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筆者紹介
小林ひろみ
12月11日生まれ。射手座。日本絵本専門学院卒業。出版社勤務後、フリーのイラストレーターとなる。MOEイラストコンクール(村上勉選)入選入賞。五山賞審査委員会推薦賞受賞(子供の文化研究所五山賞審査委員会)〜1999年童心社紙芝居「ふしぎなしっぽのかなへびくん」の画。毎年、夏に個展開催。
ウェブサイト:小林ひろみ絵語り絵

             
森羅万象
書く人のための文芸事情
絵本作家・小林ひろみ「たとえば、絵本愛」


 絵を描くことを、生業としている私である。
 それなりに関係したモノが増えるのは、当然のこと。画材に、額縁、作品、掲載誌、資料本。そして、尋常でないのは、本棚に収まりきれない絵本である。
 古い昔ながらの木造のアパートの2階の私の部屋は、激しく歩くと、本棚はみしみしと震える。
「今に、この部屋ごと、落ちるわね!」
 時々、遊びにくる妹は、不吉な予言をする。
 そうなったら、本当に私は絵本に憑かれていることになる。
 たくさんの絵本。こんなにも、外国、日本、ジャンルも多方面にも、関わらず、私が幼児期にお世話になった絵本が一冊も手元にない。それには、こんな理由がある。
 当時、親戚の叔母が、家庭文庫を開いていた。母は、整理整頓の人。我が家の極ちいさな本棚がいっぱいになると、児童図書は速攻に叔母の元に送られてしまっていた。本棚は、整然としていなければいけないのだから。
 母の立場から言えば、なんの落ち度のない家庭人の知恵ではある。そう、リサイクル。
 私は、小学校の低学年当たりで、気が付く。
 あるのが当たり前だと思っていた絵本の数々が忽然となくなっていることを。
 その時に覚えた絵本への喪失感から、小中校時代の私は絵本なんぞと、目もくれなくなった。絵本は幼児のものだと。ひたすら、マンガにはまり、そして楽しみの多い小説を読み、ベルバラブームにフランス革命モノをミーハー的に時間を潰した。中学校時代に絵本研究クラブに入っている友達からピーターラビットの絵本を誕生日に頂いたが、なんの感動もなく、「ああ、可愛い本ね。」って位に冷静だった。
 絵本愛に火がついたのは、大学受験期。
 なんてこと……! 幼児期の絵本喪失の反動がここで出るとは、母も思いもつかなかっただろう。
 絵を描くことが、唯一の自分らしさだとは、気が付いていた。しかし、絵を仕事にするというビジョンが「美術の先生になる」っていうところで止まっていた。この未来はないなあとあっさりと諦めた。人と競い合って、デッサンを描く美大の受験を逃げたのだ。絵は楽しく描きたいって、のんきな信条もあった。
 その頃の私はイラストレーターという選択はなく、親の言うなりに上級の大学へ進めばいいやと捨て鉢。どんよりと成果のない受験勉強を、一人コツコツとしていた。そんな中、「赤羽末吉」「フェリックス・ホフマン」の絵本の数々に出会ってしまったのだ。
 火がついたように読みあさった。びっくりした。絵の美しさ、ダイナミックな構図。胸を打つ悲劇に、純愛に、希望。
 私のあこがれがここに全部あるではないか。
 母は、私が幼児の頃、「赤羽末吉」や「ホフマン」を選ばなかった。「柿本幸造」を選んだ。ほわんとした暖かみのある絵である「柿本幸造」(ドンくまさんシリーズ)も、記憶に残る大好きな絵本ではあったが、結局、他にやってしまった。そういう持ち回りだったのだ。
 絵本に発病させたのは、「赤羽末吉」「ホフマン」で、それは、自分で選び買い求め、何があっても、手放さなかった絵本であるということ。ポジションが全く違う。
 大学は失敗。当たり前である。絵本の専門学校に進学した。
 ありがたいことに、イラストレーターという道が開けた。びっくりである。紙芝居や個展と仕事の幅も広がった。  
 そして、絵本蔵書の増殖中である。
 『ほしになったりゅうのきば』再話/君島久子 画/赤羽末吉(福音館書店)
 私の行く道を決めてくれた絵本のてっぺんにいる絵本。子を持つあこがれ、自立の勇気、運命の人との慈愛いたわり、天命への素直な行動。文学である。この質の高さ。涙である。
 
 『ねむりひめ』(福音館書店)など、フェリックス・ホフマンのグリム絵本はすべてが、美しい。



 
写真左より▲『ほしになったりゅうのきば』(中国民話)君島久子再話 /赤羽末吉絵(福音館書店)・
スイスの絵本作家フェリックス・ホフマン


08/2/4/HIROMI KOBAYASHI
                                           

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