新々賞品バトル詩部門
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 ENTRY 1 MAO(195)
 ENTRY 2 お気楽堂(90)
 ENTRY 3 日向さち(198)
 ENTRY 4 兎六(37)
 ENTRY 5 佐藤yuupopic(1020)
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ENTRY 1

 弔問

MAO◆◆


鳶の平ちゃん(七十二)
畳屋の大将(八十四)
角の歯医者の隣の島田の奥さん(五十三)
八柱の墓から持って帰ってきた挿し木の松(四箇月)
自転車屋の大旦那(七十四)
庭にいたひきがえる(年齢不詳)
多磨霊園の近所の江頭のおじさん(年齢不覚)
吉鶴先生(五十七)
一階の和式便所(築三十年)
隠居の犬(年齢不詳)
塩竃のおじさん、の息子(六十三)
掃除機・愛称<暴れ馬>(二年半)

ここ一年で、ごォっそり、居なくなった。

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ENTRY 2

 真実

お気楽堂◆◆


君が
死ぬまでだまし通すつもりでいるようだから
私も
死ぬまでだまされることに決めた

だから
絶対に途中で音を上げないでくれ

どちらが先に死んでも
残った思い出だけが真実

くれぐれもよろしく頼むよ

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ENTRY 3

 街の中で

日向さち◆◆


終電過ぎのラーメン屋の前
目の前にスナック
さっきタクシーが止まって
オヤジを乗せてった

歩道のベンチに座って
二人で話す
ポツリポツリと
話す
どうでもいいことばかり
話す


うちから見た月は もっと明るいよ

山ん中だもんね

山の中じゃないよ 何もないんだから

何も?

あたしの家と 田んぼだけ


酔いが醒めてないから
酒焼けした喉をもっと痛めるぐらい
誰にも遠慮せず笑う

二人きりで話すなんて嘘みたい
なんて
言ってはいけないのだと思う

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ENTRY 4

 虫の眼に

兎六◆◆


自室でも
会社でも
公園でも
遊歩道でも
スーパーでも
隣家の庭でもなくて、

千本桜。

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ENTRY 5

 ダメージ

佐藤yuupopic◆◆


ウインカーは
たしかに左折すると告げていたが
黒いシボレーはスピードを緩めぬまま直進して
道向こうの俺をはねた
信じ切っていた
みじんも疑っていなかった
何を信じて生きたら好いのか
それ以来一切わからなくなったよ
身体が思いがけない方向に幾重にも折れ曲がって
命があっただけ儲けもの
俺の喉と、
右肘と腿には今も金具が埋まっている。

世界の頂点を目指す競技者
想像力の豊富さ強靱さは
彼らに与えられた才能の一つだ
試合に臨む前
自らのベストまたはそれ以上をイメージの中で描くトレーニング法
鍛える毎にますます高まり強くなってゆくという
俺は
脳みその
彼らが用いるのとほぼ近い部分を使って
逆ベクトルへのイメージ鍛錬
会社に往き
仕事をこなし
日々暮らし
積み重ねる
負へ
もっと負へ
低く
もっと低く
起こりうるあらゆる悪い出来事を想定しろ
いつ何時望まざることが起こって
足下の地面を失なっても
立っていられるように
持ち堪えろ
職場復帰出来ただけで上出来だ
ダメージコントロール
期待しちゃいけない
期待しちゃいけない。

「そんなんじゃしあわせになれないよ」
余計なお世話だ
「あなたは変わってしまった」
大きなお世話だ
おまえが俺の何を保証してくれるんだ
そも
おまえの云う「しあわせ」
て、何だ
悪かったな
たしかに俺は
変わってしまった。


土曜日の夕
検診の帰り
病院から駅へ
行きは通れた道が工事中で
迂回して初めての道を使った
日暮れ時
家々から
夕飯支度の匂いが
こぼれ漂う
路地、

ある家からは
魚の身と皮が香ばしくわずか焦げるような
それにまじって
ばあちゃん家みたいな
仏壇にあげた線香の
隣の家からは
ぐつぐつ大鍋で煮込まれるカレーの
その隣からは
醤油と砂糖と酒とみりんで野菜と肉が甘辛く煮付けられるような
誰かの帰りを待つ
誰かの家路を急がす
匂いが、
こぼれ漂う
路地。

「用事がないならご飯食べにおいでよ」
おまえが初めて
電話くれた
もういつだったかは定かではない
ずっとずっと前の
土曜日の夕
ケータイメールの示す道順を
たどって
初めての家路を
靴をそわそわ
急いだ
土曜日の夕
不意に、
思い出して
みぞおちが
焦がれる。

たしかに
俺は
あの時
「しあわせ」
て云うものが
もし、
この世界に
あるなら、
それを
噛みしめて
いたのでは
なかったか。


俺は、
変わってしまったのか
本当に
変わってしまったのか

俺は
ただ
怖かったんだ
そして
今も。

信じたい、

せめて
おまえのことだけは

「生きてさえいてくれれば構わない」

病室のベッドで目覚めた俺の
髪をなでてくれた
せめて
おまえのことだけは

本当に
どうか
信じたいんだ。

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