宇宙海賊カピタン 前編
by ごんぱち
写真、写真、写真、星の写真です。
「すごい、星がいっぱいだ」
ピトラはアルバムをめくります。
「……これが木星」
ラグヤが、めだまみたいなもようのついた星の写真をゆびさします。
「へー、くっきり見えるんだね」
「……うん。カメラもよかった」
「いいなぁ、ふーん」
ピトラはラグヤの望遠鏡を見ます。
ピトラの顔ぐらいある大きなレンズがついた望遠鏡です。
「……入学のおいわいにもらったけど、これほどとは思わなかった」
「ふーん、へー……ねえ」
ピトラはラグヤに手をあわせます。
「ちょっとかしてくれない?」
「ダメ」
「うわっ、ラグヤなのにへんじはやっ!」
「……だいじなものは、かしかりするべきじゃないから」
「なくしたりこわしたりなんて、ぜったいしないからさぁ」
「……ダメ。ぜったいなんてことはないし、もしもそうなったら」
ラグヤはそっと望遠鏡をなでます。
「……ぼくは、ピトラをぜったい、ぜったい、ぜったいゆるさないと思うから」
「は、はい……ムチャ言ってすまんです」
「……それに、かしても、こんなにキレイな写真はとれないよ」
「え?」
「……これはお母さんのいなかでとったものだからね」
「イナカ?」
「……おじいちゃんとおばあちゃんがいるとこだよ」
家にかえったピトラは、ばんごはんのあと、じぶんのへやのまどから外をながめます。
「星かぁ……」
夜空には、一つ、二つ、星があります。
でも、ラグヤの写真ほど星はありません。
「まあ、夢の世界でなら、宇宙船ももってるけど」
ためいきをつきます。
「やっぱり見たいなぁ」
「にいちゃん」
いもうとのポテトがとなりにきます。
「そとになんか、おもしろいものでもあるのか?」
「星がないんだよ」
「あるぞ? にいちゃん、ウソはよくない」
ポテトは首をかしげます。
「ラグヤの写真とくらべてだよ」
「ラグヤににいちゃんがまけるのは、いつものことじゃないか」
「まけてないよ、べつに!」
「にいちゃん、しょうぎでもトランプでもTVゲームでもカードゲームでもまけてた」
「うるさい、うるさい、こどもはさっさとねなさい」
「にいちゃんだってこどもだ」
「にいちゃんは小学生だ。電車のキップだっているし、からだも大きいし、ようちえんのポテトとはぜんぜんちがうでしょ」
「にいちゃんのいじわる!」
ぶっとふくれて、ポテトはへやから出ていきました。
「まったく、ポテトめ、ひとがきにしていることをグサグサと」
ピトラはまた夜空を見ます。
とおくの町明かりにてらされた空には、やっぱり星はちょっぴりです。
「望遠鏡があれば、もうすこし見えるのかなぁ。でも、見えないものは見えないってラグヤは言ってたしなぁ」
ピトラは部屋の明かりをけします。
でも、となりの家や、むこうのビル、がいとう、車のヘッドランプなどなど、明かりが空をてらしていて、やっぱり星はあんまり見えません。
「イナカかぁ」
つぎの日の朝。
「ねえ、お母さん」
朝ごはんのトーストをかじりながら、ピトラはお母さんのピピラさんにこえをかけます。
「口にものを入れてる時にしゃべるのはギョウギわるいわよ、ピトラ」
「ん、ごめんなさい」
もぐもぐもぐ、ごくん。
「ねえ、お母さん」
「なに?」
「おじいちゃんと、おばあちゃんの家、こんどいつ行くの?」
「おぼん休みにでも行こうと思ってるわよ。八月ね」
お母さんはスープをのみます。
「八月ぅ?」
「どうしたんだい、ピトラ。そんなにおじいちゃんとおばあちゃんにあいたいのかい?」
お父さんのポポトさんが、コーヒーをいれたポットを台所からもってきます。
「それもないわけじゃないけど、イナカに行きたいんだ」
「イナカ? どうしてだい?」
「星が見られるかな、って」
「うーん」
お父さんはマグカップにコーヒーをつぎます。
「それはムリだね」
「どうして?」
「お父さんのいなかも、お母さんのいなかも、いなかじゃないからだよ」
「へ?」
「どちらも町だから、夜に星なんて見えないんだ」
「あ」
言われてみるとそうなのです。
ピトラのおじいちゃんとおばあちゃんたちの家に行ったことはありますが、町なみはピトラがすんでいるツキト町とあんまりかわらないのです。
「じゃあ、ラグヤのおじいちゃんとおばあちゃんの家に――」
「めいわくがかかるからムリだよ」
「むぅ」
ピトラはだまりこんでしまいました。
(なんか、うまいほうほうはないかなぁ)
学校の図書室で、ピトラは星の本をひらきます。
「ええと……」
むずかしいことがいろいろ書いてありますが、どうにかよめそうです。
「星のさがしかたは――くもっていない、明かりのすくない、ゆげなんかもないところがむいている――って、やっぱり暗くないといけないんだよねぇ」
本にはラグヤが見せてくれた写真よりもずっとくっきりした星の写真がいくつものっています。
「暗いところっていうと、トンネルの中とか、おしいれの中、それに目かくしをする――って、それじゃあ星も見えないから」
まどに目をむけます。
図書室は三階にあるので、とおくまでよく見えます。
でも家やビルがいっぱいならんでいて、やっぱり夜になっても明るそうです。
「どっか、暗いとこ……」
とおくには、山が見えます。
「うーん、なんかないかなぁ」
空にはくもが見えます。
「うーーーむ」
海は見えないみたいです。
「うーーーーん」
山が見えます。
「んーーー」
山が見えます。
「んーーーーーーー」
山が見えます。
「え?」
山が見えるんですってば!
「あ」
ピトラは立ち上がります。
「そうか、山は夜には見えない、つまりまっくらだ!」
「山のぼり?」
ばんごはんのひややっこをたべながら、お父さんがききかえします。
「うん……どう、かな?」
ピトラはハシをもったまま、えんりょがちにききます。
「そうだね、おもしろいかもしれないなぁ」
お父さんは、なっとうをかきまぜます。
「うん、はやおきして、おべんとうもって、山の上から『ヤッホー』とか『ヤフー』とか」
「あらあらあら、ポポトさん、うんどうなんてほとんどしないのにだいじょうぶ?」
お母さんがわらいます。
「だいじょうぶだって。ぼくはまだわかいよ、ヤングマンだ」
「YMCA?」
「ポポト、かんげき!」
「あははは、やだ、ポポトさんったら」
「あはははは!」
(……なんか、お父さんとお母さん、またミョウなとこへ行っちゃったぞ。昭和時代のギャグなんか、ちっともわかんないよ)
ピトラは、だまってえだまめをたべます。
(でもまあ、山に行けることになったから、よかったよかった――ただ、一つ気になるのは)
ピトラはいなりずしを手にとります。
(どうして今日はダイズ料理ばっかりなんだろう?)
よくはれた日曜日、ピトラとお父さんは山に来ていました。
「さあ、もうひといきだ」
山道をピトラとお父さんはのぼります。
「はぁ、ふぅ、ひぃーー」
ピトラはあせを手でぐいっとぬぐいます。
(夢の世界とちがって、空気がヌメッとしててあついーー)
「ふぅ、ふぅ」
「ピトラ、休まなくてだいじょうぶかい?」
「あと、三十分ぐらいは、へいき、はぁ」
「よーし、それならてっぺんまで行けるぞー」
山はいろんな木や草がはえていて、道には葉っぱからかわりかけの土がつもっています。
「よいしょ、よいしょ……」
ピトラはどんどん、どんどんあるきます。
そして――。
木のない、パッとひらけたばしょに来ました。
「わぁ」
ピトラはおもわず声をあげます。
町が、ずっと下に見えます。まわりのどっちを見ても、ここよりも高いばしょはありません。
「やったぞ、ピトラ。てっぺんだ!」
「やったーー」
「ばんざーい」
「ばんざーーい」
(やった、これで星が――え?」
「あれ?」
ピトラは空を見上げます。
青空に白い雲。
お日さまが高いところにあって、もうお昼みたいです。
「さあ、おべんとうにしよう。ぼくがうでをふるった自信作だよ」
「……あの、お父さん?」
「なんだい?」
「その、星が出るまでここにいる?」
「ははは、まさか。おべんとうをたべたらおりるよ、あんしんして」
「むーーー、イミないじゃん、夜じゃなきゃ、イミないじゃん」
家にかえったピトラは、ふとんの上でのびます。
「ノリツッコミにしたって、ボケがながすぎるじゃん……」
体のふだんつかわないところをうごかしたせいか、キンニクがいたみます。
「あー、やっぱり星はここからじゃあんまし見られないのかぁ」
顔だけうごかして、まどの外の夜空を見ます。
ちょっぴりの星と月。
「おっきくなったら、もうすこし星が見えるところにすみたいなぁ」
よこになったままゴロゴロころがって、ゲンさんのぬいぐるみをつかみます。
「それまでは、夢の世界の星でガマンかな」
おおきなあくびを一つ。
「宇宙船、どれぐらいできたかなぁ……はやくのりたいなぁ」
夢の世界に来たピトラが、いつものように社長室でおきると――。
「社長、社長社長! たいへんであります、たいへんであります」
目のまえにカモメのジョースターのカオがありました。
「うわっ、な、なな!?」
「おそいであります、まっていたであります!」
「ジョースター、社長室にはかってに入らないでって言ってるでしょ」
「それどころではないのであります、さあ、さあ! たいへんであります、てぇへんだであります!」
「まってってば、パジャマからきがえないと」
ピトラはパジャマから、シャツとズボンにきがえて、クツをはきます。
「どうしたのさ、そんなにあわてて?」
「どうしたもこうしたもないであります」
ピトラはジョースターのあとについてはしります。
「『こうしたのさ』と、はきいてないよ、べつに」
「社長、おちついてきくであります」
「キミよりはおちついてるつもりだよ」
「改造中の宇宙船が、イダテンがぬすまれたであります!」
「もうそんなことであわてるなんて、ジョースターは、まったく――って、ええええええええ!!!????」
ピトラはジョースターの100ばいも大きなこえをあげ、宇宙船『イダテン』のあるドックへはしっていきました。
【つづく】
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