ピトラの冒険48

千足とQの絵本ワールド
Q書房■■■■
 秘密基地(ひみつきち)が、たいへんだ
 

ごんぱち

「――え? オバケ?」
 ピトラはおどろいて聞きかえします。
「どうも出るらしいぜ、がはは」
 サリスは、わらいます。
「そうだそうだ、出るらしいぞ」
 ノクタはちょっぴりこわそうです。
「そ、それで、どこに?」
 ピトラのこえも、少しふるえていました。
(ゲンさんもいたし、リンガがこっちに来たこともあったし、イースもいたし、オバケがいても、ぜんぜんおかしくないんだよね……)
「……ここ」
 ラグヤがポツリとこたえます。
「え? どこ?」
「ここだ」
「そうだそうだ、ここだ」
「……ここ」
 サリス、ノクタ、ラグヤは、床をゆびさしました。
 ピトラたちが今いるのは――。
「ええっ、秘密基地に?」
「おう」
「そうだぞ」
「……うわさではね」
「いくらなんでも、そ、それはないでしょ。オバケなんてそうそういるもんじゃないよ」
 ピトラはむりやりわらおうとします。
「……オバケなら、むしろこわくないけどね」
「ラグヤ、リアルにイヤなこと言わないでよ!」
「あやういボケツッコミはともかく、だ」
 りょううでをくんだサリスが、ぐいとのりだします。
「オレの秘密基地に、オバケなんていさせておいていいと思うか?」
「サリスのじゃないでしょ、みんなのでしょ」
「なに言ってるんだ、みんなのものは、つまりオレのものだろう」
「ジャイアンじゃないんだから」
「あれは、おまえのものはオレのものだろう。みんなのものじゃない」
「そりゃあそうだけど」
「なんだ、なっとくいかないか?」
「まさか、サリスなんかに言いまかされるなんてって」
「がははは、そんなにほめるなよ」
「わぁい、やっぱりサリスだ!」
「……わざとボケてやったんだよ」
 ピトラとサリスが話していると。
「……よし」
「おお、できたぞ!」
 ラグヤとノクタが、こえを上げました。
「ん? なにやってたの?」
「なんだ、そりゃ?」
 ラグヤとノクタは、なにやらノートに図を書いています。
「ワナだぞ」
「……ワナのせっけい図だよ」
「あのさ、ラグヤ」
「……なに」
「秘密基地にワナをしかける話は、だいぶ昔にやっちゃったと思うんだけど」
「ピトラそれはどうかと思うぜ」
「……言わなければだれも気づかないのに」
「そうだそうだ、話のコシをおってるぞ」
「ぼ、ぼくがわるものなの?」

「えーと、かみぶくろはここでいい?」
 古いイスにのったピトラが、少しあけたドアの上に、そっとかみぶくろをおきます。
「……うん」
 図と見くらべながら、ラグヤがうなずきます。
「中に入ってるのって、なに?」
 かみぶくろの中には、サラサラして茶色くてかわかした土みたいなものが入っています。
「……かわいた土」
「うわっ、そのまんまだ!」
「ただの土じゃない、ノクタがこまかくふるったんだぞ」
 ノクタがじまんげです。
 たしかに、ノクタの言うとおり、土はこまかくて、こむぎこか、かたくりこみたいにサラサラです。
「オバケって、土がにがてだっけ?」
「……そんなわけない」
「それじゃ、イミないじゃん!」
「……まずは、ホントウにいるかどうか、たしかめるんだよ」
「たしかめるって?」
 ドアの上に土の入ったかみぶくろをおいたあと、ピトラはイスからとびおります。
 どんっ!
 とびおりたしょうげきで、ドアがガタリとゆれました。
 そして――。
 どさああっ!
 かみぶくろは、ピトラのアタマにおちてきました。
「うわっ、ぶはっ!」
 土があたりにとびちって、ゆかは土だらけです。
「えぺっ、うへっ、うあーー、えほっ、けほっ」
 ピトラは土だらけになったアタマをふります。
「うー、しまったーー、そっとおりないとダメだったーー」
「……ほら」
「え?」
 ラグヤはゆかをゆびさします。
 土がうっすらとのったゆかには、足あとができています。とくに、土をかぶった時にピトラが立っていたばしょは、くっきりと足あとがのこっていました。
「……こうやって、足あとがとれる」
「足あとねぇ……」
 ピトラはラグヤに耳うちします。
「ゲンさんやリュウさんたちのしわざってこと、ないのかな?」
「……こっちの世界に、そんなにカンタンに来られないよ」
「うーん、でも」
「……もしも来てたら、とっくにゲンさんたちが知らせに来てる」
「それはそうか」

 少しして、べつのドアに土の入ったかみぶくろをしかけたサリスがもどって来ました。
「なあ、ラグヤ?」
「……なに?」
「オバケって足、ないだろ? だったら、足あとなんてイミないんじゃないか?」
「……イミはあるよ」
 ラグヤはニヤリとわらいます。
「……足あとをつけずにふくろをおとすなんてこと、だれができる?」
「お、おう、そ、それはな」
「うんうん、オバケみたいだぞ」
「ラグヤ、オバケってユウレイとちがうから、足はあると思うんだけど」
「……どっちでもいいじゃないか。フフ」
 ラグヤは、とってもイヤなかんじにわらいました。
「……さ、かえろう。あんまりおそいと、お父さん、お母さんがしんぱいする」

 家にかえったピトラは、ばんごはんをたべます。
(ホントウにオバケなのかなぁ)
 かんがえると、ゾクゾクっとこわくなります。
 オバケがどんなすがたなのかはわかりませんが、ともかくこわいものにちがいありません。
「まさか、ね」
 ピトラは、くすっとわらいます。
(ぼくは、夢の世界で山ほどこわいもの、ヘンなものを見て来てるんだ、今さらオバケなんて、どうってことないや)
 みそしるをのみます。
(でも、もしもわるいオバケだったらどうしよう? オバケのたいじのしかたなんてしらないなぁ)
「……ラ」
(リンガでもいれば、オバケなんかまっぷたつだし、ゲンさんが来てくれればひとひねりなんだけど……こんどカソから風水をならおうかな。よくわかんないけど、カソにつかえるなら、ぼくにだってつかえるだろうし)
「……ピトラ?」
(あ、まてよ? カソがそういうのをすなおにおしえてくれるとは思えないなぁ。お金はつかいたくないし……ちゃんとしたまほうつかいの知り合いってあんまりいないんだよね)
「ピトラってば」
(あ、そうだ。フツヌシに、なにかオバケをたおせるものを作ってもらおう。それがいちばんいいや)
「ピトラ!」
「へ?」
 お父さんの大きなこえに、ふとピトラが気がつくと。
「あっ、ああっ!」
 手がかたむいて、みそしるがこぼれていました。
「あーーーっ」
「ほら、だいふき、だいふき!」

 つぎの日のあさ。
 学校に来たピトラは、きょうしつに行きます。
「もう、ホントウにすごかったんだぜ!」
 きょうしつの中に、人だかりができていました。
「ん?」
 ピトラもその中に首をつっこみます。
 ピトラはあんまり話をしないクラスメイトのタオーゼとそのともだち5にんが、じまんげに話しています。
「オレらがきのうの夜、こっそりオバケやしきにしのびこんでみたんだよ」
「へえっ、よく入っていけたな、こわかったろ?」
 だれかがたずねます。
「はんっ、こわいなんてことあるかよ」
 タオーゼたちは、わらいます。
「ぎゃくにおどろかしてやったさっ、ドアをどんっって開けてな」
「そうそう!」
「オバケのやつ、すぐにいなくなってさ」
「そうそう、土になっちゃったんだ」

 ほうかご、ピトラは大いそぎで秘密基地にはしりました。
「……ピトラ、おそかったね」
 秘密基地には、ラグヤがもう来ています。
「ラグヤ、ここにタオーゼたちがしのびこんだって」
「……聞いてるよ」
「オバケもたいじしちゃったって。先をこされちゃったね」
「……ナイスボケ」
「え? なにが?」
 ラグヤはだまって、へやのドアの下をゆびさします。
 ピトラたちのしかけたかみぶくろがおちていて、ばらまかれた土の上に、足あとや手のあとがいっぱいありました。
「あっ、これがオバケの?」
「……クツをはいた?」
 明らかに子どもの足あとです。ちょうどピトラと同じぐらい。
「じゃあ、手のあとは……」
「……しりもちをついて、それから、大あわてでたちあがろうとしたら、こんなふうになるよ」
 言われてみれば、足あとはてんでバラバラです。ところどころすべったようなあともあります。
 足あとはそのあと、となりのへやのドアに行って、またかみぶくろのワナにひっかかり、つぎにはってあったロープにひっかかってころび、くさったゆかをふみぬいて、さいごにかってぐちから外にむかっています。
 よっぽどあわてたのか、かってぐちのドアノブがぬけていました。
「じゃあ、タオーゼたちは……」
「……ぼくらのワナにおどろいて、にげかえったのさ。おちた土を見て、オバケがとけちゃったとかんちがしたみたいだね」
 ラグヤはクク、とわらいます。
「……ゆかいなかんちがいだよ」
「はは、なーんだ」
 ピトラとラグヤがわらっていると。
「おうっ、ピトラ! タオーゼがな!」
「そうだそうだ、オバケをたおしちゃったらしいぞ!」
 あわてたようすで、サリスとノクタがやって来ました。
「もうおわったってば」

「……よし、なおしたぞ」
 ノクタがかってぐちのドアノブをまわして見せます。
「すごいねノクタ、そんなものもなおせるんだ?」
「なんだ今さら」
 サリスがわらいます。
「ネジがさびておれていただけだぞ」
 じまんげにノクタは言います。
「……あとは、そうじ」
「やっぱりやるの?」
 ピトラはイヤそうなかおをします。
 キレイになるのはきらいではありませんが、そうじはやっぱりめんどうです。
「……ぼくたちの秘密基地、だよ」
「うー、まあ」
 ピトラたちは古いホウキをつかって、土をはきあつめはじめます。
(あーあ、けっきょく、オバケは見つからなかったなぁ)
 ゆかはタオーゼたちの足あとだらけで、土がへやのすみまでひろがっています。
「こっちはおわりっ、つぎのドアは――」
 つぎのドアのあるへやへ行くと。
「あれ? ここはあんまりひろがってないや」
 土はおちていますが、足あとがないので、ひろがっていません。
「よかった、これならそうじもカンタンだ」
 ピトラはホウキをかまえようとして。
「まてよ?」
 ピトラはじぃっとゆかにひろがった土を見つめます。
「足あとがないのに、土がおちてる?」
 足あとをつけないで、ドアをあけて土をおとせるのは――。
「お、お、お」
「……どうしたんだい、ピトラ」
「どうした、ピトラ」
「どうしたどうした、ピトラ?」
「きゃああっ! おばけだあああっ!」
 ピトラがひめいを上げたとたん。
 バサバサバサバサッ!
 音がして、おふろばのほうで、なにかがうごきました。
「うおっ、なんだ!?」
「なんだなんだ、ホントウのオバケか?」
 サリスとノクタもおどろいてしりもちをつきます。
「……うーん、なんだろう?」
 ラグヤはかんがえています。
 みんながあわててしまっているのを見て、ピトラはぎゃくにおちついて来ました。
「オ、オバケだっ、おいはらわなきゃ!」
 ピトラはおちていたふくろに、土を入れてしぼったものを、かまえます。
 音のしたほうへ、ゆっくり、しずかに……。
 古いゆかいたが。
 ぎぃぃぃぃっ……。
「ひゃああっ!」
 ばさっささささっ!
「だ、だれだっ、出て来い!」
 ピトラがどなると。
 ギャガアア、ガアア、カア、ガアア!
「え?」
 どこかで聞いたような、なきごえです。
「……これって」
「カラス?」
 ピトラがおふろばのドアをあけると、そこには黒いはねがなんまいかおちていました。
「なんだよ、カラスだったのか」
「うんうん、ノクタは気づいてたぞ」
「……なるほど、だから足あとがなくて、ドアがうごいたんだ」
 ピトラは、はねをひろいました。
 大きくてとってもキレイな、まっくろのはねでした。

 つぎの日の朝、ピトラとラグヤは、学校へあるきます。
「けっきょく、オバケはカラスだったんだね」
「……そうみたいだね」
「まったく、カラスなんてのは、ひとさわがせだなぁ」
「……たしかにね」
 ピトラたちはうわばきにはきかえて、きょうしつへ。
「じゃ、またほうかご」
「……うん」
 ラグヤとわかれたピトラが、きょうしつのドアをあけると。
「もう、ほんっっっとうにすごかったんだぜ!」
 ひとだかりができています。
「きのうの夜も行ったら、オバケがな」
 タオーゼがいっしょうけんめいはなしています。
「あはは、オバケはただのカラス――」
 ピトラが言おうとすると。
「なんたってホンモノだぜ。なにしろ、土になってゆかにちらばってたはずのオバケが、すっかりなくなってるんだ!」
(え?)
「しかも、こわしちまったドアノブはなおってるし、4にんのかげを見たっていう話も聞いたし」
(それって、ひょっとして……)
「いやぁ、こわかったぜ。あそこには、カラスしかすんでないとばかり思ってた。もうまっぴらだ」
(……オバケって、ぼくら?)
 こわそうに話をつづけるタオーゼを、ピトラはなんとも言えないカオをして、ながめていました。

【おしまい】

お便りお待ちしています。
ピトラくんのメールボックスから園児や先生方の楽しいメッセージを送ってください。
また園児の絵や作文など送信してください。楽しいページをつくります。
先生もお話を書いてみませんか。ホームページに載った先生のお話で園児と一緒にお遊びください。
形式はこだわりませんが、趣旨から著しく逸脱する内容の場合は掲載を見合わせますのでご了承ください。
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