ヘツィー幽霊――後編
ごんぱち
水、ロープ、ライターにコンロ、それにレインコートとタオル。
ピトラは、リュックににもつをつめます。
「社長、宝が手に入ったら、いちど社員旅行をしたいであります」
じゅんびをてつだいながら、カモメのジョースターが言います。
「泊まりがけで、温泉でえんかいをして、思い切りさわぐであります」
「そんなオヤジっぽいのイヤだよ。それより、千年山行こうよ。みんなでバンジージャンプ大会を」
「社長がそう言うのなら、つきあうであります。本当は行きたくなくてもつきあうであります。本当はイヤでイヤでたまらなくてもつきあうであります。社員にとって社長は神さまでありますから、これっぽっちもさからう気はないであります」
「……わるかったよ、温泉でいいよ」
「やや、やっぱり社長は、社員のことをわかってくれる、とてもいい社長であります。自分は、この会社にいられてとてもしあわせであります」
「どうしてこんなの使ってるのかな、ぼく……」
ピトラがしゅっぱつしようとすると。
「メール便です」
火ネズミのカソが、ネコのマークのついたふうとうをもってきました。
「あれ、カソ。また郵便屋さん?」
「いいえ、郵便ではありません」
「手紙もってるじゃない」
「郵便ではありません」
「手紙をとどけるのは郵便屋さんでしょ?」
「いいえ、郵便ではありません」
ピトラはあきらめて手紙をうけとります。
「なになに? 『宇宙船が完成しました。落成式を行いますのでいらしてください。 フツヌシ』」
「ピトラ、声に出さないと文字がよめないんですね」
「みんなにわかるように声に出しただけでしょ――って、そんなことより、宇宙船ができたんだ!」
「なんでしたっけ? しってますか、ジョースター」
カソはジョースターにたずねます。
「いいえ、自分はわからないであります。どうせまた社長がムダな買いものをしたのだと思うであります」
「いやぁ社長なんてのは気楽なもんですなぁ」
ヘツィーはうんうん、とうなずきます。
「二年も前から、宇宙船『イダテン』のかいぞう中だったでしょ!」
ピトラ、カソ、ジョースター、それにカモメのガースと親方、ついでにヘツィーが、宇宙港へのぼるエレベーターにのります。
「いやぁ、なつかしい!」
ヘツィーが、まどの外をながめます。
「ヘツィーも宇宙へ行ったりしてたんだ?」
「へい。あちこちを見て回ったもんでさぁ」
エレベーターはどんどんどんどんどんどんどんどんのぼって、地上はずぅっととおくになります。
それから、惑星の丸さがわかるぐらいになったところで、エレベーターは止まりました。
ピトラたちは、長いろうかを歩いてドックへむかいます。
「あのさ、ドックというと……」
「ドッグではありませんから、犬とかけたダジャレはできませんよ」
「わ、分かってるよ!」
とちゅう、べつのドックに、色んな宇宙船がとまっています。
「宇宙船もしんぽしてやすねぇ」
「昔のってどんなのなの?」
「あっしのいたころは、宇宙に行くと言ったら、仙人様やなにかにたのんで飛ぶのが多かったんですがね」
「ふうん、仙人の知り合いっていないなぁ。道士じゃダメなの?」
「ジェット機とロケットぐらいちがうみたいですぜ」
「分かるような分からないようなたとえだなぁ」
すれちがうひとたちは、虫みたいだったり、タコみたいだったりします。が、これは夢の世界ではあたりまえの風景ですから、ピトラもいちいちおどろきません。
「ですから、だれでもカンタンに宇宙に行けるようになって、本当にうれしかったもんです。まあ、あのころの宇宙船ってなぁ、けっして楽じゃありませんでしたがね」
「楽じゃない、って言うと?」
「着陸がものすごくて、地面にどかーーんとぶちあたったり、水もれをのんでかたづけたり、動力が足りないって言ってオールをこがされたり」
ヘツィーはわらいます。
「まあ、今となっては笑い話でさぁ」
「……ははは、笑えるね。すごく笑えるね」
「それで、宇宙船はどれなんで?」
ピトラはだまって、まどごしにドックをゆびさします。
「おや、博物館ですね? いやはやなつかしい!」
「いや、これ、ぼくの宇宙船」
ドックには、すっかりキレイになった、でも、やっぱりオールを使うための穴があいている、宇宙船『イダテン』がとめてありました。
「へぇ、ピトラのダンナ、社長だけあってシブいシュミをしてらっしゃる。それで、ふつうに乗る方の宇宙船は?」
「乗る方もなにも、ぼくがもってる宇宙船はこれだけだよ」
「……え?」
「おう、ピトラ! やっと来たか!」
道具箱をかついだ鍛冶屋のフツヌシがやって来ました。
カモメのガースと親方も来ています。
「ひさしぶり、フツヌシ」
「お久しぶりであります、フツヌシ様」
「こんにちは、フツヌシさん」
ジョースターとカソもあいさつします。
「おう、元気そう――じゃねえのが一人いるな」
フツヌシはヘツィーをじぃっと見ます。
「はじめまして」
「ん? はじめてじゃねえだろ、ヘツィー。仕事を一つやったおぼえがあるぜ」
「えっ、一体何を?」
「……その時の記憶をおいて帰りやがったな?」
「いやぁ、おはずかしい。それで何を?」
「宝箱だよ。ゼッタイにこわれないがんじょうな」
「ねえフツヌシ、じゃあ、その宝箱に入れた宝、ヘツィーがどこにかくしたかおぼえてる?」
「全然」
「……だろうね」
「じゃあ、落成式といこうじゃねえか!」
かべはまっ白、床はピカピカ、パイプにもサビひとつありません。
「……わあー、すごいや、見ちがえるよ」
「わはははは、そうだろ。このコードのはり方にもくふうがあってな」
「……まったくの新品みたいだね、おどろいちゃった」
「見た目だけじゃねえぞ、フレームの四〇パーセントはあたらしく作りなおしてる」
「……フツヌシ」
「なんだ?」
「……それでもやっぱりオールなの?」
「H型宇宙船ってのは、そういうもんだ」
「でもほら、エンジンだけのせるとか」
「かーっ、これだからシロウトは」
フツヌシはピトラをにらみます。
「良い道具ってのはな、そのもくてきや使い方に合わせていちばん良く働けるようにできてるもんだ。そのほかのことなんて、できちゃあいけないんだ」
「なんでもできた方がべんりだよ」
「トンカチにノコギリをくっつけてみろ。クギをうつためにふりあげたらノコギリ歯があちこちにひっかかっちまう、木を切ろうとしたら重たくてすぐにつかれちまう。ちょっとしたイソップ童話のできあがりだ」
「サバイバルナイフはどうなのさ。ナイフもハサミもコルクぬきもついてるよ」
「どれもちゅうとはんぱで使いにくいだろうが」
ピトラは、動力室のイスにすわってオールをかまえます。
「言い負かされたけど、オールはオールじゃないか。エンジンのほうがずっといいのに……」
右がわは、ピトラ、ジョースター、ガース。左がわは、カソ、おやかた、ヘツィー。
「フツヌシはこがないの?」
「あ? オレがこいだら、バランスがわるくてまわっちまうだろうが」
「だったらぼくのとここいでよ」
「いいのか? 自分の船を、はじめて動かすって時に、ほかのヤツにまかせて」
「う……」
「はやくうごかしやしょう、ウズウズして来まさぁ」
ヘツィーはうれしそうです。
「って、ヘツィーは幽霊なんだから、オールもてないんじゃ?」
「いえいえ、あっしはものは動かせるんでさぁ」
たしかにヘツィーもオールをうごかしています。
「むこうにいた時は、お皿やフォークなんかをよく動かして、みんなによろこばれたもんでさぁ」
「……それよろこんでないと思う、全然」
「でもみんな、キャアキャア言ってやしたぜ」
「りっぱに悪霊だったんですねぇ」
カソが、にが笑いします。
「まあいいや、それじゃ行くよ!」
「おーーー!」
ドックのゲートが開きました。
ゲートの外には宇宙が広がっています。
「せーーーのーーーーー!」
ピトラはぐっと足をふんばって、オールをこぎます。
ぎぃ、こ、ぎぃ、こ、ぎぃ、こ……。
「軽い!?」
ピトラは、思わず声を上げます。
「本当であります、まえのイダテンよりずっと楽であります」
ジョースターもおどろいています。
「オールうけに、ミズチ式流体ベアリングが使われてますね」
「よく気づいたな、カソ」
「オールの形も、同じようでちがうのぅ」
親方がこぎながらつぶやきます。
「おう。よりバショウセンのエキスの力を引き出せるように、面のむきからオールの長さまでイダテンに合わせて計算しなおした、完全カスタムメイドだぜ!」
「すごい、すごい、オールなのにすごい!」
もう、ピトラたちがいた星が見えなくなっていました。
スピードがのっているので、もうこがなくてもだいじょうぶです。
「ワープ用みたいにすごいなぁ」
「ははは、思い知ったか、このシロウトが! これにこりたら、これっぽっちもオレのやることに口出しすんじゃねえ!」
「……フツヌシ、どうしてこのタイミングでにくまれ口をたたけるのか、ぎゃくにすごいよ」
宇宙船『イダテン』は、宇宙港でフツヌシをおろした後――。
惑星のまわりを、ゆっくりとまわっていました。
「えーと……」
操舵室で、ピトラは宝の地図とじめんをみくらべます。
「もうちょっと右へよせて、と」
舵輪をくるくると回します。
「あっ、ちがう、左だ」
はんたいがわにくるくる。
「しまった、とおりすぎた――ちょっとみんな、もう一回やりなおし!」
ピトラは動力室につながる伝声管にどなります。
『ピトラ、ちゃんとやって下さい!』
『つかれたであります』
「しかたないでしょ、この地図」
ピトラは宝の地図と、ふつうの地図を見くらべます。
「すごく見づらいんだから」
宝の地図は左右がひっくりかえっていて、右へ曲がろうとすると左、左へ曲がろうとすると右へ行かなければいけません。その上、宇宙の上からだと、すぐに通りすぎてしまうのです。
ピトラは舵輪をゆっくりゆっくり動かして、地図と同じところに……。
「よしここだ! みんな、ぎゃくふんしゃだ、ストップ!」
宇宙船は止まって、ゆっくりおちていきます。
いきますが。
「ああっ、まっすぐ下におりないとダメなのに!」
どざああああああああっ!
ななめに落ちる宇宙船は、地図よりずうっと先の海の上におちました。
「またですか?」
カソたちがやって来ます。
「もう、だれだよ! 地上を歩くよりも、宇宙船で行った方がカンタンなんて言ったの!」
「ピトラですよ」
「社長であります」
「社長でヤス」
「社長じゃのぅ」
「ピトラのダンナでやしょう?」
「……だってさ、せっかく宇宙船があるんだから使わない手はないじゃない」
「ピトラ、ニワトリをりょうりするのに、大きな牛刀は使わないものですよ」
「社長」
ジョースターが言います。
「新しい宇宙船で旅した思い出、それはどんな物にもかえられない宝物、というオチはどうでありますか?」
「思い出より宝物だよ!」
「……急がば回れってことわざ、知ってますよね」
ピトラたちは、ピトラ運送の自転車で山道をのぼります。
「わるかったよ、はじめからこうしていれば良かったって思ってるよ」
フツヌシが作った自転車は、ギアが多いので山道でもガタガタゆれないしペダルが重くなりません。
ガタン!
ピトラの自転車は、なにかをふんづけてひっくりかえります。
「わあ!」
ピトラはころんだのに、わらっています。つかれておかしくなってしまったのです。
「ちがうよ!」
ピトラはふんづけたものをひろいます。
「オオオニグリだ!」
ピトラの頭二つ分ぐらいあるクリです。
「おおっ」
カソも目をかがやかせます。
「やや、オオオニグリの木がいっぱいですよ」
ピトラたちが見上げると、木にはピトラが丸ごと入ってしまいそうなイガにつつまれたオオオニグリがいくつも見えます。
「これを売ったら、いいお金になりそうだね」
「そうですね」
「あっしがおとしやしょう。ものをゆらすのはとくいでさぁ」
ヘツィーが木をゆらすと――。
ザクッッッ!!
「うわあああっ!」
ブサッッ!
ドガッ!!
ザクッ!
クリやイガがまとめておちて来ます。
「あぶない、あぶぁ、あぶない!」
「と、ストップ、ヘツィーさん!」
「うわああ、あぶないであります!」
「止めるんじゃ!」
「ひぃっ!」
クリのイガだらけ。
「うわぁ、こんなとこ通ったらパンクしちゃうよ」
「社長、ここは一つ……」
ガースがオオオニグリをさしだします。
「自然のめぐみ、それはどんな物にもかえられない宝物、というオチはどうでヤス?」
「クリはもらうけど、宝物をあきらめる意味がわかんないよ」
ジョースターたちにクリひろいと自転車をまかせて、ピトラ、カソ、ヘツィーは山を下ります。
町外れの一本杉の前を通りすぎ、町の中へ。
レンガづくりのたてものの間を通る石だたみの道は、町のまん中の広場につながっていました。
広場はなかなか広くて、まん中に噴水があり、まわりにベンチと、露店がいくつかあります。
「ヘツィー、なんか思い出さない?」
「いえ、まったく」
「ちょっとでもさ?」
「あっしの記憶がたしかなら、ここははじめて来た町だと」
「……その記憶が、たしかじゃないんだよねぇ」
小さい町ですが、宝一つさがすにはひろすぎます。
「うーむ」
ピトラはかんがえこみます。
「ヘツィーさん、ひとつ気分をかえてゲームでもしませんか」
カソはポケットから宝石のついたペンダントをとりだします。
「賞品はこれです」
「カソ、そんなものもちあるいてるの?」
「宝石はいいですよ、心をゆたかにします」
「……これっぽっちもさんせいできないな、それ」
「カソのダンナ、本当にその宝石を下さるんで?」
ヘツィーの目の色がかわります。宝物をかくして死んだだけあって、金目のものには目がないのです。
「ルールはカンタンです」
カソはにやりとわらいます。
「このペンダントを、この町のどこかにかくして下さい。一時間、わたしがさがして見つけられなかったら、キミの勝ちです」
「二言はありやせんね? 本当にくれやすね?」
「もちろん」
「それではっ」
ヘツィーはペンダントをもって、行ってしまいました。
「……かんがえたね、カソ」
ヘツィーが見えなくなった後、ピトラはカソに耳うちします。
「おや、分かりましたか?」
「ヘツィーが、宝や宝石をかくす場所は、記憶がなくたっていっしょにちがいないって」
「ご名答」
「でも、ペンダントあげちゃっていいの?」
「まさか」
カソはポケットからレーダーをとり出します。
「ちゃんと発信器をしこんであります」
「いつの間にそんなものを……」
「言ってませんでしたっけ? わたしのもっている高価なものには、みんな発信器がついてるんですよ?」
「……なっとくできすぎて、ちょっとイヤだな」
「だから今どこにあるかも……えっ?」
カソはレーダーをのぞきこんで、目を見開きました。
「消えた!」
レーダーをあっちこっちにむけますが、はんのうがないみたいです。
そうこうするうちに、ヘツィーがもどって来ました。
「かくして来やしたぜ、それで……」
ゴミばこ、ベンチの下、用水路、家のポストに宝石屋のショーウィンドウ。
「ちがうっ、ちがうっ、ないないないっ!」
カソは町中を走り回ります。
車をおいこし、家をとびこえ、ともかくものすごいスピードです。
「……さすがカソ、お金がかかるとムチャクチャだなぁ」
ピトラはベンチにすわって、カソのペンダントを目だけでさがします。
「ピトラのダンナ、ペンダントをかくそうとしたところに、こんなものがありやした」
ヘツィーは、油っぽい紙につつまれた、小さな木箱を見せます。
「それだ! 地図が入ってたのといっしょだよ!」
「それをねらって、あっしにペンダントを?」
「そ、そうです……ぜぇ、ぜえ、ぜは」
カソは息を切らせながら、もどって来ました。
「だから、ペンダントはかえしなさい、すぐかえしなさい、きちんとかえしなさい」
「見つけられたらかえしやすぜ」
ヘツィーはにやりとわらいます。
「あなた、金の亡者です!」
カソがどなりながら、走っていきました。
「……目くそ鼻くそをわらうってことわざ、あったよね」
ピトラは噴水をながめます。
めずらしい形でもないし、不思議な動きをするわけではありませんが、水がとってもきれいで、お日様の光で虹を作ります。
虹はまるで宝石みたいで――。
「……ん?」
ピトラは木箱をつつんでいる油っぽい紙を見ます。紙には、水のしずくが少しついています。
「カソ!」
「ふぅ、ひぃ、な、なんです」
「あそこ」
噴水の噴き出し口に、ペンダントがくっつけてありました。発信器も、水の中でこわれてしまったのでしょう。
「やぁ、良かった、本当に良かった、ありがとうございますピトラ! お礼にこんど、温泉タマゴをタダで二つごちそうします」
「えっ、本当に? すごい、カソがそんな大ばんぶるまいをしてくれるなんて!」
「……カソのダンナはそういうキャラなんですかい」
「ええと、開け方はたしか……」
ピトラは木箱をななめに――。
カコッ。
ななめにずれてから、上にずれ、それから右に少し、左にぐいっと、さいごに下。
バララッ!
箱はバラバラになって、中から一枚の紙が出て来ました。
「また地図?」
ピトラが紙をひろうと。
ペンがなかったのでしょうか。マッチにインクをつけて、ペタペタとおしつけた線がくみあわさっています。
そしてその線は、こんな文字になっていました。
『ハズレ』
「ハズレぇ?」
「ハズレですって?」
「マ……ハズレとは」
ピトラたちは、顔を見あわせます。
「こんなオチってないよ! 今時ないよ、うったえてやる!」
「ピトラ、宝はそうカンタンに見つかるもんじゃないんですよ」
「でも、それでもさ!」
「さわいでもしかたないでしょう」
カソは大きくためいきをつきました。
「宝さがしをしたという思い出、それはどんな物にもかえられない宝物、というオチなんでしょうかね」
「う……そう、そうだけど」
ピトラは、力なくうなずきました。
「あーー、もうなんか、つかれたからかえるね」
「ごきげんようピトラ」
「ありがとうございやした、ピトラのダンナ」
ピトラがガックリしたまま、夢の世界からかえった後。
ヘツィーが、夜の町を歩きます。
「ひひひ」
手には、箱の中から出て来た紙。
「マッチで書いた『ハズレ』の文字、マッチハズレ、まっちはずれ、町外れ」
町外れの一本杉が見えて来ました。
「町外れの一本杉!」
そうです、あの紙はなぞかけだったのです。
そのしょうこに。
「え?」
今まさにカソが、宝箱を掘り出しているのですから。
「あ、ちょ、ちょっと、カソのダンナ! なにを!」
「あんなナゾ、わたしにはカンタンでしたよ」
カソは、掘り出した宝箱のフタをあけます。
中には、小判が何枚も入っていました。
「思ったより少ないですが、まあいいでしょう」
「まって下せぇ、カソのダンナ! そんな、いっしょに宝をさがした仲間じゃないですか」
「仲間?」
カソは首をかしげます。
「だったら、あの時どうして、ピトラに教えなかったんです?」
「それは、その」
カソはにやりとわらいました。
「ひとを出しぬくなら、出しぬかれる覚悟をしないといけませんよ」
「でももともとはあっしの」
「そこまで言うなら、チャンスをあげますよ。もう一回だけね」
カソはサイコロをとりだします。
「1が出たら、わたしがぜんぶもらいます。そのほかの数なら、キミにぜんぶあげましょう。どうです」
「へ? それでいいんで?」
「ええ」
「わ、わかりやした、やりやしょう!」
ヘツィーはサイコロをもって――。
ふりました。
「ま、もっとも」
カソがつぶやきます。
「うわああああっ、1だあああっ!」
サイコロは1でした。とうとうあきらめたのか、ヘツィーはすぅっと消えてしまいました。
「――これはイカサマサイコロで、1しか出ないんですけどね」
カソはイカサマサイコロと小判をポケットに入れました。
「さて、これで買いたかったものリストの三つ分ぐらいは買えますかねぇ」
ほくほく笑いながら、カソは一本杉からたちさりました。
【おしまい】
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