ごんぱち作

バースディ・パーティー
そのひも、ピトラはゆめのせかいにきていました。
「さぁ、どうぞ」
ひねずみのカソが、ティーカップをピトラにさしだします。
「あ、ありがとう」
ピトラは、おしりをもぞもぞとうごかします。
「だいじょうぶです。きょうはおねがいがあるのですよ」
「おねがいって、いわれても……」
「そうですか」
カソはがっくりとかたをおとしました。
「しんようされないのはむりありません。せんのことばをならべても、ピトラ、あなたのよわみにつけこんで、だんろいろのはなをてにいれた、あのじじつはかわりますまい。ならば、わたしをぶってください、たたいてください。きがすむまでぶったら、そのあとにわずかでもかまいません、てをかしてください」
カソはなみだをうかべ、あたまをさしだします。
「さあ、ガツンといっぱつ、いや、にどでもさんどでも、わたしのあたまがわれるまで、けっぱくなこころのなかがみえるまで!」
「ぶ、そ、そんなにぶたないって」
「ですが、ねがいをきいていただくためには!」
「わかった、わかったって。ぶたないでもきくから」
「ほんとうですか?」
「ほんと、ほんと!」
「そうですか」
にまぁっとカソはわらうと――。
「カメのゲンさんのたんじょうびがらいしゅうなんです。わたしがまかされているのは、ゲンさんのれいふくをちゅうもんすること、ケーキをかいにいくこと、スピーチをスーさんにおねがいしにいくことです」
いままでのなみだがウソだったかのように、てきぱきとしじをしました。
「ひきうけたいじょう、きちんとしごとをしてもらいますからね! くちやくそくでもけいやくです。けいやくいはんは、いやくきんをはらわなければなりません」
(なんか、またうまくのせられたきがする……)
ピトラとカソは、うみぞいのみちをはしっています。
うみぞいのみちは、すんだなみのおとがおんがくのようにひびき、こまかいみずしぶきをふくんだかぜが、やさしくピトラたちのほほをなでていきます。
うみはたいようのひかりをうけて、なないろにかがやいています。とおくのほうで、おおきな、おおきなさかながはねていました。
「きれいだなぁ……」
「そうでしょう。このうみは、てんかい――いやいや――ゆめのせかいで、いちばんきれいなところなのですよ」
「ふうん」
なんだかしおかぜをすっていると、どんどんげんきになっていきます。
「おまけにマイナスイオンがでていますから、ストレスかいしょうにもってこい。わたしもときどきくるんですよ」
カソのながいヒゲと、カソじまんの、しろいもえないせびろのすそが、しおかぜになびきました。
(……へえ、カソってそんなこともするんだ)
「さあさあ、したてやさんへいそぎましょう!」
「とうちゃく!」
かいがんのいちばんはしっこにある、ちいさないえのまえで、ピトラとカソはあしをとめました。
「ヘイ! ヘイのダンナ!」
カソがどなりますが、へんじがありません。
「るすなの?」
「ちょっとあけてみてください」
「ドロボウとまちがえられない?」
「このせかいに、ひとのものをほしがるひとなんていません……なんですか、そのめは」
「ぶぇーつにぃ」
「はいはい、ぬすんでまでほしがるひとはいません。これでいいですね。わかったら、ほら、ドアをあけてください」
「はーい」
ピトラはドアノブにてをかけます。ドアは、みためはボロボロでしたが、あんがいていれがよく、おともたてずにひらきました。
「こんにちは……」
「あ? なんじゃい」
こえといっしょに。
ドアいっぱいに、かおがあらわれました。
「わああああっ!」
おもいきりおどろいたピトラは、ひっくりかえってしまいました。
『あのかおはあんまりちかくでみるとびっくりするんですよねぇ。ピトラにきてもらってほんとうによかった』
カソはつぶやいてから、ピトラをたすけおこします。
「だいじょうぶですか? ピトラさん」
「か、かお、かおが!」
「なんじゃい、しっけいな」
ヘイは、よこになってドアからぞわぞわでてきました。
ヘイはおおきなカニでした。せかなにさっきのおおきなかおがうきでています。
「ヘイケガニのヘイのダンナですよ」
「カソか。あいかわらずわるだくみしていそうじゃな」
「いやいや、これはてきびしい」
「それでそっちのちっこいのは?」
「あ、はい、ピトラです」
ピトラはあわててあたまをさげました。
「なんのようじゃい」
「ヘイのダンナに、またゲンさんのれいふくをつくってほしいんです」
カソがいいました。
「ゲンさんか。ええと、234532さいじゃったかな?」
「はは、まちがえたらおこられますよ。ことしで234531さいです」
(ええっ?)
ピトラはゆびをおってかぞえます。
(ゲンさんって、そんなにとしとってたんだ?)
「これがゲンさんのサイズで――」
カソがメモをわたそうとします。
「ムリじゃな」
「えっ、どうして?」
ピトラがおもわずこえをあげます。
「ゲンさんはカメじゃ。カメのからだはコウラがあって、かなりとくしゅじゃからなぁ。ほんにんがいなければできん」
「ゲンさんほんにん、ですか?」
(ゲンさんがここまでくるのをまってたら、たんじょうびがおわっちゃうよ)
ピトラはあわてます。
「だったら、ヘイさんがきてよ、ゲンさんよりはあしがはやいでしょ?」
「じょうだんじゃないわい。ワシだってほかにもちゅうもんをうけとるんじゃ。そんなにいえはあけられん」
「ケチ!」
「まあまあ」
カソが、ピトラとヘイのあいだにわってはいりました。
「ようするに、ゲンさんとおなじかたちのものがあればいいんですよね」
カソはぴょいととびあがると――ピトラのせなかにおぶさりました。
「わっ、わわ!?」
「ほらほら、じっとしていてください」
おどろくピトラにおかまいなしで、カソはまるくなります。まるくなったカソをせおったピトラのすがたは、カメそっくり。
「このまえきづいたんですけどね、ピトラとわたしがこうやると、ゲンさんとおんなじおおきさなんですよ」
「おお、おお、これはすばらしい。よかろう、はからせてもらうぞ」
しゃきんっ!
ヘイはまきじゃくをとりだすと、ピトラとカソのしゅうごうたいをはかりはじめました。
「ふむ、しんちょうはこれぐらい……」
「く、くすぐったいよぉ!」
「だまっとれ! むねまわりがこれだけ。コウラはかたいから、もうすこしきつくてもだいじょうぶじゃな」
「そんな、に、しめ、ないでよ、くるしぃぃぃぃぃ!」
「それから、こしまわり……なにをはらをへこませとるんじゃい。ほら、ゆるめんかぃ」
「わわわっ、おなか、を、ゆるめるとぉ!」
ひっしにカソのおもさをささえていたピトラが、おなかのちからをぬいたとたん。
ばたん!
「わわわわわ、な、なにをする! おもい、おもい、どくんじゃ!!」
ヘイのうえに、ばったりたおれてしまいました。
「ご、ごめん」
「これはしっけい」
ピトラとカソはたちあがりました。
「い、いたたた、しっかりたっとらんかい! さあつづきじゃ」
「いやだよ、もう。カソっておもいんだよ!」
「しっけいな、わたしはこのなつで3キロもやせたんですよ」
「そんなのしらないよ!」
「しかたないのぉ」
ヘイは、ピトラとカソのおもさでへこんだせなかのカラを、ぼんとたたきなおしました。
「じゃあ、しゃしんをとるから、1ぷんだけさっきのかっこうをするんじゃ」
「しゃしんでできるの?」
「あたりまえじゃ。ワシはこのきんじょでいちばんのしたてやじゃぞ」
「ああよかった――って、できるならさいしょからやってよ!!」
「まきじゃくではかったほうが、かんじがでるじゃろう?」
「あんたのこだわりなんかしらないよ!」
とびかういと、きりきざまれるぬの、きらめくはさみ、つきとおすハリ、おやつのココナツ、おどるかたがみ、やりなおすヘイ、はじけるボタン、なきわかれのジッパー。
めにもとまらないようなはやわざで、ゲンさんのれいふくができあがっていきます。
「……なんか、かんけいないものとか、しっぱいも、みえたきがするんだけど」
「ピトラ、タイミングをはずしたツッコミは、ただのいやがらせですよ」
「そういうフォローも、どうかとおもうんだけど……」
――ともかく、ヘイのしごとはあざやかでした。なにより、カニのハサミは、そのままじょうとうなぬのきりばさみになっていて、じつによくうごきます。
「よし、できた!!」
「わあっ、すごい!」
「おや、できましたか」
「ほれ、みるんじゃ!」
ヘイはできあがったれいふくをりょうてでしっかりともって、みせました――そう、ハサミのりょうてで。
じょきん。
「あ」
「あっ」
「あ……」
れいふくは、まっぷたつにきれてしまいました。いうまでもありませんが、ハサミでものをもとうとしてはいけません。
「い、いや、べつにだいじょうぶじゃ、だいじょうぶ。こうこうこうやってぬいあわせれば――」
「わー、すごーい……」
「きれめはみえなくなりましたね」
「そうじゃろ、そうじゃろ……ちょっと、やぶれやすくなっとるが、だいじょうぶ、これをきたままぜんりょくではしったりしないかぎり、だいじょぶうじゃ」
ヘイは、れいふくをはこにつめると、きれいなリボンをかけました。
「……ありがとう」
「ありがとうございました、だいきんです」
れいふくをもって、ピトラとカソはおかしやにむかいます。
ピトラたちが、もりのなかにあるおかしやについたのは、つぎのひのあさでした。
「――へい、できてますぜ」
カソとピトラのかおをみるなり、おかしやのアリは、おおきなはこをもってきました。
はこはとてもおおきく、ピトラたちがみあげるほどです。
「はいたつもしやすんで、ごしんぱいなく――どうなさったんで、ぼっちゃん?」
「いや、なんのトラブルもないんだな、とおもって」
「コツコツかくじつしつじつごうけんが、わがパティシエ・クロヤマのモットーでがす」
アリはむねをはります。
「ことしもゲンさんのたんじょうびだとおもいやしてね、おととしからつくっておいたんでさぁ」
「おととし?」
「さあて、ようじがすんだらかえってくだせぇ。さらいねんのケーキのしこみをはじめなけりゃいけません」
ピトラたちはみせからおいだされました。
「くさってないの? あのケーキ……」
「くさらないために、ちのにじむようなどりょくをしたそうですよ。くさらないざいりょうをえらんだり、おおきなおおきなれいぞうこをつくったり、ゆうめいなまほうつかいとけいやくしたり。おみせにならんでいるふつうのケーキなんか、200ねんぶんはつくりおきしてあるってうわさですよ」
「なんか、どりょくのつぎこむばしょがちがうきがするんだけど……」
たいようがおちて、のぼって、おちました。
ピトラとカソは、スーさんのすむというやまをのぼっていました。
きぎはせがたかく、たいようのひかりをあびてきらきらとかがやき、みちのいしころもほうせきのようなかがやきをみせます。
「ねえ、まだ?」
「よていよりすこしおそいですね……」
ですが、あるきつづけるピトラとカソに、それをたのしむよゆうはありません。
「このまえのテンノウざんじゃないの?」
「あれはいねむりをしていただけです。スーさんのいえは、このシュミセンのかこうですよ」
「いえなんかあったんだなぁ」
ピトラはあせをふきます。
やまのてっぺんからは、モクモクとけむりがあがり、マグマのねつがここまでかんじられます。
「……ここにすんでちゃ、おかしい!?」
そのとき、とてもおおきなこえと、ものすごくあついかぜが、まうえからふきました。
「あっ」
「あ……」
「ワタシがいえをもっているようにみえないって? ワタシがホームレスだっての!?」
ピトラたちのまうえに、まっかにかがやくおおきなとり、スーさんがいました。
「え? なんとかおっしゃって!?」
ばさり。
スーさんがはねをひとふりすると、しゃくねつのかぜが、あたりのくさをもやしながらせまってきました。
「あぶない、ピトラ!」
あわててカソがピトラをかばいます。
カソのもえないせびろのけっかいが、かぜをふせぎます。
「ス、スーさんがこわい……」
「スーさんはへんなおきかたをすると、いつもこれだ。ひねずみのせびろがなかったら、まるこげになってましたね」
「ねぼけたからって、あそこまでやる!?」
「ちからのあるひとですから、そんなにすごいことをしているつもりはないんですよ――そら、またきますよ!」
またしゃくねつのかぜがきます。
「うわぁっ!」
「ひゃっ!」
「どわああっ!」
「ひぃっ!」
ピトラとカソはなんどもなんどもかぜをかわします。
「うひょひょ!」
「どひゃああっ!」
ピトラのからだじゅうのけは、ちりちりになってしまいました。れいふくのはこも、はしっこがこげています。
「……カソ」
「おはなししてるばあいじゃ――」
「よーくかんがえたら、キミはそのふくのおかげで、なんにもあつくないんじゃないか! さっさとスーさんをおこしてきてよ!」
「……いわれてみれば」
「いわれるまえにきづいてよ……」
ピトラがいわかげにかくれているあいだに、カソがきにのぼって、そらをとぶスーさんのちかくによります。
「こんにちはスーさん、さっさとめをさましてくださいよ!」
「だれのうちに、おふろもトイレもないですって! ひあたりがわるいですって? シロアリがすんでるですって? あまもりがするですって!?」
ばさっ。
ねぼけきっているスーさんは、はねをばさりとふりました。
もえないせびろのけっかいのおかげで、カソはびくともしませんでした。
が。
カソがのぼっていたきが、いっしゅんでもえつきてしまいました。
「わっ、わわわわわっ!」
「カソ!」
ピトラはおもわずさけびます。
「おわたっ!」
おっこちそうになったカソは、おもいきりジャンプして、スーさんにしがみつきました。
――と。
「きゃあああああああああああっ!」
スーさんのひめいがひびきわたりました。
「きゃあ、きゃあ、きゃあ、きゃあ!」
きゅうじょうしょう、きゅうこうか、みぎひねり、ひだりひねり、ちゅうがえり、きりもみ、ぎゃくかそく。スーさんはひめいをあげながら、ありとあらゆるめちゃくちゃなとびかたをつづけました。
「ス、ス、ス、スーさん! ちょ、ちょ、ちょっと、まってください! カソ、カソです、おともだちの、カソです、よおおおお!」
カソはスーさんにひっしにつかまりながら、どなりました。
すると。
「え?」
スーさんのうごきがとまりました。
「あら? カソさん?」
ちじょうにおりたちます。
「もう、いねむりしているところにいたずらするなんて。いじわるね」
「こっちはからだのなかみを、フードプロセッサーですりみにされたみたいなきぶんですよ」
スーさんからおりたカソは、へたへたとすわりこみました。
「……だいじょうぶ? ふたりとも」
ピトラもいわかげからようやくでました。
「あ、ピトラさん、おひさしぶり」
ピトラとカソは、スーさんのせなかにのってとびます。
「ゲンさんのたんじょうパーティーのスピーチですの?」
「はい。ともだちだいひょうのあいさつだとおもっていただければよいですよ」
スーさんはすこしこまったかおをします。
「しゃべりにはじしんありませんけど」
「いいんですよ、なかのよいおともだちがおいわいをいってくれる、ってことだけでもりあがるものです」
「そうだよね」
「そうね。わかりましたわ。なんかいまからドキドキしてきましたわ」
カソはピトラのそでをひきます。
『ちなみに、スーさんは20000かいぐらい、ゲンさんのたんじょうびのスピーチやってますからね』
『……そんなきはしてたよ』
「なにかおっしゃって?」
「いえいえ」
「ぜんぜん」
ピトラとカソは、あわててくびをよこにふりました。
ピトラたちがかいじょうにとうちゃくしたのは、パーティーとうじつでした。
「おお、ピトラ、カソ、すまねえな! スーさんもわざわざありがとう!」
ゲンさんがおおごえでわらいます。
「あ、はは、はい、れいふく」
「いやー、つかれましたねぇ」
「さあ、ピトラさん、カソさん、ワタシたちもきがえましょ」
パーティーようのタキシードにきがえたピトラは、テーブルにつきました。
「わぁ……」
はしがみえないほどながいテーブルが、ちへいせんのむこうまでならんでいます。
そしてそのテーブルいっぱいに、いろいろなひとたちがすわっているのです。
「ね……ねえ」
ピトラはとなりにすわっているカソにこえをかけます。
「なんです?」
「ゲンさんってすごいひと?」
「まあそれなりに。それに、1まんねんも2まんねんもいきていれば、ともだちもふえますよ」
『それでは、ゆうじんだいひょうとしてスーさんにごあいさつをおねがいします!』
しかいのこえで、スーさんがたちあがりました。
「――ゲンさん、おたんじょうびおめでとう。ゲンさんとはずいぶんながいおともだちですわね。たしか5さいのときは、まだ――」
『……カソ』
『スピーチちゅうですよ』
「――そして120さいのときは――」
『いや、ひょっとして、これってものすごくながいはなしじゃない?』
『だいじょうぶですよ、はんにちもすればおわります』
(はんにち!?)
ピトラはこえをだしそうになって、くちをおさえます。
ようちえんのえんちょうせんせいのはなしだって、ながいながいとおもっていても5ふんていどです。それをはんにち。
かんがえただけで、ピトラはねむくなってきました。
(――あ、だめだめ、ねむっちゃ!)
ピトラはあわててあたまをあげました。
がたん!
そのときです。
あんまりおもいきりおきあがったために、ピトラはひざをテーブルにぶつけてしまいました。
ガタン!
テーブルはそのままひっくりかえりました。おさらをならべたながいながいテーブルがひっくりかえったのですからたまりません。
ガシャン、ガシャン、ガシャン、ガシャン……。
テーブルのながさのぶんだけ、おさらのわれるおとがつづきます。
「え? え? なに?」
スーさんがおどろいてスピーチをとめます。
「……あ、スピーチのなかみわすれちゃった!!」
スーさんが、かおをおおってさけびます。
「きゃああっ、はずかしい、はずかしい、はずかしいわ!!」
ばさばさとはねをふったために、かいじょうじゅうにかぜがふきあれます。
みんなはテーブルのしたにかくれましたが――。
「うわっ、わわわっ、うわああ!」
、ねむたくてヘロヘロになっていたピトラは、かぜにふきあげられてしまいました。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁ……」
ひゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
このままでは、じめんにげきとつしてしまいます。ゆめのなかとはいえ、いたいことにはちがいありません。
「ピトラッ!」
「ピトラさん!」
「ピトラぁぁぁぁあぁ!」
れいふくをきたゲンさんが、ピトラをたすけようと、ぜんりょくではしって――。
ビリッ。
れいふくは、まっぷたつにやぶれてしまいました。
「なんだこりゃぁ?」
ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅずぼっ。
ピトラは――ピトラは、おおきなケーキに、まっすぐつきささって、やっととまりました。
(あ、くちのなかあまい……でもボソボソしてて、おいしく、ないなぁ)
そのとき、ピトラのあしをだれかがつかみました。
『わっせ! わっせ! わっせ! わっせ!』
ぎゅうぎゅうあしがひっぱられます。
(わっ、わっ、わわわ?)
すぽん!
クリームだらけのピトラが、ケーキからぬけました。
わあああああっ!
かんせいがあがりました。
みんながいっしょにピトラのあしをひっぱって、ケーキからすくいだしてくれたのでした。ピトラのあしをつかんでいたのは、カソで、そのうしろはゲンさん、スーさんでした。
「やっとぬけましたね」
「おもたかったぞ、がははは」
「とばしちゃってごめんなさい」
ピトラはあわててあたまをさげます。
「ご、ごめんなさい、ゲンさん! その、ぼくのせいでパーティーがめちゃくちゃになっちゃって」
「がははは、そんなことか」
ゲンさんはピトラのクリームだらけのあたまを、ぽんとたたきました。
「ほんとういうと、きゅうくつなれいふくも、パッとしないあじのケーキも、ながいスピーチもいいかげんあきあきしてたんだ」
(え?)
「こんなにわらえるたんじょうびは、ひさしぶりだ。ぎゃくにおれいをいいたいぜ、ピトラ!」
ゲンさんはわらいました。ピトラもつられてわらいました。
「さぁ、みんな、かたくるしいのはここまでだ! にぎやかにやってくれ!」
わあああっ!
みんなのかんせいがあがり、えんかいがはじまりました。
(あきあきしてた……か)
ピトラはそのようすをぼんやりとながめます。
「――どうしました、ピトラ」
カソがピトラにタオルをわたします。
「いや、ゲンさんはぼくをなぐさめてくれたんだとおもうけど、ぼくたちのじゅんび、ムダだったのかな……って」
「ゲンさんがいま、たのしんでる。それは、やっぱりわたしたちのじゅんびがあったからですよ」
「そう、かな」
「そうですよ。どうぞ」
カソはカップをさしだします。
「ソーマのおちゃ、こうきゅうひんですよ」
ピトラはカップをうけとって、そのとてもいいかおりのするおちゃをのみました。
「ちかくにいいおんせんがあるんですよ。そのクリームだらけのからだをあらいにいきませんか? じゅんびのきゅうりょうをいっぱいもらいましたから、おごりますよ」
「――って、カソ、おきゅうりょうもらってたの!?」
「わたしが、ただばたらきするわけないじゃないですか」
「ぼくにはなんにもいわないで、ずるい!」
「このせかいのおかねなんてもらっても、ピトラにはつかえないでしょう?」
「そういうもんだいじゃないよ! もう、きょうはいっぱいおごってもらうからね! さあ、おんせんいこう、おんせん!」
「はいはい」
ピトラとカソは、はしってパーティーかいじょうをあとにしました。
このゆめがどこでおわったのか、なにをおみやげにしたのか、しっているのはピトラとカソだけでした。
<おしまい>
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