感想: |
04 吸入器三寒四温観世音
10 不貞腐れ深爪したる夜半の冬
14 明後日はバレンタインの台所
15 福は内 むしろ鬼だったらいいのに
17 春隣@三叉路.com
04 三寒四温と観世音の脚韻が心地良い。私にとつてサンサシオンでした。「吸入器三寒四温」までで描かれてゐるのは、なかなか温かくなりきらない気候と良くなつたり悪くなつたりする病状でせうか。病床の作中人物は、観自在菩薩のやうに全てが意のままになれば良い、全快すると良いと願つてゐるのか、或は極楽往生を望んでゐるのか。それとも、ほんの少しずつ温かくなるやうに、薄紙をはぐやうにではあれ、回復してゆくといふことを、菩薩の御加護と感謝してゐるのでせうか。敢へて感情を廃した漢字の羅列ながら、色々と想像させてくれます。
10 深爪の理由を「不貞腐れ」と言つてしまふところがやや説明的でありすぎるやうな感は否めませんが、深爪と夜半の冬は良い取り合わせと思ひます。
14 明日でないところが良い。バレンタインの前日や当日を詠む方は多くいらつしやるでせうが、「明後日は」と持つてくる方はなかなか珍しいのではないでせうか。明日はここでチヨコレイトを作るのだ、といふ浮き浮きとした気持ちが伝はつてきます。
15 破調が功を奏してゐると言へませう。鬼が来れば良いのに、でせうか、私が鬼であれば良いのに、でせうか。どちらにしても屈折した心情で、私は屈折した方が大好きです。
17 これを応用して色々な季節が詠めさうです。「秋暑し@地下道.com」とか……。いやいや、本家にはかなひませんね。試みに作つてみて初めて思ひます。「春隣…」と舌頭に転がしてをりますと、早春は三叉路でなければ、といふ気がして参ります。此処にどういつたメエルを送ればよいのでせうかね。愉快です。結構なアドレスで御座いました。 |