さんの運転する車の後部座席にヒロ姉と並んで座る。膝に貸衣装のパンフレットを広げ、二人でああだこうだ言いながら頁をめくる。車が揺れるたび、大きくカールした黒髪から百合のような匂いが漂う。この紺のやつがいいかなと思って、と写真を指差す、その白くふっくらとした指を見る。その手の薬指の石を見る。章さんはこっちの赤いほうがいいって言うんだけど、と、その白い指で頁をめくる。ルームミラーに目をやると、ただにこにこと笑う章さんと目が合う。
三方の壁すべてに鏡がはめ込まれた部屋に、幸せそうな笑い声が響く。カラフルなドレスを纏う女性と、それを満足そうに眺める男性。ヒロ姉はまず紺のドレスを、次に赤のドレスを試着した。どちらも体に沿うラインがキレイに出ていてよかったが、肩口からのぞく白い肌と、ドレスに合わせたルーズな結い髪や唇の深紅のコントラストから、赤のドレスのほうがヒロ姉に似合うと思った。どっちがいいだろ、とまだ決めかねているヒロ姉に、赤のほうがいいかもと言うと、ヒロ姉は、やっぱりそうかなと首を傾げつつ、幸せそうに微笑んだ。章さんは、何も言わず、変わらずにこにこと笑っている。
*
帰りの車の中で、私の次の大会の話になった。二週間後の日曜が地区予選だと言うと、章さんは信号待ちで手帳を広げ、午前中はよそで仕事があるから、決勝まで行ってね、と言った。
一年前の地区大会、章さんはヒロ姉と二人で応援に来てくれた。
観覧席にヒロ姉が現れたとき、その隣に仕事道具のニコンを肩から提げビニールの腕章つけた章さんを見たけれど、競技が始まるとその姿は見えなくなった。ただ、ハイジャンプの背中越しに、会場のざわめきとは異質に頭上を走るシャッター音を聴いた。耳だけが自分の体から離れ浮いているように感じた。
その時に章さんが撮った私の写真は、翌日の地方版に載った。逆光でシルエットだけ黒く切り抜かれ、宙で止まっているように見えた。
*
「キミちゃんは、この色が似合うよ。ヒロコさんが使ってるのと同じメーカーのやつだから、肌に合わないこともないと思うし」
誕生日プレゼントに、#32というリップカラーをもらった。鮮やかで透明感のあるオレンジ色。くり出すと蘭の香りがした。夜になってから、一人で鏡に向かい唇にのせてみた。褐色の肌が引き立ち艶めくように見える。口紅ひとつでずいぶん印象が変わることにびっくりした。
*
ジャージを脱ぎ、試合用のゼッケンを付ける。ウォーミングアップをしながら耳に意識を寄せる。余韻を含め他のどんな響きとも違うのに、頭の中で再現しようとするとうまくいかない。
頭の中をカラにする。ただ走り、跳ぶ。日差しに焼かれながら、太陽の光だけで空に焼き付きたいと願いながら、右足を踏み込み身体をしならせ空を仰ぐ。着々と試合は進み午前の部を終えた。
控え室でスパイクのビスを締め直しながら、奥の壁にはめ込まれた小さな鏡を見上げる。薄暗い中に、二週間前より日に焼けた自分の顔が見える。#22の深紅と白い肌が頭をよぎる。同じことをしても、一生追い越せない。手にできない。それならばこんなものはいらないと、スポーツバックの内ポケットに手を入れ、一番奥に仕舞いこんでいた#32を掴む。跳べるのは、黒いシルエットになれるのは、私だけだ、そう思い伏せた視線の先にあったのは砂まみれのスパイク。目を閉じ再現できない中途半端な音を頭の中で繰り返す。館内に響く準々決勝の呼び出し放送。周りにいた選手達が部屋を出てゆく。
靴を履かず#32を握り締め鏡の前に歩いてゆき、試合着のランニングを下から首元までたくし上げる。ヒロ姉と同じ白さが鏡に映る。片手で#32の蓋を外し、全く減っていないオレンジをくり出し、右胸に小さく十字を刻む。肌に溶け見えなくなる。
たくしたウェアを元に戻し、ふたたび褐色の自分を見つめる。
跳べばいい。#32より、黒いシルエット、それが私だ。
跳び続けよう、あの音を聴くために。
エントリ08
ペンダントはお星さま
待子あかね
ヒロシくんのことがすき。窓際の一番後ろのミカの席からは、教卓の真ん前にいるヒロシくんの様子は丸見えだ。堂々と居眠りしている姿も、熱心にノートを取っている姿もよく見える。
ミカは中学二年。一年の時から片想いだったヒロシくんと、二年になって同じクラスになることができた。そしてこの7月の席替えで、ますますすきになった。ことばを交わしたことは挨拶程度だ。いつでも彼の姿をうっとり見つめられる。ますます授業に身が入らない。
ヒロシくんの友人ユキくんとミカは仲がよかった。仲がいいというよりも、席が隣だったのでノートの貸し借りや「書いてあるのがよくわからないから、教えてや」ということで。
ミカが貸した数学のノートが返ってきた。小ちゃな小ちゃな字が、空いているページに敷き詰められていた。
「ユキくん、これなに?」
「なにって、手紙だよ。あ、手紙っていうよりかは、交換日記みたいなもんかな」
「え、そんなの勝手に書かないでよ」
怒り気味にいいつつも、ミカは少し嬉しかった。その内容が、ヒロシくんに関することだと気付いたからだ。
「……ごめん。だけどさ、悪い話を書いているわけじゃないから。読んでよ。で、返事をおくれ。ま、その数学のノートじゃなくてもいいし」
「わかったよ」
この数学のノートじゃなくてもいいといわれても、このつづきを別のノートにする気はすでになかった。これはもうユキくんとの交換日記になっていた。
貸してくれてどうもありがとう。ずいぶん助かったよ。という丁寧な前置きの次に、ユキくんは、ミカとヒロシくんのキューピット役を買って出ていた。「ぼくとヒロシはけっこう仲いいんだぜ。だから、色々と話ができると思うんだ」
ミカは、ヒロシくんへの想いを見透かされていたのがちょっとショックではあったものの、嬉しくてならなかった。応援してくれる人がいるというのは、すきという気持ちへの支えになる。
いつも何気なく話をしているユキくん相手に文章を書くというのはこっ恥ずかしい感じもするが、その気持ちを振り切って返事を書くことにした。
ユキくんへ。うまくいえなくて照れてしまうけれど、なんだか嬉しいな、ヒロシくんとのこと応援してくれるなんて。
ミカは、そんなにヒロシくんと話はしたことはないけれど、ヒロシくんのことを想うだけで胸がいっぱいになるんだよ。どうしたら、いいかなあ。なんかね、プレゼントあげたいね。もうすぐ、誕生日でしょ。だれかから聞いたよ、7月17日って。ふたりのおそろいがいいな。なーんて。
ミカへ。
ブルーがかった透明の星型のペンダントがいいと思う。
ユキくんへ。アドバイス、ありがとう! 星型のペンダントかー すてき。ミカだけじゃ、あんまり浮かばなかったよ。早速、探しに行ってみるね。
ミカへ。
ヒロシが気に入ってくれるといいな。渡す日時とかはここに書いておいてくれたら、ヒロシにそれとなく伝えておくよ。
ユキくんへ。ほんと助かります。サンキュ。(これは、ノートに書いておいただけでまだユキくんには見せていない)
ミカは、少ないながらも友達という友達に聞いて、みなが一堂に進めるアクセサリーやらいっぱい売っているお店へ出かけた。といっても、ひとりじゃなかなか行けないし、よくわからないので、マユについてきてもらった。
マユはとてもセンスがよくって、ミカがあれこれどうしようとうずうずぐるぐる迷っているうちに、いちばんすてきなものを選んでくれたのだ。
「ありがとね、マユ。今日は、付き合ってくれて」
毒舌気味のマユは、
「次、来るときは、一人で来なさいよ」
なんていう。
ユキくんへ。ペンダント買ったよ。明日(って17日だよね)の放課後、図書館に呼んでほしいな。
ミカへ。
わかった。うまく伝えておくよ。あとは祈っているからな。
ミカはうまく想いを伝えられる自信などなかった。しかし、マユに選んでもらった(勿論ミカ自身も気に入った)このペンダントをじっと見つめていると、自然と力が沸いてくる。マユも賛成してくれたこともあって、ミカの願い通り、おそろいにとふたつ買った。ひとつはプレゼント包装。ひとつは、すでにミカが身につけている。
ぎ、ぎいいい。図書館の扉はいつも窮屈な音を立てる。本棚の影からそっと、姿を確かめる。あ、ヒロシくん。あ、あ、ミカを見つけられず、ぼんやりとして帰ろうとしている。いけないいけない。
「ヒ、ヒロシくん」
「あ、ミカちゃん。いたんだ」
そう、ずっとさっきから待っていたの。なんてことはいわない。
「ごめんね。なんかわざわざ来てもらって」
「いいよ、今日は塾がない日だから」
「……お誕生日、おめでとう」
自然を装ってヒロシくんの両手を握りしめ、プレゼントを手渡す。たったひとことのあいのことばが書きつけられたカードも添えて。
ヒロシくんはどぎまぎしながらもすまなさそうに、こういった。
「おなじものをマユちゃんからもらったよ」
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エントリ01
mixer
村方祐治
この世には
黒と白が共生し
馬鹿な利口者と
有能な馬鹿者が住み
人間達が
ちぐはぐしている
海 空との混浴は続く
影 光との存在認識は深く
未来へ切り込む
過去の演算公式
それら
たわわに実った矛盾を
仮面の表裏を
僕らは齧っている
そして
なおも齧りながら
日蝕と四季の折衷を
珈琲片手に眺めるのだ
エントリ02
たとえば
マニエリストQ
たとえば
僕が珈琲を飲むなら
君は緑茶で煎餅を齧る
たとえば
僕が街に出ようよというと
君はめんどうだからという
たとえば
僕は猫が好きだが
最近の君は小犬が好きになっている
たとえば
僕はつい先日花の名前をひとつ覚えたが
君は植物学者みたいに花知り
たとえば
僕は即席らうめんが得意だが
君は冷蔵庫の残り物でご馳走を料理する
たとえば
僕と君にこどもはいない
そうやって
僕と君は
君と僕は
たとえようのない
長い歳月
いまも
いまも
いまも
いまも
いまも
いまも
庭の植木に水をさす
僕は煙草の煙りをくゆらせ
君は煎餅を齧りながら
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●小説部門
きなりさん作「褐色」が第1回 突然バトルチャンピオンに輝きました。おめでとうございます。
推薦作品:きなり
感想:何の文句もありません。口紅だけでこんなに話を拡げられるのはすごいと思いました。
推薦作品:きなり
感想:「褐色」、「仮面日和」が好みです。
「仮面日和」は、ほんとうに仮面を被って出かけるなんて話を平然と書いているところが好きです。当然のようにゆがんだ世界観。
「褐色」は、一回では頭がついていかなかったけれど、思い入れの心理が書けていると思う。
青春なんていうと安直だけど、仮面というテーマのなかで、この作者が一番仮面を被ってなかったと思う。というわけで、一票。
推薦作品:きなり
感想:書けてる。
(アナトー)
推薦作品:きなり
感想:淡々とした中に、ワクワクドキドキしたものを感じたのは自分だけか。遠い昔に味わった感情がふつふつと甦りました。
推薦作品:きなり
感想:小説01。これはオチは結局女の子同士って事でいいですか。
02。一回でよく分からない話でした。今でもよく分かってるのか分かりませんが。もっと盛り込んでもいいのでは。制限2000字ですよ。後個人的には「無題」てタイトルは嫌いです。ロクなのがない。タイトルは顔です。そんなどこにでもあるようなのでせっかくの顔を隠さないで下さい。
03。ああ、ここで落とすのかいいなあと思った覚えが。ただゲームにしては色々複雑で何かに引っかかりそうですよね。
04。ピアノに必然性がなくてもったいないですよね。捨てるだけならちょっと描写割きすぎな気がするし、心情の変化がいまいち見えてこない。それまでもランパブでアルバイトしてたけど(こっちの心情の方がどうなんだ)レギュラーになるって大きな変化なのでしょうか。あとチャバツってわざとですか。変化ならズラ買うくらいなら染めればいいのに。
05。四等身の葱素敵。不思議系は評価甘くなりがちかもなあ。ただ仮面はどこにかかってくるんですか。
06。ものすごいぎっちり詰まってて読む気が失せました。
07。アスタリスク改行の状況変化も安易で嫌いなのですよね。でも読ませる力があった。話が一番きちんとしてたので一票。露骨に仮面ではなかったですが、嫌いじゃないです。この匂わせ方。
08。オチがなあ。どこで繋がってるのか分からないです。あとこの小学校低学年みたいな人間関係はなんでしょう。中二男女なんて一番意識してるときだから男の子と交換日記とかちゃんづけとかありえない気がします。名前ちゃんくん付けとか全体的にキャラクタが幼いですよね。
計5票
推薦作品:葱
感想:「青葱」
猿渡君、すごすぎ。カッコイイしクラスにいそうだし。
推薦作品:葱
感想:頭に葱なんて非常識だから退学させるべきだと思った。
推薦作品:葱
感想:2000字という長さの難しさが際立っている中で、「青葱」がいちばんしっくり落ち着いていた。この発想にまず驚き、そしてじっくり楽しむことができた。微笑ましい気持ちにもなる。
推薦作品:葱
感想:難しい選択でした。2000字ピッタリが3人でその他の人は、バラバラでしたね。
計4票
推薦作品:隠葉くぬぎ
感想:読みやすい文章ですいすい読めた。なんだか狐につままれたような読後感だが、「仮面」だからそれでもいいかと思う。
量販店でヌーブラや仮面を買うお母さんの物語も読みたくなった。
推薦作品:隠葉くぬぎ
感想:仮面日和、面白かったです。
かたひじ張ってない感じがしました。葱
1「2人のlove・story 〜TsukasaとAyaka〜 」 大野勇樹さん
男が泣かされ、笑顔を強制される場面に時代を感じました。
2「無題」小笠原寿夫さん
いたれりつくせりじゃない感じは好きです。
3「仮面」ロヨラさん
始めと終わりのどんでん返しに新しさを感じました。でも、どこかバカにされた感じがするのは、なぜ?
4「仮面の時」川島聖人さん
細かいことかもしれませんが、耳が聞こえないのに会話が成立している場面に違和感を感じました。
7「褐色」きなりさん
女性的な文章だと思いました。
8「ペンダントはお星さま」
少女的な文章だと思いました。
最後に。
悪気はないです。本当です。
推薦作品:隠葉くぬぎ
感想:小説は格が違う。くぬぎんが飛び抜けた。誤解を恐れずに云えば、基礎教養の差だろう。(M)
計3票
●詩部門
マニエリストQ作「たとえば」が第1回 突然バトルチャンピオンになりました。
推薦作品:マニエリストQ
感想:「mixer」
初めの方、概念的で苦手なのですが、
仮面の表裏を
僕らは齧っている
という言葉に、魅力を感じました。
五連目も、なるほどと思いました。
「たとえば」
詩自体はかなり好きです。
しかし、仮面というテーマで、これはかなしい気がします。
うーん、仮面のようで仮面じゃないから、仮面でいいのでしょうか。
夫婦の、許しあえている相違点のようで、「いまも」の連続にすこし不安を感じました。
「たとえば」に一票。
推薦作品:マニエリストQ
感想:たとえば、良かったです。
独り者には、毒です。
エントリ1「mixer」村方祐治さん
仮面は潤滑油の側面もあるのではないでしょうか?
なんて、偉そうに言えませんけれど。(葱)
推薦作品:マニエリストQ
感想:縮まらないけど気まずくもない距離が、苦くて。
推薦作品:マニエリストQ
感想:僕と君、
そしてそれらの相反する事象と、
同時に流れる時とのコントラストが美しい。
特に
「長い歳月」
これは、前節に交わる
「たとえば…」
の連と対合して、
大きな効果を生み出している。
内容的にも、
日常的で読みやすく、
所々に妙技の光る、
シンプル且つ大規模な、
清澄な空気を感じさせる、
そんな 良い詩だと思う。
新しい受容が、
メッセージとなって
自然に織り込まれているのも、
評価に値する。
「仮面」
という題から、
此処まで人という像に接近できるということに、
ただただ驚嘆を覚えるのみである。
推薦作品:マニエリストQ
感想:全く趣の違う2作品だがどちらも好みなのでどうしよう?
悩みましたです。
「仮面」というテーマにこの詩をぶつけてきたマニエリストQさんに。
男と女は永遠に平行線なのか……てなことを思ってしまいました。
推薦作品:マニエリストQ
感想:これは、村方さんの詩を受けたQさんの返答の詩? 珈琲で終わって珈琲で始まる部分とか、齧るとか、共通点が多いように思いました。
村方さんの作品は、
(1)<この世には 〜 過去の演算公式>で世界の様子の説明と描写。
(2)<それら 〜 齧っている>でその世界に対して<僕ら>がどう行動しているのかを描写。
(3)<そして 〜 眺めるのだ>でその<僕ら>の行動をさらに描写。
世界観と、その世界観がつくりだした世界空間に対して<僕ら>はどのように処しているか、に関する詩、だと思いました。(1)で色、人間、自然などを取り上げながら世界観を説明し、その膨らんだイメージを(2)の<それら>でどっしりと受け止める構成は気持ちよかったです。
(2)の部分に違和感がありました。<矛盾>とありますが、(1)<黒と白が共生>し、(3)<日蝕と四季の折衷>する世界ならば、その世界とは性質の違うものどうしが組み合わされた矛盾のないものではないでしょうか。
それとも、性質の違うものどうしが組み合わされた世界があること自体が<矛盾>なのでしょうか。もし<矛盾>がそういったことを示していたのであっても、違和感は残ります。私は、矛盾するものというのは、言葉だけ、人間だけなのだと思っています。人間は現実の法則に反するもの、つまり矛盾するものを言葉で作ってしまう。(1)で<黒と白が共生>というように世界を描写していますので、世界はそのような在り方をしている。現実にそのように在るのだから、矛盾していないのでは、と思います。世界はまったく矛盾していないのに、人間が勝手に矛盾している、と感じているだけなのではないかと思いました。
Qさんの作品は、
(1)<たとえば 〜 料理する>で<君>と<僕>の対比を点描。
(2)<たとえば 〜 こどもはいない>で<君>と<僕>の静的な一致を説明。
(3)<そうやって 〜 齧りながら>で<君>と<僕>関係が長い時間続いているものだということを示し、そして再び<君>と<僕>の動的な一致、対比を描く。
<君>と<僕>の行動の対比と一致から、二人の関係が浮かびあがる。
(1)の関係の点描から、<君>と<僕>はそれぞれ違う行動、違う思考を持っていることが分かる。けれども(2)と(3)で、二人の行動、思考が一致したと思われる部分がある。
>僕と君にこどもはいない
>庭の植木に水をさす
この二箇所。(1)では<君>と<僕>の行動や思考などが<君は><僕は>などと、それぞれ主語を分けた文で記されていたのに対して、ここでは二人の行動が一致していて、主語が<僕と君>のようにひとつになって一文で示される。
<こどもはいない>という部分からは静的なイメージを感じた。
なぜ、静かな印象を受けたのだろうか。(1)から夫婦や恋人同士を連想しており、少なくとも一緒に暮らしているであろうと想像できる男女の間において子供がいないことに、さみしさを私が感じ取ったからであろうか。しかし子供を作らないことは必ずしもさみしいことであろうかというと、そうとも言い切れない。子供を作らないという決定が、生産的な気持ちを<君>と<僕>に呼び起こす可能性もないではないだろう。
ただ、(1)で続いた<君>と<僕>の行動・思考の違いの後にようやくでてきた一致する部分に、<いない>という否定が現れたことに、言葉の静かな佇まいを感じた。
静的な一致のあと<いまも>が連呼され、構成としては間も兼ねて、二人の関係が長く続いていることが示される。そして<庭の植木に水をさす>という一致。<いない>という否定の一致に比べ、ここからは動的なイメージを感じた。
植木に水をやるのは決して激しい行動とは思えない。しかし(1)の<君>と<僕>の違いの点描を読み、それに続く<こどもはいない>の静的イメージを感じ、そして<いまも>の間で焦らされた私にとっては、<庭の植木に水をさす>が現実にはささやかな行動であっても、<君>と<僕>の間においてはとても意味のある行動なのだと思えた。<君>と<僕>は行動や思考が違っていても、子供がいなくても、長い時間、ただ植木に水をやってきた。<庭の植木に水をさす>、この日常的な行為を表す一文によって、(1)の点描などから判断すれば見えづらい二人の関係のあり方を示している。
そして最後には煙草と煎餅で、再び<君>と<僕>の対比が描かれる。これはアウトロで、飾りだ。ゆるやかな着地の感覚が心地良かった。
すれ違いを見せる二人の関係が、<庭の植木に水をさす>という日常的行為によって保たれている。すれ違いもあるし、長い時間も経過したけれど、ひと息つくように日常的な行為に感情を寄せる。そしてそのように構成されている。
心情の拠り所を日常的行為に求めるのは、私は嫌いだ。植木に水をさした翌日は、その植木に灯油をかけて燃え上がらせたい。変化が好きだ。灯油なんていま高いけど、今日と同じ明日ならいらない。
しかしながらこの詩に惹かれるのは、「仮面」というテーマで書かれているというところだ。
この詩のどこが仮面なのだろうかと思う。(1)で部分に感じられる関係のすれ違いを仮面でもって誤魔化し、しかしそれでも日常的な<庭の植木に水をさす>という行動が続き、二人の関係は保たれているよ、ということなのか。この場合、仮面を被っているのは(1)のすれ違いの部分だけだ。仮面を外せば、日常的行為が現れるという仕組み。
それにしても、これほどかっちり構成を組んだ作者が、シンプルな感情を描くのだろうか、と思う。きれいに計算され、てぎわよく計画されたものには裏があるように思えてならない。
この詩そのものが仮面のように思える。つまり、すれ違っているようだけど日常に感情を寄せるから関係が続くんだね、という感情の表明自体が、世間に対する仮面。それはあたかも男が女を、女が男を、どっちでもいい、とにかく口説くときに被る仮面のようだ。(ロヨラ)
計6票
推薦作品:村方祐治
感想:両者なぜか感じが似ていて、反復と対比の構造が一緒。珈琲飲んじゃったり煎餅かじっちゃったり。同じ作品を二度読んでしまったかと思いましたよ。
だからなんとなくどちらが勝ってもいいのだけれど、Qさんのはらうめんが鼻につくので。あそこは素直にラーメンでいいと思うなあ。
推薦作品:村方祐治
感想:詩はどっちも好きだね。どっちも衒いが無くて好感を持った。 ただ、言葉の冒険をしているのは村方さんだなぁ。決定。(M)
推薦作品:村方祐治
感想:(書き込みがありませんでした)
推薦作品:村方祐治
感想:全ては「対」だ。男と女。鉱物と植物。空と海……。ところが、男と女には、実はそのどちらでもあり、どちらでないものが存在する。一般概念外の無視された事実だ。では、空と海のあいだには何があるのか。多分それは、たとえば「何も無い」といった、人間のつくりだす「観念」という代物なのだろう。そして人間は、観念という表裏一体であろう仮面を、珈琲をすする日常の中で、妄想狂となって未来へとひたすら肥大させていく。全てをないまぜにかき回して……mixerのごとく。壮大ですね。逞しくもある。「mixer」に、そんな詩を感じとりました。
計4票
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