
ごんぱち
ゆめのせかいのいちばには、やさいやくだものから、でんきせいひん、うちゅうせんまで、いろいろなものがうられています。
「こっ、これは!」
カソが、こっとうやのまえで、たちどまりました。
「ん、どしたの、カソ?」
いっしょにあるいていたピトラがふりむきました。
「ピトラ、おかねもってますか?」
「あんまりもってないけど」
「しかたありませんね。じぶんのをつかいましょう」
「ふつう、そうするもんでしょ!」
カソは、ほそながいケースをかっています。
「なにそれ?」
「たからのちずですよ」
「ふーん、たからの――ええっ!」
ピトラは、おもわずおおごえをだしました。
「たからって、いったいなに? どんなの?」
「ひがしのりゅうおうが、5まんねんまえにかくしたたからですよ。うわさでは、くにが2つかえるぐらいのりょうだとか」
「くにが2つ!?」
「じゃ、わたしはこれで」
「ち、ちちち、ちょっと、まってよ!」
ピトラはあわてて、カソのせびろのうわぎをつかみます。
「なんですか、いったい」
「あ、は、はは、ぼくもさがすのをてつだってあげるよ」
たからときいたら、だまってはいられません。
おかねがあれば、いろんなものがかえるのです。ぬいぐるみだって、ゲームだって、おかしだって、なんだってかえるのです。
「このちずは、わたしのものですよ。たからはわたしのです」
「でも、いちばにいこうっていったのは、ぼくだよね」
ピトラはにまぁっとわらいます。
「それに、カソひとりだと、いろいろこまることもあるんじゃない? そのときになって『ピトラ、てつだってください!』なんていわれても、まよっちゃうなー」
「む……まあ、いいでしょう。いっしょにさがしましょう。でも、たからはわたしが7わり、ピトラが3わりですからね」
しぶしぶカソはいいました。
「えへへ、ありがと、カソ」
「……なんだか、いつもとぎゃくですね」
ピトラとカソは、もりにはいりました。
「ええと、ちずによると、たからは――」
カソはコンパスとちずをみくらべます。
「うん。『かえらずのもり』のなかですね」
「かえらずのもり?」
ピトラはききかえします。
「ええ」
「ひ、ひょっとして、1どはいったら2どとでられない……あ、ぼくはいいのか。めをさませば。でもカソはだいじょうぶ?」
「なにいってるんですか?」
カソはみちばたにおちている、タマゴをひろいました。
と。
ぶしゅーーーーー!
「うひゃああっ!」
とつぜん、じめんからゆげがふきあがります。
「な、な、ななな?」
「このへんは、おんせんがあちこちからわきあがるので、なにかがタマゴをうんでも、にえてしまうんです」
いわれてみれば、もりぜんたいがポカポカとあたたかです。きも、おんせんをすっているのか、ゆげがでています。
カソはタマゴのからをはがします。なかは、はんじゅくのおんせんタマゴになっていました。
「だから、ここのタマゴがかえったことはないんです」
「……そういう『かえらず』?」
「なんだとおもったんですか――はい、どうぞ」
「ああ、ありがと」
ピトラは、カソからおんせんタマゴをうけとってたべます。
なまタマゴほどドロドロしていないし、ゆでタマゴほどボソボソしていません。そのキミのあじのふくよかなことといったら。
「おいしい……」
「でしょう。かえらずのもりのおんせんタマゴは、ゆうめいですからね」
「ふーん」
「たからがてにはいったら、きちんとおかねははらってくださいね。おんせんタマゴだい」
「ひろったタマゴでおかねとらないでよ!」
ピトラとカソが、それからしばらくもりのなかをあるいていると……。
「――かわ、だね?」
「ええ。かわですね」
ピトラたちのめのまえにひろがるかわは、はばがひろく、ものすごいはやさでながれています。
「たからって、このむこう?」
「ええ」
ピトラはかわにちかづいて、みずにゆびを――。
「うわちちちちちち!! あつい、あついあつい!」
みずではありません。おゆです。しかも、ものすごくあつい、ねっとうです。
「どれどれ?」
カソが、かわのおゆに、てをつっこみます。
「そんなにあついですか?」
「カソはひねずみのせびろで、あつくないんでしょ!」
「ああ、そうでしたね」
「あぶないなぁ……」
ピトラは、キョロキョロあたりをみまわします。
「はしは、ないの?」
「ありますよ」
「――ねんのためいっとくけど、ごはんたべるおはしじゃないからね」
「ちっ」
「あ、あれなら、わたれるんじゃない?」
ピトラが、おおきなきをゆびさします。きのえだが、ぐぅっと、むこうぎしまでのびています。
「たかいですね」
「ほかに、わたるほうほうなんて、ないでしょ」
ピトラは、きによじのぼりはじめます。
「しかたありませんね。おりるときには、ロープでもつかいましょうか」
ゴツゴツしたきにあしをひっかけて、えだをつかんで、のぼります。
「ふぅ、ふぅ……」
ウロにゆびをかけ、コブをふんでのぼります。
「ひぃ、へぇ、はぁ……」
ピトラはあせだくです。
もともと、おふろかサウナのなかにいるみたいにあつい、かえらずのもり。しかも、よじのぼっているきも、ゆでたみたいに、ポカポカあったかいのです。
「うー、あついーー」
「あとすこしですよ」
カソも、のぼってきます。
ひねずみのせびろのせいで、やっぱりすずしそうです。
「カソ! ちょっとぐらいそのせびろかしてよ!」
「いやです」
「はんぶんでいいから」
「はんぶんづつにして、ふたりともがちょっとあつくなるより、ひとりがきていて、イザってときのために、たいりょくをのこしておいたほうがいいでしょう?」
「カソ、キミにはおもいやりってものがないの?」
「おもいやりっていうのは、おもいがけないボーナスみたいなもので、はじめからきたいするものじゃありません」
「……たから、ぼくは2わりでいいから」
ピトラがぼそっといったとたん。
「まってくださいね、いまぬぎます。すぐぬぎます。ささ、どうぞどうぞ」
カソから、ひねずみのせびろをかりたピトラは、きのえだのうえをゆっくりすすみます。
(うわー、ほんとうにぜんぜんあつくないや)
したでは、ねっとうのかわが、ゴウゴウとながれています。
「なんだかふしぎだなぁ……」
くうきのしめりけはかんじますが、あつくありません。ひんやりしているぐらいです。
「はぁ、ひぃ、ひぃ、はぁ……」
こんどはカソがあせだくです。でも、たからのことでもかんがえているのか、かおはニコニコしています。
さきにすすむにつれて、えだはどんどんほそくなって、ユサユサとゆれはじめました。
(やっぱり、こわい、なぁ)
ピトラのあしがふるえてきました。
なにしろ、ものすごくたかいのです。ピトラが10にん、かたぐるましたぐらい、たかいのです。
ユサッ!
「わっ!」
ピトラはしゃがんで、えだにつかまります。
「カソ! ゆらさないでよ!」
「ゆらしてませんよ」
うしろからカソのこえがしますが、ピトラにふりむくよゆうはありません。
(ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり……)
ピトラは、えだにりょうてりょうあしでつかまると、さきへすすんでいきます。
ユサユサッ。
「ひぃっ!」
また、おおきくゆれて、えだがつりざおみたいにグゥッッとしなります。
ゆっくりゆっくり、ピトラはすすみます。カソも、たぶん、うしろからついてきています。
そして、とうとう、むこうぎしがみえてきました。
「やった! もうすこしだ!」
そして、ついに。
パキ。
えだが。
「え?」
おれました。
「うわあああっ!」
ピトラはおちます。
「ああああああああ!」
まだおちます。
「ああああああああああ!」
もっとおちます。
「ああああああああああああ!」
ばっしゃあああああああん!!
「うわっ、あつ……くは、ないや」
ねっとうのかわですが、ひねずみのせびろのおかげであつくはありません。
けど。
「なーーーがーーーーさーーーーーれーーーーーーるーーーーーーー!」
ピトラはあっというまに、ながされていきます。
ものすごいはやさです!
「ぶはっ!」
ピトラはてとあしを、メチャクチャにうごかして、きしへとおよぎます。きしはちかづいてきますが、どんどんながされていきます。
(た、たいへんだ! このさきに、たきなんかあったら!)
――まあ、たきなんかはなくて、200メートルぐらいながされたところで、ピトラはきしにたどりつきました。
ピトラとカソは、またもりのなかをあるきます。
きはどんどんふえて、ますますあつくなってきます。
ぶしゅーーーーー。
また、おんせんがふきあがりました。
「タマゴがかえらないのはわかるけど、よくしょくぶつがそだつなぁ」
ピトラは、きをみあげます。
みあげて、ふとピトラはたちどまりました。
「どうしました、ピトラ?」
「あれ……」
ピトラがきを、ゆびさします。
「おおっ!」
いえ、きではありません。そのずっとさきに、いしづくりのたてものがみえました。
「やった!」
「あれですよ!」
ピトラとカソは、はしりだします。
とちゅう、なんどかおんせんでやけどしそうになりましたが、きにせずにはしります。
はしります。
はしります。
はし……。
「ね、ねぇ」
「なんです、か、はぁ」
「きのせいだと、おもうんだけど。ふぅ、はぁ」
「ええ」
「ちかづいて、ないよね?」
「……ピトラも、そうおもいますか?」
ピトラとカソはたちどまって、ゼイゼイいきをきらせます。
もう、のうみそのなかまでにえてしまったみたいに、あついです。
「おもったより、とおいね」
「……いや、そうじゃありませんね」
カソが、いしを1つひろって、たてもののほうになげました。
と。
フッといしがきえて――。
「うわっ」
うしろから、いしがとんできました。
「ワープしてる?」
「よくわかりましたね」
「ゲームとかで、よくあるから」
カソは、いしがきえたあたりまでちかづくと、てをのばします。カソのてがきえて、ずっとうしろからでてきます。
「うわっ、きもちわるい!」
「こまりましたね。これがひがしのりゅうおうのけっかいだとすると、パスワードがないかぎり、とおれませんよ」
「ひがしのりゅうおうに、パスワードをおしえてもらえないの?」
「おぼえているぐらいなら、5まんねんもほうっておかれるわけないでしょう」
「なんでもいいから、ためしてみようよ」
ピトラは、けっかいのまえにたちます。
「ひらけー、ゴマ!」
ひらきません。
「ひらけ、ナス!」
ひらきません。
「ひらけ、サカナ!」
ひらきません。
「ひらけ、タコヤキ!」
あきません。
「ピトラ、あてずっぽじゃだめですよ」
カソはリュックのなかから、クイをなんぼんかとりだします。
「なにそれ?」
「けっかいのエネルギーである、りゅうみゃくをずらしてみます。てつだってください」
カソはコンパスをかくにんしながら、クイをじめんにうちこんでいきます。
「へー、カソってまほうつかえるんだ?」
「ただのふうすいですよ――はい、これでおしまいです」
さいごのクイをうつと、かぜがすぅっとながれはじめました。
「あっ、なんかかわった」
「よさそうですね」
カソは、いしをひろって、けっかいへなげました。
いしは、けっかいをとおりぬけ、むこうへ。
「むこうへ……いったね」
「ええ。とおりぬけ、ましたね」
クイのおかげで、けっかいをとおりぬけることは、できるみたいです――けど。
「いし、くだけちゃってるね」
「ええ。バラバラですね」
いしは、バラバラにくだけていました。
「カソ、とおってみる?」
「ピトラこそ、ためしてみますか?」
それからカソとピトラは、クイのいちをいろいろかえてみましたが、ぶじにけっかいをくぐれそうにはなりませんでした。
「あー、もうー、ぜんぜんダメだ!」
「ううむ、ダメですね」
ピトラとカソはおおきくためいきをついて、たからのちずをみました。
「しかたない、あきらめましょう」
「えーっ、そんなぁ」
「このちずは、だれかにうりつけることにします」
「まってよ。けっかいのとおりかたって、ほかにないの?」
「あなでもあけないかぎり、ムリですよ」
「うーんそっか」
ピトラは、すわりこみました。
「そりゃ、そんなことできるわけないよね。めにみえないけっかいに、あななんて。くうちゅうをきって、あなをつくるなん……て……ん?」
そういえば、そんなものをきれたものがあったような。
せかいのさかいめをきってしまったものが、あったような。
「カソ、きれるよ! きれる!」
「え? あ、あーーー!」
ピトラとカソは、かおをみあわせます。
「ほうちょうのリンガ!」「のろいのけんのリンガ!」
ふたりのこえが、かさなりました。
「よし、リンガのとこへいこう!」
「いきましょう――あー、それからピトラ」
「え?」
「リンガをおもいだしたのは、たしかにあなたですが、そのヒントをだしたのはわたしで――」
「うん。ぼくは」
ピトラはにんまりわらいます。
「たから3わりでいいから」
「……はい」
ピトラとカソは、いまきたみちを、おおいそぎでもどっていきました。
<つづく>
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