郵便局はだれのもの? 後編
ごんぱち
「郵便局をやったら、もっとお金がかせげるんじゃないかと思ったピトラ。そこへさっそうとあらわれたカッコイイ火ねずみのカソ、さあカソのすばらしいずのうから出されるアイデアとはいったいなにか!?」
「カ、カソ、どうしたの?」
いきなりワケの分からないことを言い出したカソに、ピトラはおどろきます。
「前回までのあらすじですよ」
カソはフッと笑います。
「そんなの今までやったことなかったじゃない?」
「大事なのは、前になにをやったかではありません。今、この時になにをすべきかですよ」
「なるほど、そいつぁたしかだね、カンドウしたよ!」
「社長……」
カモメのジョースターが、おずおずと口をはさみます。
「ここは、自分がツッコミをいれなければいけないのでありますか?」
「「きいたら、0点!」」
ピトラとカソは、タレ目になりながら、はげしくジョースターにツッコミました。
「と、オープニングギャグはこれぐらいにしといて」
ピトラとカソは、社長室におかれたテーブルセットのソファーにむかいあわせにすわります。
「郵便局をぼくがやれるって?」
「はい」
カソは、一枚の紙を出しました。
「なに、これ?」
「このたび、ユウセイがミンエイカされるので、ウケオイキギョウをつのっているのです」
「ふーん、なるほど、ユウセイがミンエイカねぇ、それはちょっとぼくニガテなんだよね」
「社長」
お茶をもってきたジョースターが、くちばしをはさみます。
「つまり、郵便局ぜんぶが大売り出しされるということであります。もちろん、郵便局員もたてものものりものもまとめて売られるから、手や宇宙船がたりないということはないのであります」
「な! なんで、そんなむずかしげなことをジョースターがわかるのさ! ジョースターのくせになまいきだ!」
「どこのジャイアンですか、あなたは」
「いや、こういう時には言っておけって、お父さんが」
「……じょうだんかホントウか分からないよーなウソは言わないでください」
カソは紙のたばを出します。
「もちろん、郵便局はもうかりそうですから、ほかの運送会社もやりたがっています」
「じゃあどうやってきめるの? 話し合い?」
「いえ、いちばんいい仕事をしそうな会社にまかされます。まあ、わたしが言ってもしんじにくいでしょうから、くわしくは責任者にきいたほうがいいでしょう」
「責任者ってだれ?」
「十日ばかり前に出ましたから、そろそろ来ますよ」
「……なに、そののろさ」
社長室に入って来たのは。
「おう、ピトラ! 元気そうだな!」
キレイなコウラをしたカメ、ゲンブのゲンさんでした。
「ゲンさん! リアルではいつもいっしょなのに、こっちだとひさしぶりだね」
「リアルとか言うな」
ゲンさんも、ソファーにすわります。
「……すわれるんだ、ゲンさん」
「こまかいことは気にするねぃ。んで、カソ、どこまで話した?」
「よい、しょっ、よいっ、しょっ、よいっ、しょ!」
ピトラとカソ、それにジョースター? とカモメのガースが、宇宙船イダテンのオールをこぎます。
「郵便局の仕事をもっともうかるようにする計画と、じゅんびのためのお金かぁ」
「計画は、わたしが作っておきましたから、後はお金ですね」
「うん、でも」
ピトラはオールをこぎながら、地図を見ます。
左右がひっくりかえった、幽霊のヘツィーがかくした宝物の地図です。
「これって、鏡星ってとこの地図だったんだね」
「ええ、この前見つけたのはオトリですね。ヘツィーのセイカクからかんがえれば、それぐらいやっておかしくありませんでした」
『そろそろ見えて来ましたぞ、ブレーキをゆっくりかけて下さい』
操舵室の親方の声が、スピーカーから聞こえてきます。
行く先に、惑星が見えてきました。
ピトラたちはイスをくるりとひっくりかえして、ぎゃくにオールをこぎます。
スピードが少しづつおちていって、鏡星のまわりを宇宙船『イダテン』は回りはじめます。
「ほへー、たしかにそっくりだなぁ」
そうなのです。
鏡星は、ピトラたちの星とそっくり。でも、地面のかたちは左右がはんたいです。
「はじめて見たであります」
ジョースター? も、不思議そうな顔をします。
「頭がグラグラしそうでヤスね」
ガースはなんども目をこすっています。
「運送屋さんとしてどうなの、それは」
話をしながら、ピトラたちは着陸ボートにのりこもうとします。
「それで、さぁ」
ピトラはジョースター? のえりくびをぐいとつかみます。
「なんでありますか、いきなり?」
ジョースター? は、不思議そうな顔をします。
「キミはだれ」
「だ、だれもなにも、オレサマは、カモメのジョースターであります、かっこいいカピバラのカピタンなんかじゃないであります」
「いや、ジョースターは、自分のこと自分って言うし、おなかがやけにでっぱってるし、口にネズミみたいな歯はあるし、なにより」
「なにより、なんでありますか?」
「ナレーターのひとが、『?』つけてるし」
そう言われてジョースター? は――。
「――ふ、ふふふふ、バレちゃあしかたない『そうとも、ホンモノのジョースターは、今ごろ社長室で社長気どり、このオレサマ、宇宙海賊カピタンさまが、おまえたちよりも先に宝を手に入れてやるんだぁあああああああ!』」
カピタンは、言いながら着陸ボートで鏡星へおりていってしまいました。
「……『バレちゃあ』から後、カソ聞こえた?」
「いえ。でも、たぶん、なんかどこかのドロボウが、宝をよこどりしようとしたんでしょう」
『ドロボウじゃない、宇宙海賊だーーー!』
鏡星へおりながら、カピタンがどなっていましたが、きこえるはずもありませんでした。
『そういうキャラなのか、オレサマは、そういうキャラなのかあああああ!』
「手分けしてさがした方がよさそうですね」
「うん、ドロボウに先をこされるとまずいからね」
ピトラとカソは、宝の地図のコピーをもって、べつべつの着陸ボートにのりこみます。
「カソ、いきます!」
「ピトラ、出る!」
ピトラとカソの着陸ボートは、鏡星へどんどん落ちていきます。
「ええと、あのあたりにおりたいから……」
宝の地図のコピーとみくらべながら、ピトラはオールをぎゃくにこいでブレーキをかけていきます。
「風は西にふくから、こっちに……」
もう、なんども着陸をしているので、ピトラにとってはボートあつかいもなれたもの。
「こっちに、あ、あれ? あれ?」
なれている、はずなんですが。
「ど、どどど、どうして、風がはんたいにふいてる! そうか、鏡星だからか、鏡だから、はんたいなのか!」
風にあわないオールさばきをされたボートは、きりもみしはじめます。
「うわわぁ、っわわわわわ、わわわわわああ!」
『キケンです、キケンです、安全そうち、さどうします、なにやってやがんだ、このすっとこどっこい』
かじやのフツヌシの声がして、ボートの安全そうちがはたらきます。
ボートのあちこちから風が出て、きりもみがとまり、パラシュートがひらいてスピードがおちます。
「た、たすかった」
たすかりましたが。
「うわ……天王山の方へ行っちゃうよ」
さいしょにおりようとしたのとは、ぜんぜんちがうところへおりて行ってしまいました。
ピトラがおりたのは、天王山みたいな火山の、山道でした。
「うー、ひどいめにあった」
ピトラはボートのパラシュートをたたんで、元へもどします。
「ええと、ここが天王山だったら、この地図の町はこっち……」
指さしてみますが。
「あ、いや、ちがう、はんたいだ」
なにしろ鏡星です、ひっくりかえっているのです。
「ともかく、山をおりよう」
ピトラはボートにのりこんで、ゆっくりとオールをこぎます。ボートは、風船の木でできているので、地上でもうかんでスイスイ動きます。
「まさか、おりたと思ったらのぼってたりはしないだろうなぁ。いや、それじゃ、さかさま星とネタがかぶるか」
たしかめるように、山道をおりていきます。
「でもネタびんぼうだから、そういうのやるかもしれないなぁ」
だれがネタびんぼうですか。
「あんただ、あんた」
とつぜん、かいじゅうがあらわれました。
「ウソを言わない!」
……ピトラは、あじもそっけもなく、つまらなく、山道をおりていきました。
「いいの、それぐらいで、いいの!」
ピトラは天王山のふもとの町にやって来ました。
「うわー、本当に鏡にうつしたみたいだ」
なんどか来たことのある町とそっくりですが、道やたてものがみんな左右ひっくりかえっています。
店のかんばんの字もひっくりかえって、レストランではナイフを左、フォークが右、ひろばで野球をやっていればランナーはサードのほうへ走っていきます。
下をみても、マンホールの「おすい」という字もひっくりかえっています。
「なんか、きもちわるくなってきそうだな」
ピトラは、オールをぐいとこぎます。
「さっさと宝を見つけてかえろう」
ぎいこ、ぎいこ、ぎいこ、ぎいこ……。
しばらくこいでいましたが。
「だあああああっ、またはんたいがわへむかってる!」
地図を見なおしたピトラはつっぷしてしまいました。
すると。
「おや? どうなさいました?」
おだやかなやさしげな声がしました。
「ん?」
ピトラが顔をあげるとそこには。
ドロボウヒゲをはやした、カピバラがいました。
「ああああ! カピタン!」
ピトラはオールをふりあげます。
「ちょっ、ちょちょっ、ストップ! ストップ! まってくださいまし!」
カピバラはあわててさがります。
「いきなりなんでございますか?」
「……ん?」
なんだかようすがちがいます。
「キミは……宇宙海賊とか言ってるドロボウカピバラのカピタン、だよね?」
「いえ、わたくしは、このへんでもゆうめいないいカピバラのンタピカともうします」
「ンタピカ?」
「はい」
ンタピカは、ていねいに頭をさげます。
カピタンと顔はおんなじですが、しゃべりかたはゼンゼンちがいます。
「ドロボウじゃ、ないの?」
「はい……あ、ひょっとしてあなたさまは、鏡星のおかたですか?」
「え? 鏡星ってここでしょ?」
「いえ、ここはンセミュシです。わたくしたちが鏡星とよんでいる星は……ええと、あなたがたはシュミセンとよんでいる星のことでございます」
「……あ、ああ、そっか、そっちからみたら、こっちが鏡星なのか」
ゴチャゴチャしていますが、なんだかピトラにものみこめてきました。
こっちの世界から見れば鏡ははんたいですが、鏡の中から見ればこっちの世界の方がはんたいなのです。
「でしたら、わたくしは、あなたのおっしゃるカピタンというおかたと、ついになるものなのでしょう」
「ひとりひとりのひとまでいっしょなの、ここは?」
「そうでなければ、おなじ町ができませんから」
「言われてみれば」
ピトラはまじまじとンタピカを見ます。
にこにこ笑っています。とてもいいひとみたいで、カピタンとはまるでぎゃくです。
「それで、どうなさったのですか? このンタピカ、こまっているおかたのためなら、なんだっていたします」
(なるほど、さすがは鏡星。こっちのカピタンがあんなヤツなんだから、さぞかしいいひとにちがいないや)
ピトラはすっかり安心しました。
「じゃさ、ンタピカさん」
「なんでございましょう?」
「その、もしも、ぼくが宝をさがしてる、なんてときでも、よこどりなんか……」
「するわけがございません。そんなひどいこと、かんがえただけで、なみだが出てしまいます」
「そっか、それじゃさ、ちょっとてつだってほしいんだけど……」
ンタピカが前のせきでボートをこいで、ピトラはうしろでのんびりです。
ふつうのひとだったらもんくを言いそうなものですが、ンタピカはうれしそうにボートをこぎます。
「ありがとね、ンタピカさん。その地図だと、ぼくはどうも頭がグラグラしちゃって」
「いえいえ、おやすいごようでございます」
森をぬけ、草原をぬけ、海岸をぬけ、どんどんすすんでいきます。
「ノギス町なら、なんどか行ったことがございます。レンガづくりで、噴水がキレイでございましたね」
「こっちもそうなんだね。ヘツィーは、その噴水の水の中に宝の地図をもう一つかくしてたんだよ」
「ほぅ、なるほど?」
「その地図ハズレかと思ったんだけど、じつはあんごうで、カソが宝を見つけたってじまんしてたよ。少しぐらいわけてくれればいいのにねぇ」
「ははは、ソカさんもそんなおかたでございますよ」
「まったくがめついよね」
「ゆうめいでございますね」
もうしばらくすすむと、ずぅっととおくに一本杉のてっぺんが見えて来ました。
「あっ、あれだね」
「さようでございますね――と、ちょっとよろしいですか」
つかれた顔で、ンタピカが道ぞいにある茶店を指さします。
「もうしわけございませんが、一休みさせていただけませんか?」
「あ、うん、いいよ。そうだ、おだんごおごるよ」
「やあ、それはありがとうございます」
「こんにちは、おだんごとお茶二つね」
ピトラは茶店の主人のアリの、パティシエマヤロクに声をかけます。
「はい、いらっしゃいませ」
パティシエマヤロクは、れいぞうこからおだんごと、お茶を出します。
「……やっぱり作りおきなんだね」
「作っておかなければ、イザという時にこまりますから」
「売れるかどうか分からないものをもっておくほうがよくないと思うんだけどなぁ」
ピトラはポケットからお金を出します。
「ん、なんですか、これは」
「なにって、お金でしょ」
「鏡星のお金はこまります」
パティシエマヤロクは、レジからお金を出して見せます。
「……ああ、ひっくりかえってるのね、これも」
ピトラはもう一つのポケットから銀のつぶを出します。
「はい、じゃ、この銀をお金のかわりに」
「まいどどうも」
「セルフサービスって、ちょっとふぜいがないよね」
おぼんにのせたお茶とおだんごをもって、ピトラはンタピカがまっている、外のせきにもどって来ました。
来ました、が。
「……あれ?」
ンタピカがいません。ボートもありません。
「どうしたのかな? トイレかな?」
ピトラはすわってまちます。
「さめちゃうなぁ」
じぶんのぶんの、お茶とおだんごを食べはじめます。
四つのおだんごの、一つを食べ。
二つを食べ。
三つを食べ。
四つ目を食べようとした時です。
「ピトラ、なにをのんびりしてるんですか?」
やって来たのは、着陸ボートに乗ったカソでした。
「あ、カソ、おそかったね」
「ってことは、宝は見つけたんですか?」
「ううん、宝は見つけてないけど、ンタピカをまってるんだよ」
「ンタ……なんですって?」
ピトラはお茶をずずっとすすります。ゆのみには、魚のかんじがいっぱい書いてありますが、みんな左右はんたいです。
「鏡星のカピタンだよ。鏡星だから、すっごいいいひとなんだよ」
「……ピトラ」
カソは頭をかかえます。
「鏡星は、名前のとおり、ぜんぶが『鏡にうつしたみたいに』はんたいの星なんです!」
「でしょ、だから、セイカクもはんたいで」
「鏡は、右と左がいれかわるだけでしょうが! なかみはゼンゼンかわりません!」
「え、だ、だって、あんなにいいひとで」
「だいたい、セイカクがはんたいって、なんですか。たとえば、パンがすきなひとがいたとして、ごはんがすき、おかずがすき、パンがきらい、パンにすかれる、いくらでもパターンができてしまうでしょうが!」
「いや、そうは言っても」
「そもそも!」
カソはどなります。
「カピタンやピトラは、本当はこの世界のひとじゃないでしょうが!」
「って、あああ!」
ピトラはお茶をふきだしそうになります。
「じゃ、じゃあ、ンタピカって」
「そんなひとはいません。カピタンにだまされたんですよ!」
ちょうどその時、一本杉のあたりから、ピトラの着陸ボートがうちあげモードで空へと上がっていくのが見えました。
「わはははは、見たか、ピトラ社長! オレサマ、宇宙海賊カピタンの、すばらしい手ぎわを!」
宇宙へ出たカピタンは、大笑いしながら、ボートのオールをこぎます。体が大きくて力があるので、ぐいぐいとすすみます。
うしろのせきには、金銀財宝がいっぱいです。
『まてーーーー、だましたなーーー!』
ピトラの声が、通信機から聞こえて来ます。
「ぼうやだからさ! わははは、だまされる方がわるいのだ、あははっ、あはっ、あはっ、あははっ!」
『まってください、カピタン!』
こんどは、カソの声がします。
「ふふん、だれかと思えばカソか。千の仕事をもつ男がきいてあきれる」
『カソ、そんな二つ名あったの?』
『ありませんよそんなの! それじゃ、わたしが仕事をコロコロかえるみたいじゃないですか』
『いや、そこは合ってるでしょ』
『一年ぐらいはつづけることもあるんですよ』
「おいこら! こっちムシするな!」
『あ、そっか、わすれてました』
「わすれるな! たのむから、あいてして、オレサマも話にまぜて、五分だけでもいい!」
カピタンはちょっとなみだ目です。
『そうそう、話のつづきですけどね、カピタン』
カソの声です。
「なんだ、わはは、マヌケなカソめ!」
カピタンはあいてをされて、すごくうれしそうな顔になりました。しょうじき、フビンです。
「フビンとか言うな!」
『そのボート、重量制限がありますよ。あんまり重いにもつをつんでいると、タイヘンなことになりますよ』
「な……なあにを、言ってるんだか」
『あなたは、ひとりでわたしたちの三にん分ありますよね、重さ。それでギリギリです』
「ウソを言うな、うちあげられて、ここまで来られたじゃないか!」
『うちあげはできますよ。ただ』
「ただ、なんだ!」
『オールはどうでしょうね?』
「え」
カピタンはオールを見ます。
言われてみれば、オールはとてもほそくて、ちょっとしなったりして、このままこぎつづけたらおれそうです。
『オール型宇宙船で、オールがおれるっていうのは、どういうことだか、分かりますよね』
「そ、まさ、か」
『どこかの星にぶつかるならまだいいです。いっしゅんですから』
「じょうだん、だ、よな」
『でも、さもなければサンソがなくなるまで、まがることももどることもできず、まっっっっくらな、音のない宇宙の中を、ずぅぅぅぅぅぅぅっと、たっっったひとりきりで、お話をするあいてもなく、ひとりで、ひとりきりで、たったひとりで……』
「わああああ、いやだあああ!」
カピタンは宝をかたはしからすてていきます。
のこった宝は、ひとつかみだけ。
「よし、オールがかるくなったぞ」
『――まあ、それはふつうのオールの話ですけどね。このオールはフツヌシがカスタムメイドした超高級品ですから、百人乗りの宇宙船を動かしてもおれないです』
「な!」
カピタンがふりむくと、ピトラとカソのボートが、カピタンのすてた宝をひろっています。
「だ、だましたな!」
『ふふ、だまされる方が悪いんでしょう?』
「おぼえてろーーー!」
カピタンは言いのこして、宇宙のかなたへ飛んでいきました。
ピトラとカソは、宝と計画書をもって、ゲンさんのところに来ましたが。
「うけつけおわり?」
「ああ、すまねえな」
ゲンさんは、もうしわけなさそうに首をちぢめます。
「うけつけをまってくれるように、天帝にかけあってはみたんだがな」
郵便局の仕事は、もうほかの運送会社にきまってしまっていたのです。
「カソ、キミが宝石をもう一つとかさがしてたから!」
「なにを言ってるんです、ピトラのアームさばきがノロマだったんでしょう!」
ピトラとカソはにらみあいますが。
「むー、ケンカしてどうなるもんでもないけど、さ」
「もったいなかったですねぇ」
「なんだかんだで、カピタンにしてやられたってことかなぁ」
「こんどあったら、もっとせつない目にあわせてやりましょう」
「まあでもさ」
ピトラは宝の箱をひらきます。
中には金銀財宝がつまっています。
「宝が手に入ったのはまちがいないから」
「そうですね、これはうれしいことです」
「宝さがしは」
「大せいこう、ってことで!」
ピトラとカソは、パンッと、手をうちならしました。
目をさましたピトラは、午後も家のことをたくさんやりました。
そしてばんごはんになりました。
お父さんのポポトさんが作ったおすいものに、大きなすしおけにはいったおすし屋さんのおすし、そしてロウソクのいっぱい立ったケーキが、テーブルにおかれます。
「ハッピーバースディ・トゥー・ユー……」
みんなでハッピーバースディを歌ったあと。
「じゃあ、火つけるよ」
お父さんがマッチをすって、ロウソクに火をつけます。
「さあ、ピピラさん」
「ええ」
お母さんのピピラさんが、いきをすって――。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ!」
ふいて。
「ふーーーー!」
ふいて。
「ふっ!」
けしました。
「……こういう時は、ひといきでけせるもんじゃないの?」
「おめでとう、ピピラさん」
「お母さん、おめでとう!」
「っと、お母さん、おめでとう、はい、プレゼント」
ピトラはプレゼントをだします。
「まあまあまあ、きれいなお花!」
スイートピー、かすみ草、バラ。ピトラのプレゼントは花たばでした。
「えへへ、ちっちゃいけどね」
「ありがとう、うれしいわ」
「ポテトは『かたたたかないけん』だ! お母さんは、かたがこらないって言ってたからな」
「イミないだろ、ポテト、それつかうイミないだろ!」
「ピピラさん、ぼくからは、えんげきのチケットだよ」
「ふふ、ありがとう」
それからピトラたちは、数えきれないぐらいおめでとうと、ありがとうを言いました。
お母さんは、とてもとてもうれしそうにずっとずっと笑っていました。
ピトラは、たっぷりおすしとケーキを食べて、たっぷり笑いました。
郵便局のことは、もう、どっかへ行ってしまいました。
【おしまい】
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