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パートタイマーや派遣労働者が奮闘をしいられている昨今。彼らとのつきあい方を説くことにより、あぶり出されてくるパートタイマーたちの主張と願望。日本の雇用は何処へ行くのか!? 和田知見が鋭く、時にはコミカルに、逆説としての現代社会をとらえる。
Photo by Kaori


No.03

4.仕事との接し方
一.属性別傾向
 性別年齢立場など、その人の属するもので、ある程度考え方や価値観は変わって来る。大づかみになりすぎない形で、属性に対する認識を深めて行こう。

その10 性別による属性
 未婚の状況では、男の方が力仕事に向いている、女の方は並列的で万遍なく注意を払う仕事に向いている、程度の差しかなく、これも個人差。
 しかし、既婚者になると話は別。先進的な考えを持ち、世間の目に耐える強靱な力を持たない限り、女は男に養って貰おうとする、男は女を養おうとする。
 男は金銭を得る仕事をし、女は家事や子育てを多めに請け負う。
 従って、パートで働く場合、既婚者の男は女を養えない収入の少なさに不満を持ち、既婚者の女は他の仕事に費やす余力が減る事に不満を持つ。
 従って、時間は拘束されず給料は少ないというパートには女が集まりがち。差別構造には違いないが、あなたにも筆者にもその「常識」をひっくり返す力は恐らくまだない。
 既婚の女で、子育て中(子供が高校生まで)の場合は、同年代の女がいると子供をきっかけに話が合う。友達が出来ると、定着し易い。ずっと年齢が上になると、今度は親や舅、姑の介護の事で、やはり同年代の女と話が合う。口が裂けても「おばさん」と呼んではいけない。心は女学生。
 男は、飲み会には顔を出すが、雑談はさほどなし。共通の話題は家庭や前職よりも、今のパートの仕事内容。言葉は道具、それが男。
 未婚の場合は、男女ともさして話には加わりにくい。しかし、親子ほど年齢の離れた人間が混在している場合は、良い潤滑油的存在になる事も。

その11 年齢・年代
 十代。学生、中退、卒業直後。
 仕事ってどんなの? この業種、興味あるな。小遣い足りないよ。
 パートで働いているのは、先を見据えての事。生活が苦しくて、というのは今の時代流石に少数派。夢なり目標なりが大なり小なりある。別にあなたの会社に骨を埋めるつもりはない。
 上の世代が、パートという立場にある種の劣等感を抱くのに比べ、この世代は逆に同世代よりも収入や社会経験が多くなり、優越感を抱く元になる。
 メモが要らないほど記憶力は極端に高い。常識はない、というよりも基本の常識が違う。納得のいく形、興味を持たせる形での指導は覚えが良いが「こんなの常識だろ」風の事を言ったら混乱するだけ。
 長期勤め上げるのは稀有で、実務経験が少ないので使えないと考えがちだが、覚えが早いので実質的な戦力になる期間は長い。
 他の年配のパートタイマーへの刺激にもなる。
 何か業績を上げた時は、素直に褒めれば良い。
 「若いから覚えが早いね」「若い人は違うね」は禁句。それは「若さの他には何の取り柄もないけどな!」と言っているのと等価。ケンカを売りたかったり、辞めさせたいなら連発すべし。

 二〇代、既婚未婚で大きく違う。
 この先子供が生まれたらと思うと、少しは働いておかないと。ヤバい、就職し損ねた、とにかく今日の糧を得よう。
 既婚者はひとまず居場所が出来ている。パートに執着なんかする必要がない。辛くとも苦しくとも二人なら生きていける。子供が出来たら即退職。無論、パートに産休を認めない職場が原因。
 独身でパートに従事している時点で、人生設計をどこか狂わせつつある焦りのただ中にいる。自己評価低めの為、総じて評価に弱い。

 三〇代、いわゆる団塊ジュニア。
 まだだ、まだ終わらんよ! 一発当てれば、就職出来れば、こんな仕事すぐ辞めてやる。出費が多いわ、家計を助けなきゃ。
 数が多く、競争慣れしているが、パートに従事するのは競争を外から眺めていた人間。
 今まで上がり調子だった記憶力や体力の低下が見え始める時。

 四〇代。
 厄そこそこ、寿命的に言って折り返し地点。
 やばい、定職ない、仕事しなきゃ。時間が出来た、一度働きたいと思ってたのよね。
 子供がいれば、ぼちぼち独り立ち。育児をしていた人なら、第二の人生を考え始める時。
 自分の能力や状況の限界をぼちぼち理解し始め、現状に対し良くも悪くも納得し始める。意外な行動は取らなくなる。

 五〇代。
 五十五歳定年という時代もあった。
 人生まだ長い、老後に備えて稼いでおこう。早期退社したけれど、遊んで暮らせる程の財産もない、何でも良いから働こう。
 新しい事を覚えるのは苦手で、本当に無理となると始めて三回程度で辞める。
 いわゆる「パートのおばちゃん」年齢だが、個人差とセンスで外見が全然変わって来る。
 早期退職やリストラ組はこの辺り。例え貯蓄がなくとも、年金や保険で一財産出来上がりつつある。定年退職はないのだから、このまま働けなくなるまでこの職場で、とも考える。

 六十代。
 団塊の世代。
 さあ、これから第二の人生、終の居場所として仕事を探そう。
 要介護から若手国会議員まで、個人差大。働きに来るぐらいの人間は、後者。物覚えは悪いので、仕事に合わせる事は難しいが、仕事を合わせる事で対応。不払い残業に抵抗の少ない世代だが、舐めるとしっぺ返しを喰う。
 年金受給資格に手が届いている事が多いので、金銭的に逼迫する事はない。
 円満退職組は、仕事に関わる部分は素直で誠実に働くが、飲み会などの場では上から目線に。ともすれば、親、祖父母の年齢、まあ、無理もない。人間歳を取れば子供に戻る、あなたが大人になって我慢。

 七十代
 介護保険も使える年代。
 まだ働けるんだから働こう。楽隠居で盆栽の手入れって、一体いつの話だ。この機械のメンテ方法は、自分しか分からないし。
 六十代から引き続きで働いている場合多し。新たに入って来る、という事は稀。そして、新たに入って来た場合、覚え悪く忘れ易く使い難い。人事担当を恨むべし。
 継続して働いている場合、何某かの専門家になっている。多少非効率に見えても、担当の仕事は安心して任せて可。ヒヤリハットが出始めたら退職勧告の準備。注意して直るような簡単な話ではなく、老化。本人の自覚は薄い。誰もが通る道、誠意と感謝で送り出す。
 退職のタイミングは、体力の限界を感じて。半年前まで元気に働いてました、なんて利用者は介護施設では珍しくない。

その12 国籍
「オレが嫌いなモノはたった二つ! 人種差別と黄色人種だ!」

 外国人労働者という意味でも、日本に帰化した人という意味でもある。
 海外から来た場合、ビザの更新一つ取っても手間がかかり、時間的な拘束がある。言葉の壁、文化の壁、近所の目、警察の対応等々、ストレス源は多い。子供がいた場合、この子をどのように育てるかという選択の中に、どちらの国を母国とすべきかという葛藤が加わる。
 このような難しい人々にどうやって接していくか。

 答えは「特に気にしない事」。
 日本人と同様の仕事を割り振り、同様の対応をする。
 同じ時給を支払っている以上、扱いが同じなのは当然である。多少肌の色と顔立ちが違って敬語が上手く使えず言葉遣いが悪いだけのただのパートタイマーに過ぎない。そしてそれらの特徴は、個人的に付き合う場合には大きな問題だが、仕事そのものには関係がない。
 実際に何か問題が生じた時、初めて対処すれば良い。そもそも入国審査をパスしているのだから、それだけで問題を起こさないという保証が一つあるようなもの。
 他の日本人のパートタイマーが色々文句を言う場合は、極端に差別意識の高い人間が一人いて後は付和雷同。そういう差別君を見つけ、ピンポイントで注意する事で対処出来る。所詮は感情論なので、「ほらやっている仕事量も同じですから、日本人外国人問題ありませんよ」というような理詰めで攻めればグウの音も出ない。

 逆に給料が日本人より少なく設定されていた場合は、極端にややこしくなる。
 第一に、あなたの会社が労働基準を守っていない可能性が出て来る。労働基準局のガサ入れ一つで、あなたがトカゲの尻尾切りされる可能性がある。
 そして、そのような労働条件を甘んじて受け容れているという事は、そのパートタイマーが不法就労の可能性もある。
 敢えて言うならば、あまり親しくなりすぎずビジネスライクな態度を保つ事。出来るだけ勤務時間内で終わるように仕事を割り振る事、職場を綺麗に明るく保つ事。給料を上げる権限がない以上、労働環境を快適にして少しでもストレスを減らすしかない。いずれにせよ、導火線に火が点いている状態には違いない。

その13 既婚・未婚
 結婚していない人間は負けた犬だ、結婚した人間は鎖を付けられた勝った犬だ。

 未婚。
 世の中に「『まだ』結婚しないの?」と言う人間がいる限り、未婚者に安住の地なし。常に居心地の悪さに苛まれる。
 二十代以上の男のパートタイマーに、この話題を振るのは危険を伴う。酒の場だとそのままビール瓶を割ったもので縦に殴られる可能性もあるので注意。あなたは初めてでも、彼にとっては数百回と言われている事。
 逆に「ああ、それよりまず、小説で名を成したいんで」「したくなったら、すると思いますよ」等と涼やかな笑顔でいなすナイスガイの場合、本当に結婚願望がない。いずれ結婚しない生き方風の本を出版して大儲けするので、仲良くしておくと良い。が、無論、頭ごなしに「三十三歳で独身なんて駄目人間だ、どっかおかしいんじゃねえ? 病気だろう」等と言い続けられたら、温厚な筆者でも気を悪くする。いや、仮定の話。

 既婚。
 既婚者の場合は、概ね安定。何しろ周りがうるさくない。多数派の強み。
 但し、既婚女性、つまり配偶者控除の対象になる場合は、収入の調整をする場合が非常に多い。こういう人は、実際に扶養から外れた時にどれだけの収入減になるか計算もしていないので、闇雲に103万の壁を守ろうとし、ともすれば有給を使わずに休んだり、残業代を請求しなかったり。
 チームプレイが必要になる職場では、年末近くに人が足りなくなる可能性がある。
 103万と130万の壁について、損益の分岐点を計算して見せると、ぐんと信頼される。
 小さい子供がいる場合、送り迎えや食事の仕度等のスケジュールによって生活サイクルが決まっている場合が多い。残業、早出の依頼は極力避けた方が良いし、PTA関係の行事や、子供の急な容態変化で休まれる事もある。傍目からはどんなにどーでも良い事に見えても、パートタイマー本人にとっては不可抗力という認識なので、「また休むんですか」「どうにかなりませんか」「ベビーシッターでも雇ったら?」的な発言は完全な禁句。替わりがいないような業務を任せない方が良い。

 離婚者。
 結婚の悪い部分を見た事になる。未婚者に近い状況だが、周囲の人間が無闇に結婚について訊いて来る事はなくなる。比較的精神は安定しており、気楽。
 女の場合問題は、金銭的な面。一度得た生活水準を下げるのは辛い。離婚時に多額な慰謝料でも貰っていない限り、不安は付きまとう。子供がいれば尚更。養育費は相手が払わなければ誰が肩代わりしてくれるでもない。再婚にせよ、正社員になるにせよ、あまり長い勤務は期待出来ない。
 男の場合、正社員になっていないのに結婚をしていたという状況なら、筋金入りのフリーター気質。逆に、正社員でなくなった為に離婚、というコンボが繋がっている場合は、彼に新しい仕事が早く見つかる事を祈りつつ、突然抜けられても困らないような仕事を割り振る必要がある。

その14.職歴
 前職の有無で、人間は変わる。
 色々な職を転々としている人は、やはり続かない。同じ職場で一度辞めて出戻った人もまあ何だかんだで続かない。何だかんだで、常識的な「感覚」というのはバカにならない。

 前職ナシ。
 学生から、ニートから、主婦から、誰でも最初は初めてだった。
 仕事に対する常識はないが、変な「常識」も持っていない。ノートは新しいページの方が書きやすく読みやすい。
 初めての仕事は当然やる気もある、気負いもある。そうでなければ、一番最初の仕事にあなたの会社を選ばない。夢なり希望なり期待なり、何かしら持っている。更に給料への嬉しさも大きい。職場によるだろうが、一ヶ月残る人間は、概ね戦力になる。一年後も続けていれば、長いお付き合い。
 褒めるかけなすかで言えば、褒めた方が良い。打たれて伸びる人間なんてのは、現実にはそんなにいない。まして、パートは正社員よりもなるのも辞めるのも簡単。

 前職が正社員。
 何だかんだで正社員、即戦力の実力はある。
 しかし他に生活の基盤がなく、熟年老人の年齢でなければ、どんなに楽しそうに仕事をしていようが明らかに足かけ。パート労働でも、週二〇時間以内なら雇用保険は受けられる。
 遠くない将来「就職先が決まったので辞めます」となる。めでたい事だから文句も言えない、長く勤めると思いこんで配置をしていると、顔で笑って心で泣く羽目になる。

 前職が同職。
 当然、前職と比較する。同業種であれば尚の事。前職を辞めた本当の理由なんてものは、履歴書には現れない、上司には絶対話すべくもない。だから気にしても仕方がない。少なくとも、求人広告なり何なりの条件は、前職よりも本人向きだったのだろうから、比べられて悪い事はない。敢えて付け加えるなら、人間関係が原因で辞めている事が割とあるが、それも茶飲み話で出る程度。心の底は分からない。
 前職を長く続けていたからと言って、長く続くとは限らない。手に職や資格があれば尚更引く手は数多で、転職に抵抗なし。国家資格なら尚更。使えると判断したら、ぞんざいに扱わないように、但し贔屓は絶対バレないように。人間関係は退職の鍵の一つ。

 前職が別種。
 同種と別種は様子がガラリと変わる。
 転職回数と労働期間がすなわちその人のパート労働のリミット。長々とやっているようならやっぱり今回も長々と続ける。但し、会社自体が潰れたり、仕事自体が一定期間でなくなったり、出産や育児で離職していたり、完全な不可抗力の場合もあるので、盲信は禁物。
 長いのと短いのが交互にあるような場合は、やっぱり何となく規則的に次が決まる。ジンクスの類。
 人材としては、職業人意識は持っているので、常識は心得ている。一社に勤め続ける正社員より広い視野を持っている場合もあり、優秀な人材たり得る。
 ただ前職を意識して意見を求めたり、仕事を任せる場合は注意。パートの給料は一律、特殊技術による手当ても昇給もない。良いように使われていると思われたら最悪。逆に、自分から前職技術を活かして働いてくれる場合は、この職場を気に入っている証拠。いずれにせよ、そのパートタイマー自身が給料以上の働きをしている事を自覚しているので、あなたの方は礼をきちんと言う事。頭を下げても財布の中身は減らない。

その15.兼職
 兼職と言っても、あっちが主か副かでも違うし、そもそも家事をカウントするなら、パートタイマーの兼職率高しとも言えるが、一応それは数えない。

 同種パートと兼職。
 たっぷり働きたい人にとっては、細切れ勤務ばかりで物足りないのがパートの一側面。それなら正社員になれば良いようなものだが、正社員はボーナス、社会保障、不払い残業、転勤等々、会社にも働く側にも負担を強いる。最近の労働者が甘えているのではない、かつての経営者がクズ野郎だっただけ。証拠に、公害で何人死んだ。
 それはともかく、彼らが欲しいのは、まとまった労働時間、つまりは給与。二つの仕事を、パズルを組み合わせるようにシフトを組んでいるから、これがかち合った時は給与が低い方が切られる。あなたの会社が、労働時間に柔軟性がないけれど、ちょこちょこ動くような職場であれば、長続きは不可能と思うべき。

 自営業と兼職。
 今の仕事ではちょっと収入が足りない、家族がそれなりにやっている、夜開店で昼が空いた、等々。あり得ない状況ではない。
 自営業は経営者、特殊な知識や技術は豊富、役に立つ時は役に立つ。客商売なら人当たりも良い。当然、本業が忙しくなるまでのツナギ、長続きは期待しにくい。引き継ぎに手間のかかる仕事は任せぬが吉。

 自由業と兼職。
 小説家漫画家音楽家画家所属事務所のない芸人、腕一本で稼ぐフリーランス。それだけで喰えない世の仕組み。
 休む間もない、というのは売れっ子の話、パートで働くような時間がある輩は、仕事があれば先生、なければ無職の状態をフラフラと行き来している。
 自分で仕事をどうにかして、金にするのが自由業。本一冊書いて五〇万、ただしその仕事が一年にあるやらないやら。否応なく仕事を与えられ、時給で賃金が支払われる給与労働と本質的に異なる。
 本質的に凝り性でヲタクの職人タイプなので、ノルマを与えると残業上等でキチリとこなす。ただし、残業代はきっちり請求してくる。出来ない場合は引き受ける前に断わる。やりもしないで、ではない。フリーにとって、一度引き受けた仕事を期限内に仕上げるのが唯一絶対の正義だから。さもないと、次の仕事は永遠に来なくなる。
 人間関係、接客等で激しくトラブルを起こす場合は、恐らく勤まらない。破天荒で大物の明かし? 否、いわゆる大物は、金蔓として利用価値があったから我が儘を許して貰えていただけ。金を運ばない大物気取りは、ただのお子様。
 一発当たると退職しそうだが、喰えない時期が長いと安定収入への執着も強くなる為、意外と辞めない。




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