
ごんぱち
ビルといえのあいだにポッカリ、ちいさなこうえんがありました。
「わぁ……」
ピトラは、ちいさなこうえんをみて、こえをあげます。
「おっきい」
ちいさなこうえんです。
「おっきい、とけい!」
そう。
ちいさなこうえんでしたが、そのまんなかには、おおきなハナどけいがありました。
もじばんが、かだんになっていて、すうじがハナでできています。
ゆめのせかいのハナです。ガラスみたいにすきとおったものがあるかとおもえば、ケイトみたいにポワポワなものがや、シャラシャラおとをたてるものがあったりします。ぎんいろの2つのながいハリとみじかいハリは、キラキラかがやいていて、まるでつくりたてのロケットみたいです。
「キレイだなぁ」
おおきなおおきなとけい。
「あれっ?」
ながいハリがうごいているのがみえます。
「おかしいなぁ、とけいのハリがうごくのなんて、みえるわけないけど……」
でもたしかに、ゆっくりハリはうごいています。
「え、えと、おっきいから、そうみえるんですよ」
「ええっ、だってふつうのとけいはこんなにうごかないよ」
「ほら、こっちのとけいとくらべてみてください」
「ほんとに?」
ピトラはてわたされたかいちゅうどけいと、ハナどけいをみくらべます。
かいちゅうどけいのびょうしんがうごきます。これが1まわりすると、ながいハリが1ぷんうごくはず。
ピトラは2つのとけいをみくらべます。
カチカチカチカチカチカチカチカチ……。
おおきなハリが1ぷんかけてうごいたのは――やっぱり、とけいのもじばんの1ぷんぶんだけでした。
「ああ……ホントだ。なんか、ヘンなかんじだなぁ」
「あたしもはじめてみたとき、ヘンなかんじしましたよ」
「……って」
ふと、ピトラはうしろをみました。
「だれ!?」
「ひゃあっ、ごめんなさいっ!」
ビクッとおどろいて、とびあがったのは、ペンギンのおんなのこ。おどろいたひょうしに、かけていたおおきなメガネがおちました。
ピトラより、すこしとしうえでしょうか。
「あっ、わっわっ、メガネメガネ……」
あわててペンギンは、じめんをさがしはじめます。
「あの……」
「あのメガネがないと、なんにもみえないんです、あわ、うわわわ……」
「アタマ」
「ええ、あたしのアタマよりだいじなぐらいなんです。タダのメガネじゃないんで」
「いや、だからアタマ」
「ハナのアタマにひっかけるタイプですよ。メガネのツルはひっかけるとこないですし……」
「アタマのうえを、さがしたら?」
「はひ?」
ペンギンは、じぶんのあたまをさわります。
「あっ、あった!」
メガネは、あたまのうえにのっていました。
「いやぁ、たすかりました、エヘヘ」
ペンギンがアタマをさげると、かけたメガネがすこしズレました。
「あたしは、ケームともうします。どうもありがとうございました」
「ぼくはピトラ。ケームさんも、このとけいすきなの?」
「はい。すごいんですよ、このとけい」
「おおきいよね」
「それだけじゃないんです。とってもせいかくなんですよぉ」
ケームのメガネがキラリとひかります。
「200フカシギのぶひんが、ぎっしりとくみあわさって、ウルウどしはおろか、ウルウびょうや、じきあらしまでカンペキにけいさんしているから、100おくねんたってもくるわないんですよ」
「ひゃ、100おく、そんなに?」
「はいっ」
うれしそうに、ケームがうなずいたとき。
「あれ?」
「あ」
ハリが、とまってしまいました。
「どうしたの? でんちぎれ?」
「いえ、リュウミャクからエネルギーをもらってるから、そんなことはありえません」
ケームは、かだんにはいります。
「あっ、ちょっと、カッテにはいったらおこられるよ」
「だいじょうぶですよ、このとけいは――」
「ひょっとして、ケームさんがつくったの?」
「ま、まさか、そんなだいそれたこと。これは、1コウまえに、フツヌシさまがつくったんですよ」
「フツヌシ?」
「あたしのセンセイの、きかいぎしです。けんなんかもつくられるんですよ」
ケームはせおっていたバッグから、おっきなレンチをとって、とけいをぶんかいします。
「センセイってことは、ケームさんもきかいぎしがしごとなの?」
「はい。きんぞくだったら、なんでもやります。はぐるまとか、けんとか、フライパンとか、エンジンとか……ああ、このまえはプールのせんをつくったんですよ。とってもおっきいんです――ありゃらら」
「どうしたの? ケームさん?」
「これは、こまりました」
ケームは、ちいさなはぐるまをみせました。
はぐるまは、すっかりすりへっていました。
「ありがとうございます、ピトラさん。てつだってくださるなんて」
ピトラとケームは、さばくいきのバスにのっています。
「いやぁ、ははは。ちょうどヒマだったからさ」
まどのそとは、だんだんくさやきがへってきて、イシやつちがみえてきます。
「サバクにあるはぐるまのざいりょうって、どんなものなの?」
「サバクのハナのおうさまとよばれているものなんです」
「ハナ? サバクにさくの?」
「いえ、ハナみたいなかたちになったイシです。とっっっってもかたいから、はぐるまもながもちするんです」
「あのはぐるまって、それでできてたんだ」
「いえ、アレはちがいます。おなじぐらいのかたさですけど、ゲンブさんのコウラからきりだしたんです」
「ええっ、ゲンブって、ゲンさんの!?」
ピトラはめをまるくします。
「いえ、ずっとまえのだいのゲンブさんです」
「まえ?」
「1000000ねんぐらいのはばで、うまれかわるらしいですよ」
「……ゲンさんってなにものなんだろう」
ちょうどそのとき、バスがとまりました。
「おきゃくさん、つきましたよ」
「ありがと」
「ごじょうしゃありがとうございます」
バスのうんてんしゅのカソは、ぼうしをとって、かるくおじぎをしました。
さばくです。
くさも、きも、ほとんどありません。
イシがゴロゴロしていて、イワがゴツゴツつきだしています。みちもありませんから、くるまもとおれません。
「……サバクって、スナがあるんじゃなかったっけ?」
「みずがすくなければサバクですから、スナとはかぎらないですよ」
ピトラとケームは、リュックをせおってすいとうをさげて、しろいマントとフードをかぶっています。
「ええと、サバクのハナのおうさまがある、カラコはここからミナミへ、はんにちぐらいあるいたところです」
ケームは、ちずをみながらあるきます。
「はんにちかぁ」
ピトラはそらをみます。
たいようがギラギラギラギラてりつけて、マントにかくれていないカオがこげそうです。
(ヒモノ――ジャーキーになっちゃいそうだ)
「あの……あついの、にがてですか?」
「え? あー、いやいや、そんなことないよ」
ピトラはむりやりわらいます。
「それより、ケームのほうがたいへんじゃない? ペンギンなんだし」
「いえ、あたしはイワスミペンギンですから」
「イワスミ?」
「はい。ヨウガンのかたまりかけたイワにすんでるんです。たまに、スーさんもいらっしゃるんですよ」
(……なんだ、ホントウにだいじょうぶなのか。よかったけど、なんだかぼくがあつくなってきたなぁ)
ケームはペタペタペタペタあるきます。のろいですけど、ぜんぜんペースがおちません。
「うー、ノドかわいた」
ピトラは、すいとうをあけます。
それからグイッっと……。
「ピトラさん、ストップ」
「ふほ?」
「いちどにいっぱいのんだら、ムダにでてしまいますから、すこしづつのんでください」
「ふぁい」
ゴクリ。
(もっとのみたいんだけどなぁ……)
でも、ひとくちのみずが、カラダぜんぶにゆっくりしみわたるみたいです。だいぶ、らくになりました。
おひさまは、あいかわらずジリジリとピトラたちをあぶります。
(うー、フライパンのうえにいるみたいだ。ソテーになっちゃうよ……)
うえからのひかりもあついですが、じめんからはんしゃしてくるひかりまであついのです。
こんがりりょうめんやき、サカナやきグリルのなかみたいなものです。
ピトラは、なんどめかのみずをのみます。
「ねえ、ケームさんはどうして、きかいぎしになったの?」
「――うーん、そうですね。いろいろありますけど、あのとけいが、すきだったんです」
「ああ、キレイだもんね。ハナがいっぱいで」
「いえ、ハナはどうでもいいんです。あのとけいのしくみのセイミツさと、せいかくさ、1つ1つのぶひんも、まさにゲイジュツてきしあがりで……」
ケームはあつくかたります。メガネがずれてました。
「……フツヌシさまのさくひんは、ほかにもいろいろあって、とくにけんのできはすばらしくて……」
(おわらないよ……)
ピトラがふととおくにめをむけると、イシのはしらがいっぱいたっていました。
「ケームさん、アレって……」
「え? あ、うわわわ! アレです! あそこがカラコのいりぐち、いしのもりです!」
いうなり、ケームはペタペタはしりだしました。
が。
ガラガラガラガラッ!
とつぜん、あしもとがくずれました。
イシとスナが、アリジゴクみたいにケームといっしょにズルズルしずんでいきます。
「うあわわわわわわわ!」
このままでは、ケームがうまってしまいます!
「ケームっ!」
ピトラは、ケームのてをつかんでいました。
でも、ケームにひっぱられ、ピトラもしずみそうです。
「なんのぉっ!」
ピトラはケームをつかんでいないほうのてと、りょうあしで、しずんでいくイシとスナをよじのぼっていきます。
「お、も、いーーー」
「うわわ、わわ、あぶないです、てをはなさなきゃ、あぶないです」
「そういうこと、す、る、と」
むきをかえて、りょうてでケームのてをつかみます。
「めを、さましたとき」
くずれるあしばをグイッとふみしめて、せなかとりょうてとあしにちからをこめて。
「あさごはんが、おいしく、なくなるのっ!!」
イシとスナにうまりかけたケームを、いっきにひっこぬきました。
スポーーーーーーーーーーーン!
ケームはくずれていないばしょまで、なげとばされました。
でも。
「あわ、うわわわ!」
なげたはんどうで、ピトラがズルズルおちていきます。
「ぬおおおっ!」
ピトラはのぼろうとしますが、スナとイシは、もがくほどほどくずれていきます。
「え、えと、えと、たすけるもの、たすけるもの……」
そのときです。
ヒュルルルッ!
なにかが、ピトラのてくびにまきつきました。
「ボウズ、つかまれ!」
「えっ!? はいっ」
ピトラはてくびにまきついたものを、つかみます。しっかりしてじょうぶなムチ。
「よっ!」
ムチがぐいっとひっぱられます。
「うわああああああああああっ」
スポーーーーーーーーーーーン!
「だいじょうぶですか?」
「うん、ありがとケーム。たすかったよ」
「いえ、あたしはなにもできなかったんです」
「え? だって、このムチを」
ピトラはムチをみせます。
「――ムチじゃないぜ、ボウズ」
ムチがニョロリとうごきました。
「ヘビ?」
「ヘビさんですね」
「ああ」
ムチにみえたのはヘビでした。ぼうしをビシッときめています。
「オレはサイドワインダーのサワイ。このイシのもりをしらべている、ちしつがくしゃだ」
それからサワイは、ぼうしのうえにのっているまっしろなイモムシをシッポでさします。
「これがシルクワームのクワムラくんだ」
クワムラは、ニョッとからだをたてて、あたまをさげます。
「それでピトラくん、キミはどうしてこんなサバクへきたんだ?」
「あれ? サワイさん、ぼくのなまえしってるの?」
「……あ、いや、さっき、そっちのペンギンのじょうちゃんがよんでただろう。なあ、クワムラくん、そうだろう、うんうん」
「そうでしたか? ああそうです、あたしはケームともうします」
ケームはペコリとあたまをさげました。
イシのはしらのあいだを、ピトラとケームとサワイとクワムラはあるきます。
――もっとも、サワイはよこにウネウネじめんをすべってすすむし、クワムラはサワイのぼうしにのっているので、あるいているとはいえませんが。
「なるほど、サバクのハナのおうさまか」
ウネウネよこすべりしながら、サワイはうなずきます。
「しってるの?」
ピトラはサワイのあとをあるきます。
「けんきゅうようのしゃしんをとりたくてね、さがしていたのさ」
「しゃしんでいいの?」
「ああ。オレはそういうものをとって、コレクターにうるトレジャーハンターではなくて、がくしゃだから、しゃしんだけでいいのさ」
「みちづれができて、こころづよいです――ストップ!」
とつぜん、ケームがさけびました。
ピトラとサワイは、ビクッとしてとまります。
「そこのじめん、くずれます」
「えっ、ホントウに?」
ほかとかわらないじめんです。
「どれどれ」
ピシッ!
サワイがシッポのさきで、じめんをたたきました。
と。
ガラガラガラガラ!
じめんがくずれ、しずんでいきます。
「ケーム、どうしてわかったの?」
「さっきのこともありましたし、メガネのレーダーをつかったんです」
ケームはメガネをずりあげます。
レンズに、いろんなじょうほうがうつっています。
「……それ、タダのメガネじゃなかったの?」
「ちょっとカイゾウしたんです。ヘンですか?」
「いや、そんなことないけど」
「ありふれてますか?」
ケームはガッカリしたかおをします。
「ヘンなほうがうれしいの?」
「ほかにないものをもってるって、うれしくないですか?」
「そこ、くずれやすくなってます」
「こっちだな。クワムラくん、しっかりつかまってろ!」
サワイがむきをかえます。
「そこのイシのはしら、たおれそうです」
「よっっと」
ピトラがイシのはしらからとびのきます。いっしゅんのあと、イシのはしらがガラガラくずれます。
「それから、あたしのあしもとがくずれます」
ケームのあしもとに、おおきなじわれが!
「ケーム!」
ピトラはケームにとびついて、じわれからはなします。
「ああ、にげるのわすれてました」
「それをいちばんにかんがえてよ……」
ピトラはおおきくためいきをつきます。
「ふー、あつい」
またあつさがもどってきました。
かおがヒリヒリします。
(まっくろになっちゃうなぁ)
イシのはしらが、すこしづつふえてきます。
「このイシのはしらってなんなの?」
「これは、かぜやあめやじしんでじめんがえぐれて、イシがのこったものだ」
サワイがこたえます。
「へえ、そういうものなんだ」
「アスラさんがあばれたときにできたヒビも、おおいですよ」
「アスラって?」
「バケモノのおうさまだ。くろいユウレイみたいなぐんたいのかしらで、ここをサバクにしたちょうほんにんさ。もういないけどな」
「そんなこわそうなのがいたのかぁ」
ピトラがぼんやりととおくをみると。
そこに、まるっこいものがみえました。
イシみたいですけど、なんかちがう。でこぼこキザキザしたような……。
「あっ!」
ピトラはそれにかけよります。
うすいイシがはりあわさって、バラかキャベツみたいなかたちをしています。
「これって、サバクのハナ?」
「そうです」
ケームはメガネのフレームについているボタンをそうさします。
「でも、おうさまじゃありませんね」
「ハズレかぁ」
「ちかづいているしょうこですよ」
ケームがわらうと、またメガネがずれました。
おひさまはかたむき、そらがアオとクロのあいだのいろになっていきます。
ピトラたちは、ばんごはんのよういをします。
「うっ、さ、さむく、なってきたね?」
ピトラは、コンロでスープをあたため、かきまぜます。
「サバクのよるは、ひえるんですよ」
ケームがパンを、ノコギリみたいなナイフできります。
「ひるまはあんなにあついのに?」
「それがサバクのこわいところさ、なあクワムラくん?」
クワムラは、おおきくうなずきます。
「もういいみたいですよ、ピトラ」
「うん」
ピトラは、あついスープをカップについで、ケームとサワイにわたします。それから、じぶんもフゥフゥさましながらのみます。
ベーコンとタマネギと、なんだかよくわからない、きいろいやさいのはいったスープ。
「ん……おいしい」
あったかいスープは、おなかのなかからあたためてくれます。あせをかいてカラカラになったからだが、かんそうワカメみたいにスープをすいこんでいきます。
それから、パンをひときれ、かじります。
かじり。
かじ。
(かたい)
かじって、りょうてでつかんで、ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
(かたいい!)
うぅぅうぅぅぅブチッ!
(やっときれた)
ピトラはパンを、もぐもぐかみます。
ひらべったいパンは、ムギのかおりがとってもつよくて、いつもピトラがたべてるパンとはぜんぜんちがいます。
もぐもぐやりながら、スープをひとくち。
スープとパンが、とってもよくあいます。
ピトラは、ものもいわずにたべました。
(おいしいけど、アゴがつかれた……ものもいえないぐらいに)
つぎのひ。
ピトラたちは、イシのもりをあるきます。
「ありゃら?」
あるいていたケームが、くびをかしげます。
「どうしたの?」
「んー、なんだか、メガネのちょうしがおかしいです」
ケームは、くびをふります。
と、いきおいがつきすぎたせいか、メガネがはずれてとんでしまいました。
「あっ――れ?」
「おや、これは」
「メガネメガネ、メガネはどこですか?」
ケームからはずれたメガネは、すぅっととんで、イシのはしらにくっつきました。
「えっ? どうして?」
ピトラは、イシのはしらにかけよって、メガネをとります。
「メガメメガネ……」
「はい、ケーム」
「ああっ、ありがとうございます、ピトラ」
ケームはメガネをかけて、またくびをかしげます。
「りゃ? りゃりゃ? うああ、データがきえちゃってます」
「イシのはしらにくっついたからだな」
サワイは、むずかしいかおをします。
「ジシャクになっているらしい」
「じゃあ、データがきえるのもムリありません」
「こんなとこにジシャクがあるの?」
ゴロ。
(ジシャクっていったら、Uじがたしてたり、ぼうだったり、まるかったりするもんだとおもってたけどなぁ)
ゴロゴロ。
「このへんのイシには、テツがおおいからな」
ゴロゴロゴロ。
「そうですね。はしらになるのも、そのせいかもしれませんね」
ゴロゴロゴロゴロ。
「やっぱり、ジシャクっていうんだから、くっついたりはなれたりするの?」
ゴロゴロゴロゴロゴロ。
「そりゃそうですよ、ピトラ」
ケームがわらいます。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。
「そうとも」
サワイは、とおくのやまほどもあるおおきなイワのかたまりをゆびさします。
「ほら、むこうにみえるおおいわ、あれがジシャクだったりしたら、まわりのジシャクやテツがみんなよってくるだろうなぁ」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。
「ふーん、だとすると、さ。その」
「なんですか?」
「なんだ?」
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ。
「うしろにきてる、おおきなまるいイシは、とおりみちにあるぼくたちをペシャンコにするんじゃないかなーって」
「はへ?」
「い?」
4にんがふりむくと……。
ピトラたちのうしろには。
おおきなおおきなまるいイシが、ゴロゴロところがってきていました!
「うひゃああっ!」
「うあわわわわわ!」
「にげるぞ、クワムラくん!」
ピトラたちは、いちもくさんににげはじめました。
ゆるんだじめんに、あしがめりこみます。
「よっ、とっ、はっ!」
でも、ピトラはひょいひょいとびこえていきます。
「クワムラくん、ふりおとされるなよっ!」
サワイもきようにうごきます。
「あわわわわ、うわわわわ、あわわわわわ!」
「ケーム、もっとはしって!」
ピトラはケームのてをにぎってはしります。
うまりそうになるのをひっぱり、ころがってくるイシをふりきります。
ピトラたちと、おおきなイシがころがるしんどうで、いままでじっとしていたイシまでころがりはじめました。
「うわっ、わわっうわわわわっ」
ピトラがうしろをみると、おおきなまるいイシが、ずらりとならんで、こっちへおしよせてきます。
「ひぃぃぃぃぃ、にげられない!」
「ピトラ、まえにじわれ!」
「うわっ」
じわれをとびこえようとしたピトラですが、とびきれず、おっこちます。
「イタタタ……」
「モタモタするな!」
サワイが、ピトラをぐいっとひきあげます。
「ありがと、サワイ、さ、ん」
ただでさえあついサバクです。こんなにぜんりょくではしっていては、きがとおくなりそうです。
「ふぅ、はぁ、ふぅ、ふぅふぅ……」
ケームはあつさはへいきでも、はしるのはなれてないみたいです。
(ダメだふりきれない)
ピトラはふりむきます。
イシがおしよせてきます。
てまえには、ピトラがおちそうになったじわれ。
(イシ、あそこでとまらないかな……いや、ムリだ、はばがせますぎるし、あさい」
まえをみます。
やまほどもあるおおきなイワ。あのうえまでのぼれば、たすかりそうです。
(でも、イシのほうがはやい。まにあわないかっ、どうする?)
みぎやひだりににげようにも、イシはずらりとよこ1れつにならんでいます。
(にげられない、どう……そうだっ!)
「ケーム、サワイさん、こっちだ!」
「えっ?」
「なんだって!?」
「ぼくをしんじて!」
ピトラは、いままでとぎゃくに、ころがってくるイシにむかって、ぜんりょくではしっていきました。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……。
イシが、ころがっていきました。
イシがとおりすぎたあとに、ピトラたちのすがたは、ありませんでした。
かわいそうにピトラたちは、イシにつぶされてペッタンコに……。
「うー、ペッペッ」
なって、いませんでした。
「スナぼこりだらけだぁ」
ピトラは、じめんからでてきました。
「めがねがくもって、なにもみえませんー」
ケームもでてきました。
「たすかったな。なんだいクワムラくん? そうかそうか、ぶじがいちばんだな、うん」
サワイとクワムラも、はいだしてきました。
ピトラたちがかくれていたのは、じわれのなかでした。イシは、みんなうえをとおりすぎていったのです。
「たすかりました、ピトラ。ありがとう」
「うむ、おしてダメならひいてみろだな。りっぱなものだ」
「えへへ」
ズーーーーーン、ズーーーーーン、ズーーーーーーーーン!
じひびきをたてながら、イシが、あのおおきなイワにぶつかっていきます。
ズーーーーーン、ズーーーーーン、ズーーーーーーーーン、ズーーーーーン、ズーーーーーン!
イシが、どんどんぶつかっていきます。
どんどんどんどんどんどんどんどん。
ズンズンズーーーーンズーーーンズーーーーーーーーン! ズガガガガガガアアアアアアアアアアアッ!!!
あまりにもたくさんのイシがぶつかったので、イワがくずれてしまいました。
「うわぁ……あっちににげなくてよかった」
「あんなにおおきなイワがくずれるなんて」
「1まいイワではなかったんですね」
イワがボロボロボロボロくずれ、そして……。
「あっ、あれって」
「ええっ、アレなんですか?」
「アレが、か?」
くずれたいわのなかから、おおきなおおきなおおおおおきな、サバクのハナがでてきました。
まちがいなく、サバクのハナのおうさまです。
「……あんなにおおきいなんて」
「あたしも、おおきさのことまでは。でも、ひとカケラもってかえればいいだけですから」
「これはよこどりできないね、クワムラくん?」
「よこどり?」
「いやいや、こっちのハナシ。オレはトレジャーハンターなんかじゃないから、たとえサバクのハナのおうさまがちいさかったとしても、よこどりしてカソにうるなんてことは、しなかったさ。ほら、クワムラくんもそういってる」
まっくろにひやけしたピトラとケームは、はなどけいのまえでぼんやりしています。
おおきなハリが、ゆっくり、でもめにみえるはやさでうごいています。
「なおってよかったね」
「ピトラのおかげです。ほんとうに、ありがとうございます」
「は、ははは、どうってことないよ」
ゆっくり、とけいはうごいています。
ハリがおひさまのひかりをはんしゃして、キラキラとひかっていました。
<おしまい>
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