
ごんぱち
ミーンミーンミーンミーン……。
こうえんに、セミのなきごえがひびきます
おひさまは、ジリジリとじめんをあぶります。
「あ、あついー!」
すなばでトンネルをつくっていたピトラは、あせびっしょりになっていました。
「……うん、あつい」
ラグヤもぼうしをとって、あたまをあおいでいます。
「きょうはたしかにあついな!」
ぺたりとすわりこんで、サリスもげんきがありません。
「そうだそうだ、あついぞ」
ノクタは、サリスのまわりをはねまわっていますが、まあそれなりにあつそうです。
「こんなにあついとニッシャビョウになっちゃう。すずしいとこにいこう」
「……うん」
「ニッシャビョウってなんだ」
「そうだそうだ、なんだ?」
「えーと、だから、あついときになるもので……」
ピトラはことばにつまります。
「……あついときに、たいおんがあがって、みずがたりなくなるびょうき」
「そうそう、そんなのだよ」
「よくしってるな、ラグヤ!」
「そうだそうだ、よくしってるぞ、ラグヤ!」
「ぼくは……?」
「ピトラはことばをしってただけじゃねえか」
「そうだそうだ」
「……ひかげにいこう」
ピトラたちは、こうえんのすみっこにある、きのかげにはいりました。
かぜが、すぅっとふきぬけて、きのはっぱをさわさわとゆらしていきます。
「あーーーー、すずしい」
ピトラたちは、きにもたれてすわりこみます。
「……うん、たまにふくかぜが、きもちいい」
「おひさまがあたらないのがいいぜ」
「そうだそうだ、いいぞ」
こかげからこうえんをみると、おひさまにてらされれて、まるでオーブンのなかみたい。
あんなところにいままでいたなんて、ちょっとしんじられないぐらいです。
「よっ!」
サリスが、きのえだにつかまって、ぶらさがります。そのままぐるりとさかあがり。
「へ、へん、なんだいそんなの」
ピトラもおんなじように、べつのきのえだにぶらさがります。
でも、きのえだはピトラにはたかすぎました。
なんどもぶらさがったまま、ブラブラブラブラ。
「がはは、ピトラ、ムリしなくてもいいんだぜ!」
「そうだそうだ、ムリしないほうがいいぞ」
「むりなもんか! よいしょっ、よいしょっ!」
やっぱりブラブラブラブラ。
「ガハハハ、ピトラはちからがないからできないんだな!」
「むぅ……」
「……ちからじゃ、ない」
ラグヤがたちあがって、ピトラがつかまっていたえだにつかまります。
ひょい!
ラグヤはサリスよりもずっときれいに、くるりとまわりました。
「……コツがつかめれば、だれでもできる」
「すごいや、ラグヤ!」
「ちぇっ」
サリスはすわりこみます。
「あー、なんだかあつくなってきたぞ!」
「そうだそうだ、やっぱりあついぞ!」
「またまた、まけたもんだから、ごまかして……」
「……べつにまけてない。ひきわけ」
「そうだ、ひきわけだ! それに、ピトラはあつくないのかよ?」
「そりゃ、あついけど」
ひかげだというのに、うごいたせいでピトラたちはあせびっしょりです。
「こんなところにいたら、やっぱりニッシャビョウになるぜ!」
「そうだね――そうだ!」
ピトラはポンとてをたたきました。
「もっと、すずしいとこにいこうよ!」
「……ボクは、ここにいる。じゅうぶんすずしいし」
ピトラとサリスとノクタはこうえんのちかくの、しょうてんがいに、きました。
「あー、すずしい」
「たしかにすずしいな!」
「そうだそうだ、すずしいぞ!」
でんきやさんのまえに、ずらりとならんだせんぷうき。かぜがいっぱいふいてきます。
せんぷうきのかぜは、こかげのそよかぜのなんばいもつよく、とってもすずしくなります。
「きもちいいなぁ。やっぱり」
「そうだな! でも」
「でも、なに?」
「まだやっぱりあつい!」
「そうだそうだ、あついぞ!」
「そ、そんなこといわれたって」
「みてろピトラ、もっとすずしいところへ、あんないしてやるぜ!」
サリスがむねをはります。
「こんなとこ、めじゃないぜ!」
サリスにつれられて、ピトラとノクタはコンビニにきました。
「すずしぃーーーー」
コンビニのなかは、クーラーがきいていてひんやりしています。
「すずしいだろ! このコンビニが、しょうてんがいでいちばんクーラーがきいてるんだ!」
じまんげにサリスがわらいます。
「そうだそうだ、すずしいぞ!」
3にんは、クーラーのふきだしぐちのしたにたちます。
つめたいかぜが、ピトラたちをひやします。
でも。
おきゃくさんがではいりするたびに、ドアがあいて、そとのあついくうきがはいってきます。
「うー、まだやっぱりあついなぁ」
「たしかにあついな」
「そうだそうだ、あついぞ」
「でも、もうここよりすずしいとこは、ないかぁ……」
「そうだろ。こればっかりはしかたないぜ」
「ちがうちがう、まだあるぞ!」
ノクタがいいます。
「えっ?」
「ほんとうか!?」
ピトラとサリスは、おもわずかおをみあわせました。
へいをこえて、たてもののかげ。
しょうてんがいでいちばんおおきな、スーパーマーケットのうらぐちです。
「こんなとこがすずしいの?」
ピトラは、キョロキョロあたりをみます。
にもつをつんだりおろしたり、くらいけれどかぜはとおらないし、むわりとあついです。
「ノクタ、こんなとこはいってだいじょうぶなのか?」
しんぱいそうなかおで、サリスがたずねます。
「へいきへいき、だいじょうぶだぞ」
ノクタがこたえたときです。
「だれだ!」
てんちょうさんがちかづいてきました。せがおおきくて、かたはばががっしりしていて、おにみたいなかおをしています。
ピトラたちがかってにはいったのをしって、しかりにきたにちがいありません。
「わ、わ」
「おい!」
ところが、ノクタはぜんぜんこわがっていませんでした。
「ノクタだぞ」
「おや、だれかとおもえば、センセイのとこの、わかダンナ」
てんちょうさんは、にっこりわらいました。
「そっちはおともだちだね? ゆっくりしていきな」
……わらっても、やっぱりこわいかおでしたが。
「あのてんちょうさんとしりあいだったのか」
サリスが、むねをなでおろします。
「うんうん、うちのはいしゃにくるんだぞ」
「いいなぁ、おうちでおみせをやってると、こういうしりあいができるんだなぁ」
「ピトラ、はいしゃさんは、みせとはちがうんじゃねえか?」
「じゃあ、はいしゃさんって、なに?」
「ええと、はいしゃさんは、はいしゃさんだろう?」
「でも、おかねをもらって、はをなおすんだから、とこやさんとか、じてんしゃやさんとおんなじじゃない?」
「なにもうらないだろう?」
「だって、イレバとかうるじゃない」
「あ……そっか。そうなのか? ノクタ? おい、ノクタ?」
ピトラとサリスをそのままに、ノクタはスーパーのおくへいきます。
それから、おおきいとびらのまえにきました。
ノクタは、なれたてつきで、とびらをあけます。
「うわっ!」
「おおっ!」
ものすごくつめたいくうきが、ピトラとサリスのかおをなでました。
「これはすごい」
「つ、つめたいな」
れいとうこでした。
なかには、れいとうしょくひんのダンボールばこがいっぱい。かべやてんじょうには、シモがついています。
ピトラとサリスとノクタは、なかにはいります。
「うわあ、すーずしーぃ!!」
「すっげぇ!」
「うんうん、マイナス20どだぞ!」
いきが、まっしろです。
このへんのまふゆよりも、まださむいです。
「あー、てんごくだぁ」
「いまが、なつなんて、ウソみたいだぜ!」
れいとうこのなかでは、あつさなんてどこかへいってしまいます。
「きもちいい」
「そう、だな」
あつさはどこかへいって、つぎは。
「というよりも」
「これは、ちょっと」
すずしいをとおりこして。
「さむい、さむい、さむい!」
「こおっちまう! でるぞ!」
ピトラたちは、れいとうこのそとへとびだしました。
ピトラとサリスとノクタとラグヤは、こうえんのこかげにいます。
「うぇー、なんだか、さいしょより、ずっとあつくなってきたー」
ピトラはだらりとねころんでいます。
「うー、あついーー」
サリスがくちをあけて、はぁはぁいきをします。
「そうだそうだ、あついーーぞ」
ノクタも、てであせをふいています。
「……じゅうぶん、すずしいけど?」
ラグヤは、のんびりときのえだにつかまり、また、くるりとさかあがりをしました。
ゆうがたのかぜが、すぅっと、とおりぬけていきました。
<おしまい>
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