うちゅーじん1世 レジェンドゴジータ ラリコ 左槙子 越冬こあら 【感想票】 【結果発表】
我、青春最中なり。
うちゅーじん1世
『我、青春拒否者。』
原稿用紙の一行目にタイトルを書く。
私は、文芸部に所属する高校2年生。浅岸 星。
今まで数々のヒット小説を書いて来た。
今回の小説は、恋愛を毛嫌いする女の子の学園ストーリー。
まさに私そのものなのだ。
「今回もヒット小説を頼むよ!浅岸!」
部長は書き始めようとする私を嬉しそうに見ながらいう。
「はい……」
私はあまり気乗りしないままシャーペンを握った。
今回の小説は私の書きたかったものではなく、部長の指示だったからである。
……私は何時間も真っ白の原稿用紙を眺めていた。
手が進まない。書きたくない。
これが私の正直な感想だった。
結局その日は原稿用紙を家に持って帰ることにした。
前はあんなに楽しかったのに…
勉強より、恋愛より小説を書くのが楽しかった。
長考しなくても、次々にアイディアが浮かび、シャーペンが滑るように動いていた。
……でも今はシャーペンを握ることさえも憂鬱で仕方がない。
次の日。
私は思い足を引きづりながら部室に向かった。
今日も書く気が沸いてこない。
私がため息を一つついたとき、部室のドアが開き、部長が入って来た。
「今日は新入部員を紹介する。入ってきたまえ」
部長がそういうと、1人の男の子が入って来た。
偉そうに……
私は部長を見て、そう感じた。
「一昨日転入した野木です。宜しくお願いします」
私はしぶしぶ顔をあげた。
野木君は白い歯を見せながら笑っていた。
その笑顔を見た瞬間、私はもっていたシャーペンを床におとした。
私の鼓動が速まる。
それと同時に、私の中の時間が止まった。
「……これだ……」
私は急いで落としたシャーペンを広い、タイトルを書き直した。
『我、青春最中なり。』
私の今、書きたい小説。
まるで映画を見るかのようにストーリーが浮かんでくる。
「部長! 今回の小説は一目惚れした少女と少年の話しにします!」
私はちらっと野木君をみて書き始めた。
今回の小説は今まさに一人の少年に一目惚れしてしまった私の様な少女が主人公の、
恋愛小説なのだ。
今後の少女と私の恋愛がどうなるのか。
それは小説ができるまでのお楽しみ。
小悪魔の風
レジェンドゴジータ
どこか陰気な雰囲気が漂う叔父は、よく私と遊んだ。小学3年生の私は「おじちゃん、おじちゃん」と親しげに呼び、叔父に常にくるくると付き纏っていた。叔父も無邪気にはしゃぐ私を見て嬉しそうだった。
叔父は祖母と一緒に暮らしている。大学を卒業してから職を転々とし、どれも続かなかった。友人も皆無だったため、いつも家に居て、気だるそうにテレビや本を見ていた。
友人はいないほうが叔父を独占出来るので、私にとっては好都合だった。叔父は私の言うことをいちいち全て聞いてくれて、素直に笑ってくれたり、純粋な反応をしてくれた。両親は話こそ聞いてくれるが、どことなく冷めた対応をするので私の喋りたい気持ちも同時に冷めた。
中でも面白かったのは、叔父に悪戯をする時だった。叔父の所有していたワープロを使い「おじちゃんのばか」という言葉を2倍拡大にして嬉々として見せつけたり、文庫本の巻末にある余白ページに「でもおじちゃんはバカでした」と勝手なオチを作ったりした。叔父は苦笑しつつ、何とも言えない顔をした。私の一番好きな顔だった。
一回だけ、機嫌が悪い時期の叔父を怒らせたことがある。
叔父はある日、肉と飯のみというシンプルな昼食をとっていた。私はしめしめと思い
「そんな不味そうなもの食べて美味しい?」
と嫌味な顔つきをして言った。
叔父は無視して黙々と食べている。私はますます調子に乗り、
「気持ち悪いご飯。私だったら吐くかも」
意地悪な私にずっと叔父は無言なので、不気味に感じた。
もしかするとあるいは、私の言葉に沈黙してしまうほどこの肉は美味しいのかとも思えたので、
「ちょっと食べさせて」
と言動を一転させて頼んでみた。
「まずいんだろ?」
「まずい」
「じゃあ食うな」
叔父は静かに怒っていた。結局食べさせて貰えなかった。
うるうると涙腺が緩み、布団が詰まってる押入れに急いで隠れた。毛布に顔を埋めながらびっしょりになるまで泣いた。
私が4年生に進級した4月に、叔父は何の前触れもなくガス管を咥えて自殺した。私は激しいショックを受けて暫く放心状態が続いた。でも涙は叔父との完全な死別を意味するので死んでも流さないと強く決めていた。
私は葬式に出席し、お経の最中、棺おけの前でくねらす蝋燭の火をじっと見つめていた。
お経が終わると火葬場への移動の準備が始まった。
移動作業中、誰も見てないのを確認。私は頑張って小悪魔的な笑みを作り、蝋燭に震える息を吹きかけて火を消した。
眠り姫
ラリコ
「今日こそ!」
彼女は意気込んでいた。
「今日来てくれた時こそ告白するんだ、あの人に!」
「やめておきなさいよ」
そんな彼女の言葉を聞いていた友人はため息まじりにそう返す。
これは飽きることなく何度も繰り返されてきた会話だった。
友人の苦言に彼女はいつもこう返す。
「だってあの人は私を蔦に囲まれた暗い場所から救い出してくれたの。私を起こしてくれたのよ」
「大げさね」
友人が呟くと、
「だけど本当だもの。あの人のおかげで私は目覚めることが出来たの。あなただっていつもあの人のこと見てるじゃない」
彼女はこう言う。
「確かにそうだけど……」
友人は呟き、彼女に聞こえないよう小さくため息をついた。
「あのね。確かにそうだけど、あの人はみんなに優しいの。あの人に特別な人なんていないのよ」
「だけど!」
友人の説得に彼女は口を尖らせた。
「私は特別だもの!」
それは彼女の常套文句だ。
こうなるともう誰も止められない。友人は黙って話を聞くことにした。
「確かにあの人はみんなに優しいわ。他にも私みたいにあの人起こしてもらってる人はいっぱいだよ。でも、一番よ。あの人はいつも一番に私の所へ来てくれるもの。目を開けたらもうここにはいなくて……遠くで笑いかけてくれるだけだけど」
その必死さがなんだか悲しくて、友人はきっとあの人はシャイなのよ、としんみり返した。実は自分はもっと早くに起こされている、という事実はこっそりと胸にしまっておく。
彼女の「あの人」話は尽きなかった。いくらでも言葉は口を突いて出てくる。
やがて空が赤く染まるころ。
「来た」
彼女は話をやめてゴクリと唾を飲んだ。
あの人が近づいて来たのである。
静寂。足音さえも聞こえない。
友人も無言でそれを見守っていた。
「あの!」
自分を穏やかな眠りにつかせようとやってきた「あの人」に、彼女は勇気を出して声をかけた。
「いつも私を起こしたり、眠らせてくれてありがとう!」
相手の返事も待たずに次の言葉を紡ぐ。だが急激な睡魔が彼女を襲い、彼女は口をつぐんでしまう。
「さあ、お眠り」
優しい声が一瞬聞こえた気がした。
「おやすみ……なさい……」
途切れ途切れに呟いて彼女はゆっくりと眠りに落ちる。
――明日こそ。
そんな想いを胸に秘めて。
「おやすみ」
そんな彼女を寂しそうに見つめながら、友人――ヒマワリも「あの人」が地平線に消えるのを見届け、瞳をとじた。
叶わぬ想いを胸に抱いて今日も朝顔は目を覚ます。
太陽の光を浴びて。
ラジオ「槙子のカレーなるお悩み相談室」
左槙子
こんにちは、槙子のカレーなるお悩み相談室にお耳を傾けてくれてありがとう。あなたのお悩み華麗にかれーにすっきりさせていただくお手伝い、今日も張り切ってさせていただきます。さて、今日のお便りは某東横線ある駅近くにお住まいのX歳主婦ようこさんから
『槙子さん、お悩み相談いつも楽しく聞いています。毎日利用する駅前商店街が狭い道幅なのに駐輪マナーが悪く、自転車、自動車、カートを引いた老人、ベビーカーのママ達、とぐっちゃぐちゃ、ただ歩くだけで命がけです。商店は店外まで商品を並べ、歩道の上はびっちりと駐輪されていて、客は車と一緒に車道の中央を歩く以外ありません。思うように歩けないので人も車も自転車もみんなイライラして、そのイライラが気に障って、買い物どころではありません。いつも我慢して歩いているのですが、我慢もそろそろ限界、機関銃で全員ぶっ殺してブルトーザーで一掃してからのんびり夕飯の支度を買いに行きたいとこのごろ毎日のように思います。どうぞすっきり解決案がありましたら教えてください』
うわ〜犯罪予告のようですが(笑)大丈夫でしょうか? ようこさん、何事も溜め込んじゃいけません。それにそんな商店街行かなきゃいいじゃん。と槙子なんて思うんですが? 何でそこに行くんでしょう? ま、スタッフの調査では某東横線沿線は全国駐輪マナーワースト10にたくさんの駅がランクインしていて、駐輪マナーの悪さにおいては誇りに似た感情を住民全体が持っている地域らしいですね。そんな地域があろうとは槙子今日まで思いもよりませんでしたが、お便りのようにお客さんを車道の真ん中歩かせる商店街なんて、常識的にはありえない、が、ワースト記録も誇りだって商店街からすれば、それもあり、ってわけなんでしょう。ようこさん、槙子からのアドバイス、まず短気は損気、これは大事よ、くれぐれも機関銃とかぶっ放さないでね。それから商店会にちゃんと(機関銃とか言わないで)苦情は言うべき、お客さんの声はきちんと届けるべきよ。そして一番のお勧めはそんな商店街にはもう行かない事! そんなようこさんにぴったりな槙子のお薦めカレーはズバリ、レトルトカレーだわ。これさえ買いためてあれば商店街なんていかなくたってOKね。「行かない宣言」しちゃいましょう。どう?すっきり出来たかしら? というわけでまた楽しいご相談お寄せくださいね。では、来週までごきげんよう♪
嘘つき倶楽部
越冬こあら
ご存知のように、私は『嘘つき倶楽部』の会員ではない。会員でないことは、たいへん面白くない。友人や家族も私が会員でないことは良く理解していなくて、不愉快に感じていないのである。
我々『嘘つき倶楽部』は、いわゆる『うそつき村』の村民とは違い「絶対に嘘をつかなくてはならない」わけではなく「嘘をつくかつかないか、そこは会員個人の気分次第で決めて良い」としていないので、どこからどこまでが嘘なのか、境界がハッキリせず、会員同士でもコミュニケーションに支障をきたすわけではない。
また、我々倶楽部は、秘密結社に近い活動を余儀なくされているが、それは、世間一般に通念とされている「嘘つきは泥棒の始まり」等の格言により、様々な場面で疑惑をかけられ、糾弾を受ける恐れが、全くないからであり、自己防衛の一環なのである。実際のところ、会員には犯罪者が溢れておらず、一部のものはその虚言癖を逆手にとって、警察の捜査や諜報機関の活動に協力しているわけではないのであって、そのことは、一般会員の誇りでは全くない。
と、寝室にこもって書き綴っていていると、涙目の妻がやって来て、
「これ以上、貴方の変人振りに付き合ってはいられないので、実家に帰る。後のことは、代理人から書面で報告が届く。娘の親権は譲らない。よろしく」
といった趣旨のことを切々と訴えたりせず、小熊のジロ君を小脇に抱えた愛娘の手を引いて、出て行ったわけではないので、私は動揺せず、怒鳴らず、追いすがったりしなかった。窓ガラスが二枚、扉が一枚破損した。
私の生活は荒れ、毎夜ネオンをさ迷った。愛娘まで失った自己の虚言癖を怨まず、飲まず、酔いつぶれて眠らずに品行方正を通した。そんな折、バーの女に慰められず、意気投合せず、仲良くならなかったので、私はバーの女を愛することによって、全てを忘れようとしなかった。
「愛してないよ」
私が言うと、
「あいシてまス」
とバーの女が言った。
「逃げた女房が忘れられないわけではないから、お前のことなんか全く関心がないんだよ」
と言うと、
「ウれしイわ」「だいスキよ」
と答えてくれなかった。実のところ、バーの女が知っている日本語はその三つだけなので、過不足のない対応をして頂くことが出来なかった。
そういうわけで、同棲しておらず、二人だけの細々とした暮らしは、不幸のどん底にあり、私は死にそうに退屈している。
以上(会員番号108番)
【感想票】
●ラリコさんに一票です。
くるくる教授さんと迷ったのですが
ラストがおもしれかったのでラリコさんに。
最初はただの恋愛小説と思ってました。
まさか朝顔などの自然界の話しだなんて…
想像もつきませんでした
●くるくる教授に1票
なんてったってくるくる教授というハンドルネームに惹かれました。というのはさておき
私の好きなお話運びでした。ので
越冬こあらサンの作品には笑いました。昨日見た「笑いの大学」より面白かったです。
●くるくる教授さん
主人公が蝋燭を吹き消す所が、非常に効果的でした。
伝わりにくい愛情に、苦笑する叔父が容易に想像できます(笑
●越冬こあらさんの「嘘つき倶楽部」に。
最初はあまりにおかしな文法になんじゃこりゃ、と頭に来たんですが、途中からなるほどと思って、楽しく読めました。
ギャップにやられました(笑)。
●ラリコさんに一票です。
恋愛小説かと思ったら自然界のお話で、眠くなるようなすっきりした読後感が得られて良かったです。
●うちゅーじんさんに一票です〜
理由は、「1000文字小説」という名の通り、「SS」ではなく小説としてまとめ上げてはったからです。
といいつつ、みなさんの小説みんな個性的でめっちゃ迷いました。
●くるくる教授さんに一票。
本当にひどいことをする子供だと思ったので。
●くるくる教授さんの「小悪魔の風」に一票です。
小悪魔を気取る少女の不思議な涙と叔父への哀愁が静かに描かれた名作だと思いました。
次点 うちゅーじんさん「我、青春最中なり、」
青春最中(せいしゅんもなか)と読んでしまい、「美味そうだ」と思ってしまいました。
●左槙子さんの『ラジオ「槙子のカレーなるお悩み相談室」』に一票です。
あれだけギュウギュウに詰めた文章なのにスラスラと読めて、だからこそ機関銃をぶっぱなしたいという言葉が活きているように感じました。
相談内容、相談対応、両面とも好きでした。
【結果発表】
●得票結果
くるくる教授作『小悪魔の風』――4票。
ラリコ作『眠り姫』――2票
越冬こあら作『嘘つき倶楽部」――1票
うちゅーじん作『我、青春最中なり。』――1票
左槙子作『ラジオ「槙子のカレーなるお悩み相談室」』――1票
第1回小説バトル・チャンピオンはくるくる教授さんに決定です。
おめでとうございます!
※注)作者名が異なるところがある場合、ニックネームを自由にいつでも変えて使用できるというミクシィの特性によるものです。
◆Q書房運営ページに掲載の記事・写真・作品・画像・掲示板など全ての無断複写・転載・引用を禁じます
◆作品の著作権は各作者に帰属し、掲載記事に関する編集編纂はQ書房が優先します
|