二.130万の壁その1 配偶者の場合 もう一つの大きな区切りが、130万円。通称130万の壁である。 これは、社会保険に関する事で、収入が130万円以上の場合は、自分で社会保険料を支払わなければならない。一般的には、年金と国民健康保険(と介護保険。扱いは健康保険と同じ)の3つが主である。尚、130万円は収入であって、所得ではない。必要経費の交通費も含まれる、各種控除も関係ない。 養っている者が厚生年金や共済組合等に入っていて、養われている者が配偶者である場合は、保険料負担は発生しないのだが、収入が130万円を超えると、自分で社会保険料を払う必要が出て来る。 これが、・社会保険における「扶養から抜ける」状態 である。 尚、年金の場合は「第3号被保険者」から「第1号被保険者」に代わり、健康保険の場合は「被扶養者」でなくなるので、制度的には別々の事をひとまとめに言っているが、収入130万というラインは同じである。 「なるほど、130万になると保険料を払わなけりゃいけないのか」と考えるのは早計で、・社会保険料を払うようになると「扶養から抜ける」 という基準もある。 鶏が先か卵が先か、のような話だが、社会保険の加入条件は正社員の3/4以上の時間、労働をしている事だからである。極端に給料の安い会社では、あり得ない話ではない。 130万円を超えれば、国民年金、国民健康保険の保険料の支払い義務が生じる。国民健康保険料は年度や納税額で変わるが、ざっと見積もっても20万近い金がマイナスになると考えられる。自分で払う事による利点はあるのだが、目先の年間20万と、将来や緊急時の余剰な保障とを比べれば目先の20万を取るパートタイマーは多いだろう。・130万は配偶者にとっては、絶対的な壁。その2 被扶養親族の場合 20歳を超えていれば、扶養であろうがなかろうが国民年金は強制加入なので、壁はない。 国民健康保険については、収入が130万円を超えた時点で「被扶養者」でなくなる為壁はある。・収入が130万を超えると、国民健康保険の支払い義務が生じる そして、この支払いは、扶養控除が付くだの付かないだのという「養っている側」の話とは異なり、パートタイマーが自分自身の懐が直接痛む事になる。 そしてもう一点、勤労学生控除を受けていた学生の場合は悲惨とも言える事になる。・130万円=基礎控除38万円+勤労学生控除27万円+給与所得控除65万円 130万円を超えると、扶養親族でなくなる為に養っている側の扶養控除がなくなり、勤労学生控除がなくなりその分の税金が突然出現し、国民健康保険の支払い義務が生じる。・130万は学生にとっても、絶対的な壁その3 超えるべきか、超えざるべきか パート収入だけど独り立ちするんだ、とか、親の世話になりたくない、とか、特にこだわりがないなら、収入130万円の壁は超えない方が良い。 そして超えるなら、150万よりも上のラインを目指すべきである。 130万円のラインに触れるパートタイマーというのは、概ね他に仕事を持っているタイプであるので、シフトをスカスカにしようとしていたら、「いっそ稼ぎきっちゃいましょうよ」といった進め方をする方が上手く行くかも知れない。三.壁を理由にパートタイマーが休もうとした時 調整の為に休まれるという事態は避けた方が良い。まずこれが大前提。 パートタイマーは収入を増やしたくて働いている。休みというのは、休みたいから取る。これが真っ当。 特段休みたくないのに、収入を減らしたいから休むというのは、不自然が二つ入り込む事になる。これを続ける事は、快適な労働環境から離れていくということである。 加えて、シフト調整が必要な職場の場合、調整の為に休まれると、他にしわ寄せがいく。130万を超える事を厭わないフリーターがいた場合、シフト調整はかなり容易になるので、普段からそのようなパートタイマーは大事にしておくと良い。 103万の壁で、休んでも大して利益にならない場合。「手取りがマイナスになる訳ではありません、かかるのは税金だけです」というような助言する事で、休む事を止められる可能性がある。 差が出てしまう場合、「いっそ、その分もプラスになるだけ働いては?」と持ちかける。上手くやれば、フリーター同様に上限を気にせず替わりをさせられる便利なパートタイマーとして使えるようになる。 130万の壁となると、ややこしくなって来るが、そもそもそれだけ働いているパートタイマーは、厚生年金の加入対象になる可能性が高い。人事辺りに確認後、厚生年金加入対象になっていれば「あなたの場合、130万には壁はありません」というような事を説明すれば良い。ただ、このタイプは他人の替わりに出勤させるのは難しい。既に、今の時点で休みの日や体力的余裕が残っていない可能性があるからである。調整の休みをなくせただけで御の字と思うのが吉。 調整をしないとどうしても損になる、というパートタイマーの場合、替わりに出勤するパートタイマーに話を付けるのは、あなたがやった方が好感度が上がる。その際、社交辞令ではなく、本気で探すつもりでやる事。 但し、パートタイマー自身が頑なに自分で替わりを探すと言う場合は、出られそうな人の情報を渡す程度で良い。彼ら彼女らは、ほぼ間違いなく仲の悪いパートタイマーや信用ならないパートタイマーがいて、そいつに自分の仕事を任せたくないのである。 パートタイマーが働いた時間を短く申告するような最終手段を使おうとしている場合は、極力休みを取らせる事。不払い残業が労働時間の泥棒なら、労働時間の過少申告は店の主人が客のポケットにこっそり商品をねじ込むようなもので、あまりに異常な状態である。 くれぐれも「パートタイマーが勝手にやってるんだし」というような言葉は慎む事。悪いのは、1円でも超えたらマイナスになるような半端な制度を作っている政府や会社である。文句は家族や友達などの情報の漏れない相手にだけ言う事。■用語解説○年収 その年の1月1日から12月31日までの間に貰ったお金の事。 社会保険料を自分で負担するかどうかは、これを基準にする。 給与の締め日が31日で、翌月25日払いの場合、12月に働いた給与は翌年1月に受けとる事になる為、「すわ103万超える!」と、12月に慌てて休んでも調整出来ない。○収入と所得 収入は貰ったお金全ての事、所得は必要経費を除いた後のお金で、「利益」と考えると良い。 税金は所得にかかる。 パートタイマーの場合、通勤の交通費分が入るのが収入、入らないのが所得という程度の差にしかならない場合が多い。○経費 収入を得る為に使った金。所得から差し引く事が出来る。 パート労働の給与所得の場合は、通勤の交通費が当てはまる。正社員の場合は、転勤の転居、資格取得、研修、単身赴任時の旅費の一部等が対象になるが、パートタイマーには縁がない。○源泉徴収 給料が振り込まれる前に税金が引かれる事。徴収の洩れを減らし、徴収のコストを削減し、何より税金を取られている意識を薄くさせ政府への批判を減らす効果がある。○控除 税金のかからない部分。税金の値引きクーポン券のようなもの。 控除で定められた金額が所得から差し引かれ、残った金額だけに税金がかかる。 控除が所得を上回っても、税金はゼロになるだけで、マイナスにはならない。この辺もクーポン券っぽい。 全ての収入のある人には、基礎控除という控除が存在する。パートタイマーが受けとる賃金は給与で、給与には共通して給与所得控除という控除が存在する。この二本柱がパートタイマー収入の最低限の控除であり、所得をこの中に収めておけば、びた一文税金はかからない。○社会保険料 社会保険の掛け金の事。 支払った分金額がそのまま控除の対象となるが、103万や130万の壁を気にしているパートタイマーは支払いを免除されている事が多い為、あまり必要のない知識。 結構色々あるが、年金、健康保険、介護保険辺りが皆に共通する三本柱と思われる。引用:国税庁ホームページ「No.1130 社会保険料控除」http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1130.htm(1) 健康保険、雇用保険、国民年金、厚生年金保険及び船員保険の保険料で被保険者として負担するもの(2) 国民健康保険の保険料又は国民健康保険税(3) 介護保険法の規定による介護保険料(4) 国民年金基金の加入員として負担する掛金(5) 厚生年金基金の加入員として負担する掛金(6) 労働者災害補償保険の特別加入者として負担する保険料(7) 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、恩給法等の規定による掛金、納付金又は納金(8) 地方公共団体の職員が条例の規定によって組織する互助会の行う職員の相互扶助に関する制度で、一定の要件を備えているものとして所轄税務署長の承認を受けた制度に基づきその職員が負担する掛金(9) 独立行政法人農業者年金基金法の規定により被保険者として負担する農業者年金の保険料(10) 国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律の公庫等の復帰希望職員に関する経過措置の規定による掛金(11) 健康保険法附則又は船員保険法附則の規定により被保険者が承認法人等に支払う負担金 ○所得税と住民税 所得税も住民税も所得にかかる。 税率は変わる事があるので、ネットで検索して調べる場合には、記事の日付を確認する必要がある。もっとも、記事を書いた人間自体が間違える可能性もあるが。国税庁のウェブサイトなら、間違いはない。「国税庁」で検索。 所得税は控除の終わった後の所得にかかるが、もっぱら、ともかく先に徴収しておき、後で控除を含めて再計算して返金するという形を取っている。 住民税は前年の所得を元に後から取るタイプの税金。ただ、3月に確定申告をしてその後に住民税の徴収がある、という形であるから、両方とも「税額が確定するのは働いた翌年」となる。○年末調整 その会社で年間に支払った給与を計算し直して、本来かかるべき税額を出し、差額を調整する事。 最初に源泉徴収された時点では、控除を考えずに税額が計算されている為、余程の例外がない限り調整額はパートタイマーにとってプラスの金額となる。つづきTOP